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2005.4 No.136  発行 2005年4月15日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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3月のニュースから

■改修車・新車で火災も半年間公表せず/三菱ふそう

 三菱ふそうトラック・バスは25日、昨年9月にリコールを届けた大型トラックのサスペンション系統の欠陥に絡み、改修した車やリコール外の新車でも火災などが続発しているとして、対象を新車にも広げ約8000台を緊急点検すると発表しました。

  リコール届け後、火災が7件起きたのに、国土交通省には一部しか報告していなかったことから、同省では三菱ふそうに早急な原因調査を指示しました。

 三菱ふそうによるとこの欠陥は、ナットの締めつけが緩いため振動で脱落、車軸がずれてタイヤが車体と接触し加熱、発火するとしています。

 同社は「ナットの締めつけにばらつきがあったことが原因だったが、当初はこうした原因が分からず、技術的な解明も済んでいないのに報告はできないと思った。不具合が多発した1月ぐらいの段階で公表しユーザーに注意をお願いすべきだった」と話しています。

 ナットの締めつけに、ばらつきがあるような方法で車を作っているとしたら驚きです。多くの工業製品ではナットやねじなどの締めつけトルクが規定され、指定工具で作業が行われています。ばらつきの無い製品を作るための製造現場の作業標準というものが同社には無いのでしょうか。

 また、リコールに伴う改修が済んだ車で今年3月9日、静岡市内で火災事故が発生、リコール後に生産ラインを手直しして製造した新車でも3月14日に兵庫県で火災が起きており、25件中11件が欠陥対策が不十分だったため起きたトラブルだといいます。部品の交換など対策済みの車では本来ありえないトラブルが続発したのに、三菱ふそうは公表せず、国交省にも調査指示のあった兵庫の火災など一部しか報告してなかったことになります。


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ミス多発、日航を査察/国交省

 日航でトラブルやミスが相次いだため、国土交通省の岩崎貞二航空局長らは28日、羽田空港の日航運航本部などを査察しました。局長自身による査察は異例で、同局長は「機械的なトラブルもあるがヒューマンファクターが多い。人同士のやりとりの中でチェックすることが重要」と述べました。

 人的要因による事故をいかに低減できるか、どの企業も抱えている問題ですが、多くの乗員の死亡事故に直結する公共交通である航空会社、鉄道会社などにおけるとらえかたは特に強化したシステムでなければなりません。異常なほどのトラブル多発状況から、どうやら日航は収益優先・効率優先ばかりに目がいっているのかもしれません。

 日航機の客室乗務員が3月、緊急脱出用スライドのスイッチ切り替えを忘れたまま運航した問題で、日航インターナショナルが2月に変更し「複雑になった」と指摘があった機長への報告など客室乗務員の手順を、28日からもとに戻したことが分かりました。日航は「手順を再検討した結果、ミス防止には元に戻すのが適切と判断した」としています。

 ということは、2月に変更した手順は適切な検討が行われなかったのか、そもそも手順を変更すべき目的が達成できなかったことについて今まで通りで良い、というのはずいぶん安易な決定のようでもあります。その場、その場を取りつくろうとする体質があるとすると、日航の不祥事はいつまでも続くことになりそうです。

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住宅用に不良品、接着面はがれてすき間/中国製集成材

 国土交通省と農水省は4日、中国から輸入販売された一戸建て住宅の柱に使う「構造用集成材」65本に、接着面がはがれてすき間ができる不良品が見つかったと発表しました。輸入した約8万3000本のうち7万本が流通しており、700から900戸の住宅が建築できる量だといいます。

 この問題は昨年11月、住宅建築中の名古屋市内の建築主が「構造柱89本のうち65本の接着面がはがれている」と農水省に通報して判明したといいます。したがってすでに建築が終わり確認できない住宅も多いのではないでしょうか。

 国交省への報告が遅れたことについて農水省は「原因は製造段階か流通段階かを調べていて報告が3月3日になった。特に問題はないと思っている」と、信じられないような無責任な発言をしています。農水省のレベルが分かります。

 また木造住宅の耐震性など強度に影響するのは必至で、いまだ原因が特定できていないというのに、農水省の報告が遅れた理由にもなっていません。

 住宅用材木などの材料・素材は農水省の管轄のようですが、このような材料は目的とする住宅を管轄する国交省の厳格な管理下に置き、農水省の担当者の判断が関与しないシステムとし、このような問題を無くしてもらいたいものです。まったく安全意識の薄い農水省には困ったものです。

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カルビー家宅捜索/子会社、未検査種芋を農家に供給

 「カルビー」の子会社「カルビーポテト」が防疫検査を受けていないジャガイモの種芋を農家に栽培させていた疑いがあるとして、植物防疫法違反の疑いで北海道警は17日、カルビー本社など数カ所を家宅捜索しました。農水省の調べでは、カルビーポテトは1997年ごろから、種芋を未検査で契約嚢果に供給していた疑いがあり、同省は公訴時効にかからない2002年から2004年までの3年間の約5000トンについて同法違反の罪で道警に告発していました。

