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2002.12 No.108  発行 2002年12月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■インフルエンザワクチン接種後「筋力低下」/ギランバレー症候群5件発症

■イチョウ葉食品でアレルギー被害/国民生活センター

■中国産マツタケから農薬

■仏産キノコから基準を超す放射能/東京都、業者に回収指示

■りんごジュースからカビ毒検出/都立衛生研究所調査

■情報システム停止時の対策進まず/わずか2割の企業のみ

■森の認証制度、各国に広がる

■水不足対策は食器洗い機で/松山市購入に補助金制度

■臭気規制の動きが活発化/横浜市指針など

■禁煙条例進むたばこの話題



11月のニュースから

■インフルエンザワクチン接種後「筋力低下」/ギランバレー症候群5件発症

 インフルエンザワクチンの接種後、筋力が低下し手足などが動きにくくなるギラン・バレー症候群を発症し「ワクチン接種との因果関係が否定できない」としてメーカーから国に報告があった症例が、2000年1月から今年4月にかけて5件に上っていることが17日分かりました。

 厚生労働省は「接種者数を考えると発症頻度は極めてまれ」としながらも、注意喚起が必要と判断したものです。ワクチンの添付文書の「重大な副作用」欄に同症候群を加え、接種後に腕や足の弛緩性麻痺などの症状が出たら適切な処置が必要、との記載を盛り込むようメーカーに指示しました。

 厚労省によると、ワクチン接種後のギラン・バレー症候群発症者は、2000年1月と同10月に1人ずつ報告され、さらに昨年12月から今年4月にかけ3人と相次ぎ、また発症者には10歳未満の子ども3人も含まれていました。

 日本では99年以前、ワクチンの接種後の発症報告は全くなく、今回の5件が初報告となるようですが、情報開示の動きがあらゆる分野で進むこともメーカーの報告につながっているような気がします。

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■イチョウ葉食品でアレルギー被害/国民生活センター

 イチョウの葉を使った健康食品が最近人気のようですが、葉に含まれるアレルギー物質を取り除いていない商品による皮膚障害などが出ていることが25日、国民生活センターのまとめで分かりました。

 いちょう葉の食品は錠剤やカプセル、茶などの形で売られているもので、葉のエキスは脳の血液循環などの改善効果があることから、ドイツなどではアルツハイマー型痴呆などの治療薬に利用されているといいます。しかし有効成分以外にアレルギー物質の「ギンコール酸」も多く含まれることから、各国ともエキス中の濃度の上限を定め、また除去技術も確立されているとのことです。

 同センターによると、イチョウ葉食品による健康被害の訴えは1992年度以降で22件あり、年々増加、そのうち10件が発疹などの皮膚障害で5件が腹痛などの消化器傷害でした。また呼吸器困難を起こし、アレルギー性ショックと診断された30歳代の女性もいたとしています。

 同センターでは国内で販売されている中から20銘柄を選んで成分を分析、12銘柄でギンコール酸を検出、特に葉の粉砕物をつかった商品は高濃度で、中には1日の摂取量がドイツでの目安量の8万倍にもなる商品があったといいます。

 なぜか国内で流通している商品に安全基準がないものが多いように感じられるのですが、諸外国が基準を策定した背景を調査すればわが国でも被害者が出る前に必要な措置が取れるはずなのに、どうも納得しがたいものがあります。行政改革が進まないのをいいことに、厚労省の役人が十分仕事をしていないのであれば腹立たしいものがあります。

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■中国産マツタケから農薬

 厚生労働省は18日、中国産マツタケの輸入時の検査で国の残留基準0.1PPMを越える0.3PPMの農薬ジクロルボスが新たに検出されたと発表しました。ジクロルボスは有機リン系の殺虫剤で、中国産マツタケからは8月19日にジクロルボスが残留基準の28倍に当たる2.8PPM検出されています。同省では2度目の検出があったことから、中国産マツタケの輸入届で1件ごとに必ず検査を行い、検査結果が出るまで市場に流通させない措置を取りました。

