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2004.4 No.124  発行 2004年4月15日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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ずさんな安全管理/森ビル回転扉事故

プラズマテレビに不具合/パイオニアと日立も

送電線の安全策放置/ヘリコプター接触事故で明らかに

日ハム、2004年度からSQF取得へ

エコマークの無断使用増加

薬の服用、ピクトグラムで分かりやすく/適正使用協議会

電気製品、有害6物質排除/電気・化学業界が連携

放射線診断、なぜ多い日本、健康問題は?



3月のニュースから

■ずさんな安全管理/森ビル回転扉事故

 東京六本木ヒルズで26日発生した自動回転扉による死亡事故で、警視庁捜査1課は30日、業務上過失致死容疑で六本木ヒルズを運営する森ビル本社と回転扉販売元の三和タジマと親会社の三和シャッター工業など7カ所を家宅捜索しました。

 この事件を契機に全国で回転扉の使用中止の動きが進んでいますが、横浜ランドマークタワーなどでも過去の事故が明らかになっています。いずれも管理者が事故の報告をしなかったことから回転扉の危険性が表に出ず、建物管理者側の安全意識の低さが背景にあります。ここにも効率・利益優先で、「デメリット情報を隠す」という、お客さんや社会に対する責任を果たさない昨今の企業不祥事や医療過誤などと類似の原因が見て取れます。

 今回の自動回転扉については、センサーでの安全確保という点でも問題があります。電子部品は必ず壊れたり誤作動するため、ドアに人が挟まったときに物理的に危険でない製品が望まれます。小さな子供から老人、ハンディキャップを持った人など、さまざまな人が利用する扉の安全性については特に注意深く設計・安全審査をする必要があります。安全基準を作らず企業任せにしてきた国の責任も大きく、それが過去の事故を埋もれさせていた遠因でもあります。

 さて4月に入り大阪のベンチャー企業、ガイアテックが自動回転扉による事故を防ぐ安全機構を開発したことを発表しました。開発したのは、2枚の金属板を重ねて中心に軸を通した関節状の部品で、圧力を受けると折れ曲がり衝撃を和らげるものです。同部品の技術は4月中旬発売するヤンマーの稲刈り用コンバインの安全装置に採用され、「倒れた稲を巻き込んだときなどに、駆動部分への衝撃を確実に吸収できるため故障が少ない」(ヤンマー)というものです。この部品を回転扉の先端部分に取り付ければ、人間が挟まれた場合でも、大きな事故を回避できることになり、今後ビル用建材メーカー提携して、安全性の高い回転扉の実用化を目指したいとしています。

 過去の多くの事故が公表されていれば、このような安全技術の実用化も進み、今回のような死者が出る事故は起きなかったかもしれません。事故を隠す体質・企業モラルが被害拡大を招くという、今も新聞を賑わしている三菱自動車のケースと同様です。


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プラズマテレビに不具合/パイオニアと日立も

 パイオニアと日立製作所は、11日プラズマテレビに不具合が出たため無償で点検・修理するとそれぞれ発表しました。パイオニアは7機種で計51,700台、日立は2機種で計4,430台が対象とのことです。日立は不具合機種のパネルをパイオニアから調達していたもので、同じ原因です。またソニーと日本ビクターも同様の不具合を発表していたことから、最近人気のプラズマテレビの品質が気になるところです。

 両社製品とも視聴中に突然映像が映らなくなる恐れがあるといい、原因はディスプレイ部分の電源回路基板が発熱により膨張し、はんだにひびが入ることだとしています。軽い発煙を起こす恐れがあるものの、発火など安全上の問題はない、としています。この回路基板は国内の大手メーカー1社から調達していたといいます。パイオニアは2001年9月から今年1月に国内で販売した43インチと50インチの計7機種が対象です。

 日本ビクターでは、不具合の原因がPDPモジュールの電源回路に使われているハイブリッドICでのハンダ・クラックの発生にあることを明らかにしています。電気製品も部品の共用化が進んでいるようで、大量に販売する人気商品の部品は生産能力の高い企業に集中するため、不良部品により多くの製品がメーカーを問わず回収の対象となってしまいます。自動車産業によるリコール対象車種・台数が多くなる傾向は、他の産業でも同じようです。

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送電線の安全策放置/ヘリコプター接触事故で明らかに

 長野県の木曽川河川敷で7日、信越放送がチャーターした中日本航空のヘリコプターが送電線に接触し墜落、4人が死亡した事故がありました。事故現場は国道や中央西線が走る近くの河川敷で、約160メートルの高さに送電線が横切っている場所です。

