1995.2 Vol.14  発行 1995年2月27日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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対応早い米エクソン系/危機管理システム 系列SS含め体系化
アスベスト 安全性に疑問の声/労働省の新規制 クリソタイル認める
ビデオ出火訴訟 見舞金で和解/ビクターと原告
PL法 産業界の対応進む/経団連まとめ
「缶のデザインそっくり」/サッポロビールがサントリーに抗議
家電・日用品も対象に/安全標識に関するJIS改正 通産省、3月1日公示
来年末制定計画の「環境JIS」/企業活動、公的機関で監査 通産省方針
コーヒーこぼしやけど――訴訟/米チェーンで再び

1月の新聞記事より

■対応早い米エクソン系/危機管理システム 系列SS含め体系化

 今回の阪神大震災では石油業界では製油所、油槽所などの設備は大きな被害はなかったが、末端の販売拠点となるサービスステーション(SS)では一部で被害がでたうえ、一時は通信、交通手段が混乱、しかも企業によっては神戸支店が地震によって事実上使用不能となり、機能しなくなるといった事態にもなった。
 その中にあって、エッソ石油の対応を見ると、地震のあった17日午前9時には本社および大阪支店に対策本部を設置、一元的な形で事態の掌握に乗り出している。ゼネラル石油も17日午前8時半に大阪支店に対策本部を設置、本社から応援部隊も派遣した。その他の石油各社も同様の対応をしたが、現地対応を含めた組織面での整備という点に限れば半日から一日程度遅れるケースが目立った。
 なぜ、対応が早かったのかといえば、エッソ石油の場合は米エクソングループ共通のOIMS(環境安全強化プログラム、あるいは完ぺきな操業管理システム)といった総合的な管理システムを持っており、緊急対応が完全にマニュアル化されている。また、SSについてはゼネ石の場合は「安全、健康、環境管理ガイドブック」があり、連絡先・連絡網、災害別任務分担表などに従った行動を取るよう示されている――といった具合だ。

 「何につけてもマニュアル」というのが最近の流れですが、企業の中には「マニュアルはあるのだが機能しなかった」というところもあるようです。マニュアルに従って正しく機能させるには、最新の情報や状況に合った見直しと、社内への周知徹底を組織的に行わなければなりません。
 収益に直接関わる製造関連マニュアルと違い、緊急時のマニュアルなどは一度作ってしまうと、ついついメインテナンスをなおざりにしてしまいがちです。
 PL対策で各種マニュアルの整備が盛んに行われているこの頃ですが、PL事故発生時の対応マニュアルも実際に使用されることはあまりありません。
 これを機に、「マニュアル通り正しく機能するか」といった動特性のチェックをするのもよいと思います。

■アスベスト 安全性に疑問の声/労働省の新規制 クリソタイル認める

 労働省は発がん性が指摘されている有害物、アスベスト(石綿)の規制強化を打ち出し新たな規制を4月からスタートさせるが、その内容について早くも疑問の声が出ている。アスベストのうち特に発がん性が高いとされるアモサイトとクロシドライトの輸入および国内での使用を全面的に禁止するものの、国内使用量の9割以上を占めるクリソタイルの使用は作業者の安全対策を強化するなどの制限付きながら認めたままだからだ。
 アスベストは細かくとがった繊維を持つ鉱物で、長期間吸入すると肺がんや悪性中皮腫(しゅ)などの病気を起こす危険性が高い。建材や自動車のブレーキに加工されるが、用途別では約8割が建材に使用されている。全量が輸入品で輸入量は年間約20万トン。今回規制される2品種についてみると、クロシドライトの輸入量はほとんどなく、アモサイトも数%を占めるにすぎず、国内で使用されている大部分はクリソタイルだ。
 労働省は今回の規制について、「発がん性の高いものを業界が自主規制し、使用量が減ったため禁止に踏み切った。もちろんクリソタイルについても発ガン性が指摘されているので代替物の安全性を十分確認しつつ今後禁止に向けた検討を進める。切断や研磨などの作業には労働者に安全用具の使用を義務づけるなど安全規制を強化して対応したつもりだ」として、経過措置であることを説明している。
 これに対し、アスベストに携わる労働者保護の観点から使用禁止を求めている全建総連では「今回の措置は一歩前進といえるが、一番多く使われているクリソタイルの全面使用禁止に向けて今後も運動を続けたい」と一定の評価を示しながらも、不十分だというスタンスだ。
 代替品としてはすでに合成繊維のビニロンなどがあり、欧州の代替品審査に合格し、クラレ、ユニチカの2社が数年前から年間一万数千トンを欧州向けに輸出している。

