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1994.10 No.10  発行 1994年10月27日

発行人 中澤 滋  ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002

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家電の危険性 図や絵で表示/製品協会がガイドライン
製造物責任法 関係の省・団体、対応策整備
パソコン通信で郵政情報/信越郵政局
PL対応と新規開業 2相談窓口を開設 /東商
PL共済を導入
メーカーなど責任/NYで100億円賠償訴訟
酷似指摘のカップめん変更へ/東洋水産新しいロゴマークに
カネテツ、生菓子製造日改ざん
製造年月日偽る/丸大食品札幌営業所
ISO900012月小幅改正


9月の新聞記事より

■家電の危険性 図や絵で表示/製品協会がガイドライン

 家電製品協会(北岡隆理事長)は8月31日、95年7月の製造物責任(PL)法施行をにらみ、消費者が家電製品を安全に使うための表示に関するガイドラインを発表した。国内仕様の家電製品について、人体への危害と財産への損害を防ぐ警告表示と、安全点検のための表示に盛り込むべき基本的な項目とその考え方を示している。日本電気工業会、日本電子機械工業会などがこのガイドラインに基づいて今後、さらに具体的な表示方法を詰める。
 ガイドラインでは製品の購入から廃棄にいたるまでの各使用段階において、取り扱いを誤った場合に発生が予想される危害・損害を「危険」「警告」「注意」の3段階に分け、死亡やけがの恐れがどの程度あるかを製造・販売事業者が製品本体や取扱説明書に分かりやすく示すよう促している。また家電製品を長期にわたって安全に使用するため、使用者と販売店がいつ、どんな点検、清掃・修理作業をすればよいかについても細かく示すよう勧告している。

 ASPニュース5月号で紹介した家製協のガイドラインが予想より早く発表されました。図記号に関してはISO、IEC規格の該当するシンボルをそのまま採用し、該当するものがないものについてのみ新たに図案化しています。また、図記号と組み合わせる「警告」等の用語(シグナル用語)を使った製品上あるいは取扱説明書への表記についてはANSI規格に沿ったガイドラインとなっています。
 製品本体への表示で「容易に見え」「読める位置」「読める大きさ」等の表現になっているのは製品による表示スペースの違いのため、具体的なサイズについてのガイドは示せなかったようです。ただし取扱説明書等への表示説明文では写植14級以上を指示していますので、本ガイド作成のポリシーがうかがえます。
 プラスチック等成型品にモールド表示するときなどの注意点や、弱視の人のための背景色と文字等の明度バランスについての注意など今後も見直しを進めて欲しいものです。

■製造物責任法 関係の省・団体、対応策整備

 PL法の施行を前に、消費者に向けて活発な動きを見せるのが経済企画庁の外郭団体、国民生活センター(東京・品川区)。このセンターが目下、準備している一つが同センターを拠点にした消費者のパソコンネットワーク「生活ニューネット」(仮称)だ。
 会員になると、まずカラー画像による商品比較や商品による危害情報、裁判の判例などを盛り込んだ「消費者のための安全情報データベース」が利用できる。双方向通信のため、会員相互の情報交換もでき、例えば同じ商品で事故被害を受けた消費者が「一緒に訴訟しよう」と呼びかけたりすることも可能だ。
 PL法の施行までにスタートし、入会金については現在検討中で、2000〜3000円にする見込み。同センターは「PL法をきっかけに、消費者の一大ネットワークを育てていきたい。会員が10万人くらいになれば、そこから消費者の声を吸い上げ、消費者政策などに反映させることもできる」(理事長・及川昭伍氏)と将来像を描いている。もう一つ国民生活センターが取り組んでいるのが、原因究明機関と紛争処理機関の整備だ。
 この6月、神奈川県相模原市の同センター商品テスト・研修施設内に、自動車とその関連部品をテストする自動車専用テスト棟が完成した。2階建て、延べ床面積700平方メートルのテスト棟には、4輪駆動車の走行性能や高速道路走行時のタイヤのバランスを試験する機器類が備えられている。PL法の施行を機に調査依頼が増えると予測しての対応で、来年度には自動車テストを担当する専門家2、3人を採用しテストの充実を図る。
 同時に紛争処理体制も充実させる。同センターへの助言機関である苦情対策委員会を改組し、学識経験者で構成する紛争処理審査委員会(仮称)をPL法施行までに発足させる。ここでは、同センターが受けた苦情で解決できなかった案件を、消費者と企業双方の意見を聞きながら調整することにしている。
 一方、通産省消費経済課は企業に向けて活発に動き始めた。同課が現在取り組んでいる第一は、PL法施行に備えた商品の取扱説明書と警告表示のガイドライン作り。表示・取扱説明書適正化委員会(委員長・宮村鉄夫中大教授)を設け、ここで検討中だ。
 さらに同課でも原因究明機関と紛争処理機関の整備に力を入れている。原因究明機関は、検査機能を持った通産検査所が現在、出張所を含めて24カ所あるが、これを12カ所に集約する。一方で業界団体ごとにある検査機関、例えば財団法人日本自動車研究所や財団法人日本電気用品試験所など10カ所をネットワーク化、通産検査所と連係プレーを取るべく準備中だ。 国民生活センターのパソコンネットワークはどのように機能できるか未知数の部分がありますが、期待したいと思います。