  厚労省はまた、収穫後のマツタケを保管、輸送する際に農薬が使われた可能性があるとみて現地での農薬の使用状況などを調査するよう輸入業者に指導しています。

 中国産の野菜では冷凍ホウレンソウ、冷凍枝豆、冷凍春菊など相次いで基準を越える農薬が検出されています。また米国産の冷凍ホウレンソウからも農薬が、南ア産のグレープフルーツからは防かび剤が検出されるなど、最近はニュースが多くなっています。もちろん国内産の野菜からも検出されることもありますが、野菜への農薬量が急に増えるたとは考えにくいことから、検査機能がが少しは良くなった見るべきかもしれません。それは今までも多くの野菜には残留農薬が含まれていたことを推測するもので、今でも検査されない野菜が数多く流通していると考えるべきかもしれません。

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■仏産キノコから基準を超す放射能/東京都、業者に回収指示

 フランス産の生鮮キノコから基準を超す放射能が検出されたとして、東京都は8日、輸入業者のアルカンに回収を指示しました。問題のキノコは同社が10月下旬輸入した「ピエ・ド・ムトン」(45キロ)というもので、都内のホテルやレストランなどに販売されたものです。放射能濃度は1キロ当たり590ベクレルと、基準値を約1.6倍上回っていたものですが、都は「健康への影響はない」としています。

 長野県白馬村地域では米からカドミニウムが検出されたのですが、原因が特定できないまま推移しています。自然界の土壌を人が意図的に変化させたのではなくても、河川の堆積物など様々な物質が残留していることの結果かもしれません。今回のキノコの放射能濃度が、どのような原因で高い値となったのか興味があります。まさか何かの検査や品質保持のために放射能を照射したのではないと思いますが…。

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■りんごジュースからカビ毒検出/都立衛生研究所調査

 リンゴに生えるカビがつくるカビ毒の一種「パツリン」が市販のりんごジュースなどから検出され、海外の規制値上限と同レベルのものもあったことが、田端節子・東京都立衛生研究所主任研究員らの調査で分かりました。パツリンは、動物実験で内臓などに出血を引き起こし、死亡させる強い毒性が確認されているものです。国際機関「コーデックス委員会」(食品規格委員会)で基準作りが進んでいますが、国内に規制はなく、食品の汚染実態もほとんど分かっていないといいます。

 田端さんらは1996年以降、りんごジュースの原料(濃縮)果汁36品と、ジュースやジャムなど加工品216品の計252品を分析しました。

 原料果汁では26品からパツリンを検出、最高濃度は670ppbで、欧州などの規制実施国の大半が採用している50ppbを大きく上回っています。原料果汁は製品化の際に水で薄めるため実際の濃度は下がりますが、濃度が高いものは製品でも50ppbを越える可能性があるといいます。

 一方加工品では市販のりんごジュース24品から検出され、最高濃度は42ppb、平均は15ppbでした。

 りんごジュースがどのように作られるか一般にはよく知られていませんが、外に野積みにされて腐ったものも一部含まれたリンゴが選別されずにミキサーにかけられ、そしてジュースの原料になるようです。以前知人から聞いた話ですが、仕入れでジュース工場を訪れた人が、工場の外にこれから捨てるような大量の傷んだりんごが放置されているのを見たのです。その方は「こんなにも使えない原材料があるのでは、ジュース工場も経営が大変だな」と思ったそうですが、そのことを話した工場長は、ごく普通に「殺菌するから健康上の問題は無いですよ」とあっさり説明したといいます。普通の人ならビックリするのですが、工場の人は日常的に行っている仕事に何の疑問も感じていないようで、一般人の感覚とはかなりかけ離れているようです。安全、品質やモラルなどの企業の不祥事が多いのですが、組織の中にいる人の感覚は外から考えられないほど特異な状況にあることを改めて感じるものです。

 実際リンゴのタネの周りには時折黒いかび状のものが発生することがあり、そのような部分の選別は当然行われなく、また皮の部分の有害なワックスや残留農薬のことを考えるてしまうと、りんごジュースはあまり飲みたくはない商品です。もちろんリンゴに限らず他のジュースも似たりよったりだと思いますが…。

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■情報システム停止時の対策進まず/わずか2割の企業のみ

 事故などで情報システムが停止した場合、素早く業務を再開する対策を行っているのはわずか2割の企業であることが、コンサルティングのKPMGビジネスアシュアランスがまとめた調査結果で明らかになりました。
同社の調査によると、米国企業では9割以上が「事業継続プラン(BCP)」と呼ばれる業務再開のための措置をまとめた計画を策定しているか、現在策定中といいます。BCPは一般にシステム障害時の迅速な復旧のために、代替システムへの切り替えや他企業への業務委託、事務所が使えなくなった場合の代替方法などを定めるものだといいます。策定理由には株主利益の保護、法令遵守(コンプライアンス)上の理由など外的要因が多いのですが、日本企業では策定しない理由として「社内の合意が得られない」という企業が多くなっているといいます。

