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2005.10 No.142  発行 2005年10月17日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。



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9月のニュースから

■子供用自転車にアスベスト/ブリジストン、2万台のブレーキ部品交換

 ブリヂストンサイクルが、ブレーキ部品にアスベストを使った自転車約2万台を販売していたことが7日、分かりました。同社では9日から約1万9500台のブレーキを無償交換すると発表しました。
同社によると、ブレーキライニングと呼ばれる自転車の後輪を締めつける部品でアスベストが使われていたもので、日本の部品会社の中国現地法人が生産、別の中国の法人が組み立てていたといいます。これを同社が輸入、ブリジストンサイクルのブランドで日本国内で販売していたのですが、昨年10月に労働安全衛生法施行例が改正、部品総重量の1%以上の石綿を使った製品の輸入などが禁止されたため、同社が今年8月になり調査したところアスベストの使用が判明したものです。同社では部品がケースに覆われている事などから、アスベスト飛散の恐れや健康への影響は少ないと見ています。


  昨年、労働安全衛生法施行例が改正されたのに何も調査していなかった同社ですが、今年6月にクボタのアスベスト発表に伴い、関連報道が連日続いたことから、企業も自社製品・部品のアスベスト使用の調査を進めざるを得ませんでした。今回のブレーキ部品のアスベスト含有量は調査中だといいますが、法律に抵触する恐れがある事からの今回の発表でした。


 自転車ではトップ企業である同社の法律順守に対しては少々不満ですが、他の自転車メーカーも当然中国製の部品を使っているのにブリジストンにならって発表しなかった事から、同社はまだ良い方なのでしょう。しかし日本の大手企業でこの程度の対応ということは、昨今良く耳にするCSR(企業の社会的責任)やコンプライアンス(法令遵守)といったことに無頓着、あるいは対応していると宣言している企業でも、はたして客観的な検証に耐えうるものなのか疑問が残ります。
 さて経済産業省と厚生労働省は20日、昨年10月以降に自転車メーカーなど計28社が中国などから輸入、販売した約25万台の自転車のブレーキ部品にアスベストが使用されていたと発表しました。両省は業界団体を通じ計37社を調査したものです。
宮田工業の話では、今年8月下旬の自転車協会からの調査書で石綿の使用禁止を知り、同月下旬の社内調査で石綿使用が明らかになった。輸入製品は有害物質が含まれていないかチェックを行うが、石綿はそのリストから漏れてしまい、輸入を続けたとしています。
また、ホダカの話では、輸入自転車の部品の強度はチェックしていたが、部品の材料までは把握しきれず、石綿が含まれていることは知らなかった。昨年10月の法令改正後も、自転車協会などから通知が無く、全く分からなかった、としています。

  いずれも安全・環境に関するこの業界の問題意識の希薄さが見て取れますが、実際このような企業がほとんどなのかと思うと何やらガッカリです。自動車、電子機器など、他の業界での有害物質排除・削減の取り組みとの温度差もあるようです。しかし消費者の立場から考えると、業界による安全度が違うというのは結果から見た監督省庁の行政品質が悪い、ということでもあります。何とかならないものでしょうか…。


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長野の建築事務所で火災、塗料の自然発火の疑い/市消防局

 15日午前2時ごろ、長野市の建築事務所兼工場から出火、1階の46平方メートルと建物内においてあったベニヤ板、ペンキ、工具などを焼きました。
長野中央署や市消防局が調べていますが、同消防局は工場内に置いてあった綿布が火元と見ています。同消防局の調査では、布に空気に触れて酸化する際に発熱する成分を含んだ塗料が付いており、自然発火した可能性があると見ています。


