1994.12 Vol.12  発行 1994年12月27日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002

 


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米社製心臓ペースメーカー/事故で米の2人死亡
日本製色鉛筆などに重金属/香港で13万セット押収
防水スプレーで中毒死/千葉の男性
火花の熱で架線溶け切断/長野の信越線事故
整備不良原因か/茅野の中央道観光バス炎上
松下が和解金1800万円/「TV出火で焼死」訴訟
浄水器から水道水基準を超える雑菌/国民生活センターが発表
たばこ製造販売禁止求めて提訴/愛知の主婦らJT相手に
ソフトの違法コピー、情報提供に謝礼

11月の記事より

■米社製心臓ペースメーカー/事故で米の2人死亡

 日本に輸入されている米テレクトロニクス社製心臓ペースメーカーの電極破損事故により米国で2人が死亡していたことが、2日明らかになった。同じ電極を持つペースメーカーは国内でも596人が使用しているため、厚生省は同ペースメーカー電極の輸入販売会社などに対し直ちに医療機関と患者に事故情報を伝えるよう指示した。ペースメーカー使用者に対しては電極の製造元と型番を確認し、該当する場合は主治医に相談するよう呼び掛けている。
 事故が起きたのは、ペースメーカー用電極「アキュフィックス心房用J型ぺーシングリード(電極)」モデル330−801。世界で約4万2000人の患者に埋め込まれているが、このうち4人でJ型に曲がった部分が折れ先端が心臓に刺さる事故が起きた。2人は心臓内の出血により死亡、残る2人は手術で命をとりとめた。
 事故が起きたのは92年10月から94年7月の間。その後さらに3人について、健康への被害は無かったものの電極に同様の破損が起きていることが明らかになった。破損までの使用期間は最短6カ月から3年8カ月までと幅広く、破損の原因は明らかになっていない。

 その後のニュースでは日本でも4件の破損事故があり、1人は入院していたことが判明しました。しかし、輸入販売元のセンチュリーメディカル社は「事故による健康への影響はない」と厚生省に報告をしていたため、同省より「不正確な報告がなされ、きわめて遺憾」として、厳重注意を受けました。

■日本製色鉛筆などに重金属/香港で13万セット押収

 日本製色鉛筆などに重金属 香港で13万セット押収【香港16日共同】16日付の香港各紙によると香港政庁の消費者委員会は15日、46種類の色鉛筆、クレヨン、絵の具を検査したところ、三分の一から規定以上のバリウム、鉛などの重金属化合物が発見されたと発表した。これらの大部分は日本、中国、台湾製で、税関当局は先月以来約13万セットを輸入、卸売、小売りの各業者から押収した。
 同委が問題とした日本製は三菱鉛筆、コーリン鉛筆、ぺんてる、サクラクレパス各社の製品。消化器のエックス線造影剤として使われるのは不溶性の硫酸バリウムだが、水溶性のバリウム化合物は有害で、誤って口に入れると筋肉が引きつけを起こしたり、心臓に悪影響があるため、注意するよう税関は呼びかけている。

 今年5月にトンボ鉛筆のプラスチック製クレヨン「ピコ」が同じように基準値を上回るバリウム化合物を含んでいたとして、香港税関で押収を受け、回収を行っています。
 欧州ではおもちゃや子供用品に関する規格でバリウム化合物の安全基準を定め、90年から施行されています。香港でも同じ安全基準を93年7月より導入していました。国内では筆記具について、バリウム化合物の安全基準を特に定めたものがないため、安全規制に関する感度不足があったようです。
 実際、「香港での規制強化に気付かなかった」(トンボ鉛筆小川社長)とのコメントが載っていました。
 今回問題とされた製品にはさすがにトンボ鉛筆製のものはなかったのですが、大手メーカーの製品がそろいもそろって押収されています。
 今年5月のトンボ鉛筆のニュースは当然知り得ていたのに、その後何にも対応をしてこなかったというのでしょうか。「大手メーカーでもこんなレベルなのか」と、がっかりさせられます。