 どのような理由により社内の合意が得られないのか分かりませんが、“内”に向かっている企業意識が株主の利益を損ねるような危機意識の欠如と重なっているようです。大企業による不祥事が相次ぐ中、いまだに多くの経営トップは顧客、株主そして社会的責任といった“外”に向けての客観的な企業品質を心掛けていないようです。

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■森の認証制度、各国に広がる

 伐採後の植林はもちろん動植物の生息環境復元も約束するような、そんな条件を満たして生産された木材に特別なマークを付ける動きが各国で広がっています。この動きは「持続可能な開発」を支える有効策として期待され、日本でも独自の制度が来年4月にスタートします。

 認証制度の先進地であるカナダでは、約4億2,000万ヘクタールもの針葉樹林がありますが、かつては伐採後の森は放置されていたといいます。環境保護団体の働きかけで連邦政府が1998年に策定したのが全国森林戦略というものでした。同国で認証を与えているのは国際機関の森林管理評議会(FSC)の他、企業の環境管理を審査するISOなど4団体です。取得には業者側が伐採と植林、長期にわたる森林整備計画を立て、薬剤散布や林道整備による周辺環境への影響、野生動植物の保護などについては環境保護団体や林業関係者などで作る機関が審査するといいます。

 現在カナダで認証された森林面積は今年6月現在で全体の28%、約1億1,800万ヘクタールに達しているといいます。

 わが国では業者寄りの政治力からか、法整備が骨抜きになることが多いのですが、来年4月のスタートでどのような実行力となるのか見ておきたいと思います。

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■水不足対策は食器洗い機で/松山市購入に補助金制度

 大きな川がない松山市では慢性的な水不足が深刻で、1994年には約4カ月間にわたり最長で1日19時間断水しました。今年も梅雨期の小雨のため、10月28日からは吸水圧力を50%減らす給水制限をしています。そこで同市が打開策として新たに始めたのが、手で洗うより大幅な節水が期待できる食器洗い乾燥機の普及促進なのです。

 補助の対象となるのは、家庭に設置する食器洗い乾燥機で、市内の販売店で購入した松山市民に限るもので、補助金額は購入価格の二分の一で上限を2万円としています。同市によると、家族4人が使った食器を手洗いした場合に比べ、食器洗い乾燥機は1回当たり約30リットルの節水が期待できるといいます。同市は助成により年間約5,000台の普及を見込んでいて、年間の節水料は約11万トンになると試算しています。

 同市ではこれまでも、風呂の残り湯を汲み出すポンプやポンプ付き洗濯機構入費への補助、洗車やトイレ用の雨水タンクの設置費用などへの助成を行っていますが、果たして食器洗い乾燥機の効果はどうなるのでしょうか。

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■臭気規制の動きが活発化/横浜市指針など

 住宅密集地にある飲食店と住民の間で増加するにおいをめぐるトラブルに対応するため、環境省では苦情が出た店などから採取した「悪臭」を人がかいで「臭気指数」をはじき出す仕組みを採用するなど「悪臭防止法」の改正を行ってきました。この法改正で全国の自治体の動きが活発になってきたようです。

 横浜市は28日、においを「臭気指数」という数値で示し、話し合いの材料とする方針を策定したと発表しました。全国初の試みで12月の定例市議会に提案する環境保全条例案に反映するとしています。臭気指数は、袋に臭気を入れて徐々に空気で薄めて人間の鼻でかぎ策定をするもので、1,000倍薄めると臭気を感じなくなる数値としています。この指数30は、ウナギの蒲焼きや煮込んだカレーを間近でかいだにおいに当たるといいます。指針は、苦情が起きにくい臭気指数を、住居系地域で14〜17,商・工業系地域で17〜20と定めています。ちなみに「17」はコーヒーのにおいに相当するものです。今回の条例では基準を越えても罰則などはなく、同市環境保全局では「事業者と住民が話し合う際の材料にして欲しい」としています。