 同様の火災は過去にもたびたび発生、今年3月のASPニュース135号でも紹介しましたが、平成16年11月にヒマワリ油を主成分とした木用塗料を使用し作業を行った後、拭き取ったウエスから自然発火したと思われる火災事故が2件発生しています。独立行政法人「製品評価技術基盤機構」では、近年、環境などに配慮して天然素材の油を使った塗料が商品化されており、この油分が酸化の際に発熱するのが原因とみています。
建築現場では塗料の危険性は理解されているものだと思っていましたが、今回のように建築事務所での火災もあり、まだまだ理解が進んでいないようです。一般家庭でも日曜大工で使ったペンキの後始末のときには、少量であっても注意すべきでしょう。 またテレビニュースなどでも取り上げて、注意を促してもらいたいものです。

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やせ薬服用で女性死亡/タイ製、国内未承認の成分検出

 厚生労働省は1日、インターネットで取引されているタイ製のやせ薬「ホスピタルダイエット」を服用した神奈川県内の20代の女性が死亡したと発表しました。同商品が原因と疑われる死亡例は初めてのことだといいます。また国内未承認の向精神薬も検出されたことから、厚労省は同製品の服用中止を呼びかけるとともに、麻薬および向精神薬取締法違反の疑いで約30の個人輸入代行業者に対し、ネットでの取引や広告の中止を求める警告メールを送りました。


 厚労省などによると20代の女性は今年6月に死亡、死因は急性心不全だったといいます。しかし女性が錠剤やカプセル剤の薬を多数持っていたことから、女性を診断した医師が神奈川県に検査を依頼したところ、8種類の薬から「ビサコジル」「乾燥甲状腺」「ヒドロクロロチアジド」「フルオキセチン」「ジアゼパム」「フェンテルミン」の6種類の医薬品成分を検出、このうちジアゼパムとフェンテルミンは向精神薬で、フェンテルミンは国内未承認のものでした。


 ホスピタルダイエットは「ニューホスピ」や「ドクターダイエット」などの商品名でも出回り、これまでに兵庫、広島、徳島の3県で3人の健康被害例が出ていました。
取引の主な舞台はネット上で、個人輸入代行業者のホームページには「強いダイエット効果」「ダイエット後のスリムな体形を維持」との宣伝文句が並び、1セット(約200錠)1万5000円前後で取引されているようです。


 個人が輸入する商品の中には危険なものも多いことが明らかになっていますが、商品購入動機となる宣伝などの文言に対する規制もなく、被害か出ているのにも関わらず成分調査もしてこなかった厚労省は国民の健康を考えているのでしょうか。今回のように、個人に「安全」と誤解させるような宣伝などに対し警告だけでは不十分であり、人を死亡させる大きな原因を作った個人輸入代行業者に対して厳しい罰則が必要だったと思います。

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犬インフルエンザ、米で拡大

 アジアで鳥インフルエンザが猛威を振るっていますが、米国では馬のウイルスが変異した「新型犬インフルエンザ」が、複数の州でレース犬や飼い犬に広まり問題になっています。これは米疾病対策センター(CDC)やフロリダ大の研究者が26日、明らかにしたものですが、感染犬の8割は軽い症状で済み、症状が全く出ない犬もいるといいます。致死率は推定5−8%となっていますが、このウイルスは馬で40年以上前から検出されていたものの、人への感染例の報告はないことからCDCは「過度な心配は必要ない」としています。


 新型犬インフルエンザの発見は昨年1月、フロリダ州のドッグレース場でグレーハウンド22頭に発熱やせきなどの症状が出て、8頭が肺炎などで死んだのがきっかけで、ウイルスは馬のウイルスとそっくりのA型インフルエンザ(H3M8型)でした。犬はインフルエンザにかからないと考えられてきましたが、馬のウイルスのアミノ酸が数個変わっただけで感染するようになったようです。


 人間の管理下における畜産動物に、様々なインフルエンザが感染・拡大する事件が相次いでいますが、人への感染が今まで無かったから安全、ということにはならないでしょう。人工的な環境での飼育方法による動物のストレスなど未解明な部分も多く、我々の計り知れない原因があるように思います。今後も人にリスクの及ぶウイルスの発生・拡大が心配されます。