■防水スプレーで中毒死/千葉の男性

 防水スプレーを使用した千葉県の会社員の男性(56)が呼吸困難と肺水腫(しゅ)の症状を起こして死亡したことが22日までに、財団法人日本中毒情報センタ−(茨城県つくば市)から厚生省に入った連絡で分かった。防水スプレーに関連した死亡事故は初めて。
 防水スプレーはスキーウエアなどに使われるため、このスキーシーズン用の製品は中毒を起こしにくいものに改善されている。しかし、古い製品が家庭に残っている恐れもあるため、厚生省は事故の発生頻度の高い製品名を公表して注意を呼び掛けた。
 厚生省によると、この男性は10月21日に自宅玄関内でカーメイト社(本社東京)製の「いいウエアを持っている人の防水スプレ−」をゴルフウエアに使用した。呼吸が困難になったため、同月23日東京都内の病院に入院、今月18日に死亡した。
 男性は金属関係の仕事に従事、もともと肺活量が低下する症状があったが、スプレー使用後に肺水腫などの症状が出たことから、厚生省はスプレー中毒事故の可能性が高いとみている。主要成分のフッ素樹脂が肺に入り込み呼吸器障害を起こしたらしい。
 問題を起こした製品は昨冬用で、約2万本生産されたが、事故が目立ち7000本が回収されている。
 防水スプレーは平成4年暮れごろから呼吸困難や発熱、おう吐などの症状を起こすケースが目立ち始め、スキーシーズンと梅雨を中心に、今年6月までに全国で計170件(うち48人が入院)の中毒事故が報告された。

 厚生省がカーメイト社製品以外で危険性の高い銘柄として公表したものは次の通りです。
◆ミズノ製「アクアガード」
◆ニチバン製「ウエットガード」
◆ソニーケミカル製「ボースイ」(以上3点とも92年冬季用、現在は販売されていない)
◆ジャパーナ製「パーサーライン」(93年冬季用白キャップ。販売中の青キャップは対象外)
◆コージツ製「防水スプレー ウオータープルーフ」(93年冬季用青キャップ。販売中のピンクキャップは対象外)
 「ちょっとだから」と言って、室内でスプレーを使用するときは注意したいものです。

■火花の熱で架線溶け切断/長野の信越線事故

 長野市のJR信越線長野−北長野間の出区線で9月2日に起きた架線切断事故の原因は、JR東日本長野支社と鉄道総合技術研究所(東京)の調べで4日、移送中の特急列車のパンタグラフが電位差のある2本の架線に同時に触れた際、発生したアーク(火花)の熱で架線が溶けて切れた珍しい事故と分かった。
 事故は9月2日午前7時ころ発生。長野総合車両所から長野駅へ移送中の特急「あさま4号」が、走行中に突然動力を失って停止、同区間が不通になった。調べだと、出区線と本線の架線が近接、交差する区間(エアーセクション)を特急が通過中、パンタグラフが電位差のある2本の架線に同時に接触した際、アークが発生。火花の熱で架線が溶け、張力(約1トン)に耐えられず切れたと推定した。
 電位差のある架線とパンタグラフが接触しても、通常はこうした現象は起きないが、「列車が非常にゆっくりとした速度で進行していたり、振動などで架線との不完全接触が起き、電圧差もあってアークが発生したようだ」(同支社)としている。同支社は、事故が起きた交差区間に架線の電位差をなくす装置を取り付け、再発防止策をとった。

 事故の原因からは数々の教訓が得られますが、通常行う各種安全・性能試験では過酷な条件を設定してしまいます。機器や素材の極限性能を把握するのは大事なことですが、製品(部品、素材等)の置かれる環境で想定されるあらゆる条件(遅い速度、緩やかな振動等)にも目を配る必要があります。

