Web版

2007.11 No.167  発行 2007年11月26日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

[ ASP トップ ] [ ASPニュース2007 ]

ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

.



10月のニュースから

■製品関連事故の相談とPL法に基づく訴訟の動向/国民生活センターまとめる

 国民生活センターでは1995年7月に施行された製造物責任法の活用状況を把握するため、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に収集された製品関連事故に係る消費生活相談の動向を調査し、その結果と製造物責任法に基づく訴訟の動向についてとりまとめました。

 それによると2006年度は製品関連事故に係る相談が10,270件、うち拡大損害が生じた相談が5,339件でした。拡大損害の内訳では身体のみに拡大損害が生じた相談が4,209件、物品のみに拡大損害が生じた相談が933件、身体と物品の双方に拡大損害が生じた相談が197件となっています。

 身体に拡大損害が生じた相談の商品別の件数では「健康食品」が最も多く、危害内容別の件数では「その他の傷病及び諸症状」(「体調が悪い」「気分が悪い」などで、「皮膚障害」「消化器障害」などのいずれの分類項目にも該当しないもの)が最も多くなっています。また、物品に拡大損害が生じた相談の商品別の件数では「空調・冷暖房機器」が最も多く、危険内容別の件数では「発火・引火」72件、次いで過熱・こげる57件、火災55件と続いています。

  製造物責任法に基づいて提訴された訴訟として、国民生活センターが把握できたものは103件(2007年8月31日までの収集分)で、このうち2006年以降提訴されたものは次の5件でした。

1. ヘアマニュキア脱毛事件、H18.3.2奈良地裁 
脱毛した男性がヘアマニュキア(酸性染毛剤)を2度目に使用したところ、顔の腫れ、頭皮のかぶれ、身体の湿疹等が生じ、頭髪、眉毛が脱毛したとして、ヘアマニュキア製造会社に441万円を求めた訴訟。

2. おしゃぶり歯列等異常事件、H18.5.31東京地裁
反対咬合になった女児と母親が、生後2ヶ月から4歳頃までおしゃぶりを使用したところ、舌突出癖、口呼吸、顎顔面変形がみられ、発音の発達が遅れたとして、ベビー用品販売会社に1001万円を求めた訴訟。

3. ヘリコプターエンジン出力停止墜落事件、H18.6.9東京地裁
対戦車ヘリコプターがホバリング状態から突然エンジン出力を失ったため、7.5メートルの高さから墜落し機体下部等を損壊、乗員2人が重傷を負ったとして、国が航空機等製造会社に2億8073万円を求めた訴訟。


4. こんにゃく入りゼリー7歳児死亡事件、H19.6.15名古屋地裁
児童保育所でおやつに出されたこんにゃく入りゼリーを食べたところ気道に詰まらせ死亡したとして、死亡した男児の両親が和洋菓子製造販売会社と地方自治体(国賠法)に7482万円を求めた訴訟。

5. パソコンバッテリー発火火傷事件、19.7.14大阪地裁
パソコンバッテリーから白煙、炎が噴出したため、マットにくるみ屋外に運び出したが、指に火傷を負い、精神的不安定になったとして、パソコンを購入した夫婦パソコンが輸入販売会社と電池製造会社に202万円を求めた訴訟。

目次へ


ゆで卵破裂の危険性/電子レンジ用調理器、使い方要注意

 便利さで人気を集めている、簡単にゆで卵ができる電子レンジ利用の、「ゆで卵調理器具」が、誤った使い方をすると電子レンジが壊れたり、やけどを負ったりする危険性があることがわかりました。商品テストを実施した国民生活センターでは「加熱時間や電子レンジの出力などをよく確かめて使用して」と注意を呼び掛けています。

 ゆで卵調理器具は、インターネットなどで販売されているアイデア商品で、容器の中に水と卵を入れて電子レンジで数分間加熱すると水が沸騰し、その蒸気で卵が蒸しゆでにされるものです。卵を電子レンジで直接加熱すると破裂し危険なことが知られていますが、こうした器具では容器の内側が金属で覆われているため、卵には直接マイクロ波が当たらず水だけが加熱される仕組みです。