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運転にぶるイヤホン型/ハンズフリーの携帯電話

 運転中に使う携帯電話のハンズフリー装置は、広く普及しているイヤホン型だと、異常時の運転者の反応がスピーカー型よりも大幅に遅くなることが大同工業大の鈴木桂輔助教授の実験で分かりました。
昨年11月の道路交通法の改正で運転中の携帯電話の使用が罰則対象になり、手を塞がずに携帯電話で通話するハンズフリー装置を使う人が増えています。装置には携帯電話につないでイヤホンで声を聞くタイプと、ラジオに電波を飛ばして車内スピーカーで聞くタイプがありますが、市場の9割以上をイヤホン型が占めているといいます。


 実験は20−50代の男女計40人が、運転を模擬体験する「ドライビングシミュレーター」で、前方180度の視界の中で無作為に光る電球に気付いたらハンドルのボタンを押し、その反応時間を計測したものです。その結果、会話無しの場合は平均1.90秒であったのに対し、スピーカー型では2.48秒かかり、これは同乗者と話しているときの反応時間とほぼ同じ結果でした。ところがイヤホン型では3.08秒かかり、スピーカー型より24%遅れる反応を示したものです。


 鈴木助教授は「イヤホン型は片方の耳で相手の話を聞き、もう片方の耳で周囲の状況音を聞かなければならないので心理的な負担がかかり、視野が狭くなる」と話しています。


 また、65才以上の高齢者20人で同じ実験をした場合では、スピーカー型でも反応時間は大きく遅れ、装置による大きな差は見られなかったといいます。
このことから高齢者が同時に2つ以上の動作・操作をすることの危険性がうかがえます。高齢者の運転では、自らにおよぶ危険と加害者になるリスクがいつも隣り合わせにあることを認識、何かをしながらの運転、車内でのおしゃべりに夢中になってはいけないなど、注意すべきことは多いです。

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飲酒運転、携帯で見抜く/名鉄などが装置開発・販売

 名古屋鉄道とグループのメイエレック、そしてITベンチャーのエクジットは、携帯電話で遠隔地にいるバス運転手のアルコール検査ができる装置を開発、12月に発売することが6日、分かりました。
バス業界では運転手の酒気帯び運転が全国的に多発するほか、名鉄でも一昨年、無免許運転の隠ぺい事件が発覚、運転手の規律保持の徹底は業界全体の課題となっています。


  今回開発された装置は、携帯電話の外部端子に、呼吸器中のアルコール濃度を調べるチェッカーを接続し、通話口で運転手が吐く息を検知、アルコールの有無を音声に変換し、2種類のメロディーで通話先に知らせるものです。また音声案内に従ってしゃべるだけで、アルコール数値を周波数に変換、パソコンに自動的に記録できるソフトも開発しました。


 路線バス会社では、各営業所で勤務前の運転手にアルコール検査を行いますが、貸し切りバスの場合、観光地の旅館などに外泊、そのまま乗務する運転手も多いことからチェックが行き届かない面がありました。
本人確認に課題はありますが、一定の抑止効果があるとして観光バス大手や、はとバスが試験運用を始めるなど導入を検討するバス会社も出てきています。


 運転手にとっては「管理されている」というストレスが増えますが、今までルーズであったことと、乗客の安全のためには仕方がないようです。管理が非常に厳しいという航空会社でも今年5月、乗務前12時間以内に飲酒したという問題がありましたので、バス業界に限らずできるだけ多くの企業に採用してもらいたいものです。

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企業の社会的責任、消費者の6割不満/日本環境協会調査

 消費者の約6割はメーカーなどの企業に対し「(法令遵守などの)社会的責任を果たしていない」との不満を感じていることが21日、日本環境協会がまとめたンアケート結果で分かりました。「自動車のリコール隠しや農協の農産物不正表示などが相次いだことが影響している」と同協会では分析しています。


 調査は昨年12月から今年2月にかけて消費者1800人を対象に実施、有効回答数は1684人(93.68%)でした。
食品や自転車、家電製品などを製造販売する企業が社会的責任を果たしているかとの質問に対し「全く果たしてない」「あまり果たしてない}を合わせると57.9%で、「ある程度果たしている」と「十分果たしている」を合わせても24.3%でした。
さらに、企業が社会的責任を果たすために必要なこととして、「責任を果たさない企業の商品を買わない」との意見が43.6%でもっとも多く、「法律や取り締まりを厳しくする」(19.5%)、「企業の自発的な管理強化、取り組み」(14.2%)が続きました。


