1995.3 Vol.15  発行 1995年3月27日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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製品事故原因究明体制を整備/PL法対応で10月通産検査所を衣替え
家電製品PLセンター開設
火元投光器か/上田のタンク炎上 プラグが外れ火花
ステンレス容器またボヤ起こす/東京・杉並
「苦み」で誤飲防止/タカラ PL対策の新手法
筆記具各社「安全キャップ」増やす/誤飲しても息ができる形
カップめん訴訟和解/日清食品と東洋水産
ポイ捨てに罰金/川崎市が条例案
画面切り替え人の速度に合わせます
「著作権」見直しへ指針/文化庁会議が報告
一方的ファクス広告違法/米連邦高裁判決

2月の新聞記事より

■製品事故原因究明体制を整備/PL法対応で10月通産検査所を衣替え

 通産省は製造物責任(PL)法の7月施行に対応して、製品事故の原因究明体制の整備に乗り出す。このため10月に通産検査所を「製品評価技術センター」(仮称)に改組して、製品の発火燃焼、破壊、寿命といった事故原因の実証結果のデータベース化や試験評価方法の開発などを新たに行う。また全国に約300ある地方自治体の消費者センターと連携して、苦情の実態把握やセンターへの技術ノウハウの提供、人材育成などを進める。同センターではこのほか、化学物質審査規制に関する技術基盤整備やバイオテクノロジーの基礎研究にあたるため、改組に合わせて全国の22支所・出張所を11カ所に統合、人材と設備機器の重点的配備を行う考えだ。

 国民生活センターや消費生活センターは経済企画庁が所管しています。今回、通産省が示した方針から、複数の省庁の原因究明機関で得た情報は、相互に利用できるようになると思われます。

■家電製品PLセンター開設

 家電製品協会(理事長・北岡隆三菱電機社長)は7日、7月1日からのPL(製造物責任)法施行を前に、家電製品事故に関するトラブルを調停する「家電製品PLセンター」を東京に設置する、と発表した。
 3月1日から相談の受け付けを開始するほか、メーカーと消費者の当事者同士の話し合いで紛争が解決しない場合に「裁定」を依頼する審査会、裁定委員会の活動を4月3日から始める。
 関連業界団体10団体からの出資金と通産省からの補助金で運営し、1995年度の予算は7000万円を予定している。1年間の処理件数を約4000件と見込み、うち約1割は裁定が必要とみている。「相談・あっせん部門」にカウンセラーなどを配置、[裁定部門」に弁護士など専門家からなる審査会と案件ごとに最終判断する裁定委員会を置く。審査会の指示で動く調査員20人が事故原因の究明などに当たる。利用料金は、相談部門が無料、裁定部門は消費者とメーカーがそれぞれ1万円で調査・実験費用などは実費負担。受け付けは土、日、祭日を除く午前10時から午後4時まで。フリーダイヤル(0120)551110

 通産省、経済企画庁の各相談窓口や、業界団体によるPLセンターなど、消費者のための相談窓口が増えてきました。
 消費者がそれぞれの窓口を選択できるのはいいのですが、トラブルのケースによってはどこに相談するのがいいのか分からない人も多いと思います。
 複数の原因究明機関に調査を依頼することで、調査結果の信頼性を高めることもできますが、無駄なこともあるかも知れません。
 それぞれの機関の役割や専門性を熟知し、相談できるコーディネーターが求められるでしょう。消費生活アドバイザーがその立場上適任だと思いますが、はたしてどうでしょうか。
 あるいは各相談所で「不得意な分野」をはっきり説明し、他の窓口に紹介するような配慮が必要になるのでしょう。