 報告にあるように、ゆで卵調理器具は扱い方によっては破裂などにつながる、危険性の高いものです。全国の消費生活センターには2002年4月から2007年7月までに、「使用していたところ卵が破裂し、電子レンジが壊れた」といった苦情相談が合計15件寄せられています。うち14件で卵が破裂、そのうち13件は破裂に伴い電子レンジの扉が破損するなどの被害があったといいます。

 同センターでは今年5〜8月、インターネットなどで販売されている5社5銘柄の電子レンジ用ゆで卵調理器具の安全性や、誤使用に伴う危険性などについて、6台の電子レンジを使ってテストしました。
その結果、説明書通りに操作しても「固ゆで」が「半熟」になってしまうなど、各銘柄とも使用する電子レンジによって仕上がりに差があることが判明しました。このため消費者が適切なゆで上がりを求めて、加熱時間を長くしたり、電子レンジの出力を大きくする可能性もあり、同センターでは説明書に従わない使用方法でのテストも行いました。

 その結果、加熱時間を規定より30秒以上長くしたり、出力を100〜400ワット大きくしたりすると卵が破裂し、その衝撃で電子レンジの扉が開いたり、破損したりする場合があることがわかりました。また加熱後の卵を外に出し、はしで刺したところ、破裂し飛び散った例もあったといい、予想しない突然の事態はかなり危険なものです。

 同センターは「そもそも電子レンジの取り扱い説明書では、卵や金属製の器具を加熱することを禁止しており、一般的な使い方とは言えない」と指摘、その上で「使用の際は使い方によって危険が伴うことがあることを知っておいてほしい。また、加熱直後の容器や卵は非常に熱くなっているため、素手では持たないよう注意を」と呼びかけています。

目次へ


食品偽装問題はどこまで行くのか、業界全体の信頼性低下

 いったいこの国はどうなっているのでしょう。食品業界の不祥事は相変わらず続き、終わりのない状況となっています。このことは、社会問題となった過去の事件から、何も教訓としてこなかった業界の消費者不在の儲け主義が業界全体にまん延しているとしか考えられません。

  10月のニュースからいくつか拾ってみると、まず愛知県特産の地鶏「名古屋コーチン」として販売されている鶏肉のうち、約2割に本来の名古屋コーチンではない肉が含まれていることが、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の調査で9日、分かりました。

 今回の調査では、純系名古屋コーチンと称して販売されている生肉や、原材料として名古屋コーチンだけを表示している加工品など計90点を、小売店や飲食店、インターネット通販などで入手。簡易DNA検査を実施した結果、全体の21%で名古屋コーチン以外の鶏肉が検出されたもので、加工品に限定すれば3割以上に偽物が含まれていたというものです。

 純系名古屋コーチンは、愛知県畜産総合センター種鶏場で生産された種鶏から生まれたヒナを、名古屋コーチン普及協会の会員業者が名古屋市周辺で育成した鶏に与えられる登録商標で、正式な品種名は「名古屋種」といい、明治28年に日本家禽学会から品種として公認されたものだといいます。

 名古屋コーチンには、以前から純系名古屋コーチンの条件を満たさない国内外の鶏肉が偽って販売されたり、飲食店で「名古屋コーチン使用」などとうたうケースも指摘されていました。そのため名古屋コーチン普及協会は偽物防止のため、正式な純系名古屋コーチンには登録商標シールを張り、飲食店には会員証・取扱店証を提示するなどの対策を取ってきました。

 通常の地鶏は、在来種の血液比率が50%以上あれば正式なものとして認められますが、名古屋コーチンは血液比率100%を条件としているためDNA検査による特定が行いやすく、今回の調査結果に表れたようです。
さて12日には、伊勢土産の定番として親しまれている赤福もちの製造元「赤福」が30年以上にわたり、消費期限や製造年月日を偽って表示、販売していたことがわかり、その後も相次ぐ事実の判明で同社の顧客無視システムが明らかになりました。

