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2007.4 No.160  発行 2007年4月24日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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3月のニュースから

■ボンバルディア機事故、車輪出ず胴体着陸

 13日午前、大阪空港を出発した全日空1603便(乗客56人、乗員4人)のボンバルディア機が高知空港に着陸する際の車輪が出なくなり、非常用手動レバーによる試みも失敗、同機は着陸時の不測の事態を考慮して空港上空を約2時間旋回して燃料を消費、前輪が出ないまま午前10時54分に高知空港に無事胴体着陸しました。

 事故後の機長は「通常行っている訓練通りに行ったもの」と冷静にテレビなどの取材に応じ、乗客のパニックもなかったことから全日空の緊急時対応レベルに満足したものです。
 国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)の調査官の調べで14日、事故機の前輪を出す格納扉の開閉装置のボルトが脱落していたため、扉が作動しなかったことが分かりましたが、ボルトは見つかっておらず原因は不明のままです。

 調査官によるとボルトが脱落していたのは、前輪が出る格納扉を開閉する際に作動する連結器(金属製、長さ約25センチ)で、この部品の中央で折れ曲がる部分の軸の役割を果たす金属筒(ブッシング、直径約1センチ、長さ3センチ)を固定するボルト(金属製、直径8ミリ、長さ4.5センチ)がなくなっていました。このためブッシングが外に5ミリ以上飛び出して、開閉装置全体を固定している「支持材」に引っ掛かり、この結果、連結器が曲がらなくなり、格納扉が開かなくなっていたといいます。

 連結器は格納扉を開く際、通常レバーの操作では油圧ジャッキで引き上げ作動させるもので、非常用手動レバーを操作した場合には、手動レバーに直結する連結器が引き上げられて折れ曲がる仕組みです。しかし、ブッシングが支持材に引っ掛かったため、いずれの操作でも作動させることができない状態になっていたものです。
同機は2005年製造の新しい機体で、松尾真・調査官は「機体の老朽化は考えられず、ボルトがなぜ脱落したのかはこれまでの調査では不明」とし、「今後さらにボルトの脱落部分などを詳細に調べるとともに、機体の整備記録も踏まえて分析を進める」と述べました。

 電気系統の故障に対応するための手動装置も、油圧ジャッキ以降は同じメカニズムのために機能することが出来ませんでしたが、今の工業製品では起こり得ることです。胴体着陸という手段もあることから、緊急用に小さな爆薬で扉のロックを破壊して車輪を出すようなことはおそらく今後も必要ないかも知れません。そのために大事なのは日常の点検整備ですが、各部品の点検の必要有無や点検サイクルについての今後の検証が必要でしょう。

 メディアでは同社のボンバルディア機事故を契機に、過去の多くの事故が指摘され、同社の品質について不安な材料を提起しています。
さて20日正午ごろ、熊本空港に着陸しようとした天草発の天草エアライン201便ボンバルディアDHC8−100型(乗客15人、乗員3人)が通常操作で車輪が出なくなりました。同機は緊急の手動装置を使って車輪を出し、午後0時12分に同空港に着陸しました。この事故について22日、国土交通省安富事務次官は「天草エアラインの整備士やボンバルディア社の技術者が点検した結果、脚の上げ下げを操作するレバーからの信号を油圧系統に伝達する電気回路の一部に接触不良が発生(回路内のスイッチの端子を留めるネジが緩んでいたための接触不良)したことが判明しました。これによって、脚を操作するための信号が油圧系統に伝達されず、通常操作によっては脚が下りなかった」と報告しました。

 ところが22日、運航を再開した天草エアラインのボンバルディアDHC8―100型機で、今度はエンジンの警告灯が点灯し10便が欠航する事故がありました。原因は同機のエンジンの潤滑油に2ミリ程度の金属片が混入していたことが原因だというものです。同社によると不具合が起きたのは、主翼に左右一つずつあるうちの右側のエンジンで、22日午前の飛行前点検で潤滑油の異常を示す警告灯が点灯したため運航を中止し調べていたもので、昨年10月にも左のエンジンで同様の金属片混入があり交換したといいます。同社は「原因は不明だが、潤滑油のタンクの内壁がはがれ落ちた可能性や、別の機器の部品の混入が考えられる」としています。

 また、高知空港で胴体着陸事故を起こしたボンバルディアDHC8―Q400型の同系統機が過去に海外で7件の胴体着陸を起こしていたことも判明、ボンバルディア社は17日未明、7件の内容を明らかにしました。このうち4件は2005年4月以降に起きており、今回の事故を含めると約2年で5件という極めて高い頻度ですが、国土交通省は過去のこれらの事例を把握しておらず、同機を就航させている全日空の技術部門も情報を全く持っていなかったことも分かりました。

 同シリーズ機は1985年の就航で、過去7件の胴体着陸は87年から今年にかけて発生、機種は100型5回、Q300型2回だったといいます。事故が起きた場所は中米のカリブ、米国、カナダ、南太平洋、欧州で、同社が示した資料には、運航会社や空港名は記されていないとのことです。

