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2002.8 No.104  発行 2002年8月15日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■BSE買い取り申請牛肉を無断で引き取り焼却処分/日本ハム

■問題食品「まだある」98%/日経消費者調査

■品種100%表示米、半数に異種混入/都の調査で判明

■旅客機と貨物機空中衝突/ドイツ南西部

■「ペストX 」にネズミ駆除効果無し/公取委排除命令

■食の安全、法制度一本化できず/「食品の表示制度に関する懇談会」提言

■薬・治療は最適だったか/アウトカムスタディーの取り組み



7月のニュースから

■BSE買い取り申請牛肉を無断で引き取り焼却処分/日本ハム

 食肉加工販売大手の日本ハムが、BSE対策の国産牛肉買い取り事業で、一度は買い取り申請した牛肉約1.3トンを、農水省に無断で引き取り焼却処分していたことが30日、分かりました。

 農水省では申請牛肉の全箱検査を進めていますが、「検品逃れと受け取られかねない行為」として、同社に書類提出を求めるなど事実関係の調査に乗り出す方針です。
同省によると、今年6月14日、業界団体の日本ハム・ソーセージ工業協同組合から、補助金を交付する特殊法人の農畜産業振興事業団に対し、日本ハムなど加盟9社から買い上げた牛肉約7.8トンの申請を取り下げたいとの依頼があったといいます。

 報告を受けた農水省は雪印食品や日本食品の偽装事件があったことから、全箱検査を受ける必要があるとして取り下げを認めませんでした。しかし、組合側は同省の指示に従わず、7月12日、保管していた9社の申請牛肉を各社に返却してしまいました。農水省は23日、検品を受けるよう組合に強く指導しましたが、日本ハム分1.3トンはすでに焼却された後だったというのです。これには「何かまずいことがあれば焼却する」という証拠隠滅が見え隠れします。

 日本ハムは「日本ハム・ソー組合から『自主的に焼却しなさい』と言われた。農水省の意向は知らなかったが、組合が許可したので処分した」と、組合の指示であることを強調しています。しかし組合の理事長は同社の大社会長が務めているため、同社の言い分には不自然さが残ります。

 と言うのが事件の発端ですが、8月に入ると次々と新事実が明らかになり、国産牛偽装事件として同社の商品が店頭から撤去されるなどの動きが出てきています。

 業界最大手の同社でも利益追求のためには不正もいとわない、と言う体質が明らかになりました。しかも雪印食品事件で企業の存続に直接関わる社会的制裁を見ていたのに、対岸の火事としか見ていなかったのでしょうか。食品業界全体が「利益のためには不正もやむなし」としているのではないかと疑わざるを得ません。
意地悪な見方ですが、同社は現在大手企業ですが、今までさんざん不正を働き、その都度事業を拡大し続けて業界トップの座を築いたのかも知れません。一般に消費者は「中小業者の方が不正も多いだろう」、「大手はしっかりしている」と考えがちです。しかし「しっかりしている」のは不正を巧妙に隠してきただけなのかも知れません。頻繁に起こる食品業界大手企業による不正は、彼らが作り上げてきた業界問題でもあります。それほど発言力のある企業の社会的責任、そして株主に対する責任は考えなかったのでしょう。器は大きくなったものの、企業内の顧客に対する品質問題のとらえ方は、いい加減な個人事業者のそれと同じか、それ以下かも知れません。

 今回は牛肉に関する不正でしたが、何かのきっかけがなければ彼らの不正は明るみに出てこないことから、このような不正は同社のどの食品でも起きうることであり、実際意図的な材料の混入や表示の偽装など、ある部門では現在でも行われていると考えたくなります。つまり一部の人間が不正を働いても、それを関知せず放置するマネージメントシステムでは個人の不正の歯止めが利かなくなっているからです。同社では組織ぐるみの問題を否定していますが、事実の公表が遅れれば遅れるほど企業リスクが増していく、ということを考えてもらいたいものです。

 他の全食品事業者も、今度こそは「対岸の火事」ではなく、「他山の石」としての対応を望みたいものです。
8月12日には、今まで「組合員の判断に任せたい」としていた「生活協同組合コープながの」でも、日本ハムの全商品の取り扱いを中止し、これまでのスーパー、百貨店などの対応からさらに広がりをみせています。また8月の同社の売り上げが40%減収になるとの見通しも明らかにされ、速やかな情報開示と顧客に対する真摯な謝罪が企業存続のポイントだと思います。