 若林正俊農水相も12日の閣議後記者会見で「信頼性の高い老舗でこのような事態が起きたことは大変重大だ」と述べ、食品の法令順守に対する意識改革を徹底させる考えを示しました。しかし農相が言う「信頼性が高い老舗」というのは、一体何を根拠にしているのでしょう。おかしな発言です。
22日には、農水省と三重県が行った立ち入り調査の結果を発表、同社が今年1月まで売れ残り商品のもちの68%を再利用していたことが判明しました。同社はこれまで99%は焼却処分したと説明していましたが、この間違いの客観的理由を説明しないのは同社の基本姿勢が顧客を騙してでも企業存続を願う、というものでしょう。
 再利用されたあんやもちの一部は消費期限が切れていたほか、原料に表示していない加工品を使っていたことも明らかになりました。

 老舗と言われる赤福ですが、売り上げが伸びるにつれてその業績を維持することに腐心、その結果ありとらゆる不正で商品のイメージを包み隠してきたようです。

 さて秋田県大館市の食肉加工会社「比内鶏」が、特産の比内地鶏ではない鶏肉や卵のくん製を「比内地鶏」と偽装していた問題が22日に発覚しました。同社は県の調査に対し、加齢で産卵効率が下がった「廃鶏」を使用したと答えたといいます。また同社は「おでんの具」の鶏がらスープ、だんご、煮たまご、つみれの4種類についても比内地鶏ではない鶏を使用したことも明らかにしました。

 県によると、廃鶏は生後2年ほど経過した鶏卵用の鶏で、肉は硬く、加工用肉として安く取引されているもので、1羽20〜30円程度の低価格で取引されるといいます。市場を通さず業者間で直接取引されることが多く「通常は『リサイクル』の意味が強い」ものだといいます。

 さて百貨店の山形屋(本店・鹿児島市)が、宮崎県産ブロイラーの炭火焼き商品を「地鶏」と不当に表示してネット販売していた問題で、東国原英夫知事は25日、「この時期に単純ミスの一言で終わるのか、疑問は残る」と話しました。まったくその通りで、入力やチェックのミス、ということで偽装を免れようとする同社の危機感のなさには呆れるばかりです。自分たちが生き残ることを最優先にする、恥ずかしげも無い発言で、社会・消費者のことなどまったく考えてないようです。

 相次ぐ食品の不祥事に対し農林水産省は26日、食品表示に関する消費者の信頼回復に向けた総合対策を推進するため「食品の信頼確保・向上対策推進本部」を30日に設置すると発表しました。

 「栗きんとん」で知られる和菓子の老舗「川上屋」の契約販売店「川上屋馬籠店」が、製造日を起点に計算すべき消費期限と賞味期限を、販売日を起点に虚偽表示していたことが分かりました。消費期限は最大3日間、賞味期限は最大15日間長く表示した商品が販売された可能性があり、県恵那保健所は29日、川上屋と馬籠店に文書で再発防止の徹底を求める改善指導を行いました。
県生活衛生課によると、馬籠店が販売する川上屋の「栗きんとん」など9商品すべてで虚偽表示が行われていたものです。このうち生菓子の「栗きんとん」と「栗むし羊羹」は消費期限が5日で、超過すると品質が劣化するため、川上屋は製造から3日過ぎた生菓子は返品させていますが、同店は実際の消費期限を最大で3日超過した表示で販売していた可能性があるといいます。

 「船場吉兆」が「吉兆天神フードパーク」で消費期限切れの菓子を販売していた問題で、フードパークの販売責任者が、賞味・消費期限切れの商品と期限内の商品を区別せず、一括して在庫として書き入れるずさんな帳簿を作っていたことも分かりました。匿名の情報で立ち入り調査に入った福岡市も、店の帳簿では、消費期限切れの商品をどれだけ売ったか把握できず、菓子類を実際に製造した別の菓子業者に納品書を提出させ、販売状況を裏付けていたといいます。

 市などによると「フードパーク」には、約3年半前から販売責任者を務めるパート女性の下で、5人のアルバイトが交代で働き、消費期限を記したラベルの張り替えは、その日に出ている者が毎日閉店後にしていたといいます。
市が立ち入り調査を実施した際、販売責任者は「お客さんに早く食べてもらうために、消費期限内の商品に限って販売日が消費期限となるラベルに張り替えた」と、偽装を否定していました。しかし市がフードパークの菓子類を実際に製造・納品している業者に納品書を提出させ、フードパーク側に残った在庫数と照合して、期限切れの商品を売っていなければ、数が合わないことを突き止めると、販売責任者は「納品されたばかりの菓子も売れ残りも区別せず、毎日ラベルを張り替えていた」と偽装を認めたといいます。
従業員個人が勝手に事実をわい曲する、あるいはそのように指導する企業体質に対しては、法人としての登録抹消など、他の法的処分も欲しいものです。