 7件とも前脚が出ない状態で着陸していて、96年に米国で100型機が起こした事故は、主脚も片方だけしか出ていない状態で、この時の原因は油圧装置の不具合に加え、パイロットが緊急手動操作を怠ったためとしています。
このほかの原因は、実際には前輪が下りていないのに操縦室の表示板が「下りている」と誤作動した、前脚緩衝装置や前輪のステアリング部分が不具合を起こした、前輪格納扉の連結アームに高い負荷がかかって変形した、などで、高知空港での事故の要因とみられる前輪格納扉のボルト脱落というケースはありませんでした。
同社は、過去7件の事故で負傷者は1人も出ていない(安全性に問題ない)と説明していて、前脚、主脚の全部が機能しなかった胴体着陸は1件もないとしています。

 国交省によると、墜落事故以外の海外の事故情報は基本的に把握するシステムになっておらず、トリニダード・トバゴでの胴体着陸事故(05年4月)だけは高知空港での事故後、一部報道で知ったとしています。
ボンバル機を大量に就航させている全日空も、ほとんど情報を持っていなかったもので、トリニダード・トバゴの事例だけは海外の事故情報などを収集する部門がキャッチしていましたが、ボンバル社とDHC8シリーズの技術改善を共同で行っている技術部門には伝えられていなかったことが明らかになったこともあり、全日空の今後の安全管理の見直しも必要でしょう。

 全日空広報室は「7件というのは聞いていなかった。あらためて驚いている」とし、全日空グループのベテラン機長の1人は「(7件の事故は)初めて知った。日本でこれまでに起きた胴体着陸の件数(過去3件)と比べても、多過ぎる。これらの情報が現場に示されていないことに不信感を持つ」と話していますが、しばらくはこの機体によるトラブルが続き各航空会社の点検・整備の負担が増すようです。

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電力業界の体質が招く原発トラブル頻発

 北陸電力は15日、志賀原子力発電所1号機で1999年、定期検査のため停止中の原子炉の制御棒が誤って抜けて臨界に達し、15分間制御不能になる臨界事故が起きていたと発表しました。格納容器のふたは外れた状態でしたが、放射能漏れなどはなかったといいます。

 事故は当時の原発所長に報告されていたものの、北陸電力は国や自治体に報告していなく、国への報告義務を定めた原子炉等規制法に違反する疑いがあります。経済産業省原子力安全・保安院は同日午後、同社社長を呼んで厳重注意するとともに、1号機の運転を停止して安全を総点検するよう求めました。

 保安院によると、トラブルは1999年6月18日、志賀原発1号機で国の定期検査のため停止中の原子炉で発生、原因は制御棒を動かす弁の操作手順を誤ったためで、制御棒89本のうち3本が抜け、手動で入れ直すまでの約15分間核分裂が繰り返される臨界が続いたといいます。

 本来は自動停止信号が出されて制御棒が挿入され臨界が止まるはずですが、制御棒を動かす圧力が不足していたため緊急停止しなかったというシステムの不備も懸念されます。

 この問題では、発生直後に当時の同原発の所長らが緊急会議を開き、運転日誌に事故記録を残さず国へ報告しないよう決めていたことも分かり、同社の永原功社長は「当時は発電所内で済ませてしまおうという雰囲気があった」と述べ、事故に対する同社の認識の甘さが隠ぺいにつながったとの考えを示しました。

 さて東京電力福島第一原子力発電所3号機で1978年11月、定期検査中に原子炉の制御棒5本が抜け、核分裂が継続的に起こる臨界に達する事故が起きていた可能性が高いことが22日に分かりました。臨界は最大で約7時間半続いたとみられています。同様な事故は79年2月と80年9月にも同原発5号機と2号機でそれぞれ制御棒1本が抜けるトラブルがありましたが、臨界には達していませんでした。

 東電によると78年11月2日に制御棒を固定中、137本のうち5本が脱落し、全体の水圧を調整する弁の操作を誤ったのが原因とみられています。臨界状態は午前3時から午前10時半まで続いた可能性があるといいますが、当時の運転日誌に記録はなく隠ぺいした可能性が高いものです。甘利明経済産業相は23日の閣議後記者会見で、電力会社で制御棒の脱落が相次いで発覚している問題を受け、原子炉等規制法に基づく事故・トラブルの報告義務対象を拡大することを明らかにしました。

 また原子炉停止中、水圧を調節する弁などの操作で制御棒1本以上が意図せずに動き出した場合、報告するよう義務づけることにし、早ければ5月にも省令を改正するとのことです。

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洗濯機発火19件、家全焼も/シャープ、52万台点検修理

 シャープは15日、1998年から今年2月にかけて製造した洗濯機で発火事故が計19件起きたとして、対象機種約52万台を無料で点検、修理すると発表しました。

 さいたま市では住宅が全焼したケースもありましたが、いずれの事故もけが人はなかったといいます。
同社によると、点検・修理の対象は小型全自動洗濯機と二槽式洗濯機で、全自動は98年11月から99年12月に約20万5000台、二槽式は98年6月から今年2月に約31万6000台、それぞれ製造したものです。ただし全自動は2002年4月にリコールした後、2004年にも再社告を行なったものの、点検修理済みの台数は55,000台余りで点検率が26.9%と低く、再々社告を行なうことになったようです。

