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2002.4 No.100  発行 2002年4月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■箱ブランコ事故で賠償命令、福井市に3,800万円/福井地裁

■都市公園の遊具安全指針/国交省が指針

■東京女子医大で手術後死亡・傷害/2組の親、厚労省に調査申し入れ

■IH調理器から強い電磁波/国際的指針の16倍、消費者団体調査

■いつになったら終わるのか偽装食品表示

■放射能汚染鋼材で健康被害/国の賠償金2億7,000万円確定、台北

■長時間テレビを見る子が暴力的に/コロンビア大調査

■相次ぐミス・不注意で事故146件/国立病院・療養所報告

■ブレンド米表示の規制強化/農水省、今秋までに適用


3月のニュースから

■箱ブランコ事故で賠償命令、福井市に3,800万円/福井地裁

 昨年4月、福井市内の公園で箱ブランコの座席の背もたれを押して遊んでいた小学2年の男児が、誤って転倒してブランコの底と地面の間に頭を挟まれ頭蓋骨を骨折、右目を失明した事故の訴訟判決が2月28日、福井地裁でありました。判決は、「事故は予測できたのに十分な安全対策をとらなかった」などとして市に約3,800万円の支払いを命じ、市側の「本来の使用法と違う遊び方をした男児にも過失がある」との主張を、「子供の遊び方として予測できる範囲」として退けました。また事故前の昨年3月に福井県が全市町村に箱ブランコの危険性を通達していたことから、「事故は未然に防げた」と指摘しました。妥当性のある判決だと思いますが、被告の福井市は原告側勝訴の判決を不服として3月13日、名古屋高裁金沢支部に控訴しました。裁判に負けることのメンツばかり考えているようで、安全な市民生活を作り上げる、という行政側の責任を感じていないようです。

 箱ブランコや公園遊具の危険性を指摘する市民団体の「箱ブランコ裁判を考える会」(http://www.ne.jp/asahi/hakoburanko/home/index.html)では、他の裁判の経過や原告の思いを紹介していますのでアクセスしてみてください。

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■都市公園の遊具安全指針/国交省が指針

 国土交通省は公園の遊具による事故が頻発していることから、「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」を初めて作成、安全管理に乗り出しました。ブランコ、すべり台、ジャングルジムなどの遊具の選定や施行に当たって衣服が身体にからまる突起、隙間などを設けないことや可動部と地面のクリアランス確保、腐食処理などを規定したもので、製造業者や施工業者への指導を求めています。また地方自治体の公園管理者に対し、計画・設計、世宇、維持管理、利用の各段階で遊具の安全が確保されるよう適切な対処を講じるよう求めています。

 同指針は次のホームページで参照できます。(http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/04/040311_.html

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■東京女子医大で手術後死亡・傷害/2組の親、厚労省に調査申し入れ

 人工心肺装置事故で先月も触れた東京女子医大病院ですが、同病院で心臓手術を受けた後に子供が意識が戻らないまま死亡したり、重い脳障害が残ったりしたとして、2組の親が25日、「病院側から死因などの説明が亡く、医療事故の可能性がある」として、厚生労働省の社会保障審議会医療分科会に調査を申し入れました。
親らの代理人の弁護士によると、一人は1歳2カ月の女児で、昨年同病院で人工心肺装置の操作ミスで死亡した事故から10日後の、昨年3月12日に心臓手術を受けた後、心不全の状態となり益した。その後一度も意識を回復しないまま脳障害となり、感染症を併発し同年4月9日に亡くなったものです。このとき「医師からは死因などについて具体的な説明はなかった」とのことです。もう一人は1999年12月24日に手術を受けた生後2カ月の女児で、心臓手術後に脳障害が発生、現在も意識不明の状態が続いています。この件でも「病院は両親に対する説明をしていない」といいます。

 同病院の代理人の弁護士は「いずれも医療ミスとは考えていない」と説明し、両親が求めている証拠保全に病院側が一部の資料の提出を拒んでいることには、「証拠保全で提出するべき書類ではない」と説明しているといいます。

 同病院はこのところ度々ニュースに登場しますが、患者の安全を軽視する病院の隠ぺい体質がかいま見られ、今回の強気とも思われる弁護士の話で、ますます同病院を見る目が厳しくなりそうです。

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■IH調理器から強い電磁波/国際的指針の16倍、消費者団体調査

