Web版

2005.2 No.134  発行 2005年2月14日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

[ ASP トップ ] [ ASPニュース2005 ]

ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

定期購読について




1月のニュースから

■三菱ふそう、認証前生産で不具合/昨年9月の新型車

 三菱ふそうトラック・バスが、販売認証を得ていない新型の小型トラックを昨年9〜11月末に2800台近く製造していたことが分かりました。

 認証前の製造が明らかになったのは、小型トラック「キャンター」の新型で、一昨年、国が導入し、昨秋には不適応車の販売規制が始まった排ガス規制に対応するためにエンジンを改良する必要から、同社は販売の前提となる「型式認証」を得るために昨年2月に国交省に申請していたものです。

 認証は、同3月に同社の大型車を巡る欠陥車問題が発覚して遅れていたのですが、同社は9月に入り「月末には認証される」と判断して製造を始めたといいます。このようなことは、認証を受ける製品でしばしばあることですが、問題はこの後に販売済みのキャンター4台のクラッチハウジングに亀裂が見つかったことから始まります。大型車では破断して死亡事故につながった部品でもあったのですが、原因の特定ができない段階でキャンター製造の続行したのです。

 キャンターでも同様な亀裂の発生が起こり得る可能性があることから、国交省は同月末、部品の安全性を示す資料の提出に加え、一連の欠陥隠しの原因究明と再発防止策をとりまとめなければ、「認証はできない」と通告しました。しかし、同社は同省の通告を無視、生産計画を変更せずに11月末までに2753台を製造し続けたのです。

 12月に入って亀裂の原因が「整備不良」と判明したため、報告を受けた同省は1月28日に認証を出すことにしましたが、自動車交通局審査課は「認証を得る前に新型車を製造してはいけないという法律上の規定はないが、車の安全性に大きな不安や疑問が生じている時期に、認証前の新型車の生産を急ぐ姿勢は理解できない」と不満を述べています。

 三菱ふそうの広報部では、「主力車種なので、認証を得られればすぐに販売できる態勢を整えておきたかった。国交省から設計、製造上の改修を指示されれば対応するつもりで、違法性はなかったと思うが、誤解を招いたなら遺憾に思う」と話していますが、誤解を与えることが分からないはずがなく、コスト優先の危うい企業体質のままのようです。
目次へ


3割がミス発見できず/病院のオーダリングシステム

 医師が診察室でパソコン入力した投薬の指示が、調剤部門などに伝わるコンピューターシステム(オーダリングシステム)を導入している病院が多くなりました。しかし医師が併用禁止の2種類の抗がん剤を投与するなど、誤った情報を入力しても、システムの運用上から誤情報を発見できない病院が約3割に上ることが分かりました。

 調査は日本医療機能評価機構の認定病院で作る「患者安全推進協議会」が昨秋、同システムを導入した病院295施設を対象に実施、誤った用量、用法を入力した場合、システムがアラーム音や警告表示を発するかどうかを複数の薬剤で調べました。

 血液障害の恐れがあるため併用禁止とされる抗がん剤「TS-1錠」と「フルトシン錠」の両薬剤を使用する92施設のうち、併用の指示を入力した場合に「アラームがかかる」のは、66施設(71.7%)にとどまり、「まったくかからない」が26施設(28.3%)と約3割にも上りました。

 一方、過剰投与による事故が起きている糖尿病治療薬「ベイスン錠」を使う271施設のうち、誤った用量と用法を入力した場合に、用量と用法ともにアラームがかかったのはわずか24施設(8.9%)で、「用量はかかるが用法はかからない」が178施設(65.7%)に上り、いずれもかからないというのが四分の一を占めました。

 また患者が別の病院で処方された持参薬の情報を入力できるシステムがあるのは63施設(21.3%)しかないことも分かりました。しかもこれらのうち、新たに処方する薬と持参薬の飲み合わせが悪い場合にアラームが鳴るのは、たったの2施設だけというお粗末さです。

 まずシステムの完成度が低いということがありますが、現場でアラームが簡単に解除できることも問題です。本来は権限を持った者だけがアラームを解除できるルールとし、アラーム解除による事故発生時の責任の所在が明確になっていなければなりません。

