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2005.8 No.140  発行 2005年8月18日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。



7月のニュースから

■RDFが火種、消防庁特定/三重の発電所爆発事故

 2003年8月、死傷者7人を出した三重県桑名市多度町のゴミ固形燃料(RDF)発電所の連続爆発事故で、総務省消防庁が独自の調査で事故原因を特定したことが分かりました。貯蔵サイロ内で大量に積まれたRDFが蓄熱、発火して可燃性ガスが発生、これに燃焼したRDFが火種となり爆発したと結論付けたものです。
同県の事故調査専門委員会は火種を特定しませんでしたが、消防庁の調査報告書でRDF自体が爆発の原因と断定したことから、原因を特定しないまま再開を急いだ県の対応に疑問が生じることになりました。
事故調査は、消防庁が桑名市消防本部の依頼を受け、同庁の研究機関、独立行政法人・消防研究所が約1年半かけて実施、今年3月までに報告書をまとめたものです。同市消防本部はこれを基に、年内にも独自の報告書を作成するとしています。

 報告書によると、事故前の2003年6月10日以降に、貯蔵サイロに投入された約600トンのRDFが約8か月半かけて蓄熱し発火、RDFの上に発生した可燃性ガスが約70センチの厚みで覆い、これに燃焼したRDFが着火、爆発を引き起こしたとしています。同年8月14日の1回目の小爆発と消防12人が死亡した2回目の爆発(同年8月19日)は、規模意外は同じメカニズムで発生したとしました。
これに対し三重県の事故調査専門委員会が2003年11月にまとめた報告書では、1度目の爆発については火種を特定できず、2度目の爆発の火種についても、燃焼したRDFや、爆発当日に貯蔵サイロ外壁に消火用の穴を開けるため吹き付けたガスバーナーの火などを挙げ特定していませんでした。
消防研究所の報告書はガスバーナー説を否定、ガスバーナーの溶断線の位置から可燃性ガスが漂っていた付近までの距離は約2メートルと遠く、爆発前の貯蔵サイロ内への放水で溶断線が湿っていたことなどを理由としています。同研究所では「RDFが燃えるのは、石炭などが大量に積まれた際に自然発火するのと同じ原理で、特異な現象ではなかった」と指摘しています。

 県の事故調査専門委員会ではわずか3か月で調査を行い、その報告書では火種を特定できずにいました。しかし発電所の稼働再開を優先させる県では、最終報告書が出たことで「安全対策ができる」とし、約1年後に発電所を稼働させたのです。原因が特定できないのに行った安全対策とは一体どのようなものなのか、県の対応は著しく客観性を欠いていたことが判明しました。

 同報告書ではまた、燃焼したRDFのすさまじいエネルギーについても明らかにし、計算上26キロのRDFの完全燃焼で、重さ約10トンの貯蔵サイロの屋根を約190メートル先に吹き飛ばした2度目の爆発と同レベルの爆発が起こりえる、と指摘しました。事故当時は貯蔵サイロ内に約600トンのRDFがあり、その危険なエネルギー量は膨大なものであったことが分かります。

 同研究所の研究員は「RDFはまだ新しい技術。爆発事故が起きて止まった発電所の信頼性を得るには同じ固形燃料の石炭などで3年ほど連続運転をし、実験する必要があったのではないか」と指摘し、ゴミ処理の革命児と言われたRDF導入に飛びついた自治体・企業に慎重な検証がなかったことを示唆しています。
また同発電所では今年4月に作業員が火傷を負うという事故が発生していますが、発電所のボイラ設備(アイドルパス灰選別器)に堆積した灰の除去作業中に、高温の灰がかかったため、大腿部に全治1週間の火傷を負った、というあまりにも危険意識の低いものでした。

 同発電所を維持管理している富士電機が作業員に耐熱服着用を求めていなかったということは、同社の安全に対する認識がかなり低いことが分かりますが、行政・企業共に安全認識に欠けていたことから、抜本的対策をとらないかぎり次の事故の懸念が拭えません。