 取り扱いの安全面から最近では高層住宅や高齢者向け商品として人気が高まっているIH調理器ですが、その電磁誘導加熱のエネルギーが電磁波として外部に多く出ているようです。日本子孫基金(東京)では、市販の卓上型IH調理器6機種に直径約12cmのなべを置き、出力を最大にして電磁波を伝える電磁場の強さ(磁束密度)を測定したところ、多くの電磁波が出ていることを確認したといいます。同基金は、「最大値は国際的な安全指針の約16倍に達しており、メーカーは改善すべきだ」と指摘していますが、メーカー側では「指針の解釈の違いで、危険はない」と説明しているだけです。

 調査された電磁場の強さは、プレート間近では、周波数20キロヘルツ前後で1.0139から0.4005ガウスに達したとされ、国際非電離放射線防護委員会のガイドラインの0.0625ガウスを超えていることから、人体に悪影響が懸念されるとしています。ただ調理器から上に40cm、前後左右に20cm以上離れると測定値は全機種で指針を下回ったといいます。

 メーカー側が「指針の解釈の違い」ということで反論しているのは少々的はずれのようで、納得できる“解釈”を説明してもらいたいものです。最近のニュースですが、松下電器産業が、アルミや銅製なべでも使用できるIH調理器の開発に成功、今秋にも商品化するといいます。この新型のIH調理器では周波数と磁束密度のアップを新技術で対応していますが、漏れる電磁波のレベルも大きくなると思われ、メーカーの安全確認が気になるところです。

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■いつになったら終わるのか偽装食品表示

 ASPニュース先月号でも取り上げましたが、相変わらずの食品偽装ニュースが続きます。東証一部上場の大手食肉卸のスターゼンは2月27日緊急記者会見をし、値段の安い白豚を黒豚としてパック詰めして販売していたことを認めました。これは農水省の調査で疑いが出てきたことから、社内調査で従業員が証言したことから発覚したものです。同省では28日、表示を偽装した食肉を不正に販売したとして、JAS法の表示義務違反で同社の佐賀パックセンターを立ち入り調査しました。

 農水省とスターゼンの調査によると、同センターは2000年6月から昨年12月頃までの約1年7カ月間、特定病原菌不在(SPF)豚の白豚を「黒豚」と表示して販売したというものです。これは黒豚の仕入れ量と販売量が一致しない事実を農水省に指摘され、同センターに事情を聴いたところ偽装が判明したものです。また1日同社は東都内で記者会見し、ブランド肉を偽った偽装販売が今年1月までの約2年間続いていたほか、牛肉や鶏肉でも行われていたことを明らかにしました。このことから農水省の調査に対する隠ぺい工作の事実も判明、工場ぐるみの不正の疑いが強まったとしています。牛肉では計4.5トンのホルスタインを、ブランド力のある「佐賀白石牛」とし、鶏肉は値段の安いものを「みつせ鶏」と表示していたといいます。

 次の不祥事ですが、全農系列の鶏肉加工販売会社「全農チキンフーズ」が昨年、「国産」と表示して販売したチキンスペアリブに偽装表示をしたことが4日、明らかになりました。同社によると、昨年11月中旬、市販されているタイ産と中国産の鶏肉約7トンを購入、農協系の「鹿児島くみあいチキンフーズ」の工場に持ち込み、鹿児島産の「チキンスペアリブ」として商品化し、生協で作る「コープネット事業連合会」に販売したものです。工場側も偽装を了承したといい、BSE問題の影響でコープからの鶏肉の注文が大幅に増加したため、原料が不足、首都圏支店の営業部長が偽装を指示したとしています。また6日になり、全農と「コープネット事業連合会」の調査結果で「全農チキンフーズ」が「通常飼育」の国産ブロイラー計233トンを飼料に抗生物質などの薬品を使っていない割高な「無薬飼料飼育」の鶏肉と偽って販売していたことが分かりました。また表示では「鹿児島産」としていたのですが、中には「岩手産」が含まれていたことから、産地偽装もしていたことが判明しました。同社ではBSE問題が起きる前の昨年4月から今年2月にかけて首都圏支店の営業部長らの指示で、生産が追いつかない場合に恒常的に偽装していたようです。