 一部の小売店では同社の存続を願っているようですが、無くなればいずれ他の企業が同等のあるいはそれ以上の製品を市場に投入することになり、心配することはないと思います。サラリーマンに良くある「私がいなかったら会社・部門の仕事に差し障りがある」という思いこみと同じようなもので、企業間ではいくらでも変わりがいるものです。消費者も今までの日本ハム製品に満足していたとしても、感傷的に同情してはいけないでしょう。このような淘汰が日本の食品業界全体のレベルを上げる、またとないチャンスでもあるからです。同社の品質マネージメントとは、今まで消費者が求めていた「良い品質」の商品が、「表示内容と中身が違っていたかも知れない」ということを否定できないものなのです。

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■問題食品「まだある」98%/日経消費者調査

 日本経済新聞では、虚偽表示や無認可添加物使用が相次いで発覚するなど、食品に対する消費者の意識調査を行ったところ、「表面化していない事例がまだある」と不信感を強めている消費者が98%いることが1日、分かりました。それによると6割が商品の表示を毎日確認するようになり、3人に1人が購入先を絞り込むようになったとしています。またスーパーから産地直送などにシフトした人もいることから、消費行動が確実に変化していることが明らかになりました。

 調査は首都圏、中部圏、京阪神を対象に6月中旬、日本経済新聞リサーチ大阪支社の協力を得て電話で実施、計600人から回答を得たものです。

 「以前に比べ食の安全性に対する信頼度はどう変化したか」の問いには「大きく揺らいだ」が46%、「やや揺らいだ」が38%で、合わせて84%が不信感を示しました。偽装表示や無認可添加物の使用は73%が「表面化した事例以外もまだ多数ある」と見ていて、「多少ある」を含めると98%が問題食品はまだあると見ていることが分かりました。

 商品に対する選別意識については、一連の不祥事が明らかになって以降、「毎日の食品・食材購入に際して何を注意するようになったか」(複数回答)との問いには、「店頭で食品表示をしっかり確認するようになった」(62%)が最も多く、次いで、信頼できると判断した購入先に限るようになった」(35%)、「大規模店舗を避け、生協の産地直送や生産農家との直接取引を選ぶようになった」(27%)となっています。

 問題を起こした企業の商品については22%が「一切購入をやめる」と答え、51%は「安全性の回復を充分確認してから購入する」とし、合わせて7割以上の人が購入を控えていることが分かりました。

 嗜好性のある食品ですが、特定企業の製品だけを購入するという考えはそれほどなく、他社製品でも良しとする消費者が多いことが分かります。企業は「自社商品が消費者に受け入れられている」と考える場合、消費者との信頼関係があってのものであることを常に意識していなければなりません。

 ある食品にたまたまゴミが入った、という品質問題では消費者との信頼関係は崩れませんが、虚偽表示や材料の意図的な混入は消費者をだますことであり、このような行為には一気に信頼を失うことを再認識すべきでしょう。

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■品種100%表示米、半数に異種混入/都の調査で判明

 「コシヒカリ100%」などと袋に表示しながら、異種のコメが混入していたケースが約半数に上っていたことが東京都の調査で1日、分かりました。

 都は昨年6月から今年3月までの間、都内のスーパーなどで単品種100%と表示していたコシヒカリやササニシキなど5品社の精米計45袋(34業者)をDNA分析で鑑定しました。その結果、22袋(11業者)に異種のコメの混入が見つかったものです。混入は精米機の清掃不十分や単純な作業ミスによるものが大半でしたが、意図的に別の安価な国産米を混ぜていた業者も1業者いたといいます。

 行政による検査では悪質でない限り処分をしないのが普通で、検査結果で「精米機の清掃不十分」や「単純な作業ミス」という言葉は、業者への聞き取りから得たものだと思います。たまたまの検体サンプルからコシヒカリでないDNA分析結果が出ても、その業者の取り扱っている全てのコメの品質が確保されていると考えるのは早計かも知れません。突然の抜き打ち検査であればまだしも、行政の検査では業者間での事前連絡などで実施日が分かることが多いように聞いています。