 航空法では人家密集地ではもっとも高い障害物から300メートルの距離、人や家屋のない地域や広い水面では150メートルと定めていて、墜落したヘリコプターは同法にしたがって150メートルで航行、山がせまった地形で送電線の存在が確認されなかったと考えられます。また現場の鉄塔2基は35メートルと33メートルと低く、事故後現場上空を飛行した中日新聞本社のヘリ操縦士によると、送電線は「注意深く探して、やっと見つけることができた」ほど周囲に同化していたといいます。そして現場の鉄塔は山の中腹にあり、木々に半分隠れるような状態で見つけるのが困難だったとも言っています。高くて目立つ鉄塔があれば、その鉄塔間に送電線があることを予測できますが、今回の事故では送電線に標識がないことが直接の原因のようです。

 航空法によると地上や水面から高さ60メートル以上にある送電線の場合、直径0.5メートル以上の赤や白、黄色の球状標示物(昼間障害標識)を45メートル間隔で設置するとともに、送電線には、夜間に赤色ランプなどの障害灯を点灯するよう義務付けています。また高さ150メートル以上の構造物には、24時間点灯のせん光灯を付けるという規定があります。今回の事故現場の送電線に球状標示物がなかったのは違法ですが、送電線の設置者である中部電力は、両側の山の斜面にある鉄塔の高さが低く、鉄塔の高さが規定の60メートルに満たないことを理由に球状標示物を設置してこなかったとしています。平地では鉄塔よりも送電線が高くならないので、鉄塔の高さだけを判断基準としているようです。

 航空機が衝突する危険は鉄塔だけでなく電線も含めることは常識だと思いますが、中部電力ではコスト負担を軽減するために法律を都合良く解釈、鉄塔の高さだけに着目していたようにも思われます。しかし国土交通省航空視覚援助義務室葉、事故現場の送電線について「こういう高さ(150メートルを越える)のものがあることを初めて知った」と説明してるというのですから困ってしまいます。谷をまたぐ送電線は全国に数多くあるのですが、「送電線そのものの高さと、鉄塔の高さが極端に異なるケースは想定してなかった」という同省はずいぶんお粗末なものです。

 ところで法律の文言に「該当するかどうか」にだけ企業の関心がいき、実際の安全面の配慮を欠くことがあります。法律は、精神・意図する目的・回避すべき危険性を明示、それを守る義務をうたい、スペックは絶対条件ではなく一つの指針、のはずですが…。

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日ハム、2004年度からSQF取得へ

 日本ハムは食品の安全性と品質を考慮したシステム作りを進め、グループの鶏と豚の生産施設で、食品の安全と品質を保証する国際規格「SQF」を取得することにしました。SQFはHACCPとISO9000の両方の役割を合わせ持つことから、食品業界の品質マネジメントには最適だと考えられています。

 同社では2004年度から農場単位から取得を進め、2005年度までに全農場に広げる考えです。現在国内では、鶏・豚の生産施設の同規格取得は初めてで、肉の安全に関する関心が高まる中での競争力を強めたいとしています。

 子会社で鶏の生産を手がける日本ホワイトファームと、豚を生産する日本スワイン農場が第1次生産者を対象としたSQF1000を取得する方針で、SQF1000のほか、加工業者などを対象とした「SQF2000」もあり、鶏肉処理も手掛けるホワイトファームはこの取得も目指すとしています。同規格は日本では約10社、世界では約3,800社が取得しているものです。

 日本ハムは2002年の牛肉偽装事件でかなりのダメージを受けましたが、消費者のための品質保証体制としてSQFを導入するのであれば、とても歓迎できます。

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エコマークの無断使用増加

 環境保全に役立つ商品を認定する「エコマーク」制度を企業が無断使用するケースが多くあり、同制度を運営する財団法人「日本環境協会」は、実名公表や公正取引委員会への通報などの不正防止対策に乗り出しました。

 エコマークは、環境に負荷が少ないと認定された商品が付けられるマークで、ペットボトルなどの再生原料などを利用したものなど増加傾向にあります。制度は1989年創設で、昨年12月の認定は文房具や身の回り品など5,476件に上ったといいます。しかし最近ではエコマークを不正に使用して、あたかも「環境に優しい商品」という偽ブランド商品が増え続けているようです。2002年度には、契約を結んでいない企業による無断使用が41件、今年度は1月末までに73件と倍増しています。それ以外にも契約企業が認定を受けていない商品に誤ってマークをつけたケースもあり、2002年度は20件あったといいます。

 環境に優しい、安全、安心などの言葉につられて商品を選択することがありますが、根拠のよりどころとなるエコマークの無断使用というのは困りものです。「何がエコなのか」を確認した上で購入したいものです。
さてエコマーク商品には台所用の三角コーナー用水切りごみ袋もありますが、「極薄ポリエチレン製で流し台の小さなゴミを捕集することにより、生活排水の浄化に役立ちます」といった商品にエコマークが表示されています。三角コーナー用水切りごみ袋の基本機能である小さなごみを流さない、という当たり前のことでもエコマークが取得できるようです。現在標準的な商品と比較して、大幅にエコ度が高いかどうか、の審査が必要な気がします。企業が努力した、本当のエコ商品が多くなればいいのですが…

