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2005.12 No.144  発行 2005年12月18日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。



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11月のニュースから

■死亡の操縦士を書類送検へ/長野の取材ヘリ墜落事故

 長野県南木曽町の木曽川河川敷で昨年3月、信越放送がチャーターした中日本航空のヘリコプターが墜落、乗っていた記者ら4人全員が死亡した事故で、長野県警は11日、男性機長(当時53)を業務上過失致死などの疑いで被疑者死亡のまま書類送検しました。

 調べでは、ヘリは2004年3月7日午前9時50分ごろ、国道19号で起きた交通事故の取材のため高度約150メートルの低空を水平飛行中、ローター(回転翼)が送電線に接触して墜落、県警は、機長が現場付近に送電線があることを知っており、注意して飛行していれば事故は防げたと判断したものです。

 今年3月に公表された事故調査委員会の報告書は@現場の送電線に航空法で定められた目印が付けられておらず、発見が難しかったA高度を下げた際、機長らの機外の見張りが不十分だった――などを指摘しています。

 ASPニュース2004年4月号で伝えたように、法律で義 務付けられた標識が送電線に設置されていなかったことが事故の大きな原因だったのですが、機長の運転ミスとして片付けられてしまいました。
  中電がコスト増を招く標識設置について消極的で、かつ法律を都合よく解釈していたことを追認したもので、法律違反をそのまま放置していた国のいずれも責任が問われなかったことになり、法律の趣旨・目的から逸脱する解釈がまかり通るような、そんな前例が増えたようで残念です。


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松下製温風機でまた中毒死/経産省、初の緊急命令

 松下電器産業は29日、欠陥があるため点検、回収を進めている石油温風機が、今月下旬に不完全燃焼を起こし、長野県上田市で2人が一酸化炭素(CO)中毒になり、1人が死亡しもう1人は現在も重体で入院中であると発表しました。

 この事故を含め今年に入って、福島や長野で計4件、9人がCO中毒になっており、経済産業省は消費生活用製品安全法に基づく初の緊急命令を出し、松下電器に対し回収修理を急ぐとともに周知の徹底を指示しました。

 松下電器によると約15万台の点検・回収対象のうち、10万台弱の持ち主が判明しておらず、今後新聞広告やテレビCMで注意を呼びかけるほか、利用者の多い北海道、東北、長野で周知徹底を強化するといいます。
12月に入りニュースはまだまだ続きます。

 松下電器産業は5日、欠陥があるため点検、修理を終えた石油温風機を使っていた山形市の男性(82)が不完全燃焼によるCO中毒となった、と発表しました。男性は重体で現在も入院中だといいます。

 さて顧客を特定できない原因の一つに、同社が行った顧客名簿の処分があります。同社はこの1年、個人情報保護法施行やセキュリティー重視の風潮が高まる中、顧客名簿の処分を積極的に進めていたことから、危険な温風機を所有している顧客の特定が難しくなっています。

 同社は9日、相次いでCO中毒事故を引き起こした石油温風機を修理した後も、ホースが外れるケースが全国で13件起きていたと発表、修理マニュアルに不備があったことを認めました。修理ミスが多発していたにもかかわらず、現場から報告は上がってきておらず、社内の連絡体制の不備も露呈しました。

 修理済みの温風機では新たに岩手、宮城、群馬、長野、奈良、福岡、熊本の7県でも修理後にホースが外れていたことが分かりました。いずれも人的被害はなかったといいます。

 松下電器の林義孝専務は記者会見で「マニュアルに不備があったことは間違いない」と話し、マニュアルには「(ねじを)軽く締め付ければ十分」と記載していたといいます。

 13件のうち8件は、山形市の事故以前に修理ミスが見つかっていましたが、上層部に報告はなかったといいます。林専務は「(社員に)危機意識が欠けていた、と反省せざるを得ない」と述べています。

 松下電器、というブランドで家電製品を買う消費者は多いと思いますが、このようなドタバタ劇を演じる企業とは思っていなかったのではないでしょうか。しかも設備に類する商品の顧客名簿の処分、というのはどうなのでしょう。