 国民・社会の安全確保については、全体像を把握した適切かつ速やかな行政の対応が求められますが、あいかわらずの鈍い対応です。
 欧米の主要国でのアスベスト使用量は激減していて、米国、ドイツの使用量は年間数万トンと日本のそれとは一桁違っています。
 アスベストによるPL訴訟が多発した米国では倒産した企業もあります。またアスベストがPL保険の対象外となっていることからも「日本でアスベスト訴訟が増加した場合、中小企業がはたして耐えられるのか」といった指摘もあり、早期の完全使用停止が求められます。

■ビデオ出火訴訟 見舞金で和解/ビクターと原告

 90年2月、大阪府豊中市のマンションで起きた火炎をめぐり、当時火元の部屋を借りていた女性(東京郡在住)が「火災はビデオデッキからの発火が原因」として、製造した日本ビクター(横浜市)を相手に慰謝料など約1000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に起こしていた訴訟で10日までに、同社が「見舞金」を支払い、原告が訴えを取り下げることで裁判所外での和解が成立した。
 訴えによると女性は90年2月、居間からの出火で部屋の一部や家具などを焼失。女性は「ビデオデッキ周辺から燃えており、デッキの欠陥が出火原因」などとし、91年3月に大阪地裁に提訴した。
 ビクター側はデッキに問題はなく、出火に責任はない」などと反論。デッキの上には他社製のテレビが置かれており、消防署の調査でも出火元が断定できなかったことから、双方の主張が平行線をたどっていた。

 消防署の事故調査報告書では、「出火原因は本件ビデオもしくはテレビのいずれかは不明」とされており、しかも「留守録」にして外出中の火災であることから目撃者もなく、ビデオから出火したとの立証は難しいといわれていました。仮にビデオが出火原因であっても原告はビクターの過失まで立証することが必要でした。
 しかし昨年3月の「松下TV訴訟敗訴」の影響もあり、本件は昨年の夏頃から和解の動きが進んでいたようです。
 ASPニュース12月号で紹介した上記とは別件の「松下TV訴訟」での和解ニュースに次ぐもので、企業の訴訟対策の変化が感じられます。

■PL法 産業界の対応進む/経団連まとめ

 経団連は、92年12月にPLに関する自主的ガイドラインを策定し、製品の安全性の確保や事故の未然防止、万一の事故時の迅速な対応などを企業に呼びかけてきた。今回は、これに沿って産業界の取り組み状況を中間的にフォローアップした。
 まず家電業界の取り組みでは、製造者向けのガイドブックや家電流通業界向けの解説書を発行したほか、表示に関するガイドラインも策定。近く通産省の認可をえて発足する「家電製品PLセンター」は、相談・斡旋部門に常勤カウンセラー4人、裁定部門に弁護士ら14人で構成する審査員と20人の登録調査員を配置。中立性・公平性を確保するため、同センターの活動を監視する運営協議会を置くほか、経理も同協会の一般会計と区別する計画だ。
 自動車業界は、運転マナーの向上など啓発活動のほか、取扱説明書の警告表示の見直しを進めており、ガイドラインの策定を検討している。4月に設立予定の紛争処理機関は、相談、あっせん、裁定を業務とし、裁定の中立性を確保するために裁定委員会(パネル)も設置することにしている。
 機械業界は、独自に取扱説明書や警告表示の統一を図る。団体保険制度も関係52団体のうちすでに11団体が加入したほか、17団体が検討中だ。
 医薬品業界は、医薬品副作用被害救済基金を通じて、被害救済に対応する。また、昨年7月に医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構に、消費者くすり相談室が設置されたのに伴い、約600社がそれぞれ相談窓口を設置、同相談室から紹介される消費者の問い合わせに対応できるようにした。
 さらに食品業界は、大企業と中小企業の間でばらつきがあるが、基本的に個別対応という原則で取り組んでいる。食品産業センターが中心となって共済制度を検討しているほか、食品添加物協会などの業界団体も表示・説明書の統一などを検討中。
 このほか、繊維、ガラス業界も業界団体内に専門組織を作ってPL対応策を検討している。

■「缶のデザインそっくり」/サッポロビールがサントリーに抗議

 サッポロビールは10日、サントリーが2月上旬からリニューアルする「モルツ」の缶のデザインがサッポロの「黒ラベル」缶に酷似しているとして、サントリーに抗議したことを明らかにした。問題にしているのは新デザインのモルツが黒字に金色の縁取りをしている点。黒ラベルも従来、同様の配色を採用していることから「消費者の混同を招くおそれがあるうえ、不正競争防止法上、周知性の面からも問題がある」としている。 当面、サントリー側からの返事を待つ構えだが、サッポロ側ではデザインの変更を求めていく考え。

 2月になり双方とも東京地裁に仮処分申請をし、缶のデザイン論争が法廷で争われることになりました。
 似てるといえば似ていますが、サントリーモルツは人気商品でもあり、意識的に黒ラベルのデザインをまねる必然性はないように思われます。とはいってもサッポロとしては黙っていられない事情があったのでしょう。
 ただ最近のサントリーモルツの宣伝攻勢を見ると、消費者にデザインの認知を図ることで「法定での争いを有利に展開するつもりかな?」とも思われます。