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三菱「リベロ」またリコール、21万台/ドア降下でけが

 三菱自動車は1日、後部荷室ドア(ハッチバック)のストッパー取り付け部分に不具合があったとして、ワゴン車「リベロ」約20万9000台(1992年3月−2002年8月生産)のリコールを国土交通省に届けました。
この不具合のため昨年9月、宇都宮市で女性会社員が荷物の積み降ろし中に降下してきたドアで、後頭部や首に3週間のけがをしていて、同社の橋本光夫常務は国交省で記者会見し「申し訳ない」と謝罪しました。
国交省は「(リコール前でも)人身事故が起きた時点でユーザーへの注意喚起や緊急点検などの対策を取るべきだった」としていますが、リベロは昨年7月にも、同じストッパー取り付け部分の強度不足で亀裂が生じ、ドアの降下で18人が負傷、約4万9000台をリコールしたばかりです。しかもこのリコールでは回収作業のミスが2件あり、千葉県佐倉市で今年1月男性がドアの降下で頭に軽いけがをしていました。

 三菱自によると、今回はストッパーを車体部品に取り付けるボルトの締め付けが不十分だったため、繰り返し開閉するとボルト損傷などの恐れがあるといいます。また前回リコールした約4万9000部位も対象に含まれるとしています。

 設計情報によるボルトのストッパー締めつけトルクの指定がなかったとは考えにくく、同社の製造管理は一体どうなっているのでしょう。前回のリコールでは、荷台ドアの取り付け部品の強度不足でしたので、今回の部品における設計上の指示がなかったのかも知れません。いずれにしても製造業者としては信頼性のかなり低い同社の実体が見えてきます。

 それよりも度重なるリコールでけがをしなければいい、とでも考えていてもらっては困ります。各オーナーはこのために何時間かを無駄に費やすことになり、その責任をどのように感じているのか明らかにする必要があります。とりあえず精神的な負担はさておき、社会的な迷惑をどの程度かけたのか、全オーナーが被った経済損失でも計算して国民の前に明らかにしてもらいたいものです。

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ミスで患者死亡、カルテも改ざん/兵庫医大病院

 高度な医療を担う特定機能病院の認定を受けている兵庫医大病院(兵庫県西宮市)で昨年11月、食道などの静脈瘤の破裂を防ぐ手術を受けた同市の男性=当時(72)=が手術翌日に吐血した際、処置にミスがあり死亡したことが5日分かりました。

 主治医は手術の危険性を患者側に説明していませんでしたが、男性の死亡後「手術前とあとに説明した」とカルテを改ざんしたことも判明しました。

 同病院によると、手術は昨年11月11日に実施、翌12日夕に男性が吐血し、主治医の1人がチューブについた風船を膨らませて出血部を圧迫し止血する「SBチューブ」を挿入しましたが、処置が不適切で止血の確認も不十分だったため、男性は翌13日早朝に容体が急変し死亡したものです。しかし不審に思った妻の訴えなどを受けて同病院は同日午後、病理解剖を実施、死因は食道と胃からの出血によるショック死と判明、4カ所に静脈瘤破裂がみられたといいます。

 後日設置された同病院の外部調査委員会の報告書は「主治医が処置器具の取扱説明書を十分理解していなかった上、止血を確認せず病院を離れた」と指摘、「処置が適切で十分な注意が払われていたら救命できた可能性がある」と結論づけました。

 報告書は「医師がこのチューブを扱うのは研修医時代以来8年ぶりで、取扱説明書を斜め読みして挿入した」、「挿入後、食道と胃の接合部に風船を固定することが必要だが、X線撮影などで確認しないまま、4人いる主治医全員が帰宅した」などと指摘したといいますから、同病院・医師のずさんさが良く分かります。