 新しい法律によりリスクが増す、と考えての対応だったと思うのですが、そこには顧客の安全を考えたリコールの精神がなかったようです。目先の利益、損失、それだけに目がいくようではブランドが泣きます。個人情報保護法に関して企業の行き過ぎた対応がありますが、それらのほとんどは「我が身を守りたい」というものであり、企業が持つべき顧客に対するサービスの向上とは違う次元の話です。

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美浜原発、配管製品番号改ざん/三菱重工作業員、接続ミスに気付き

 昨年8月に起きた関西電力美浜原発3号機の死傷事故で、破裂した配管の交換工事を請け負った三菱重工業の作業員が配管をつなぎ間違え、気付いた後に配管に刻印されていた固有の製品番号を削って正しい配管の番号に改ざんしていたことが9日、分かりました。

 関電の検査員が気付いて正しい配管に直させましたが、経済産業省原子力安全・保安院は「品質管理上の重大問題だ」として調査を開始、10日から始まる同原発への立ち入り検査で調査員を3人増やし、関電から詳しく事情を聴くことにしています。

 昨年夏の事故は関電の品質管理に問題があったのが原因で、保安院は関電の管理体制が改善されない限り運転再開を認めない方針でいることから、同原発の再稼働にも影響することでしょう。

 製品番号は製造履歴を確かめるのに不可欠な情報で、保安院担当者は「うっかりミスでは済まない問題。関電も発注者として厳しさが足りないのではないか」と批判しています。

 保安院電力安全課によると、ことし2月、三菱重工業高砂製作所で、作業員が間違って同じ形の別の配管を溶接、上司にやり直しを命じられたのですが、配管に刻印された製造番号をやすりで削り、番号を刻印し直して改ざんしたといいます。

 作業員の判断で同じ形状であれば問題ない、として刻印を改ざんする、というのは同社の“人”の育成に問題があるのでしょう。しかし、作業員にやり直しを指示した上司が、その結果を確認してなかったとなると、これは同社の基本的なシステムが機能していないことにもなります。高度な品質システムが必要な原発の作業にあたり、三菱重工の管理体制はどうなっているのでしょう。緊張感がないと言うより、同社の隠ぺい体質、そしてずさんな作業チェックが当たり前になっているようです。

 改ざんに関する事件としては2004年8月、同社による88式地対艦ミサイルの改良型「SSM1改」の開発ミス問題がまだ記憶に新しいものです。それはいいかげんな設計図を基に作られた治具を使用した強度試験の、でたらめなデータを防衛庁に「問題なし」と報告していた 不正事件でした。

 造船関係でも問題があり、2004年5月の建造中のフェリー「はまなす」の火災事故、その前の2002年10月には「ダイヤモンドプリンセス」の火災事故が同じ造船所で起きていて、三菱重工における品質システムの信頼度は低いままです。

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バリウム服用後に4人死亡、消化管に穴/高齢者は注意、厚労省注意喚起

 胃や腸のエックス線撮影で硫酸バリウム製剤を飲んだ後、消化管に穴が開く例が2000年以降に27人報告され、うち4人が死亡していたとして、厚生労働省が24日発行の「医薬品・医療機器等安全性情報」で注意を呼び掛けました。

 死亡したのは50から70代の男女4人で、2001年から2005年にバリウムを服用後、消化管に穴が開き、腹膜炎を併発するなどしたものです。厚労省は、高齢者は消化管の機能が低下しバリウムが排せつされにくい上、組織自体も弱くなっており、バリウムの重みで消化管が傷みやすいためとみています。同省が発表した副作用事例として次のようなものもありました。