 さらに「アラーム音がうるさい」と感じる操作者には、「分かり切ったこと」という意識があることから、まず「ポン」という注意音、そして次の段階の警告ブザー音、最後の「あってはならない状態」では、入力確定を不能にするなど、段階的かつ人の特性に合わせた柔軟なシステムにすべきでしょう。

目次へ



フランスでヤギがBSE感染/欧州委が確認

 欧州連合(EU)は28日、2002年に仏で処分されたヤギがBSEに感染していたと発表しました。感染していたヤギは2000年生まれで、2002年に仏当局が発見したとのことです。牛以外でBSEの自然感染が発見されたのは初めてだといいますが、EUの欧州委員会は、BSEに対して長い間予防措置を講じており、消費者に対する危険は少ないとしています。

 欧州委の「消費者に対する危険は少ない」という根拠は、BSEの主原因とされる肉骨粉を使った飼料を2001年以降の使用を禁止しているため、「牛以外でのBSE発生の確率は非常に低く、乳製品も含めヤギの危険はゼロに近い」ということのようです。

 ヤギやヒツジにBSEと似た症状が起こる病気にスクレイピーがありますが、報道官は「科学的な検査で今回のケースはBSEと確認された」と話しています。ただ2年以上前の情報が今出てきたことに、疑問を感じる人は多いと思います。ヤギ肉を日常的に食べる中近東諸国・韓国などでは、気になるニュースでしょう。

目次へ


イノシシにE型肝炎ウイルス/愛知・奥三河での確認

 愛知県奥三河地方のイノシシから、人に感染するおそれのあるE型肝炎ウイルス(HEV)の遺伝子が相次いで見つかっていることが22日明らかになりました。

 調査は2003年10月から2004年4月、愛知県、長野県、和歌山県で、大阪府堺市衛生研究所と合同で初めて実施したもので、野生のイノシシ70頭、ニホンカモシカ20頭、シカ14頭を捕獲し、肝臓やふん、血液を検査した結果、愛知県信楽地区の鳳来町で捕獲されたイノシシ3頭と、和歌山県の1頭からHEVが検出されています。

 HEVは人と獣の双方に感染するため、愛知県衛生研究所は感染の広がりを調べるために信楽地区などでの調査を今冬も継続、その結果HEVに感染したイノシシが新たに10頭近く見つかり、感染拡大の可能性があることが分かりました。

 E型肝炎では2002年に北海道と東北で渡航経験の無い3人が国内で初めて死亡、昨年8月には北海道の焼き肉店で豚レバーを食べた1人が死亡するなど被害が広がっています。

目次へ


航空機騒音の評価法見直し、環境省方針

 環境省は7日、航空機騒音の評価方法を空港周辺住民の実感に近い方式に見直す方針を決めました。2005年度に中央環境審議会騒音振動部会に諮問し、同省告示を改正することになります。

 航空機騒音の評価をめぐっては、成田空港で2本目となる暫定平行滑走路が2002年に供用された後、騒音の測定地点の一部で滑走路1本だった時より離着陸回数は増えているのに騒音評価値が低くなる「逆転現象」が発生、住民の感じている騒音と食い違いがあるとして成田市など地元自治体が同省に見直しを求めていました。

 評価値は、飛行機ごとの最大騒音や機数のデータに、夜間など時間帯による影響の違いを勘案して算出するもので、現状では国際民間航空機関(ICAO)が提唱した評価方法を簡略化した方法を採用しているため、夜間に低騒音の飛行機が発着する場合、そのデータを過大に評価し全体の評価値が下がりすぎる傾向があるといいます。

 現在の評価方法は、多数の飛行機による連続騒音の尺度として1973年に国が定めた「うるささ指数」と呼ばれ、国の環境基準の単位でもあり、住宅の防音対策や移転補償の基準にもなっているもので、ICAOの手法を採用することになると、更なる防音対策が必要なところも出てくるでしょう。