 したがって「コシヒカリの味ではない」という消費者に対して、行政が行った過去のデータを見せられて納得してしまう消費者もいるかも知れません。品質は継続的で常に確保されていなければならず、その客観的判断には品質システムの評価が有効です。でなければ一品一品を消費者の目の前で検査をしなければならなくなります。行政の検査は業者にお墨付きを与えるものであってはならず、消費者も過去のデータが現在も有効だという、客観的な根拠を求めたいものです。

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■旅客機と貨物機空中衝突/ドイツ南西部

ドイツ南西部のボーデン湖上空で1日午後11時40分ごろ、モスクワ発スペインのバルセロナ行きポレフ154型旅客機と、中東のバーレンからブリュッセルに向かっていたボーイング757型貨物機が空中衝突しました。

 3日、地元のラジオ局の取材で、事故当時、保守点検のため自動警報装置が一時的に切られていたことが明らかになりました。 同装置がオフの場合、2人の管制官が航空機の誘導に当たらなければならず、当時、1人は休憩中だったといいます。このためスイスのずさんな管理体制が事故の原因との見方もでてきています。

 今回の事故は、衝突回避の状況の中で、TCAS(空中衝突防止装置)と管制官からほぼ同時に「上昇」「降下」の相反する指示を受けたロシアパイロットがなぜ管制官に従ったのかが問題視されています。現在航空機の衝突回避という極限状態の中で、二通りの指示を受けた操縦士がどちらに従うかの国際的なガイドラインはなく、TCASと管制官の指示が異なった場合、独パイロットは「TCSの指示優先が原則」としていますが、ロシア航空当局は「機長の判断が最優先。これがロシアの航空法だ」と、真っ向から対立しています。

 欧州域内だけを取ってみても、「TCAS指示の優先」を内部基準としているのは独ルフトハンザ航空など大手だけで、他の中小航空会社では、その場での機長の判断に委ねられているといいます。また地上管制官には異常接近する航空機双方にTCASが搭載されているかどうかや、TCASの指示がどのようになっているのかは航空機からの連絡がなければ分からないとされています。ボイスレコーダーなどの解析作業が進められていますが、緊急時のマニュアルがない状態での事故原因究明は難しいとの見方がでています。

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「ペストX 」にネズミ駆除効果無し/公取委排除命令

 超音波や電磁波でゴキブリやネズミを追い払うとうたった米国製機器「ペストX」には実際の駆除効果がないとして、公正取引委員会は30日、景品表示法違反で輸入代理店と通信販売業者など3社に排除命令を出しました。

 命令を受けたのは、輸入代理店レンテックスジャパンと(東京・渋谷)、通信販売会社のオークローンマーケティング(名古屋市)、アドバンスクラフトデザイン(兵庫県姫路市)で、3社は米国で販売されている「ペストX 」を現地の販売会社から輸入し、実際の駆除効果がないのに、「ネズミ、ゴキブリを追い出し、寄せ付けない」などと商品の外箱やテレビの通販番組、自社のホームページなどで表示していたものです。
公取委が国内の3つの検査機関に製品テストを依頼したところ、ネズミにストレスを与えるなどの効果は見られたが、実用的な駆除効果は確認できなかったといいます。

 レンテック社は2000年10月以降、約40万台を輸入、オークローン社を通じ、全国の小売店やホームセンターなどで約37万台を販売、アドバンス社も99年10月以降約7,000台を販売していました。

 猫、ネズミ、モグラなどに対する忌避効果を狙った商品は多くありますが、効果が把握できないことも多く、「買ってみたものの失敗した」ということが多い商品でもあります。最近話題の木酢液が猫に効果がある、というので試した見たものの全く効果が無く、散布同日に猫が通りすぎていく光景を見た人も多いのではないでしょうか。モグラ除けの機械のすぐそばにモグラの穴が新しく空けられていた、という経験を持つ人もいるので、これら「効果判別難解機器」の販売は、詐欺と紙一重の商売のようです。もちろん、効果がなかった場合には商品を返品できるというのであれば話は別ですが…。

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■食の安全、法制度一本化できず/「食品の表示制度に関する懇談会」提言

