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2005.9 No.141  発行 2005年9月16日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。



8月のニュースから

■三菱ふそう、再リコールでまたミス/国交省が検査へ

 三菱ふそうトラック・バス製大型トラック「スーパーグレート」のサスペンション部品を巡る欠陥で、新潟県と北海道の販売会社の整備士が不正な作業を行い、2台が走行不能状態になっていたことが3日、分かりました。同社が再リコールを届け出た4月以降、同様の事例は4件目になり、国土交通省は「整備規定などが現場で軽視され、放置すれば新たに重大な事故を引き起こす危険性がある」と判断、不正な作業を行った販売会社に対し、道路運送車両法に基づき立ち入り検査をすることを決めました。
三菱ふそうによると、7月28日に大阪市のトラックターミナルで前日に再リコールを受けたばかりの大型トラックのサスペンション部品「Vロッド」のボルトが脱落したり、破損したといいます。同社が再リコールの作業を確認したところ、作業員(44)が使用禁止の特殊工具を使っていたことが判明しています。
北海道岩見沢市でも1日、工場敷地内でUターン中のトラックで異音がし、運転手が確認したところVロッドが外れているのを発見しました。このトラックの場合、7月下旬に再リコールを受けた際に作業員(32)がボルトを締める順番を間違えたのが原因と見られています。
国交省から厳重注意処分を受けていた同社では、手順の徹底などを販売会社に指示していたのですが、使用禁止の工具を整備士が使ったり、作業手順を守らなかったりしていた事実が明らかになった訳で、指示の出しっぱなしの同社が現場での適切なリコール整備を検証をしていなかったことになります。三菱ふそう本体の安全システムの欠陥のために現場の品質問題が生じていることから、同様の事故はまだ続くことになります。
18日になると、大阪市内の交差点で今月8日に同社がリコールしたスーパーグレートが左折した際、Vロッド2本が脱落、別の2本も緩んでしたことが判明しました。
また7月29日に長野県丸子町でスーパーグレートの運転席ドア下にあるプラスチック製の取っ手が破損、男性が転落する事故がありましたが、これは同社が今年5月に取っ手の強度を増す改善対策を国土交通省に届けた部分でした。しかし修理の実施率が24.5%にとどまっていたことから、このような事故を起こしたものです。同社は遅ればせながら再度ダイレクトメールを送付して、注意喚起するとしています。
工業製品であれば設計時に見つからなかった不良が出るのはやむを得ませんが、問題はその後の処理にあります。再リコールでの整備不良の原因がルールを守らない整備士の存在だとすると、同社では教育など何もやってこなかったと思われても致し方がないようです。基本的な安全マネージメントのシステムが機能していないことから、設計・製造・販売・整備の各所で不手際が露呈したものであり、同社の安全ポリシーを頂点としたシステムの再構築が急務です。


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三菱「リベロ」またリコール、21万台/ドア降下でけが

 三菱自動車は1日、後部荷室ドア(ハッチバック)のストッパー取り付け部分に不具合があったとして、ワゴン車「リベロ」約20万9000台(1992年3月−2002年8月生産)のリコールを国土交通省に届けました。
この不具合のため昨年9月、宇都宮市で女性会社員が荷物の積み降ろし中に降下してきたドアで、後頭部や首に3週間のけがをしていて、同社の橋本光夫常務は国交省で記者会見し「申し訳ない」と謝罪しました。
国交省は「(リコール前でも)人身事故が起きた時点でユーザーへの注意喚起や緊急点検などの対策を取るべきだった」としていますが、リベロは昨年7月にも、同じストッパー取り付け部分の強度不足で亀裂が生じ、ドアの降下で18人が負傷、約4万9000台をリコールしたばかりです。しかもこのリコールでは回収作業のミスが2件あり、千葉県佐倉市で今年1月男性がドアの降下で頭に軽いけがをしていました。

 三菱自によると、今回はストッパーを車体部品に取り付けるボルトの締め付けが不十分だったため、繰り返し開閉するとボルト損傷などの恐れがあるといいます。また前回リコールした約4万9000部位も対象に含まれるとしています。

 設計情報によるボルトのストッパー締めつけトルクの指定がなかったとは考えにくく、同社の製造管理は一体どうなっているのでしょう。前回のリコールでは、荷台ドアの取り付け部品の強度不足でしたので、今回の部品における設計上の指示がなかったのかも知れません。いずれにしても製造業者としては信頼性のかなり低い同社の実体が見えてきます。