目次へ


患者参加型医療事故調査、初の示談/東京女子医大

 東京女子医大病院で1999年12月に心臓外科手術を受けた乳児2人が術後に死亡したり、脳障害を起こす事故があり、「医療ミス」を主張していた家族らと同病院が示談したことが7日、分かりました。同病院が全国で初めて設置した、患者側と共同で事故原因を究明する第三者機関を活用した初めてのケースだといいます。
同病院では医療事故が頻発したことを重視、昨年、病院側だけでなく、患者家族や弁護士が加わった第三者機関「医療事故調査検討委員会」を設置、同委に事実関係を報告するための「内部調査検討委員会」で原因究明に取り組んできました。

 両ケースとも執刀医らによる診療録の記録が不十分で、内部調査でも事故原因は特定できませんでした。しかし病院側は昨年末、家族側に示談金を提示したところ、家族は
 1. 事故原因の究明を続ける
 2. 再発防止に取り組む
 などを条件に示談に応じて解決に到ったものです。

 同病院の取り組みでは、内部調査の限界があるものの、「委員会を傍聴する中で調査に取り組む病院側の誠意が伝わった」と言う被害者家族の言葉からも、患者・遺族の立場を重視する具体的な形として評価できます。

目次へ


■新幹線禁煙車の煙害防止策/喫煙車デッキから灰皿撤去、それでも不足

 新幹線の喫煙車から隣の禁煙車にたばこの煙が流れ込む問題で、JR東海は、東海道新幹線の禁煙車と喫煙車との間のデッキでの喫煙を禁止するとともに、デッキに設置していた灰皿の撤去を始めました。
新幹線(16両編成)の自由席、普通指定席の喫煙車は「のぞみ」、「ひかり」、「こだま」にかかわらず3・4号車と15・16号車で、隣となる禁煙車の2、5号車、14号車との間にあるデッキには灰皿があり、喫煙が可能でした。このため、自動扉が開くたびに禁煙車に煙が流入、「禁煙席なのに、たばこのにおいがする」との苦情が出ていました。
それでも喫煙車輌から乗客が移動してくるときにはデッキを介して禁煙車両にも煙が来るので、まだまだ対策は不十分です。このため喫煙車から禁煙車に流れ込むたばこの煙害について、東京大大学院の研究生らの調査発表がありました。それによると喫煙車が満席の状態では、禁煙車内のたばこの浮遊粉じん濃度が国の基準の約3倍になるといいます。
ところでJR北海道では、2、3年後をめどに一部の列車をのぞき北海道内の特急列車を全て禁煙にする、という取り組みを昨年10月に発表しています。北海道は全国でも最も喫煙率が高いと言われる地域ですが、同社が約2100人を対象にモニター調査を実施したところ、デッキの喫煙コーナーの廃止や全車両禁煙など禁煙拡大を要望する意見が大勢を占め、JR東日本に接続する本州方面に向かう列車を除き全面禁煙を進めることにしたものです。一部の喫煙者に遠慮することのない同社の取り組みは評価できます。大事なのは大多数のお客さんの健康であるべきです。
さて2月に入り、新幹線車内でのたばこの煙による粉じん濃度が法定基準を超え、受動喫煙防止を定めた健康増進法25条に違反していることが判明したとして、日本循環器学会、日本小児科学会など国内9学会合同で作る禁煙指導ガイドライン委員会は2月10日、JR各社に車両、駅ホームの全面禁煙を求める要望書を提出することにしました。
同委員会が新幹線車両内の粉じん濃度を独自に調査したところ、新幹線の喫煙車両に隣接する禁煙車両では、粉じん濃度がピーク時で1立法メートル当たり0.30ミリグラム以上になるなど高い値となり、「平均で0.18ミリグラム以下」という基準を超えることが多かったといいます。
またJRが一部の新幹線で禁煙車両に隣接するデッキを禁煙にする措置をはじめたことに対しても、同委員会委員長の藤原久義・岐阜大学大学院医学研究科教授は、「状況は改善されていない」とし、ホームの喫煙コーナーも「非喫煙者が通行するホーム中央部に設置され、禁煙車両の乗車を待つ乗客が受動喫煙を受けている」と、もっともな指摘を行っています。JRの早急な対策が求められます。

目次へ


[ ASP トップ ] [ ASPニュース2005 ]

定期購読について