 国民生活センターと通産省がそれぞれ原因究明機関や紛争処理機関の整備に取り組んでいることに危惧の念を抱いている向きも多いようです。
 たしかに「消費者が気軽に相談できるのはどちらなのか」、「得意な分野があるのか」等、気にはなります。しかし、両方の行政窓口を比較することにより消費者の態度を決めればよいことだと思います。それこそ記事に紹介されたパソコンネットワークで情報を提供し合えば、当局もいずれ縦割り行政の不具合を払拭せざるを得なくなるでしょう。

■パソコン通信で郵政情報/信越郵政局

 信越郵政局は10月3日から、パソコン通信で同局の報道発表資料などを提供する「郵政省オンライン広報」を始める。同局のパソコンと大手パソコン通信ネットワークの「ニフティ・サーブ」「PC-VAN」とを接続、同ネットの会員に広報資料など各種郵政情報を提供する。
 情報は両ネットの行政関係の電子ボードに属する「郵政行政情報」中の「地方郵政行政情報」コーナーに掲載する。郵政省では昨年1月から両ネットを通じて情報提供しており、各地方の郵政局の情報提供は東北、北陸などに次いで5番目になる。

■PL対応と新規開業 2相談窓口を開設 /東商

 東京商工会議所は10月から「新規開業相談」、「PL対応相談」の二つの相談窓口を開設、無料で相談に応じる。新規開業については、近年の開業率低下の現状を踏まえ、中小企業の創業を積極的に支援するもの。またPLについては、製造物責任(PL法)が95年7月1日から施行されることから、中小企業の同制度への対応について広い角度から相談に応じるのが狙いだ。両窓口とも10月13、21日に旗揚げし、新規開業については以後毎日、PLについては11月から毎月第2第4月曜日に開設する。
 窓口は東京商工会議所中小企業相談センター(03-3283-7700)まで。

■PL共済を導入

 東京商工会議所は8日、製造物責任(PL)共済の導入を正式決定した。これは95年7月1日のPL法施行を控え、PL制度に対する中小企業を中心とした会員企業のリスク回避、予防策の一環として実施するもので、東商と損害保険会社との間で生産物賠償責任保険(PL保険)の団体契約を締結し、各会員企業が被保険者となる団体生命保険を共済事業として会員企業に提供するもの。近く全損保会社に参加を呼びかけ、10月中には募集活動を開始、95年3月から保険業務を開始する予定。
 この事業のメリットとしては、会員企業にとっては団体契約のため保険料の安定が図れ、損害率に応じて5〜20%の有料戻しが受けられる。割増無しで分割払いが出来、業種ごとに設定された認可保険料率幅の最低料率が適用される。また、PL関連サービス(情報提供、各種リスク診断、講師派遣等)が受けられ、PL対策の具体化と事故への迅速な対応が図れるなど。