 それよりも度重なるリコールでけがをしなければいい、とでも考えていてもらっては困ります。各オーナーはこのために何時間かを無駄に費やすことになり、その責任をどのように感じているのか明らかにする必要があります。とりあえず精神的な負担はさておき、社会的な迷惑をどの程度かけたのか、全オーナーが被った経済損失でも計算して国民の前に明らかにしてもらいたいものです。

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天井の耐震化、盲点?/宮城県南部の地震

 宮城県南部で震度6弱を記録した地震で、天井が落下してけが人が出た仙台市泉区の屋内プールについて、市環境局が今年6月に建物の構造などを検査した際、「震度6に耐えられる」と結論づけていたことが16日、分かりました。現場付近は震度5強だったのですが、一体何を根拠に震度6に耐えられるとしていたのでしょうか。

 屋内プールは仙台市が民間資金活用公共施設整備促進法を利用し、今年7月にオープンしたばかりで、最新の耐震基準を満たしているはずでしたが、実際は異なっていたようです。このプールは屋根に天井を複数の金具で引っ掛けたつり天井タイプで、現地を視察した東北工業大の田中札治教授(耐震構造)は「建物自体に問題はないが、揺れで建物全体がねじれたため、つり下げていた天井が落ちたのではないか」と指摘、業者は「天井の金具が1つ外れると連鎖的に外れてしまう恐れがあるようだ」と話しています。

 地震でつり天井が崩落した事故は、2001年に広島、愛媛両県を中心に発生した芸予地震で小学校の体育館などでつり天井が崩落、2003年の十勝沖地震でも、釧路空港のつり天井が落ちる事故がありました。
国土交通省は過去2回の事故について、つり天井が地震の揺れで壁面に押し付けられ破損したのが原因と断定、天井と壁の間に十分なスペースを設けるなどの対策を打ち出し、再発防止のため、各都道府県などに2度の通知を出していました。

 市環境局が行った今年6月の検査では建物の構造などを検査した、とありますが、建築設計図などの書類と現場の仕上がり状態を照らし合わせるだけだったかもしれません。設計上「震度6に耐えうる構造」とうたっているので、後は図面と実際の建物を見比べる目視と聞き取りを中心とした検査だったのでしょう。
このときの検査官は国交省の通知内容を知っていたとは考えにくく、仙台市の情報伝達経路にも問題があるようです。また施工業者も建築のプロであるはずなのに、過去の地震における問題点を何も知らない、という申し開きは通るはずがありません。どうしてこのような低レベルの安全意識しかないのか、不思議でなりません。これらは国交省の問題意識の低さから、関係各所・業者に重要視されないのかもしれません。
いずれにしても建物の構造部分の耐震性は設計時に考慮されますが、天井や照明、壁面パネル、ドアなどの内装部材における耐震性は全く考えられていないことが判明しました。施設の管理者・利用者は、内装部分の欠陥・不備や、エクステリア部の危険な個所についても改めて認識すべきでしょう。

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エレベーターの地震対策見直し?

 7月の千葉県北西部地震では首都圏を中心に6万4000基ものエレベーターが停止、8月に起きた宮城沖地震でも1万基を越えるエレベーターが停止してしまいました。エレベーターの安全装置が地震の揺れに反応した結果ですが、復旧作業の遅れによる混乱と閉じ込め事故が多発したことから、業界・政府が動き始めました。
国土交通省は業界団体の日本エレベーター協会に対し「エレベーター復旧の際の安全基準を緩和できないか」と、協議を始めました。


 今回問題のあった多くのエレベーターは、震度4以上の揺れを感知すると最寄り階に停止して扉を開く「自動停止装置」を備えていましたが、千葉県北西部地震では、このタイプを中心に6万4000基が停止、その多くは閉じ込め事故などにより復旧に時間がかかってしまいました。復旧に時間がかかる原因には、同協会の安全指針などにより、保守会社が点検してロックを解除する手順が必要とされることもあり、今回の基準緩和は、「震度5弱以下なら点検無しで一定時間が経つと自動復旧する装置の導入を進めよう」というものです。

 また自動停止装置を備えたものが多かったにもかかわらず、最寄り階に停止することが出来なかったことも問題視されています。この原因は自動停止装置が作動し、最寄り階まで運転している間にエレベーターが大きく揺れて壁などにぶつかり、別の緊急停止装置が働いたためと見られています。このため日本エレベーター協会を中心に、閉じ込め事故が発生しにくい停止装置の開発の指針などを作る作業に入りました。