 カルビーでは「契約農家から種芋全てを引き取っていたので、植物防疫法違反との認識は無かった」と話しているようですが、今回の病害虫はジャガイモシストセンチュウと言い、一度発生すると撲滅は難しいとされ、同じ農地でのジャガイモの生産はできなくなります。植物防疫、という食品会社の素材管理における基本的な事柄を知らなかったカルビーとは一体どんな会社なのでしょう。ずさんな管理、というより、確信犯的に利益追求にまい進しているような気がしますが…。

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吸入器に消毒液混入、1人重体/飛騨の医療施設

 岐阜県飛騨市神岡町の市立介護療養型医療施設「国民健康保険ケアホスピタルたかはら」で4日、女性看護師がたんを切る液剤の吸入器に誤って医療器具用の消毒液を混入、吸入した11人の患者のうち1人が呼吸困難となりました。

 神岡署や市の調べでは同日午前4時30分ごろ、夜勤の女性看護師が吸入器にたんを切る液剤ビソルボンを入れる際、容器のラベルを確認せず、誤って消毒液約200ミリリットルを混入、別の女性看護師が患者達に吸入させたものです。

 消毒液はビソルボンとは色の違う容器に入れていますが、今年1月中旬から消毒液を5倍に薄める作業の際、ビソルボンと同じオレンジ色で形の似た容器に入れ替えていたといいます。そのため看護師が吸入器の台車のかごに入っていた消毒液容器をビソルボン容器と思いこんで使用したようです。

 元の容器であれば判別できるものが、人が介在して薄めた後の容器の選択が誤ったのですが、安全管理が末端まで浸透していないことが分かります。

 また吸入器の台車のかごに消毒液が置かれていたミス、ラベルを確認しなかったミスを含めると3重のミスが絡んでいることが分かります。医療現場での薬剤・液剤などの誤使用はいつも単純なミスが原因ですが、対処療法でとりあえずの問題を解決するのではなく、後作業・複数の関与者がチェックするための、根本的な安全思想を根付かせる必要があります。

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医療事故で公表基準/国立大病院長会議

 国立大学病院長会議は3日、院内で医療事故が発生した場合に公表する指針をまとめました。患者が死亡したり、重い障害が残った場合だけでなく、患者が回復しても病院側に「重大な過失」があれば公表するとしています。病院側が「過失なし」と判断しても、再発防止につながるケースはすべて同会議に報告を求め、同会議がホームページなどでまとめて明らかにするとしています。

 公表の指針は4月から運用し、ホームページでの公開は4月以降、準備が整い次第実施します。全国で42ある国立大病院は昨年10月から再発防止策を検討するため医療事故の報告を義務付けられていますが、一般に公表する基準を決めるの初めてです。

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■加工食品も原産地表示/農水省、20品目に義務付けへ

 農林水産省は生鮮食料品を調理して販売する「加工食品」の表示を厳格にします。カット野菜やゆで卵など約20種類の加工食品を対象に、主な食材の原産国・地域の表示を来年10月から食品メーカーに法律で義務付けます。原産地の表示は生野菜や肉など生鮮食品が対象でしたが、偽装表示を不安視する消費者のニーズに応えることとしています。

 原産国表示を求める加工食品はカット野菜、乾燥キノコ、塩漬けした魚、切りもち、緑茶、温泉卵などで、味付けした食品が対象になります。加工食品長の半分以上を占める食材について、「中国産」などの原産国を表示することになります。

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■JISマークの役割は?/指定商品半数以下に

 長い間、日本工業規格(JIS)マークの表示されている製品が品質・安全性を担保してきましたが、最近ではJISマークをあえて表示しない企業も増えてきているといいます。

 JISで定める形や寸法、品質などは、業界団体主導で規格作りを行うことから、参加企業すべてがクリアできる最低限の水準を決めているとの見方もあります。また、国際規格や他国のより厳しい品質規格を自主的に採用する企業も増え、消費者に必要な品質表示という訴求力もないため、JIS表示に魅力がなくなっているようです。

 7年前からJIS表示が消えた鉛筆では、「品質はJISの基準よりはるか上をいっている。業績に影響なければあえてマーク表示にこだわる理由はない」との鉛筆業界の判断があったといいます。

 また自転車工業会では安全で長持ちする自転車の普及に自主安全基準「BAA」を昨年9月から導入しました。BAAマークを表示するには主要部品であるフレームの場合、強度基準にJISの試験に加えてドイツのDIN規格で定める横のねじれにも対応しなければなりません。それでも高い安全性を確保することが、JISを満たしていない自転車、メーカー名や輸入業者名もない粗悪品への対抗策として必要だといいます。

 ところでこの10月からJISマークが新制度に移行します。これまでのような日本独自の認定方法ではなく、ISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準会議)が定める認証ルールに整合することになります。国に代わり民間の登録認証機関が向上の品質管理体制を検査、製品試験を行うことになります。今までの国が指定した製品に限って同マーク表示を認める「指定商品制度」は廃止され、今後はJISの規格がある製品全てで同マークの表示が可能になります。

 EU のように電気製品や玩具など安全要求度の高い製品はCE表示を義務付け、規格適合品だけが域内で流通するようになれば良いのですが、JISの新制度も強制規格ではないため、事故があったときに製造者側の責任を求めるだけで、規格に適合しない製品の排除はできず、安全・安心は顧客の責任に転嫁されている現状はおかしなものです。

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