■整備不良原因か/茅野の中央道観光バス炎上

 長野県茅野市金沢の中央道下り線で9月26日、乗客ら30人余が乗った長野電鉄(長野市)の観光バスが炎上した事故を調べている県警高速道路交通警察隊と交通指導課は31日までに、前輪のブレーキ関連部品の整備不良が原因との見方を強め、道交法違反(整備不良車両の運転の禁止)などの疑いで、同社の整備責任者の路線バス部整備課長(55)らの書類を来週にも長野地検に送る方針だ。
 同隊の調べだと、炎上したバスのブレーキは、制動力の強いエアブレーキだったが、空気圧を油圧に変換、制動力を高める前輪の「エアマスタ」という部品の「パッキン」部分が劣化していた。このため、回転するブレーキドラムを締めて制動させる金属部分(ライジング)が、ドラムに接触したまま走行を続け、前輪ブレーキ部分が摩擦で発熱、炎上したらしい。
 法令やメーカー側の基準に沿ってエアマスタは1年ごとに点検、パッキンは2年ごとに交換しなければならないが、炎上したバスは89年12月の走行開始以来5年近くパッキンを交換していなかったという。
 同隊などは、異常に気付きながらただちに停車しなかった運転手(46)についても、同法の安全運転義務違反に当たる可能性があるとみて判断を詰めている。

 長野電鉄が1年ごとにエアマスターを点検していなかったことで、道交法違反に問われるのは当然なのですが、行政の関与についても問題があるようです。
 長野電鉄の整備基準によると、「パッキン」の交換は「7年もしくは40万キロ以上の走行」となっていますが部品メーカーでは「2年」を推賞しています。
 この長野電鉄の整備基準については新潟運輸局長野陸運支局でも把握していたといいますが、特に指導は行っていませんでした。
 部品交換はコストにはね返る問題でもあり、「こまめに点検して部品を長く使いたい」とするバス会社の考えに対して行政が口を出しにくい側面があったようです。
 しかし行政としては、部品メーカーの推賞する2年という根拠を調査し、長野電鉄の基準である7年という数字が妥当かどうかチェックしておくべきでした。

■松下が和解金1800万円/「TV出火で焼死」訴訟

 大阪市生野区で90年2月、民家が焼け、お年寄りが焼死した事故で、遺族が「出火の原因はテレビで、メーカーに欠陥商品を製造した責任がある」などとして、松下電器産業(大阪府門真市)を相手に約4000万円の損害賠償を求めた訴訟は25日までに、松下側が1800万円を支払うことで大阪地裁で和解が成立した。家電製品の製造物責任をめぐる訴訟では今年3月、別のテレビ出火訴訟で大阪地裁が松下電器に賠償を命じ、確定している。
 訴えによると、90年2月27日夜、大阪市生野区の民家で火災が発生、この民家と隣の家などが燃え、逃げ遅れた男性(当時83)が焼死した。

 消火後の現場検証では「本件テレビ付近の燃焼残があった付近がもっとも激しく焼毀しており、テレビ以外に出火原因は考えられない」となっていたものの、原告には「事故原因の特定」あるいは「通常使用によってテレビから発火したことの証明」が必要でした。
 したがって大方の見方では原告の立証は難しいといわれていました。今回松下側が和解に望んだ背景には、この3月のTV訴訟の結果が大きく影響しているものと思われます。

■浄水器から水道水基準を超える雑菌/国民生活センターが発表

 国民生活センター(東京都港区)は7日、「商品テストしたほとんどの浄水器、イオン整水器で、使用開始後間もなく水道水の水質基準を超える雑菌が繁殖することが分かった」と発表した。
 「制菌」「抗菌」をうたった商品もあり、同センターは不当表示の疑いもあるとして公正取引委員会に報告する。テス卜は市販の浄水器4銘柄、イオン整水器2銘柄の計6社6銘柄について実施、水道水などと比較した。
 まず、使用後間もない家庭を想定して、毎日断続的に通水、カートリッジ寿命の10%分使用後の水を検査した。
 その結果「制菌力」「抗菌力」表示の2銘柄を含む浄水器3銘柄と整水器1銘柄の計4銘柄で水道法の水質基準(1cc当たり100個)を超える雑菌を検出した。水道水は1週間の放置後も基準内だった。
 さらに、48時間通水を中断した後再使用した水では、別の整水器を含む5銘柄から基準以上の雑菌を検出した。
 同センターによると、浄水器、整水器は水道水から塩素を除去するが、塩素によって増殖を抑えられていた雑菌が器内のカートリッジや給水管で繁殖するためとみられる。雑菌は即座に健康を害するとはいえないという。