 今回の地震では、首都圏規模の幅広い地域のエレベーターが被害に遭った場合、復旧に当たるエンジニアが絶対的に不足する弱点も露呈、高層ビル・マンションの管理会社や住民から保守会社に問い合わせが殺到してしまいました。しかし保守会社が保守人員の拡充を進めることは人件費の増加を招き、保守費への転嫁が難しいことから、なかなか実現しそうにありません。

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米BSE対策、100件を超す違反/政府、詳細情報求める

 米農務省がBSEの人間への感染を防ぐため食肉処理業者に脊髄など特定危険部位(SRM)除去を義務づけた規制について、2004年1月から今年5月までの間に1036件の違反があったことが16日明らかになりました。米メディアが報道し農水省も同日確認したものですが、米農務省は危険部位を含んだ牛肉は消費者に流通していない、としています。

 農務省は危険部位の除去を前提に米国産牛肉の安全を主張してきましたが、大量の違反発覚は、日本の食品安全委員会プリオン専門調査会での輸入再開論議にも影響を与えそうです。ASPニュース133号でも昨年12月、米国内の食肉加工場でBSEの防止規制が順守されず、脳や脊髄などの特定危険部位が食肉中に混入している恐れがあるとする警告書を、米政府の食品検査官らが加盟する労働組合がまとめ、米農務省に提出していたことを紹介しました。それにも関わらず今回のようなケースが明らかにされたことで、「管理の甘い米国」は決定的なものになりました。農務省の言う「消費者に流通していない」という客観的な根拠が本当にあるのかも疑問です。

 農水省と厚労省は16日、米側にさらに詳細な情報提供を求める方針を固めましたが、客観的な情報がなかなか出てこない米国側に政治的決着をつけられてしまいそうです。

 ところで日本は生後20カ月以下の牛肉に限った輸入解禁に合意していますが、米国では日本のような牛の登録制度が無く、月齢20カ月以下かどうかの判断はどのようにするのでしょう。元農務省担当者で2002年までBSE対策のチームリーダーを務めたリンダ・ディトワイラー博士は次のように語っています。

 「我が国では耳にタグをつけている場合はあるが、法律の義務付けは無い。このため、いつどの牧場で生まれたかを容易に特定できない。登録制度の全国的な導入は極めて重要だが、畜産農家が政府や競争相手に自分の農場の状況を知られるのを嫌がっており、進まないので実情だ」、また「現在月齢30カ月以上の牛から危険部位を除去する際には、歯の形状で月齢を判断しているが、20カ月以上かどうかを判断するには肉の色などを使うと聞いている」としていますが、その信頼性については「コメントできない」とのことです。

 また米国での飼料規制の甘さも問題視されていて、牛の肉骨粉を鶏や豚に与えていることから、誤って牛の口に入ることが懸念されます。ずさんな管理がたびたび報告されることから、飼料工場での混入も当然あり得るでしょう。米国における客観的な信頼できる安全検証システムが無ければ米国産牛肉は食べたくはありません。米国大使館のクレイ・ハミルトン主席農務官の「米国のシステムは科学的根拠に基づいている」という根拠は、すでに崩れ去っているようです。

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虫よけ剤、子供への使用規制/厚労省が指針作成へ

 蚊などに刺されないよう皮膚にスプレーしたり塗ったりする虫よけ剤について、厚生労働省は15日、「6カ月未満の子供には使用しない」「6カ月以上から2歳未満の子供は1日1回の使用」などの子供向け使用ガイドラインを年内に作成する方針を固めました。

 虫よけ剤の各メーカーが表示する使用方法や使用量にばらつきがあり、国民生活センターに消費者から「子供に使うのが心配」との声が寄せられ、同省もガイドラインが必要と判断したものです。

 虫よけ剤の主成分は蚊などの感覚をまひさせる「ディート」という物質で、毒性は低いとされていますが、急激に吸い込むとけいれんや血圧低下、発疹などが起こる恐れがあり、欧米では皮膚炎などのトラブルも報告されていますが、国内での報告はないようです。

 国民生活センターが国内の虫よけ剤18銘柄の商品テストをした結果、ディートの濃度表示があるのは5銘柄だけでした。使用方法は「むらなく」「適量」など分かりづらい表示が多く、パッケージに赤ちゃんのイラストや「赤ちゃん、乳幼児にも安心」などが記載されていました。これら表記は虫よけ剤の成分ディートが、誰にとっても安全でもあるかのような、行き過ぎたものだと思います。

 このため同センターは6月、厚生労働省に対し、子供に対するディート使用の安全性を検討することや、安全な使用方法や使用量、ディート濃度を表示するよう業界を指導することを要望、これを受けて同省は専門家による検討会を設置、15日の初会合で、子供向け使用ガイドラインの作成、ディートの濃度表示義務づけや毒性を調べる動物実験の実施を決めました。