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鳥インフルエンザで死者?/インドネシアで3人

 インドネシアのスパリ保健相は15日、ジャカルタ郊外で12日から14日にかけて死亡した父子3人が、毒性の強い高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染していた疑いが極めて強いと発表しました。
感染者が死亡したとすれば同国で初めてのことで、同保健相は「3人は家禽類に接触した形跡はなく、人から感染した可能性がある」と述べています。同国では世界保健機構(WHO)と協力し、香港で検体の最終検査を行うとしています。

 同国では、スラウェシ島で病気の鶏と接触した農場作業員が感染してたことを今年6月に発表しましたが、その作業員は発症には至っていませんでした。

 今回死亡したのは公務員の男性と9歳と1歳の娘で、男性がハンガリーに出張して帰国した6月末から病気になり、手当てを受けていたといいます。

 鳥インフルエンザウイルスの人への感染はベトナム、タイ、カンボジアで100人以上報告されていて、日本でも1人が確認されるなど広がりを見せています。WHOでもウイルスが人に感染しやすくなっているとの見方を強め、人から人へ感染する新型ウイルスへの変異を懸念しているといいます。

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猿起源の新ウイルス、アフリカで米チーム発見/人に感染、拡大懸念

 チンパンジーやゴリラから種の壁を越えて人に感染したとみられる新ウイルスを、アフリカ・カメルーンの狩猟民らから検出したことを、米ジョンズホプキンズ大や米疾病対策センター(CDC)のチームが4日までに明らかにしました。

 ウイルスは、九州、沖縄、四国地方に多い成人T細胞白血病の原因ウイルス「HTLV」の仲間で、エイズウイルス(HIV)と同じレトロウイルスの一種だといい、今のところ発症者は確認されていないものの、人から人に広がって病気を起こすことが心配されています。このためチームでは、猿から人に感染して世界中に広がったHIVの二の舞いとならないよう、長期的な監視が必要だと訴えています。

 調査はカメルーン南部の12の村落で、狩猟や食肉用の解体を通じ猿の血液に繰り返し触れていた約930人の健康な男女を対象にして、男性2人の血液から、これまで人で確認されていないHTLVの3型、4型ウイルスが見つかったものです。遺伝的な解析などから、いずれも猿のウイルスSTLVが起源である、とチームはみています。

 チームは昨年、同じくカメルーンの住民から別種の猿のレトロウイルス「SFV」も検出していて、研究を率いたジョンズホプキンズ大のネーサン・ウルフ助教授によると、SFVの人への病原性は不明だが、HTLVは人に定着した実績があるため、公衆衛生上の懸念はより大きいとしています。

 アフリカの一部では、猿の肉が食用とされ、猿のウイルスの感染も限定的に起きていたとみられていますが、近年の都市化などで感染症が拡大しやすい条件がそろってきており、第2、第3のHIV出現への懸念が強まっているといいます。

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放射線被ばく、低線量でも発がんリスクあり/米科学アカデミー

 放射線被ばくは低線量でも発がんリスクがあり、職業上の被ばく線量限度である5年間で100ミリシーベルトの被ばくでも約1%の人が放射線に起因するがんになるとの報告書を、米科学アカデミーが世界の最新データを基に30日までにまとめました。

 報告書は「被ばくには、これ以下なら安全」と言える量はないと指摘、国際がん研究機関などが日本を含む十五カ国の原発作業員を対象にした調査でも、線量限度以内の低線量被ばくで、がん死の危険が高まることが判明したとしています。

 低線量被ばくの人体への影響をめぐっては「一定量までなら害はない」との主張や「ごく低線量の被ばくは免疫を強め、健康のためになる」との説もありましたが、同報告書はこれらの説を否定、低線量でも発がんリスクはあると結論づけたものです。業務や病気の診断や治療で放射線を浴びる場合でも、被ばく量を低減する努力が求められていきそうです。