 次は蔵王フーズの商品「蔵王土鶏」のパックのラベルに加工場所などに虚偽表示があったというものです。同連合では6日、九州農政局や福岡県などにJAS法違反の可能性があったして報告しました。また同商品の販売を停止し、購入した組合員に商品代金約6,000円を返金するとしています。同連合によると、2000年12月から同連合が販売した蔵王フーズの商品「蔵王土鶏」の一部で、実際には契約外の加工業社が商品のパック詰めしたにもかかわらず、契約で指定した福島県の加工業者が加工したようにラベルを偽装したといいます。
29日になると、福島県の「伊達鶏物産」がブラジルなどから輸入した鶏肉6.5トンを国産の「伊達鶏」として偽って販売していたことが県の立ち入り検査で判明しました。県によると、同社は2001年9月〜12月の4カ月間、下請けの加工業者に指示し、偽装表示の鶏肉を県内の小売業者に販売していたといいます。「伊達鶏」は伊達物産の独自ブランドで、量販店や首都圏の外食店などに高級地鶏として販売していたものです。同社の清水社長は「現場の担当者が、年々増加する需要に応じられなければ取引が停止するのでは、と恐れていた」と説明しました。

 さて食肉加工最大手の日本ハムですが、雪印食品の偽装牛肉事件を受けて農水省が実施した買い取り牛肉の再検査で、問題があると新たに分かった2.3トンの牛肉を買い取らせた業者の中に同社が含まれていることが30日明らかになりました。同社が買い取りを申請したのは約940トンの肉ですが、対象外の骨付き肉約34キロも申請されていたものです。同社は「骨付き肉が対象外とは認識していた。キャンセルが出て特別に保管していたのをチェックミスで申請分の中に入れてしまった」と説明しています。故意に行ったのではないようですが、買い取り申請肉に他の肉が混入しないように最大限注意するのは当たり前のことで、管理システムが機能していないとしか思えません。

 不祥事続きの食品業界ですが、消費者にとっては狂牛病騒動が思わぬ良い結果をもたらしそうです。伊達鶏を扱っていたデパートに確認したことがありますが、現在は店頭から撤去したものの、偽装品であったかどうかをデパート自ら検証せずに、テナントの業者の報告を受けるだけ、ということでした。品質には最大限敏感であるはずですが、客観的なデータで評価する、という認識が希薄のようです。お客様に販売する商品の品質を製造元の説明だけで良し、とすることなど一般の工業製品では考えられない品質システムが彼らには当たり前のようです。

 農水省も偽装牛肉事件を受けて、買い取り牛肉の再検査を進めていましたが、29日、信頼性が低いためサンプル検査から全数検査に切り替えると発表しました。業界の管理システムやモラルなき利益優先主義にようやく気がついた、ということのようです。監督省庁がいい加減であったための業界の不良化、とでも言いたい騒動ですが、当分この騒ぎは収まりそうにありません。

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■放射能汚染鋼材で健康被害/国の賠償金2億7,000万円確定、台北

 放射性物質コバルト60を含んだ鋼材で建てられた台北市内のビルの住民が、放射能汚染で健康被害を受けたとして行政院(内閣)原子力委員会を相手に国家賠償を求めた訴訟で、委員会側の過失を認めた高等法院(高裁)判決が26日までに確定、原告のうち46人に約7,200万台湾元、(約2億7,000万円)の賠償金が支払われることになりました。

 高等法院は今年1月、原子力委の職務怠慢を認め、賠償金支払いを命じる判決を言い渡していました。同委では25日、上告を見送ることを決めて原告に謝罪をしたことで判決が確定したものです。原告側は、台湾の製鉄会社が、原子力発電所の廃材を再利用して作った鋼材が出回り、台北市、桃園県などで計182棟の「放射能汚染ビル」が建てられたと主張していました。この中にはマンションの他政府庁舎、学校、オフィスビルも含まれているといいます。

 今回の訴訟の舞台となったビルでは、住民が甲状腺がんや乳がんなど放射能が原因とみられる病気にかかり、原告側は医療費や精神的苦痛への保証など1億台湾元(約3億7,000万円)以上の賠償を求めて提訴し、一、二審とも勝訴していました。

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■長時間テレビを見る子が暴力的に/コロンビア大調査

 テレビを長時間見て過ごした子供ほど、成長してから暴力事件を起こすなど攻撃的な行動をとりやすいとの調査結果を、米コロンビア大などの研究グループがまとめ、29日付の米科学雑誌サイエンスに発表しました。テレビ視聴と暴力との関係を長期間にわたって調べた初の研究で、グループは「特に影響が大きい10代前半の子供には、1日1時間以上テレビを見せるべきでない」と警告しています。