 30代の女性は職場検診で初めて胃のエックス線検査を受け、硫酸バリウムを400グラム服用したところ、1時間後に下痢が数回あり、首に赤い発疹が出てしまいました。女性はそのまま職場に戻りましたが、体や手足にも発疹が広がり、服用3時間後に血圧が低下して呼吸が苦しくなったことから医療機関を受診、急性アレルギー症で入院したといいます。その後、服用6時間後に呼吸が楽になり、翌日退院できたといいます。この女性はエビ・カニのアレルギーがあったのですが、硫酸バリウムとの因果関係については明らかになっていません。

 人間ドックなどでも良く利用されるバリウムですが、服用前のアレルギーに関する説明など多くの病院では行っていないようです。

 食品のパッケージ表示にもアレルギーに関する表記が増えてきている現状から、健康予防・処置に対する最前線にある医療機関では、バリウムアレルギーに関する説明を常に行うべきでしょう。

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新型ATSに設定ミス/JR西、こっそり改修

 JR西日本は1日、京阪神地区の主要路線のカーブなど計374カ所に設置した新型列車自動停止装置(ATS−P)のうち、8路線計96カ所で速度の設定ミスがあり、30カ所では制限速度を超えてもブレーキが作動しない状態になっていたと発表しました。

 また設置以来15年間もミスが放置されていた場所もあったというから驚きです。
同社は9月初めにミスに気付き、10月中旬に改修工事を終えながら「調査に時間がかかる」として約2カ月間も事実を公表していなかったものです。尼崎JR脱線事故で批判を浴びた同社の安全軽視の姿勢やミスを速やかに公表しない体質が、あらためて露呈してしまいました。

 速度超過しても減速しない設定だったのは、片町線で13カ所、東海道・山陽線で9カ所などで、山陽線の1カ所では、制限時速45キロのカーブを80キロで通過できるという恐ろしい状態でした。

 同社は年2回検査をしていましたが、入力データの確認はしていなかったといいます。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が9月上旬、ATS−Pの動作記録の提供を求め、同社が収集する過程で設定ミスが判明したものです。

 同社がこれらの設定ミスの発覚を「ありがたいこと」と思っていればいいのですが、単なる「恥」として捉えているようであれば、いつまでたっても体質は変わらないでしょう。同社がこのことを2カ月間も公表しなかったことから、後者の考え方かも知れません。

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ステーキ、実は「成型肉」/公取委、フォルクスに排除命令

 牛の内臓肉などをつなぎ合わせた「成型肉」を使っていることを表示せず「ステーキ」として販売したとして、公正取引委員会は15日、景品表示法違反(優良誤認)でステーキ店チェーン大手の「フォルクス」に表示を改めるよう排除命令を出しました。飲食業者への排除命令は初めてだといいます。

 公取委によると、フォルクスは今年3月8日から9月6日までの間、全122店舗で販売した「ビーフステーキ焼肉ソースランチ」など5種類の商品に、内臓肉や脂身を加工して形を整えた成型肉を使っていたのにメニューやチラシで明示せず、1枚肉であるかのように表示していたといいます。期間中に5商品計約414万食を販売し、約5億4000万円の売り上げがあったということです。

 メニューには実際に1枚肉を使ったステーキや、成型肉を使い「あらびきビーフ100%」と明示した商品も一緒に掲載されていたため、公取委は、「一般消費者には見分けがつかず、5種類の商品を実際より良質のメニューと誤認させる表示になっている」と判断したものです。
  公取委の調査を受け、フォルクスは9月7日からこれらの商品の販売を中止しています。

 日本の企業・事業者はいったいどうなっているのでしょう。見た目で分からなければ何でもあり、ということでしょうか。最終消費者によるスペックの確認できないもの、いわゆる農産物、加工食品・飲料水、はたまた建築構造物に至るまで偽装のオンパレードです。個人の責任逃れから企業体そのものの不正が多すぎます。これらはもうモラルの欠如という軽いものではなく、我が国にまん延している「道徳心」の欠如のような気がします。戦後の経済発展とともに置き忘れた人としてのあるべき姿、それは親が教育・しつけを放棄した結果だと思います。