 全自動洗濯機はリード線が振動で切れて放電、防音緩衝材に着火することが原因で、二槽式洗濯機は、脱水用のふた部分の部品に泡が付いて放電を繰り返すことで、発火の恐れがあるといいます。
 これまで同シリーズで報告されている事故は15件で、洗濯機の一部が焼損した事故が大半を占めますが、2002年2月には、埼玉県で建屋を全焼する事故も起こっています。

 また、リコール後に、福井県敦賀地区で修理した製品について、再度事故が発生したことも再々社告に踏み切った理由だといい、2006年4月「不適切な修理」が原因で敦賀で事故が発生しています。この件が判明したあと、シャープは顧客リストをもとに同地区にある対象製品56台のうち53台を再修理しましたが、残りの3台についてはリサイクルショップで再販されたことがわかったのみで、ユーザーの特定には至らなかったといいます。

 同社では未修理品のユーザーに連絡を呼びかけるとともに、修理済み製品のユーザーについても、ダイレクトメールを送付し、再点検を促す方針で、フリーダイヤルのほかインターネットでも受け付けています。
 ノート型パソコンの電池パック発火をはじめ、他の複数の大手電機メーカーで製品トラブルが相次ぐ中、製造業の品質問題があらためて問われそうです。

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Lenovoが三洋製バッテリー約20万5000台をリコール

 Lenovoは3月1日、三洋電機製のリチウムイオンバッテリー約20万5000台の自主回収を発表しました。  Lenovoおよび米消費者製品安全委員会(CPSC)によると、リコール対象のバッテリーは、落下など、外部からの強い衝撃を受けた際に過熱し、発火する危険性があるというもので、Lenovoは対象バッテリーの無償交換を行うとしています。

 対象となるバッテリーは、三洋製の9セルリチウムイオンバッテリーで、部品番号FRU P/N 92P1131のもので、約10万台が米国内、約10万5000台が米国外で販売されたと見られています。これらのバッテリーが搭載されている可能性があるモデルは、R60、R60e、T60、T60p、Z60m、Z61e、Z61m、Z61pの各シリーズでリコール対象のバッテリーは、これらのモデルの交換用バッテリーとして販売された可能性もあるといいます。

 この自主回収に関して三洋電機は、Lenovoがこれまでに報告を受けた5件の過熱事故はバッテリー自体の不備によるものではなく、特定モデルのノートPCで、バッテリーがある特定の角度から強い衝撃を受けたことが原因だとしています。また回収される電池パックは、レノボの仕様を満たすとともに社内基準のテストに合格した製品だったとのことです。

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10代への「タミフル」処方中止/服用後の異常行動、新たに2件

 厚生労働省は20日、インフルエンザ治療薬「タミフル」の輸入販売元の中外製薬に対し「10代の患者には原則として使用を差し控えること」と添付文書の警告欄を改訂し、緊急安全性情報を医療機関に配布するよう指示しました。

 タミフルを服用した、いずれも12歳の男児2人が2、3月に自宅2階から飛び降りて骨折する異常行動があったことが新たに判明し、10代の異常行動は2月以降計4件となり「因果関係は明白ではないものの、注意喚起を呼び掛ける必要がある」と判断、緊急指示となったものです。

 新たな異常行動はいずれも20日、厚労省に報告があったもので、1例は2月8日未明に12歳男児が素足で外に出て走りだしたケースで、父親が家に戻したものの今度は2階の窓から飛び降り、右ひざの骨を骨折したというものです。もう1例は3月19日深夜以降に12歳男児が突然2階に駆け上がり、母親が連れ戻しましたが、もう一度2階に駆け上がりベランダから飛び降りて、右足のかかとを骨折しケースです。2人ともインフルエンザと診断され、タミフルを服用した後の事故でした。

 厚労省の指示を受け、中外製薬はカプセルとドライシロップで販売しているタミフル2種の添付文書を改訂、10代の患者は、合併症、既往歴などからハイリスク患者とされる場合を除いて原則として使用を中止することや、ゼロ歳から9歳は使用できるが、使用した場合には異常行動の恐れがあることを家族に説明するよう明記することになります。

 タミフルをめぐっては2月、愛知県蒲郡市と仙台市で、服用した中学生がマンションから相次いで転落死したこともあり、厚労省は異常行動の恐れがあることを患者や家族に説明するよう医療関係者に文書で呼び掛けていましたが効果が現れず、ようやくの対策となりました。

 医療現場では特効薬タミフルの処方が中止されることに戸惑いがあるようですが、医師の処方が安易にタミフルに頼り切っていた現状の反省無しに議論されるのも困ります。薬の処方は医師の適切な診断に基づくものでなければなりませんが、実体は「とりあえずタミフルを…」という、多くの医師がいたのではないでしょうか。

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