■家電・日用品も対象に/安全標識に関するJIS改正 通産省、3月1日公示

 通産商工業技術院は17日、工業製品の事故防止を目的とした「安全色および安全標識に関する日本工業規格(JIS)」を全面的に改正し、3月1日に公示すると発表した。これまでは工場の設備や産業機械などを対象にしていたが、新たに家電製品や日用品を加え感電などの危険を分かりやすく表示する。
 安全標識に関するJISは事故の危険のある場所や安全な避難路を知らせるために設けられたもので、これまでは工場や鉱山の設備や機械などに適用していた。改正JISでは対象品目を家電製品や日用品全般に広げ、感電や漏電などの危険を分かりやすく表示、使用者が安全に製品を使えるようにする。
 例えば、高電圧を使う製品では危険個所に赤色のマークを貼ったり、注意が必要な場所は黒のマークを貼って注意を喚起する。通産省はメーカーが製品を開発する際、新JISをガイドラインとして使うよう呼びかける方針だ。

 工場や鉱山で使用されていた標識を家電製品などにも当てはめるという発想のため、工業会が進めている製品および取扱説明書の警告表示等で使用が奨められているシンボル表記とは異なるものもあり、混乱が生じているようです。
 既存の規格等がある場合に、それを他のカテゴリーのものを当てはめるというのは制作作業の軽減となり、ついつい「楽」をしてしまいがちです。
 今回の改正は、本来の趣旨である「消費者に分かりやすい表記」であるかどうか、これからの社会に認知してもらうための「世界標準との整合性はどうか」などの配慮が不足しているようにも思われます。

■来年末制定計画の「環境JIS」/企業活動、公的機関で監査 通産省方針

 通産省は96年末の制定を目指している環境JIS(日本工業規格)に、公的な第三者機関が企業の環境保護への取り組みをチェックする「外部監査」を盛り込む方針を固めた。環境保全に関する指針や計画を企業が自主的に定めるだけでなく、第三者が定期的に監査して客観性や透明性を確保する狙い。6月に産官学の代表からなる専門委員会を設置、第三者機関の設置方法や実施体制について本格的な検討を始める。
 通産省が導入を目指す外部監査方式は[公認環境認証人」(仮称)と呼ぶ第三者機関を設け、JIS取得を希望する企業を対象に認定・監査業務を行う。各企業はまず環境保全についての指針や具体計画を作成して認証人に提出。JIS取得後は認証人が計画遂行の度合いをチェックし、監査報告書を公開する方式だ。

■コーヒーこぼしやけど――訴訟/米チェーンで再び

 【ロサンゼルス23日共同】コーヒーをこぼし、やけどをしたのは、店が危険な紙コップを使ったためだ――と、米サンフランシスコ郊外に住む女性が23日までに「米ワシントン州シアトルに拠点を置くチェーン店を相手に損害賠償などを求める訴えを起こした。
 昨年8月には、ニューメキシコ州の裁判所が「老婦人がこぼれたコーヒーで大やけどを負ったのは熱過ぎるコーヒーを売った店の責任」とファストフード・チェ−ンに48万ドル(約4800万円)の支払いを命じている。
 訴えによると、この女性は昨年1月、被告のチェーン店で紙コップ入りのコーヒ−2杯を買ったが、コップの作りが悪く両方ともふたが外れ、服の上から熱いコーヒーを浴びたという。

 昨年8月の事故は、マクドナルドのドライブスルーでコーヒーを注文し、膝の間に挟んだコーヒーのふたを開けようとしてこぼして重いやけどを負ったものです。
 日本では通常考えられないことでも裁判で争われます。「ダメでもともと」ということなのでしょう。当然マクドナルド側は「わが社に責任はない」として上訴することを表明しました。
 今回も同じようにな結果を期待してのことだと思いますが、はたして2匹目のドジョウはいるのでしょうか?
 米国では州により異なる判決も出ることがありますが、訴訟の流行病みたいなところもあり、企業としては注意が必要でしょう。

終わりに

 「マルチメディアの対応」ということでいくつか動きがありますが、長野県の県紙、信濃毎日新聞(長野市)はこのほど、編集局の記者全員を「ビデオ・ジャーナリスト」として再教育し、活字と映像の両方を使って報道できる体制を構築する方針を固めました。
 また小学館は印刷会社から書籍のデータを買い取って、自社データベースの構築を始めました。
 ここで大事なことは、外部に出していたメディア制作を、企業が一元管理することにあると思います。製品と共に社会に提供される印刷物、映像等の関連情報(PI:プロダクト・インフォメーション)についても、企業自ら制作する(主たる制作者になる)ことでPLに対する抵抗力を付けなければなりません。


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