 そのため仮に対策を講じても、世代交代する数十年もこのような不正が続くことになるのでしょうか。“恥”を知らない日本人の姿がここにあります。

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食品の有害物質含有調査/農水省、来年度からリスクを分析

 農林水産省は食品に含まれる毒物について来年度から広く実態調査に乗り出すことにしました。食品に混入している様々な物質のリスクを分析し、リスクの高い物質は製造業者などに含有量を減らすよう指導し事故を未然に防ぐのが目的です。これまでは事故が発生してから調査や分析をしていましたが、BSE問題を契機にリスク管理を徹底し、食の安全を確保したいとしています。

 主要な有害物質の使用はすでに規制されていますが、それ以外でも食品に微量ながら含まれる可能性のある有害物質があるため、その調査を本格化するものです。有害物質の危険度を科学的に把握し、どれだけ摂取すると被害が出るか許容量を算出、含有量をゼロにできない場合はどの程度に抑えれば安全かをはじき出します。

 人体に有害である確証が得られなくてもリスクのある物質が見つかった場合、農水省は製造業者にその物質の含有量を減らす目標値の設定を求め、それを守るよう働きかけるとしています。ただ製造業者が定める目標値にどの程度の科学的根拠が存在するのか、不安材料もあります。

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小海線でハイブリッド列車、世界初運行/JR東

 JR東日本は8日、蓄電池とディーゼルエンジンによる発電機を組み合わせたハイブリッド列車を開発し、2007年夏から小諸市と山梨県小淵沢町を結ぶ小海線で、世界で初めて営業運転すると発表しました。

ハイブリッド列車は、車両の屋根にリチウム蓄電池を搭載し、蓄電池の電力で発車、ディーゼルエンジンからの電力を合わせて加速して走行する仕組みです。減速時には車輪を動かすモーターを発電機として利用し、効率よく電力を蓄えるものです。

エンジンも最新の排ガス対策を施したものを使い、現行ディーゼルエンジン車より使用する燃料を約1割、排出する窒素酸化物(NOx)を約6割減らし、駅停車時はエンジンを止めるため騒音も小さいといいます。

小海線での営業に向け、同社は3両を製造する予定で、1両の製造費は約1億9000万円ですが、同線で燃費や蓄電池の性能などを確認した後、他地区への導入も検討しています。同社長野支社は「ハイブリッド列車は、空気がきれいで自然豊かな高原のイメージとマッチしている」と小海線への導入理由を説明しています。小海線の、あののどかな風景には環境破壊の少ないハイブリッド電車は宣伝効果もあり雰囲気にふさわしいものです。日本全国のローカル線、そして通勤電車へと続いて欲しいものです。

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路上につばで過料/北九州市、モラル条例検討

 北九州市は17日、路上につばを吐いたりゴミをぽい捨てするだけで、その場で過料を徴収する全国的に最も厳しいモラル条例を検討すると発表しました。歩きたばこや犬のふんの放置を罰する条例はありますが、庶民のモラル違反を包括的に条例化し直接罰を課するは究めて珍しいものです。

 同市は2006年9月までに骨子をまとめたい意向で、対象となるモラルの範囲や規制の方法と程度、実効性を持たせる仕組みを検討するとしています。

 検討する項目は、ゴミや空き缶・たばこの吸い殻などのポイ捨て、歩きたばこ、路上につばやたんを吐く行為、違法な屋外広告などのほか、路上や電車内などで座り込んだり酒に酔って迷惑をかける行為、野良犬や野良猫に餌をやる行為なども含まれるとしています。

 個人では注意しづらいこれら迷惑行為ですが、欧米先進諸国のように大人の社会になりきっていない我が国、公共空間における社会マナーの欠如が当たり前の状態では、歓迎すべき条例だと思います。
罰則がなければ人の迷惑を顧みない国民が多すぎるのが問題であり、このような条例が検討されるのも自分達の日頃の行いが招いたということでしょう。「言えば分かる」という人が少なくなった現在に合った制度として、他の自治体でもぜひ検討してもらいたいものです。

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