■たばこ製造販売禁止求めて提訴/愛知の主婦らJT相手に

 夫をがんで亡くした愛知県内の主婦ら3人の女性が日本たばこ産業(JT、本社東京)を相手にたばこの製造販売の禁止と計1200万円の損害賠償を求める訴えを17日までに名古屋地裁に起こした。JTによると、同社が製造販売の禁止を求め提訴されたのは初めてという。
 訴えたのは、愛知県新城市の主婦(70)と同県大府市の事務員(48)、名古屋市の教師(60)。
 訴状によると、新城市の主婦は3月にへビースモーカーだった夫を肺がんで亡くしたが、喫煙が死亡の主な原因だったとして慰謝料など1000万円を求めた。他の二人は、周囲の人のたばこの煙(間接喫煙)による健康被害、精神的苦痛の慰謝料としてそれぞれ100万円を求めている。
 訴えの理由として、JTは害毒を十分に知りながらたばこを製造販売しているのは違法だ、としている。また膨大な数の喫煙者や間接喫煙者が害を受けた、と指摘、害毒を消費者に明らかにしないまま、広告などで喫煙を推奨していると主張。「JTの行為は、不特定多数に対する緩慢な傷害あるいは殺人行為だ」などとしている。
 JT側は3人の訴えについて「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。

 我が国でもこのような米国並の訴訟が出てきたことは、明らかに消費者の意識が変わってきているといえるでしょう。(あるいは弁護士が頑張っているのかも知れませんが…。)
 PL法施行を来年に控えて各企業はその対応を怠りなく進める必要があります。

■ソフトの違法コピー、情報提供に謝礼

 ソフトウェアの違法コピーに強硬手段――。米国のソフトベンダー5社が組織する「ビジネスソフトウェアアライアンス(BSA)」(会長ロバート・ハリマン氏)は、12月1日から日本国内でソフトの違法利用情報提供者に対して最大10万円の謝礼金を支払うキャンペーンを開始する。
 謝礼金キャンペーンの内容は、法人と学校を対象に不正コピーされている情報を、一定の条件に沿って提供した者を対象としている。この情報をもとにBSA会員企業が訴訟に持ち込めば1万円、さらに提供者が法廷で証言した場合は10万円が支払われる仕組みだ。ハリマン会長によれば93年12月のオーストラリアを皮切りに台湾、香港、シンガポール、マレーシア、英国で順次、開始しており、「どの国でも大きな反響がある」という。しかし“情報の条件”は違法コピーされているソフトの名称やコピー数、ハードの台数など、基本的には内部の人間しか知り得ないものばかり。英国では「違法だと分かっていながら経営者が命令する」といった内部社員が自社を訴えるケースがほとんどだという。日本のある大手ソフトベンダー社長は「他国と同様の効果が日本で得られるかは疑問」と話す。変わってきたとはいえ生活と職場とが一体化するケースの多い日本社会で「わざわざ自分の会社を訴える人が出てくるのか」という疑問だ。

 確かに日本でなじみにくいことだと思いますが、「ソフトの違法コピーをやめて欲しい」ということに対する妥協策であり、今後はさらに積極的なハードウェアプロテクトが多くなるのかも知れません。

終わりに

 環境問題がクローズアップされていますが、中国製のたばこにはダイオキシンが全く含まれていないという調査結果が出ています。中国のたばこの葉は汚染のない郊外で作られるためと考えられています。
 ちなみにたばこに含まれるダイオキシンやPCBなど毒性有機塩素化合物の量は、中国製に対して英国製では7.6倍、日本製で3.3倍もあるそうです。
 「環境」といえば、電機・電子10社と二つの業界団体による初の環境監査機関である日本環境認証機構(JACO)が11月14日に発足しました。


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