 東京都でも生活臭気への対策強化を狙い7月に環境確保条例を施行しています。条例は札幌市、浜松市が先行しましたが、都内全域の対策を打ち出した東京都の影響は大きいと見られています。
長野県松本市でも国の悪臭防止法に基づく臭気規制に人の嗅覚で判定する「臭気指数」を導入するよう答申、市は告示期間を経て来年9月から実施する方針です。住民から苦情が寄せられた事業所の周囲の空気を、市が委託した国家資格の臭判定士か市職員が採取、きれいな空気を混ぜて少しずつ薄めていき、事前に正常な嗅覚をもつと診断されている別の6人がそれを嗅ぎ、全員がにおいを感じなくなった時点での薄めた度合いの指数を算出します。

 日常生活上のにおいに関する苦情は増え続けているといい、今までの工場やゴミ処理場などから出るいわゆる悪臭だけでなく、焼き鳥店のけむりから隣家のカレーのにおいまでも苦情として寄せられているようです。苦情が裁判に発展した例もあり、昨年10月には神戸市の住民が近所の焼き鳥店とフランチャイズ会社に臭気対策を求めた訴訟で、神戸地裁が被告側に臭気発生の差し止めと72万円の損害賠償を命じています。このケースの場合は、苦情を受けた焼き鳥チェーンは排気ダクトを拡張したのですが、住民は納得せずに提訴、臭気鑑定の結果、市の指針で定める目標値を上回る場所があり、判決で「平穏で快適な生活を送る権利を侵害した」となったものです。

 このような「生活臭気」問題の背景には生活環境の“質”に対する意識の高まりもあるようで、今後はさまざまな「迷惑」に対する客観的な指数が必要になってくるかもしれません。

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■■禁煙条例進むたばこの話題

 合掌造り家屋の集落が世界文化遺産に登録されている岐阜県白川村は7日、条例で集落内での「歩きたばこ」を罰則付きで禁止する方針を明らかにしました。現在でも吸い殻の投げ捨てなどを禁止する「ポイ捨て等防止条例」がありますが、実質的な効果がないことから、喫煙自体の規制を設けることで防災効果を高めることを狙ったものです。
同村萩町地区には、合掌造り家屋が113棟立ち並んでいますが、木造で火に弱い家屋に対し増加した観光客のマナーの悪い吸い殻のポイ捨てを不安視した同村のしかるべき対策だと思います。議会の承認が得られれば来春にも施行する予定で、東京都千代田区が施行している罰則付きの路上禁煙条例に続くものになります。
バンコクでは8日、冷房付きのレストランやデパート、公衆トイレ、タクシーの中などでの喫煙を禁じる厳しい禁煙令が施行されました。警察が監視し、違反した場合は吸ったものは2,000バーツ(約6,000円)、店の経営者らは2万バーツ(約6万円)の罰金となっています。店の経営者の罰金を科すことは適切で、我が国でも未成年に酒やたばこを売る店の経営者に大きな罰金を科して欲しいものです。
さてフィリピンでも9日から罰則を強化した禁煙条例が施行され、フィリピン・ミンダナオ島のダバオ市では条例施行から1週間で約160人が逮捕されたことが17日分かりました。最高2,000ペソ(約4,500円)の罰金もしくは1年以下の禁固刑が科せられますが、罰金を払うことが出来ずに腕立て伏せを30回させられた大学生がいた、というのはお国柄のようです。

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終わりに

 冬本番となり、各家庭でもストーブを押入などから出して使っていることと思います。しかし一年中使えるエアコンなどと違い、押し入れなどの出し入れの煩わしさや「収納スペースの無駄」と感じる人も多いようです。そんな悩みを解消しようと富山県を地盤とするガス供給会社、日本海ガスでは暖房器具を必要なときだけ貸し出す、ガスファンヒーターのレンタルを始めました。10月〜翌年の4月までの7ヶ月間のレンタルで、申し込んだ家庭を担当者が訪問して器具を取り付け、期間中の故障などにも対応、春になれば回収し製品を整備してから保管するものです。料金は1シーズン3,000円から4,500円で、今年は用意した470台全てが出払う人気となっています。

 ガスファンヒーターを10年も使用すればどこか調子が悪くなることもあり、修理を依頼したり新たに製品を購入する煩わしさもなく、収納スペースをふさがないでしかも廃棄物削減になるという、環境に優しい企業の取り組みだと思います。

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