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2004.10 No.130  発行 2004年10月13日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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9月のニュースから

■部分溶接で配管を修理、本社へ連絡せず/関電大飯原発1号機

 関西電力美浜原発3号機の蒸気噴出事故を受けて点検中の大飯原発1号機の2次系配管で、薄くなった配管を現場の判断で溶接補修し、肉厚を増してたことが29日福井県原子力安全委員会で関電が公表したことから分かりました。しかもこの作業は関電本社には伝わってなく、同社のずさんな管理体制が改めて浮き彫りになりました。

  関電によると、問題の配管は今年6月の定期検査で減肉が進んでいたことが判明、7月下旬までに2カ所で配管と同種の材料(炭素鋼)を外側から溶接し、配管の厚みを1.3ミリから3.6ミリ増やしていたといいます。ただしこの補修は幅2センチ、長さ14センチの部分溶接のため、安全性が高まることはなく、作業に意味はないといいます。

  関電では「現場の判断でしたこと。(配管が薄くなったため)念のためにしたときいている。申し訳ない」と話していますが、現場の責任にすり替えるような、管理システムの落ち度についての反省がみえません。

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旅客機用エンジン試験データ改ざん/石川島播磨、8年間

 石川島播磨重工業が旅客機用エンジンの試験運転で得られた数値を改ざんし、エンジンメーカーに虚偽報告していたことが7日分かりました。試験運転設備が原因と推定される不具合な数値を正常値に改ざん、エンジン出力が規定よりも高めに出たものを下方修正したもので、安全に関わるトラブルは起きていないということです。しかし約8年間にもわたり改ざんした数値を使ってエンジン修理業務を行っていたことから、国土交通省東京航空局は、行政指導の中では最も重い業務改善勧告を出しました。

 三菱自動車の欠陥隠し、三菱重工業のずさんなミサイル試験など不祥事が続いていますが、ここでまた大手メーカーの不祥事が明るみに出てしまいました。

 今回の不正は今年3月、元従業員からの「不正行為がある」との内部告発で発覚、告発を受けた東京航空局が調査を開始したものです。4月にはエンジン出荷の自粛を求め、6月に立ち入り検査をしたといいます。

 告発者がいたことから、おそらく現場の一部従業員は「やってはいけないこと」の認識があったものの、封建的な体制を引きずる職場では何も言えない雰囲気だったのでしょう。大企業ほどこのような職場が多く残っているように思えますが、一般消費者用製品などとは違い、技術の粋を集めた航空機での不正が起きるということは、同社の製造物・商品に対する社会的責任感覚の無さを象徴しているようです。

 多くの大企業の不祥事がニュースを賑わしているのに、あいかわらず対岸の火事を見るような時代に遅れた企業のなんと多いことでしょう。

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国内初のリステリア菌食中毒/2001年北海道での確認

 北海道で2001年3月に発生したナチュラルチーズによる食中毒は、リステリア菌による集団感染だったことが、13日までの厚生労働省研究班の調査で分かりました。この菌による集団食中毒は欧米では毎年のように発生、死者も出ていますが、食品からの感染が特定されたのは国内初といいます。

 研究班はチーズ販売先の追跡調査で、発熱などの症状を訴えた人が多く出ていたことを確認、約20人からリステリア菌を検出しました。その後DNA解析などからチーズと患者から検出された菌が遺伝学的にほぼ同一と特定され、国内初のリステリア菌集団感染と結論付けたものです。

 当時、道によるモニタリング調査でもチーズからリステリア菌を検出、さらにこれを食べて発熱などを起こした2人からも菌を検出していました。しかし、他の食中毒菌を調べなかったため、リステリア菌との原因特定には至りませんでした。
 
 我が国では今回の集団感染が初めてのケースとなりましたが、アメリカでは、毎年約2500人が重症のリステリア症となり、そのうち、約500人が死亡していると推定されています。過去にはロサンゼルスで1985年、メキシカンスタイルチーズによるリステリア症の大発生があり、142人の患者が発症し46人が死亡しています。また、カナダ南東部のノバスコシアでは、キャベツサラダによるリステリア症の大発生が1981年にあり、41人の患者が発症し18人が死亡しました。いずれも死亡した患者の80%以上がが周産期(出産の前後)の患者だといわれています。

 今まであまりなじみのないリステリア菌の食中毒ですが、海外からの生で食べる食材が増加していることもあり、私たちの身近に汚染された食材があるかもしれません。免疫力の低下している人は注意が必要でしょう。

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ハムスターにかまれ死亡/アレルギー症状で、ぜん息誘発

 埼玉県に住む40代の男性が今年2月、飼っていたハムスターに指をかまれた直後に意識不明となり、搬送先の病院で死亡していたことが27日までに分かりました。傷口からハムスターの唾液が体内に入り、急激なアレルギー反応である「アナフィラキシー」が発生、持病のぜん息を誘発したとみられています。


 ハムスターなどペットのげっ歯類にかまれたのが原因のアナフィラキシーは、1995年以降、広島市など全国で17人報告され、16人は大事に到らなかったものの、1人は植物状態となっています。今回のようにかまれた直後の死亡例は初めてといいます。

 小さなペットは飼いやすさから人気があり、ハムスターもポピュラーなものですが、ささいな傷から死にいたることで、アレルギー体質の人は要注意でしょう。診察した清田和也さいたま赤十字病院救命救急センター長は、「かまれる危険性の高い獣医師も気を付けた方がいい」と注意を呼び掛けています。

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鳥インフルエンザその後/ベトナムで拡大、タイでは犬に感染