 報道される企業の不祥事が相次いでいることから、消費者の目は厳しいものがあります。もちろん優良企業もあるでしょうが、大手企業が招く不祥事が次から次へと多すぎます。これは「見つかるはずがない」「見つからなければいい」「他社もやっている」などの犯罪者心理にも似た言い訳が、企業・個人の思考回路に埋め込まれているに違いありません。江戸時代の寺子屋、戦前の修身などにあった「道徳の教え」が戦後途絶えたことから、現在はモラル崩壊社会などとも言われますが、全ての企業は、今回の調査データを重く、そして真摯に受けとめてもらいたいものです。


 消費者ウケするイメージ先行で企業の顔を化粧するのではなく、企業の社会的な存在意義などを消費者に分かりやすく、実践する姿を見せてもらいたいものです。

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タバコの陳列禁止/タイ、店頭から姿消す

 タイの小売り店でタバコの陳列販売が24日から禁止され、国際空港の免税店を除く全国の店頭からたばこが姿を消しました。
陳列販売の禁止に伴い、たばこを売る店は「たばこ販売」などと書いた紙を1カ所だけ表示できますが、違反者には最高で20万バーツ(約54万円)の罰金が科せられます。


 タイでは法律でたばこの広告や販売促進が禁止されていて、タイ政府は今年3月にたばこのパッケージに肺がんなどに苦しむ患者の写真の印刷を義務づけています。陳列販売の禁止はこれに続く措置で、同政府は「小売り店での陳列も宣伝に当たる」と判断、たばこを店頭に並べることも禁止しました。


 非喫煙者から見れば、タイ政府の判断には拍手を送りたくなりますが、このような諸外国のたばこ規制は罰則を伴う法律のため、その効果が顕著に現れます。しかし我が国では罰則が伴わない健康増進法しか法律がなく、店の努力目標に期待するだけです。
喫煙する姿をテレビでよく見かける政治家にとっても、現状追認を望んでいるのかも知れません。たばこ問題に限らず、業界・業者に甘い法律ばかりですが、社会環境の品質に無関心な国民が多い現状では、政治も変わりようが無いのかも知れません。

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終わりに

 最近は健康に良いからと玄米が見直され、五穀米のごはんなどを食べる人が増えてきました。これはこれで結構なことだと思いますが、健康に悪いと考えるあまり、副菜に油や肉を摂らない人もいるようです。
それは肉類と油脂類の多い欧米化した食事を続けていると、いつか健康を害するのではないかという不安が原因のようですが、粗食で健康を害したり寿命縮める恐れもあると言われているので注意しなければなりません。


 かつての日本人の食事の歴史を見ると、肉や油なしで塩辛い漬け物やみそ汁をおかずにごはんをたくさん食べる食生活を続けていました。そのため明治時代の平均寿命は37歳代、大正時代は40歳代で、昭和22年にやっと50歳を超えることができたのです。


 もちろん長寿の妨げとなったのは生活環境が悪かったこと、医療が発達していなかったことなどがいくつか挙げられますが、最大の原因は食事内容の悪さだっただと言われています。
それは動物性たんぱく質と脂肪が不足した炭水化物一辺倒のアンバランスな食生活を続けることで、早く老化し脳の血管が弾力性を失い、もろくなり、ちょっとした血圧上昇で血管が破れ脳卒中を起こしたいうのです。
中高年の人の中には粗食が健康に良いと思い込んでいる人がいますが、そうではなく粗食は長寿を阻むと考える必要がありそうです。加齢により自然と食事量は減ってきますから、魚、肉などを積極的に摂っても、その量はそれほど多くはならず、バランスを考えた美味しい食事を摂るほうが残りの人生も豊かになるような気がします。

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