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心臓外科の専門医認定に実技審査/専門医認定機構

 心臓外科の関連三学会でつくる「心臓血管外科専門医認定機構」は11日、専門医の認定申請者に対し、初めて実技審査を実施することを明らかにしました。初年度の今年は、約100人とみられる申請者名簿から無作為に抽出した5人を対象とします。

  同機構が認定した東京医大病院の専門医が執刀した手術で患者が相次いで死亡した問題を受け、実技審査なしの現行の認定制度に批判が高まったことからの対応です。同機構は日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会の3学会で構成され、今年6月時点の認定専門医は約1600人もいるといいます。 これまでの専門医の申請資格は、執刀医として20例以上の手術実績や、学会が認定した研修施設で3年間以上の実務経験などが必要で、これらの条件を満たし筆記試験にバスさえすれば基本的に専門医として認定されてきました。

 今年3月、東京医大病院が設置した外部調査委員会は、患者3人を死亡させた医師について「技術が未熟で知識も不十分」と判断、「トレーニングのために手術経験を積ませた」と指摘していました。しかしこの医師が同機構の認定専門医だったことから、4月、この医師の専門医資格と同病院の研修施設資格を取り消し、専門医の申請資格に必要な手術執刀数を「20例以上」から「50例以上」にしていました。このときにも実技試験導入が検討されたのですが、時間と人手がかかるなどの点からいったん見送られていたのです。しかし、このままでは専門医の信頼性が揺らぎかねない」との意見が強まったことから、今回無作為抽出方式での導入に踏み切ったものです。

 例年100人前後いる申請者のうちたったの5人に実技試験を求めることで、どの程度の効果があるか疑問ですが、同機構幹部は「ベテランの外科医が見れば手術のレベルの低さはすぐ分かる。医師を推薦した指導医の責任も問われることになり、申請段階から抑止効果が働く」と話しています。
現在認定医として執刀している医師の質の問題は棚上げですが、それでも何もしないよりは良いでしょう。

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禁煙居酒屋出足は好調

 居酒屋やレストランを経営する大手チェーンなどが全面禁煙の店舗を相次ぎ開き、子供連れの客など従来の店舗とは異なる利用者層が増えているといいます。煙が気にならない席で食材の香りなどを楽しんでもらおうとメニューを工夫する店もあり、飲食チェーン店でも全面禁煙が受け入れられ始めたようです。

 居酒屋チェーンのワタミは7月、JR赤羽駅前に居酒屋としては業界で初の全面禁煙とした「手づくり厨房」をオープンしました。開店から1カ月がたち、「乳児や子供連れの家族や妊婦など、分煙にとどめていた従来の居酒屋店ではあまり訪れなかった客層が目立つ」といいます。
滞在時間が長く、アルコールを飲む客が大半の居酒屋では「客数減少につながる」というのが定説でしたが、売り上げ高は従来の分煙業態とほぼ同水準に設定した計画値を約2割上回るペースで推移しているといいます。

 サッポロライオンも7月、全面禁煙のイタリアレストラン「ピッツァ&パスタ工房ジーオ・パンチェッタ」を開き、石釜で焼いたピザなど料理の手法や素材へのこだわりを売り物にしています。客単価は2000円と、ビアホールの「ライオン」など既存業態より約3割低く設定、その分小さな子供がいる家族層など分煙店で見込めなかった客層を取り込み、売り上げはほぼ計画通りだといいます。

 グローバルダイニングは9月から、メキシコ料理店「ゼスト」8店で午後5時から午後10時までほぼ全席を禁煙にしますが、夕食時間帯を禁煙とする取り組みは珍しいようです。

 アルコールとタバコで麻痺した人では、食材の微妙な味など分かるはずもないのですが、居酒屋で全面禁煙というのはとても評価できます。「客数減少につながる」という言葉を盾に、非喫煙者の迷惑を省みない飲食店は、ようは「儲かればいい」というだけの業者だと思います。禁煙・分煙の徹底しないお店が儲からなくなればいいのですが…。

 ところで中高生の喫煙率が大幅に減少した、というニュースがあります。2000年度には4割近くに上った高校3年男子の喫煙率が、2004年度には2割強に減少したことが、厚労省研究班が実施した10万人規模のアンケートで22日分かったものです。
 大人の喫煙率低下やたばこの値上げなどの要因もあるといいますが、小遣いの少ない高校生の携帯電話の支払いとの関連も考えられるといいます。

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