 農水省、厚生労働省の「食品の表示制度に関する懇談会」は30日、食品表示の用語統一などを盛り込んだ提言をまとめ、近く「中間取りまとめ」として公表することになりました。しかし最大の懸案だった法制度の一本化は、事実上先送りになり、現行の制度を守りたい各省庁の縄張り意識を崩すことはできませんでした。
同会30日の会合で、明治大客員教授の中村靖彦委員は「将来的に一本化を図る必要性を盛り込んではどうか」と提案しましたが、厚労省の吉岡荘太郎食品保健部企画課長がすかさず「表示の言葉の定義もできていないのに飛躍しすぎだ。(各法律の専門性からも)対応の難しい面が出て来るではないか」という客観性のない制止意見を出したため、突っ込んだ議論もないまま「将来的な一本化」の文言は却下されたというのです。

 各省庁は、それぞれ所管している法律が一本化された場合、独立している権限が他の官庁に吸収され、弱まってしまうことを恐れているといわれ、事務局厚労省がどうしても譲れないものだったようです。

 原案には「事業者の自主的な項目」について、食品の偽装表示が相次いだことから、食品メーカーが行動規範を作成する際、従業員への周知徹底や外部からのチェック機能など社内体制を整備することが箇条書きに記されていたのですが、食品産業センター理事長の岩崎充利委員がこれに猛反発、「こんなに細かく書かれると、十分に反省して自主的に取り組もうとしているのに、水を差されるようだ」と一部を削除するよう求めたといいます。多くの委員は「事件がこれだけ続いているのだから」と削除に反対したものの、結局「表現を弱める」ために箇条書きでない形に文章を修正することで決着、業者側の思惑との妥協が図られたようです。

 消費者団体などはずっと法制化の一本化を要望してきたのですが、「食品法」という統一法は実現しないことになりました。30日の会見後、消費者団体の委員の一人は「行政も製造業界も、考えているのは消費者のことではなく自分たちの利益ばかり。後ろ向きな姿勢が、変革の千載一遇の機会を閉ざしてしまった」と述べているように、消費者の健康・安全についての政府・業界の態度が明らかになったといえるでしょう。今なぜ法律を改正すべきなのか、その目的を考えてみれば、食品を摂取する消費者・国民の立場に立った客観的な効果のないものでは法律自体の必要性が問われます。

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■薬・治療は最適だったか/アウトカムスタディーの取り組み

 欧米では一般的な科学的根拠に基づく治療(EBM)の考え方が日本でも浸透しつつあるようです。通常の治療は医師の経験や一定のガイドラインに基づいて行われますが、その治療法の根拠を明確にする必要性から、アウトカムスタディーといわれる薬品販売後の大規模な臨床試験に取り組む企業が増えてきました。

 糖尿病や高脂血症など長期の服用が必要な治療薬を対象に、その治療薬を服用した後の合併症の発症はどうか、死亡率はどうか、生活の質(QOL)は改善したかなどを調べるもので、血糖値やコレステロール値を下げる降下を検証するだけの承認前の臨床試験とは異なります。しかし数千例以上という多数の症例を集めるため、膨大なコストがかかり、一般には行われないのですが、競合が激しい薬の場合、他剤との差別化のために企業が自主的に行っています。

 薬価が引き下げられるなど医薬品市場の縮小が見込まれ、新薬だけを追い求めるのではなく、現行の薬の寿命を長期化するためにもアウトカムスタディーでよい結果が出れば企業にとってもメリットがあるわけです。患者にとっても安全面で信頼性の高い薬は歓迎できることから、この取り組みの拡大を望みたいものです。

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終わりに
 韓国建設交通省は航空機の安全確保などのため、機内で携帯電話を使ったり喫煙などした乗客に100万ウオン(約10万円)以下の罰金を科すことを定め、27日から施行しました。大声で騒いだり、酒によって他人に絡む行為やスチュワーデスを含む女性への性的嫌がらせも同様だということです。また暴行や脅迫で機長や乗務員の職務遂行を妨害した場合は10年以下の懲役が科せられるといいます。

 我が国でもマナーの悪い乗客がいて、彼らは罰則が無かったり、丁寧なお願いでは身勝手な行動を取るようですから、このような厳しい法律が欲しいものです。

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