■火元投光器か/上田のタンク炎上 プラグが外れ火花

 作業員3人が死亡、1人が重体になっている昨年10月9日の上田市下塩尻のモービル石油上田油槽所火災で、上田署と県警は4日までに、鑑定結果などから、「火災の原因は作業中に使っていた投光機のプラグがコンセントから外れた際に火花が出て、タンクから流出して気化していたガソリンに引火した」との見方を強めている。
 調べだと、同油槽所では、現場付近の高さ2メートルほどの位置に、白熱灯を使った投光機1台を設けていた。このプラグにはアースを含め3つの接続部分があるが、プラグを差し込む電気コードリール(通称ドラム)のコンセント側はアース穴の無い二つ穴のタイプだった。
 このため、プラグが十分差し込めない不安定な状態で投光機を使っているうちに、台のプラグが外れ、コンセント部分から火花が出た可能性が高いとみている。
 同油漕所は「ふだん電気工事関係では二つ穴、配管工事では三つ穴のドラムを使っていたはず」としているが、不安定な状態で投光機を使っていた理由は、工事責任者らが死亡しており、まだ分かっていない。

 作業現場では指定された備品、工具が使用されないことはよくあることです。しかし、「危険の接近情報」があれば、作業員が危険を冒してまで標準作業を無視することはあまりありません。
 事故後には各作業の安全管理の徹底を図ったのでしょうが、時間がたつにつれて意識の隅に追いやられてしまうものです。
 ガソリンの異常流出を知らせる警報センサを取り付けるなど、根本的な対策が望まれるところです。

■ステンレス容器またボヤ起こす/東京・杉並

 東京都杉並区の住宅で、ベランダに置いてあったステンレス製の洗面器が太陽光線を一点に集める収れん現象を起こし、中にあったタワシが燃えるボヤがあったことが25日、東京消防庁の調べでわかった。1月にも江戸川区内のマンションでステンレス製ボウルが同じ現象で燃えるボヤがあり、同庁では「日差しの強い日には、ステンレス製容器の扱いに十分注意してほしい」と話している。
 同庁によるとボヤがあったのは今月23日午前9時40分ごろ、杉並区久我山の鉄筋コンクリート4階建ての都営住宅の1階ベランダで、洗濯機の上にあったステンレス製の洗面器(直径約35センチ、深さ約12センチ)の中のタワシから煙が出ているのを住人(58)が見つけた。
 同庁の実験で、ステンレス容器の反射で太陽光線が燃えやすい物に焦点を結ぶと、数分後に燃え出すことが判明している。都内では、こうした収れん現象で年に2、3件のボヤが起きており、同庁では「ちょっと目を離したすきに、大きな火事につながる可能性がある」と注意を呼び掛けている。

 猫よけのための水の入ったペットボトル、金魚鉢、凹面鏡などが火災の原因としてたまに話題になります。
 このような安全に関わる身近な生活情報は、ニュースとして一般に知らせるだけでなく、教育現場でも「大事なこと」として教える必要があるでしょう。
 試験に出してもおかしくないと思います。

■「苦み」で誤飲防止/タカラ PL対策の新手法

 タカラは7月の製造物責任(PL)法施行に備え、子供の誤飲対策として味覚に訴える新手法を採用する。子供が誤って飲み込む可能性のある小さな部品や付属品の表面に、強い苦みを感じるレジンの層を作るもので、PL対策に化学的手法を取り入れるのは玩(がん)具業界では初めてという。
 タカラが採用するのは、なめるときつい苦みを感じるレジンを小部品などの表面の樹脂層に練り込む手法。子供が口にいれて舌に触れた瞬間、強い苦みを感じて、飲み込む前に口から吐き出したくなるという。レジンは歯科材料にも使われており、今回も人体に影響のない素材を用いる。半年間研究したもので特許を出願済み。
 レジン処理を施すのは、ボードゲームのコマや着せ替え人形の小物、プラモデルの部品など、同社の商品の小部品や付属品などのうち約10%。4月以降発売する新商品に加えて、継続して販売する定番商品についても3月末までに商品の安全性を点検して、必要に応じて同じ処理を施す。小部品や付属品のうち、約70〜80%は飲み込めないようにサイズを大きくし、残りは従来通り、万一誤って飲み込んでも窒息しないように気道を確保する穴を付けて対処する。

