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2007.8 No.164  発行 2007年8月18日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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7月のニュースから

■欠陥住宅、安全性欠けば賠償請求可能/建設・設計者も、最高裁初判断

 欠陥住宅をめぐり、購入者が売り主だけではなく、直接契約関係のない建設会社や設計者にも賠償責任を問える基準が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(今井功裁判長)は6日、「建物の基本的な安全性を害する欠陥があれば、不法行為に基づく損害賠償を求められる」と、購入者側に有利となる初判断を示しました。

 その上で、建設会社などに賠償責任が生じる要件を「故意に欠陥をつくった場合や、重大な構造的欠陥があるなど違法性が強い場合」に限定して購入者側の請求を退けた2審福岡高裁判決を破棄、審理を同高裁に差し戻しました。

 住宅購入者は売り主に対し、瑕疵担保責任という原則に基づき欠陥の賠償を求ることができますが、直接契約関係にない建設会社などへの責任追及については地裁、高裁段階での判断が分かれていました。
 最高裁が今回、民法の不法行為責任を根拠に追及できる判断基準を明示したことで、直接契約関係にない建設会社も賠償責任を負わされるケースが増えるものとみられます。

 売り主が倒産あるいは資力が無い場合の欠陥住宅問題では、購入者が賠償金を得られず泣き寝入りするケースも多いのですが、今回の最高裁の判断は歓迎できます。

 原告は平成2年5月に大分県別府市で、新築の9階建てマンションを約5億6000万円で1棟買いした親子で、1、2審判決によるとこの親子はマンションを賃貸もしていましたが、廊下やバルコニーに大きなひび割れが見つかり、施工した建設会社と建築士事務所に計約5億2000万円の賠償請求を求めたといいます。

 今井裁判長は「建物は居住者や働く者などの利用者、隣人、通行人の生命や身体を危険にさらすことがないような建物としての基本的な安全性を備えていなければならない」と指摘、さらに「設計・施工者が、建物としての基本的な安全性が欠けることがないよう配慮すべき注意義務を怠り、居住者の生命や身体が侵害された場合は、欠陥の存在を知りながら買い受けていたなど特段の事情がない限り、損害について不法行為による賠償責任を負う」と判示しました。

 1審・大分地裁は、欠陥が不法行為に当たるとして計約7400万円の支払いを命令。しかし、2審は、設計・施工者が不法行為責任を負うのは、故意に欠陥をつくった場合や、建物の基礎や構造にかかわる欠陥に限られると判断し、原告の請求を退けていたものです。

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柏崎刈羽原子力発電所事故

 7月16日の新潟県中越沖地震は、柏崎刈羽原子力発電所に多くの被害を出し、発電所の「安全性」に疑問を投げつける結果となりました。

 中越沖地震を起こした活断層は、柏崎刈羽原子力発電所の直下にまで及んでいることが判明しました。これは今まで断層が無いとしてきた東電・国の説明を覆すことになり、東京電力による事前の活断層調査は不十分だったことが露呈、またこのような危険な場所に原子炉の設置を許可した国にも、適切な検証を怠った責任が問われることになります。

 今回の地震による事故発生後、東電による「想定外」の言葉を良く聞きますが、世界最大の規模を誇る電力会社が、基本的な安全確保の体制も、また緊急時に対処すべき力も持っていなかったという驚くべき事実も明らかになり、国民の信頼を失墜させました。

 さて防災科学研究所などの調査によって、中越沖地震を起こした断層は、柏崎・刈羽原発の直下にまで及んでいることが明らかになってきましたが、地震の震源は柏崎刈羽原発の北約9キロ、震源の深さは約17キロとされています。地震の余震分布等の解析により、断層面は海側から陸側に東に傾斜した分布を示し、原発の下部に向かっている可能性が示され、深さは12〜20キロメートルの規模で、原発の直下に活断層が存在することがほぼ確実とみられています。

 一方、過去において国、東京電力などは、一貫して「原子力発電所の建設用地を決める際には、設置予定地のボーリング調査・周辺の地質調査・過去の文献調査などを行い、直下に地震の原因となる活断層がないことを確認しています」と国民に説明してきました。

 しかし原発の耐震安全を危惧する住民や科学者は、調査の不備、原発の直下や近傍での断層の存在、地震活動について指摘し、警告を発してきたことも忘れてはいけないでしょう。

 柏崎刈羽原発の1号機の設置許可をめぐり、周辺住民が国の許可処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京地裁は2005年に「原告側が主張する活断層はそれ自体、断層ですらないもので地震の原因にならない」と退け、根拠のない恥ずべき判決を出していたことも多くの人が知ることになりました。