 PLリスクに対応するために行政、企業等の動きがで活発になっていますが、「取扱説明書、表示ラベルの対応」「PL保険での対応」等が目につきます。「製品安全(PS)への取り組みが欠けてはいないか」と少し気になるこの頃です。
 「起こった場合はPL保険で対応」や「取扱説明書や表示さえ行えばよい」との認識だけで、製品そのものの安全確保を軽く見ている企業があるとしたら困ったことです。
 今までの「取扱説明書や表示」が、ユーザーに対して分かりづらかったのに改善しなかった企業が対応に追われてるのでしょうか。
 ユーザーにとっては歓迎できることでしょうが、安全に関する注意書きだけを表示すばよいのではありません。「製品を正しく使用してもらうための説明が理解しやすいかどうか」、これも問われていることを忘れないで欲しいものです。
 日本語の表現では、何となく分かったような気にさせられて、よく読むと矛盾する文章をよく目にします。このような文章が減ってくれれば、海外向けに翻訳されるドキュメントの質もかなりアップすることでしょう。

■メーカーなど責任/NYで100億円賠償訴訟

 【ニューヨーク20日共同】8月末にニューヨーク市中心部のロックフェラー・プラザで米NBC放送の職員が射殺された事件で、職員の妻が20日、凶器となった自動小銃AK47を製造した中国のメーカーと輸入業者などに総額1億ドルの損害賠償を求める訴訟を地元裁判所に起こした。
 原告側は、容疑者ではなく銃メーカーと輸入業者を訴えたことについて、AK47は「人間の殺傷だけを目的としたものであり、その製造・輸入は違法である」と主張。銃器メーカーにも責任を問えると自信を示している。
 事件は8月31日、観光客や勤め帰りのサラリーマンで混雑する同センターのNBSスタジオ前で、強引にスタジオ内に入ろうとした男が職員のテロン・モンゴメリーさん=当時(33)=に押し止められたのに腹を立て、中国製自動小銃AK47でモンゴメリーさんを撃ち死なせた。

 はたして武器の製造メーカーにまで責任が問えるものかどうか、どのような結果になるのか興味のあるところです。
 最近のアメリカでは銃の所持に関する議論が盛んに行われ、具体的な動きも出てきているので、思わぬ波及効果が生まれるかも知れません。

■酷似指摘のカップめん変更へ/東洋水産新しいロゴマークに

 東洋水産は、日清食品から「製品デザインが酷似している」と訴えられていたカップめん「マルちゃんホットヌードル・シーフード・北海道チャウダー」の容器デザインを10月18日から変更する。
 新しいデザインでは色調などはそのまま残すものの現行の「シーフード」のロゴマークを「チャウダー」に変更。容器中央の北海道の地図などをやや大きくした。同時にスープなど商品内容もリニューアルする。
 「北海道チャウダー」は6月20日に発売された新製品だが、発売前から日清食品に商標権の侵害などとして提訴されていた。デザインの変更で仮処分申請の裁判は事実上なくなるが、商標権の侵害と損害賠償については「無条件に和解するつもりはない」(日清食品)と裁判を継続する見通し。

 ASPニュース先月号で少しふれたカップめんの容器デザインのその後の動きです。 知的所有権の保護に関してはルーズな日本ではありますが、日清食品は裁判を継続するつもりです。いいことだと思います。消費者への情報提供でもある企業同士の争いは、皆の目に見えるところで決着が付くまで行って欲しいものです。

■カネテツ、生菓子製造日改ざん

 食品会社カネテツデリカフーズ(本社・神戸市兵庫区、村上建社長)が、あんみつなどの生菓子4種類の製造日を書き換えて出荷していたことが分かり、神戸市兵庫保健所は13日、同社に対し食品衛生法に基づき、生菓子の在庫の販売禁止と、すでに流通している商品の回収を命じた。
 同市衛生局によると、同社は香川県仲多渡郡の食品会社に、カップ入りの「てっちゃん あんみつ」などの生菓子を委託製造し、自社ブランドで販売している。
 商品は、8月2日から22日にかけて約1万5500個が入荷。そのうち、売れ残った6008個について、製造元がつけた製造日をアルコール液で消し、26日から31日にかけて製造されたように日付を打ち直して計1577個を出荷、九州を除く名古屋以西の卸業者24社に納入していた。
 1日に同保健所が立ち入り調査をしたところ、日付が消えていたり印字の異なる商品を発見、改ざんが分かった。いずれもまだ賞味期間(30〜60日)内だったが、消費者の鮮度志向に合わせるために改ざんしたという。