 米科学アカデミーは、従来被ばくの発がんリスクの調査に用いられてきた広島、長崎の被爆データに加え、医療目的で放射線照射を受けた患者のデータなどを総合し、低線量被ばくのリスクを見積もったものです。それによると、100ミリシーベルトの被ばくで100人に1人の割合でがんを発症する危険が判明したといいます。この線量は、胸部エックス線検査なら1000回分に相当するものですが、100ミリシーベルト以下でもリスクはあると指摘、10ミリシーベルトの被ばくになる全身のエックス線CTを受けると、1000人に一人はがんになる、としました。

 環境ホルモンなど人体に影響をおよぼす物質の絶対安全レベルが分からないように、放射線でも被ばくしないに越したことはありません。本当に必要な診断としてのエックス線CT検査なら良いのですが、「とりあえず診ておきましょうか?」程度であれば、患者としての選択で無理に放射線を浴びないことも必要でしょう。

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活性酸素、老化に関係なし/日米チーム、従来説を否定

 老化の有力な原因の一つとされてきた「活性酸素」が、実は老化に関与していなかったとの研究結果を、東大食品工学研究室の染谷慎一特任教員らと米ウィスコンシン大、フロリダ大のチームがまとめました。チームはさらに、細胞内小器官「ミトコンドリア」にあるDNAの損傷蓄積が老化の一員となるメカニズムを解明、5日付けの米科学誌サイエンスに発表しました。


 チームは「ミトコンドリアDNA」と呼ばれる細胞核のDNAとは別に、ミトコンドリアが独自に持つDNAに着目、このDNAの損傷修復機能を失わせたマウスを遺伝子組換えで作りました。すると、組み換えマウスのグループは、正常マウスのグループに比べてDNA損傷が加速的に蓄積、脱毛や白髪化、背骨の湾曲などの老化症状が見られ老年性難聴の発症も確認されたといいます。

 またミトコンドリアDNAの損傷が蓄積するとアポトーシスと呼ばれる細胞死が増え、老化が進行することも分かったとしています。 一方ミトコンドリアの活性酸素のレベルなどを両グループで比べたところ差は無く、活性酸素や酸化ストレスの増加が老化に関与していないことが分かったと結論付けています。

 これまで活性酸素は体を酸化させ、遺伝子や細胞膜を傷つける有害物質とされ、活性酸素がミトコンドリアを攻撃して老化を促すと考えられてきました。そのため抗酸化効果をうたった健康補助食品などが溢れ、テレビなどのメディアでも話題性の高いものです。多くの企業・メディアが活性酸素を排除することが「健康である」としてきたビジネスも盛んですが、今回の研究にどのように反論するのでしょうか? 興味があります。
最近の行きすぎた健康ブームを感じさせる、テレビなどメディアでの活性酸素の取り扱いと、抗酸化作用のある食品などを勧める番組や企業の多さを見ると、今回の研究による沈静化を期待したいものです。

 “老化指標”なる客観的なデータが人の細胞から得られるような科学技術があって初めて老化に効果がある物質が特定できますが、まだまだ先の話です。何が正しいのか分かりづらくなっている昨今の情報の氾濫ですが、個人で気を付けるしかないようです。

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長野新幹線全面禁煙に/JR東日本

 JR東日本は22日、長野新幹線「あさま」や在来線特急「成田エクスプレス」を年内に全面禁煙にすると発表しました。新幹線や特急列車を全面禁煙とするのは同社では初めてで、東北、上越新幹線なども客室間のデッキでは禁煙とします。

 全面禁煙となるのは、あさまや成田エクスプレス、特急「わかしお」「さざなみ」など、乗車時間が2時間以内におさまる列車で、そのほかの新幹線や特急については、デッキ部分の灰皿を撤去し、たばこを吸えるのは喫煙車だけになるようです。また札幌行き寝台特急「北斗星」と「カシオペア」もラウンジや通路などの公共部分を禁煙にします。

 その一方、東京駅や仙台駅などの新幹線ホームにある喫煙ルームを、熊谷、高崎、長野、盛岡の4駅6カ所に新たに設ける予定で、喫煙者のための配慮も行うなど、結構気を使っているようです。

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