 今回の事故から、電力会社・国主導による原子力行政、客観的知見を考慮しない「原発ありき」の姿勢に、ほころびが見えてきたようです。

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崩れやすい地盤示すデータ提出/日本原燃

 日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センター(青森県六ケ所村)をめぐり、住民らが国の事業許可取り消しを求めた訴訟の控訴審で、原燃はこれまで未公表だった施設周辺の地質調査資料を仙台高裁に提出、割れ目が多く崩れやすい地盤の存在を示すデータが含まれていることが19日、分かりました。

 これらのデータは、事前の安全審査では考慮されていないため、原告側は20日の同高裁での弁論で、審査の違法性を指摘する準備書面を陳述することになりました。また動燃ですが、裁判所の決定を受けなければデータを提出しない、という同社の姿勢も問われます。

 提出されたのは、施設の下や近くを走る断層そばの3カ所をボーリング調査したデータで、うち施設から約100メートル地点の深さ31メートルで、地盤の良好度を示す「RQD」と呼ばれる数値が約30%でした。これは一般的な基準では5段階のうち下から2つ目の「悪い」に分類され、「非常に悪い」の25%以下に近いものです。

 RQDは、地盤の硬さを示す指標の一つで、これが低いことは割れ目が多く、崩れやすい地盤であることを示すといいます。

 今回の報道から原燃が都合の悪いデータを隠していたことが明らかになり、このデータを考慮していない事前の安全審査の妥当性も無くなったことになります。

 データの改ざん、隠ぺいなどが続く原子力業界ですが、他産業とは決定的に違うはずの「安全」を最優先させる姿勢がなぜ見えないのでしょうか。原子力関連事業者、そして従業員の資質を問い直さなければならないでしょう。法人・個人に法令遵守の誓約書を書かせて、違反者には厳しい罰則を与えるくらいのことをやってもらいたいものです。

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■日本製紙6工場で法令違反/NOx排出基準超過や改ざん

 日本製紙は10日、北海道の釧路工場と旭川工場の発電用ボイラーから排出されるばい煙データを改ざんした問題を受けた社内調査の結果、新たに八代工場(熊本県八代市)など4工場で大気汚染防止法などに抵触する法令違反が見つかったと発表しました。

 すでに釧路工場、旭川工場でデータの改ざんが発覚していて、法令違反が見つかったのはこれで計6工場となりました。

 一部の工場について、法令違反との認識がありながら、作業効率を低下させないためそのまま操業を続けていたとの指摘もあり、企業の法令順守の姿勢が問われます。

 熊本県は大気汚染防止法に基づき八代工場の立ち入り検査を実施する年、経済産業省原子力安全・保安院も同社の発電施設が電気事業法の技術基準に適合しているかを調査し、9月10日までに報告するよう求めました。

 法令違反が見つかったのは八代工場のほか、白老工場(北海道白老町)、富士工場(静岡県富士市)、岩国工場(山口県岩国市)で、同社は、改ざんが発覚後に調査委員会を立ち上げ、釧路、旭川を除く全10工場を対象に調査を実施していました。

 ばい煙に含まれる窒素酸化物(NOx)が、ボイラー操業中に法律が定める基準値を上回ったケースが見つかったほか、自治体などに報告するデータに改ざんがあったといいます。

 岩国工場では2004―06年度に、6基の発電用ボイラーのうち6基で基準を超えるばい煙を排出していることが判明、データの改ざんはなかったものの、NOxの量が最大で基準値の約1.5倍ありながら自治体に報告していませんでした。山口県と岩国市は13日と17日、岩国工場の立ち入り調査を実施し、基準を超える排出があったことを確認しました。

 さて不正は製紙業界第2位の日本製紙だけでなく、最大手の王子製紙も2年間で3700回以上の排水データを改ざんしていたことが8月に入り判明、また同社4工場で基準を超すばい煙・報告値改ざんという法令違反が見つかっています。

 これらデータの改ざんは製紙業界だけではなく、ばい煙データの改ざんは昨年、神戸製鋼所の加古川製鉄所で発覚、今年2月には北海道電力の火力発電所でばい煙測定の改ざんも見つかっています。

 ばい煙問題以外でも、企業による不正は東京電力の原発損傷データ、中国電力の水力発電所の取水量データ、三井物産のディーゼル車排ガス浄化装置データと、それぞれ改ざんが当たり前のように行われています。これは罰則が甘い日本の法体制が生んだことなのか、日本人そのものの安易な国民性なのか分かりませんが、政府には見た目の美しさを追い求める「美しい日本」ではなく、具体的な効果のある「日本人改革」なる施策を行ってもらいたいくらいです。

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中国、食品41社の輸出禁止/安全性に問題、信頼回復をアピール

 中国の国家品質監督検査検疫総局は11日までに、日本に水産物やドライフルーツを輸出していた食品会社など41社の安全性に問題があったとして、輸出を禁止したことを明らかにし、企業名をウェブサイトで公表しました。

 「ブラックリスト」にある41社のうち、日本向けの食品を輸出していたのは11社で、米国向けが17社と多く、カナダ、欧州連合(EU)、韓国、マレーシア向けなども含まれています。