 タカラは昨年から「PLP準備室」を設置して活動を行っており、この4月にはこの準備室を「PLP推進室」として格上げすることにしています。
 「危険な玩具は売らない」との安全性最優先のポリシーを打ち出し、独自基準に基づき商品チェックを行い4月1日以降出荷する全製品に対応することにしています。また3月末までに旧製品の在庫も処分するという積極的なPLP活動を行っています。
 これら全社的なPLP活動が、今回の具体的な手法に結びついたものと思われます。

■筆記具各社「安全キャップ」増やす/誤飲しても息ができる形

 トンボ鉛筆は今年7月までにすでに発売しているボールペンやカラーペン8種類について、安全キャップに切り替える。今後発売する児童用の筆記具についてはすべて安全キャップを採用、また、すでにある商品についても順次切り替えていく。
 パイロットでは現在、「BP-S」「Vペン」などを安全キャップにしているが、今後発売する万年筆以外の全商品のキャップについて、クリップを付けるなどデザイン面で工夫を加えて安全性を高める。
 筆記具の輸出比率が5割近いぺんてるでは、英国規格を意識して3年ほど前から安全キャップを採用、最近徐々に比率を高めている。筆記具だけでなく修正液やホワイトボードマーカーなどのキヤツプも切り替えを始めた。

 筆記具各社とも海外の厳しい安全基準について熟知していながら、国内の対応はあまり進めてはいなかったようです。
 世界各国の安全技術を検討して、自国の消費者にまず提供し信頼を得るという企業ポリシーが必要だと思いますが……。
 PL法施行を前にした各企業の動きを見ていますと、今まで本当に「顧客の満足」を求めていたのか疑問に思います。

■カップめん訴訟和解/日清食品と東洋水産

 日清食品と東洋水産は6日、カップめんのデザインをめぐり両社が起こしていた訴訟を無条件で取り下げ、和解したと発表した。和解理由について両社は「これ以上係争を続けることは業界の発展のためにも好ましくないと考え、係争を終結させることにした」と説明。今後は「互いに知的所有権を尊重しながら、独創的な商品開発に努めたい」(日清食品)としている。
 日清食品は昨年6月、東洋水産の「ホットヌードルシーフード北海道チャウダ−」の外観デザインが、日清の「シーフードヌードル」に似ているとして、製造販売の差し止めなどを求めて大阪地裁に提訴。その後、対象品目を5品目に拡大した。
 東洋水産はこれを受けてデザインを一部変更したが、日清側は訴訟を継続。東洋側も「日清食品に製造販売停止を求める権利はない」との確認を求める訴訟を起こし、争っていた。デザインを変更して現在売られている「北海道チャウダー」は販売を継続する。

 ビール訴訟はこれからですが、カップめん訴訟は無事和解になりました。

■ポイ捨てに罰金/川崎市が条例案

 川崎市は14日、ゴミを町なかでポイ捨てすることを禁止する条例案を市議会に提出した。街路に黒いしみとなってこびりつき撤去が難しいチューインガムの吐き捨てのほか、空き缶、たばこの投げ捨てを防止する。
 特にポイ捨て禁止強化エリアとして繁華街などに新設される「散乱防止重点区域」では、ゴミを投棄したすべての人に対し2万円以下の罰金を科する厳しい内容で、罰金を伴うポイ捨て禁止条例は全国で8番目。来月16日の同市議会議決を経て、7月1日にも施行される見通しだ。
 同市が提出したのは「川崎市飲料容器等の散乱防止に関する条例案」。散乱防止の対象となるのは、ガムのかみかす、飲料水の容器、たばこの吸い殻の3つ。
 道路や公園、河川など公共の場所でガムや空き缶などを捨ててはならないとした上で、メーカー側に回収容器の設置などを義務付けている。散乱防止重点区域は市長が指定する。JR川崎駅前など繁華街が対象となる予定。