 ベトナム保険省は7日、首都ハノイ市で生後14カ月の幼児が鳥インフルエンザの感染によって死亡したことを確認しました。ベトナムでは今年3月30日に鳥インフルエンザの終息を宣言、8月に3人の鳥インフルエンザ感染による死亡者発生後、調査団を組識、ニワトリなどの家禽類への感染は着実に減少している、との調査報告をこのほどまとめたばかりでしたが、残念なことにまた死亡者が出てしまいました。さて同じ地域のタイですが、10月に入ってから同国初の犬の感染例が報告され、ペットを介しての流行が拡大する懸念も出てきました。

 スペイン風邪のウイルスは、鳥インフルエンザ由来で人に感染したことが分かっていることから、今後、自然界のウイルスが変異して再び人から人へ大流行する危険性もあります。河岡教授は「スペイン風邪のHAの構造をさらに詳細に解析し、強い毒性を持っていた理由を解明し、予防策に役立てたい」と話しています。

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混合診療解禁へ検討/厚労相、未承認の新薬想定

 尾辻秀久厚生労働相は28日の記者会見で、公的医療保険の対象となる診療と保険外の診療とを併用する「混合診療」について、「個人的には大きく進めることは賛成。もう少し進める方向で検討するよう指示した」と述べました。

 混合診療は政府の規制改革・民間開放推進会議が8月にまとめた2004年度の中間取りまとめで解禁を明記、小泉首相も年内似解禁する方向で結論を出すよう指示しています。しかし厚労省や日本医師会が慎重姿勢を続けているものです。

 尾辻厚労相は混合診療を認める対象について「新薬などはいいと思っている」と説明、専門医や欧米の病院で普及し効果は認められているが、日本ではまだ保険対象として承認されていない薬を想定しています。

 ところで混合診療解禁に対し日本医師会側では、これを認めると1カプセル10万円の高価な薬などが氾濫し、金持ちだけが有利な状況を作り、低所得者との公平さが損なわれるなどと反論しています。しかし極端な憶測だけの議論が先行しているようで、少々うさんくさい感じがします。お金がない人は現在でも自由診療が受けられないし、混合診療が解禁されてもそれは変わらないはずです。ただ、実際に今困っている患者は、覚悟して“なけなし”のお金で自由診療用の薬を使ったものの、過去の保険医療費が自由診療と同等の扱いになるためにさらなる経済的負担にあえいでいる、ということなのです。

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がん放射線治療の専門職/過剰照射事故相次ぎ、5団体で新設

 がんの放射線治療で過剰照射事故が相次いでいることから、日本医学放射線学会、放射線技師会など5団体は24日までに、安全管理に当たる「放射線治療品質管理士」の新設を決めました。装置の保守点検や患者の照射回数管理など、診療放射線技師が兼務でこなしていた仕事を担う専門職です。10月中に制度概要をまとめて年内にも最終決定、保険診療上の専門職として資格認定されるよう厚生労働省と折衝に入りたいとしています。

 過剰照射は装置への入力ミスや照射量誤認を原因に、山形や東京、和歌山など多くの病院で発生しています。昨年から今年にかけ、数百人の被害と誤照射が理由と疑われる死亡例が明らかになった国立病院機構弘前病院(青森県)の場合は、医師と放射線技師の線量評価法の違いが原因でした。
このため

 装置の日常的な点検、患者ごとに異なる照射線量や範囲、回数の管理、医師と技師の意志疎通や連絡調整、などを専門に担当する品質管理士を設けることにしたものです。

 保守点検はこれまで、診療放射線技師が夜間や休日出勤で行うことが多く、初期値の入力などをメーカー任せにしている病院もあるといいます。

 さて、 (社)日本放射線技師会のホームページでは9月、熊谷和正会長による興味深いメッセージを掲載しましたのでご覧ください。

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喫煙者天国日本をどう見る/特派員の視点

 東京都千代田区が全国で初めて罰則付で路上喫煙を禁じてから、10月で丸2年になります。健康増進法の施行もありましたが、まだまだ禁煙席のないレストランは多く、歩きたばこの人も多いのが現状です。そんな状況下、特派員の見た日本の印象はどうなのでしょう。

 イギリス人特派員の場合ですが、路上喫煙を禁じたニュースを聞いた英国の同僚達は、「外でもたばこを吸っちゃいけないのか」とビックリ、屋外でもダメなくらいだから、屋内はもとより禁煙だろうと誤解したといいます。また歩きながらたばこを吸う日本人の多さについて、「どうしてか理解できない。味わえないし、リラックスもできないだろう。英国人はあまり歩きながらは吸わない。たばこはとても高く、1箱が1000円位するので、吸うなら楽しんで吸おうとする」といっています。また1990年代、禁煙席を設けるレストランやパブが増えたとき、「禁煙席など作ったら客が来ない」という反対意見が多かったといいます。ところが結果は逆で「パブには行きたいけれど、あのたばこの煙がいやだ」という人達が来るようになったというのです。

 我が国の飲食店や観光業者の社会的責任レベルは低く、禁煙席がないレストランで「禁煙席はありますか」と訪ねると、いぶかしがられたり、変な目で見られることがあります。お客さんに対し「そんなことを言うのなら他の店へ行ってくれ」とでも言いたげなのです。ラーメン屋などならともかく、イタリアンやフレンチレストランで、こうなのですから困ったものです。ちょっとおしゃれなお店で値段は高め、見た目重視の女性好みの盛りつけ、でも味はいまいち、ということが多いものです。きっと顧客満足度、という言葉も知らない店のオーナーも多いのでしょう。

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