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薬の服用、ピクトグラムで分かりやすく/適正使用協議会

 注意書が並ぶ薬の使用方法を分かりやすくするために、製薬会社31社などで作る「くすりの適正使用協議会」は絵文字28種類を作成しました。赤の丸枠と斜線の禁止事項(6点)、黄色のひし形の注意事項(2点)と黒の四角で囲まれた一般説明事項(20点)の3種類に分類されています。

 「牛乳と一緒に飲んではいけません」など、一部のデザインの完成度が低いのが気になりますが、全てのピクトグラムに文言が併記されているので、「分かりづらい」ということはなさそうです。注意事項はもう少しありそうな気がしますが、文字ばかり並ぶ説明書では読みたくなくなるので、今後多方面で利用してもらいたいものです。病院などで患者に説明する際にも活用できそうです。

 同協議会によると、米国で使われているピクトグラムを日本の実情に合わせて37種作り、インターネットで調査して80%以上の人が理解できた28種類に絞り込んだといいます。また、薬局が出す薬の説明書や小学校の総合学習などの教材用としても活用してもらうため、協議会のホームページ(http://www.rad-ar.or.jp/pict/index.html)で公開してダウンロードできるようになっています。

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電気製品、有害6物質排除/電気・化学業界が連携

 ソニー、キヤノンなど電気・精密機器メーカー約50社からなる「グリーン調達調査共通化協議会」が有害物質を取り除くための統一ガイドラインを提案し、これを化学業界の約270社・団体が加盟する日本化学工業協会が受け入れたことから今後国内外で販売する製品から鉛、水銀など有害な金属・化学物質6種類を排除する仕組みができました。欧州連合が電気製品を対象に実施する欧州有害化学物質規制に合わせて、 2006年7月までに対応するとしています。

 欧州有害化学物質規制は、使用済みの電気製品を埋め立て処理しても土壌や地下水が汚染されないようにするための規制で、2006年7月以降メーカー側は指定された6種類の物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の使用全廃を求めています。日本ではこれらの物質の使用禁止規制はありませんが、中国も同様の規制を検討中のことから世界的に対応せざるを得なくなった背景があるようです。

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放射線診断、なぜ多い日本、健康問題は?

 日本のがん患者の3.2%は診断のために浴びたエックス線が原因、とする研究が英国の著名な医学誌に発表されました。調査した15カ国の中でもっとも高い数字ですが、背景としてCTなど放射線診断による被爆が多いことが指摘されているといいます。驚くことに、日本のCT設置台数はヨーロッパ諸国全てを合わせた数より多いといわれ、国連科学委員会報告(2000年)によると、日本のCT設置台数は人口100万人あたり64台あり、これは英国(6台)の10倍以上で、人口1,000人あたりのエックス線検査件数も1,477件でドイツの1,254件、米国の962件を上回り、他のヨーロッパ諸国の2、3倍に達するようです。

 日本でCT検査の多い理由として、CTを保有していなければステータスが低く見られるとの風潮、検査をすれば診療報酬がとれる保険制度、病院間の連携が不十分のため重複検査が多い、と指摘があります。東京慈恵会医大の福田国彦教授(放射線医学)は「米国では1回のCT検査費用が10万円程度と高く、中核病院だけに置かれ、一部の金持ちしか受けられない。日本では患者負担が3,000円から4,000円で、この違いが大きい」と話しています。また順天堂医院放射線部の伊津見栄重・技術長は「エックス線検査を、資格外の看護師や事務職員などに行わせる違法行為が依然行われていることが、必要以上の被曝線量を患者さんに与えている」と指摘しています。

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終わりに

 自動車の通行のじゃま、ということから都市部の路面電車が衰退を続ける中、大阪堺市が次世代型路面電車のLRT導入を決め、2014年の開通を目指しています。また大阪市と堺市を南北に結ぶ阪堺線を経営する阪堺電気軌道が昨年3月、堺市内の区間について同市へ廃止したいとの意向を伝えていましたが、同市は廃止をくい止めるため補助金を出したり、市民に呼びかけて「堺のチンチン電車を愛する会」を発足させたりしています。将来はLRT新線を整備し、両線を乗り入れる構想を持っています。

 都市型交通では、車は渋滞のため機能せず、バスは環境面での問題が多いことから、 LRTがもっとも適していると言われています。ヨーロッパでは早い段階から都市型交通として導入され市民生活に浸透していますが、我が国では車優先の未だ途上国の様相です。堺市のように、新しくLRT路線を整備する自治体がもっと増えて欲しいものです。

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