 ところで30日、三重県伊勢市の老舗和菓子メーカー「御福餅本家」が製造日表示などを偽装した疑いがあるとして、農林水産省東海農政局と同県伊勢保健所が、JAS法違反と食品衛生法違反の疑いで同社に立ち入り調査していることが分かりました。同社は赤福と同様に餅をあんでくるんだ「御福餅」を販売しており、赤福の不祥事発覚後、売り上げを伸ばしていた業者です。この業者が売り上げを伸ばしていることについては、「きちんと仕事をしているところがようやく利益が増えて良いこと」、とむしろ好意的に見ていたのですが、いったいどうなっているのでしょう。まったく、この業界は偽装集団のようです。

 昔からある「上げ底」や、柑橘類の鮮度情報であるへたを見せない包み方、イチゴのパック下段には小さいもの・痛んだものを入れるなど、ちょっとした偽装行為が当たり前に行われている、業界の意識が変わらなければいつまでも偽装は繰り替えされるでしょう。

 さてトマトジュースなどの原材料の産地表示に誤りがあるとして農林水産省は30日、野菜ジュース製造販売の「ゴールドパック」に対し、JAS法に基づき表示を改めるよう指示しました。

 対象商品は、同社松本工場で製造した、野菜ジュース「信州安曇野の手摘みトマトジュース」(190グラム)、「信州安曇野の旬穫り野菜ジュース」など5種で。同社は8月1日〜9月15日、安曇野地域以外でとれた長野県産トマトや山梨県産クレソンも原材料なのに、安曇野産トマトや長野県産野菜だけが使われているという表示をして出荷・販売していたものです。またトマトジュースでは最大2割が表示以外の原材料が使われていたといいます。

 同社の出荷量は143万5560本で、5種の同期間の全出荷量の55%にあたり、同社の説明では産地を示した伝票の不備や製造時に産地の再確認を怠ったためといいます。

 関東農政局長野農政事務所に今年6月下旬、情報提供があり、同局などが今年8月から10月に計3回、同社に立ち入り調査していたもので、同法の規定による加工食品品質表示基準では、特定の原産地表示は、100%の場合を除き割合を記載しなければならないとしています。

 30日になると静岡名物の和菓子「安倍川もち」を製造する菓子会社「やまだいち」が、原材料の表示順を誤り、今月中旬まで7年以上、JAS法違反の表示を続けていたことが、分かりました。同社の山田照敏社長は「『赤福』の問題が報道されて、初めて誤りに気が付いた」と事実関係を認めているといいます。この業界では事業に関わる法律も認識していないことが分かりますが、個人が作る食品を知人に提供するという感覚なのでしょう。

 会社側の説明によると、同社は長年、安倍川もちの包装紙に付ける原材料欄に「もち米・小豆・砂糖・大豆・水飴」と記載していましたが、赤福問題を受けて今月中旬に改めて原材料の重量を量ったところ、「砂糖・もち米・水飴・小豆・大豆」の順番だったことが判明、JAS法の加工食品品質表示基準で、原材料は重量順に記載するように定められているため、同15日ごろに正しい表示に訂正することを決定、しかし消費者には公表せず、新たな包装紙を発注したり、原材料表示の部分に上からシールを張ったりして修正したものです。

 いつまでも偽装が続く食品業界ですが、基本には私達日本人によく見られる「客観性を重視しない」、いわゆる「いい加減」な曖昧さを残す考えが根底にあり、そのような考えの個人が企業を起こし、そして不正で生き残り事業を拡大してきたように感じられます。

 規制が無い、罰則が甘いなど、法整備の問題もありますが、見た目で分からない商品、業者の信頼に任せるしかない商品は、消費者が自己防衛として「とりあえず疑ってみる」、そして「質問する」、といったことが必要なようです。

目次へ


[ ASP トップ ] [ ASPニュース2007 ]