 「消費者の鮮度志向に合わせるために改ざんした」という販売会社の発言には驚きます。消費者が製造日の少しでも新しいものを購入する行動は、少し神経質すぎるようにも思えますがそれを理由に製造日を改ざんする論理には、品質や安全に対する考えというものが欠落しているようです。
 PL法施行を来年に控えていますが、このような会社の体質改善にはまだまだ時間がかかると思います。

■製造年月日偽る/丸大食品札幌営業所

 札幌市西保健所は7日までに、食品衛生法(表示の基準)違反の疑いで大手食品メーカー「丸大食品」(本社大阪)札幌営業所(札幌市西区、伊藤修所長)を立ち入り調査した。
 保健所の調べでは、営業所はミックスピザや春巻きなど冷凍食品6品目の製造年月日を偽って表示し、出荷していた疑い。保健所はこれらの食品について違反を確認次第、販売禁止処分にする方針。
 製品は、神奈川県平塚市と藤沢市の2工場から仕入れ、冷蔵庫に保管。仕入れ時には実際の製造日を示すシールが段ボール箱に品数分入っているが、営業所はそれを張らず、出荷日の日付のシールを張って札幌市などの62店舖に卸していた。
 調査に対し、伊藤所長は「賞味期限は製造から14日などとなっているが、期限を解凍、出荷してからの日数と判断してかなり以前から張り替えをやっていた」と話しているという。保健所が立ち入り調査したときには6品目の在庫は100ケース近くあり、ほとんどの製造は7月下旬。今後出荷するとすれば、1カ月以上も遅い表示をすることになる。
 保健所は、出荷までには冷凍しているので品質的には問題ないとしているが、営業所は自主的に製品を回収している。
 丸大食品は一昨年6月にも、仙台加工場(宮城県名取市)が食肉パックの製造日を1日ずらして表示していたとして、宮城県から3日間の営業停止処分を受けている。

 同じような製造日表示の件で一昨年に3日間の営業停止処分を受けていたのに、今回のようなことが発覚してしまうのは社内全体の品質管理、安全な食品を供給するポリシーなるものが全く備わっていないとしか思えません。
 加工食品は消費者にとって鮮度の分かりづらい商品のため、製造日や賞味期限が唯一の情報であることが多いものです。大手食品会社の責任というものを今一度見つめ直して欲しいものです。

■ISO900012月小幅改正

 国際標準化機構(ISO)は工場や事業所の品質管理基準であるISO9000シリーズの評価項目を加える小幅の改正を12月1日に実施する。中小企業を主な対象とするISO9002基準の評価項目に、新たにアフタサービス体制を加えるなどが改正の柱。通産商工業技術院もこれに対応し、日本工業規格(JIS)のZ9900シリーズを改正する。

 1987年に制定されたISO9000シリーズ規格は、5年ごとの見直しのための作業が行われてきましたが、遅れてこの7月1日に改正規格の原文が発行されました。これが「フェーズ1」と言われている改正です。1996年を目指して「フェーズ2」の改正作業も進んでいるようですが、これも遅れるのではないかと言われています。

終わりに

 製品自体で消費者に危険を伝えることのできる商品が少なくなった現在、表示等の記載事項が正しいものかどうか気にかかります。
 安全規格などでは認可ラベルを認定機関から購入して、生産ロットや日付の管理をするのが一般的です。
 企業自らの裁量で行うことのできる表示の信頼性確保については、「ISO9000シリーズの認定工場」などの消費者情報が求められてくるのでしょうか。


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