 日本向けはウナギのかば焼き、冷凍のカニなど水産物がほとんどで、ドライフルーツ(ナシ)の二酸化硫黄残留量が日本の基準を超えていたほか、カニからは大腸菌を検出、ウナギのかば焼きからは基準値を超える抗菌剤も見つかっています。

 中国の輸出品をめぐっては、米国で中国産魚介類から有毒物質が検出されるなど国際的に問題となっていて、中国政府の信頼回復に努める姿勢をアピールする狙いがあるようです。

 中国紙によると、当局は北京五輪での「食の安全」を確保するため、肉製品と野菜、水産物を対象とし、生産から加工、流通、消費段階をさかのぼる「食品安全追跡システム」を近く完成させる予定で、来月から北京市で実施するといいます。中国政府は「99%以上」の輸出食品に問題がないと反論する一方、検査検疫総局の当局者は10日の記者会見で改善への努力を強調、問題企業の「ブラックリスト」を公表する考えを表明していたものです。

 しかし中国産の食品・製品への不信感は私たちの意識に完全に浸透してしまい、なかなか中国当局の狙い通りにはいかないと思います。「今まで何をしていたんだ」という怒りが先立つばかりです。

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温泉施設67%が天然ガス調査実施せず/消防庁調査

 6月に可燃性の天然ガスによる爆発事故が起きた東京都渋谷区の温泉施設と同様、温泉のくみ上げポンプや貯蔵タンクを屋内に設置している旅館や公衆浴場が全国に479施設ありますが、このうち67%(323施設)は温泉に含まれる天然ガス量の調査をまったく実施していないことが12日、総務省消防庁の調査で分かりました。

 しかも全施設の95%(457施設)はガス検知器を設置しておらず、あらためて安全対策の不備が浮かび上がりました。

 消防法や温泉法では温泉の天然ガスに関する安全対策を義務付ける規定がなく、対策は各施設の自主的な取り組みに委ねられているのが実態、消防庁はガス検知器の設置義務付けなど政省令改正を視野に、9月末までに対策をまとめるとしています。

 調査は渋谷の爆発事故を受け、消防庁が各都道府県を通じて6月22日から7月6日まで実施、12日の有識者検討会に報告したものです。

 調査結果によると、屋内の天然ガス量の調査などのほか、全施設の97%(466施設)が温泉井戸周辺の天然ガスの定期測定をしておらず、温泉と天然ガスを分離する「セパレーター」装置を設置していない施設も89%(427施設)に上っています。また過去10年間に温泉施設で起きた火災のうち、渋谷の爆発事故と同じように天然ガスが原因だったケースが北海道、埼玉、大分など7都道県で11件あったことも判明しました。温泉施設以外でも、新潟など3都県で9件の事故があったといいます。

 事故が起きなければ安全について配慮しない、という業者・企業が多いのは昔から変わないので、こんなことなのでしょう。

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水支える上流に寄付、名古屋の会社が利益の1%を木祖村へ

 木曽郡木祖村の味噌川ダムを上水道水源としている名古屋市にある衛生・空調設備設計施工会社が、水をはぐくむ森林整備のために毎年、利益の1%を寄付したいと、10日までに村に申し入れました。村は「大変ありがたい」と歓迎、同社は「水は上流の人たちが苦労して支えていることを、名古屋の人に伝えていきたい」としています。

 この会社は名古屋市南区の「スミ設備」で、同市と木祖村は2003年から村内の「こだまの森」への植樹など交流を重ね、市上下水道局指定水道工事店協同組合の南区理事だった同社の鷲見さんも04年、交流で村を訪れていました。

 その後、同組合青年部主催の植樹作業に3年続けて参加、村からの小学生のホームステイも受け入れました。組合理事を退任した同氏は、会社単独で植樹を計画、年間利益の1%の寄付を続けることを決めたものです。

 「蛇口をひねれば出てくると当たり前のように思っていたが、木祖村に通い、一生懸命に山を守っておいしい水をつくっていることを実感した」と鷲見さんは語り、今年は自社で54万円を用意、取引業者にも協力を求め、11社が別に51万円を出すことになったといいます。

 同社は21日、木祖村でドングリのなる広葉樹を植える際、社員21人のほとんどが家族連れで参加、また協賛業者も加わり57人で1本ずつ植えるとのことです。寄付金はこのときに渡す予定だとのことです。

 木祖村の栗屋徳也村長は「山を守ってきた皆の励みになる。寄付の趣旨を生かすよう、受け入れや活用の方法をさっそく考えたい」と話し、村は植樹の記念に木のそばに立てる名札を用意、一行を迎えることにしています。

 このような取り組みを知ることで、下流域が受けている水資源の大切さを理解してくれる企業が増えてもらいたいものです。首都圏の大企業だけでも同様な取り組みをしてくれれば、林業衰退で荒れた山の再生も可能かもしれません。

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