 「ゴミを無くす努力」として評価するよりも、「ゴミを見えなくする方法」として考えた方がいいでしょう。
 川崎市はゴミの分別回収には消極的で、粗大ゴミ、電池以外は分別しないで、しかも毎日回収していました。これが川崎市民のゴミに対する安易な感覚を助長し、街が汚くなってしまったのかも知れません。

■画面切り替え人の速度に合わせます

 日立製作所は14日、利用者が操作するスピードに合わせて表示画面の速度を変える現金自動預払機(ATM)「HT-2808レセプション」を開発、16日から発売すると発表した。
 新型ATMはパソコン機能を内蔵しており、CD-ROM(CD利用の読み出し専用メモリー)やテレビ電話を通じて音声や画像を使ったマルチメディアのサービスができるのも特徴。
 入力するスピードが速い人には、素早く次の画面に切り替わり、ゆっくり操作する人に対しては表示速度が遅くなる。
 新型ATMは、IBM互換のパソコンを内蔵しているため、利用者が操作を間違えてもテレビ電話を使って離れた場所にいる係員に間い合わせすることができる。

 たしかに最近のATMはスピードが速くて、急かされるような気もします。また操作を始める前なのに、画面の上に通帳などを置いたりすると「ものを置かないで下さい!」ときつい調子(そういう風に感じてしまいます)で言われてビックリしてしまいます。
 緊急性の低い事態に対しては穏やかな言い方が人をビックリさせないでいいと思うのですが、そこまで技術者は考えないのでしょう。
 与えられたスペックを満足すれば仕事は終わるのでしょうが、使用者の立場に立った物作りは「まだ不十分」ということでしょう。

■「著作権」見直しへ指針/文化庁会議が報告

 マルチメディア時代に対応した著作権法のあり方について検討していた文化庁の専門家会議は14日、現在の法制度の問題点やその対応策、法改正の方向などを報告書にまとめた。デジタル技術やネットワークの発達に伴い著作権法の概念を見直し、権利処理問題についてまとめた初の包括的指針である。同庁はこの報告書をもとに今後、著作権審議会などで議論を進め、国際的な動向も見ながら数年後をメドに著作権法を全面的に改正する方針だ。

■一方的ファクス広告違法/米連邦高裁判決

 【ロサンゼルス1日共同】受け手の了解を得ない一方的な広告のファクス送信を禁じた連邦法は表現の自由の侵害に当たると、米国の企業が訴えていた裁判で、サンフランシスコ連邦高裁は1日、法律は消費者に受信紙代の負担を強いるのを防いでおり、憲法上の権利も侵していないとする判決を言い渡した。
 原告側は「ファクス広告はお金のない中小の企業にとって安上がりで有力な市場参人の方法。用紙代はせいぜい1ページ約2セント(約2円)で、読みたくなければ捨てればいい。不必要な規制だ」と主張していた。
 これに対し、被告側の連邦通信委員会は「用紙代は場合によっては1枚40セントもかかる」などと反論。連邦高裁も「いずれにしても、営利だけを目的とした送る側の行為によって、消費者はいわれのないお金を払わされている」と判断した。

 裁判結果は妥当だと思います。ただ世の中にはほかにも多くの迷惑があります。
 電話による勧誘などで生じる時間のロスと比べると、少しは「まし」とも考えられますが……。

終わりに

 PL法施行を前にして、その場しのぎの対応を考えがちですが、今回のタカラの「苦み」の手法はなかなか良いものだと思います。
 根本的な安全確保の思想が重要であり、消費者行動の中で主観的要素の入りやすい、表示や取扱説明書等での対応は「必要最低限度にする」と心がけるべきでしょう。


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