 グループのジェフリー・ジョンソン助教授らは、1975年から93年までの間、ニューヨーク州に住む男児360人と女児347人の計707人を対象に、本人と母親に面接してテレビを見た時間を記録したものです。その後、2000年までの犯罪記録や本人への聞き取り調査などから、これらの人々がけんかや強盗などの暴力的犯罪に関与したかどうかを調査したものです。幼児期の放任や家庭収入の差などの環境要因の影響を考慮した上で分析したといいます。その結果、10代前半にテレビを見た時間で比較すると、1日1時間未満だった人のうち、その後他人に暴力行為を働いたのは5.7%だったのに対し、視聴時間が1時間以上3時間未満の人は22.5%、3時間以上では28.8%と増加していました。またこの結果は女性よりも男性に顕著だったことが報告されています。

 テレビの害についてですが、我が国の場合は拘束力のない業界申し合わせがあるだけで、各放送会社の判断に委ねられているのが現状です。つまり制作当事者が「配慮しています」という言葉で逃げられてしまうのですが、客観的な評価が必要だと思います。今回のようなデータに対しては、おそらく彼らは「信頼性に疑問を感じる」というあいまいな表現で、自らの客観的評価手法を提示しないのでしょう。漫画雑誌よりもはるかにアクセスが容易なテレビメディアの品質論議では、文部科学省や厚生労働省などを巻き込んで行って欲しいものです。

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■相次ぐミス・不注意で事故146件/国立病院・療養所報告

 全国の国立病院と国立療養所などから2000年度と01年度に報告があった医療事故が146件に上ることが5日、共同通信の情報公開請求に対し厚生労働省が公開した「医療事故報告書」で分かりました。事故の具体的内容も初めて公開され、患者取り違えによる輸血ミスや手術部位の間違い、薬剤の過剰投与など単純ミスや不注意が相次ぐ実体が明らかになりました。

 厚労省は従来、事故内容の大部分を非公開としてきましたが、内閣府の情報公開審査会は1月「医療事故の公表は社会時要望」として公開範囲の大幅な拡大を求める答申を出していました。国が公開に踏み切ったことで、自治体レベルでも医療事故をめぐる情報公開が進むことになりそうです。報告書によると、国立別府病院では2000年7月、患者を取り違えた結果、本人とは異なる血液型の凍結血しょうを輸血する事故が発生、国立浜田病院では01年3月、頭部の切開手術で執刀医が左右を間違えて切開、国立明石病院では1998年に患者の気管チューブを看護婦が誤って切断し死亡につながった可能性のある事故が2000年に初めて病院内で報告されたことなどを指摘しています。また「胆管を誤って摘出した」(国立京都病院)など手術部位の間違いや、内視鏡の際に誤って腸や肺に傷を付けるなどのミスも相次いだといいます。

 大学病院を始め多くの大病院でも相次ぐ不祥事ですが、病院の大小よりもその院長を初めとするマネージメントに患者を気遣う気持ちがあるかどうかにかかっているようです。不祥事を隠さず公表する厳然たる行動をとれない病院には、真の顧客志向が無いと断言できます。

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■ブレンド米表示の規制強化/農水省、今秋までに適用

 農水省は28日、複数の銘柄を原料とするブレンド米について、一部の有名銘柄を強調する表示が消費者に誤解を与えているとして、米表示の規制を強化することを決めました。4月にも玄米と精米品質表示基準を変更する告示を行い、2002年産米が出回る秋までに適用する方針でいます。現在、ブレンド米は「複数原料米使用」などの表示が義務付けられていますが、文字の大きさについては規制がありません。このため実際には10%しか含まれていないのに「魚沼産コシヒカリ」などの有名銘柄を袋に大きく表示しているケースが多くあります。

 新しい表示方法では使用原料のうち混合割合が50%未満の場合は混合割合を産地・品質などと同じ大きさの文字で表示、50%以上の場合は産地、品質などと同じ大きさで「ブレンド」の表示を義務付けるものです。
同省によると「単一の原料かと思った」、「強調表示の部分が大部分だと勘違いした」などの苦情が多数寄せられているといいます。

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終わりに
 小田急電鉄では4月1日から鉄道会社で初めて、忘れ物を引き取りに行く際の往復運賃を無料にするサービスを始めます。同社では忘れ物を遠くの保管駅まで取りに行かなくても済むように、最寄りの主要駅までの無料配送は行っていましたが、更に利用者サービスを充実することにしたものです。「鉄道を利用したことによる忘れ物」との考え方が背景にあるようで、“顧客第一”の姿勢が感じられます。

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