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2007.12 No.168  発行 2007年12月23日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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11月のニュースから

■高速道路の橋材強度偽装/栗本鉄工所、65年前後から

 旧日本道路公団が民営化した東・中・西日本の高速道路会社3社は21日、鋼鉄管メーカー「栗本鉄工所」が納入した橋用の円筒型枠で、3社の基準よりも強度が不足していたと発表しました。型枠のカタログの記載よりも薄い鋼板を使用したうえ、強度などの性能も偽って納品していたもので、栗本鉄工所は「1965年前後から偽装していた」と認め謝罪しました。

 円筒型枠は厚さ1ミリ前後の鋼板製で筒形(直径約30〜160センチ)のもので、車が走る「床版」の内部に空洞を作るため、埋め込んで使われます。型枠の分だけコンクリートが少なくなり、橋が軽量化できるものです。各高速道路会社では「橋の定期点検を実施しているので、直ちに安全性に影響することはない」としています。

 この円筒型枠はコンクリートが硬化するまでの仮設材で、橋が完成すれば自動車などの荷重を支える役割はなく、道路3社と国は「強度への影響は小さく、直ちに崩壊・崩落などの危険はない」としながらも、同社の型枠が使われた可能性がある全国の橋約9000本を緊急点検するとしています。

 高速道路3社はこの型枠の性能基準について、流し込まれたコンクリートの重みによる鋼板のゆがみを10ミリ以下と定めています。しかし、栗本鉄工所は納品の際に添付する性能証明書に、型枠にかかる荷重を実際よりも20〜65%小さくして計算し性能を過大に記入していたといいます。栗本鉄工所が高速道路3社からの指摘を受けて今月、再試験したところ、7種類の型枠が不適合と分かったもので、鋼板の厚さもカタログより0.1〜0.4ミリ薄いものでした。

 栗本鉄工所の横内誠三社長は会見で「社員の誰が関与したかは調査中」としましたが、型枠を生産する全国7工場のすべてで、意図的に鋼板を薄くしていたことを認めました。不正を続けていた理由は「型枠は主要構造物ではないので、軽視したのではないか」と述べています。

 道路3社と国は近く、この円筒型枠を使った橋の安全性を調査する有識者の検討委員会を発足させることにし、国土交通省は各都道府県にも注意喚起しました。峰久幸義事務次官は「極めて遺憾。栗本鉄工所には厳正に対応したい。求償も検討する」と話しています。

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消石灰は危険!、目に入る事故多発/学校現場に初の改善通知、文科省

 運動場のライン引きなどに使用されている消石灰(水酸化カルシウム)が子どもの目に入る事故が、過去2年間に50件以上起きていたことが10日、日本眼科医会の調査で分かりました。後遺症のケースも報告され、事態を重くみた文部科学省は、安全性の高い炭酸カルシウムの石灰に換えるよう求める、初の通知を出しました。

 消石灰は強アルカリ性で、目に入ると強い刺激で角膜や結膜を傷つけ、後遺症が残ったり失明に至ったりすることもあるといい、ライン引きのほか、農業用として土壌改良剤にも使われています。

 日本眼科医会が9月、全国47都道府県の支部を通じて実施した調査によると、6割に当たる29支部で、地域内の学校で消石灰が使われ、うち18支部では過去2年間に子どもの目に入るなどの事故が計51件起きていたといいます。

 原因は、風によるものが10件、ラインカーの横転と石灰袋からラインカーに移し替える際が各5件、「ふざけて遊んでいて」が4件などでした。
 日本眼科医会は、弱アルカリ性でより安全な炭酸カルシウムを使うよう文科省に要請しました。

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オーム電機の超音波蚊よけ器は「効果なし」、公取委が排除命令

 公正取引委員会は、株式会社オーム電機が販売する「124S超音波蚊よけ器」「OMR-03ミニライト付き蚊よけ器」について、製品パッケージに書かれていた効果が実際には得られないことから、不当景品類及び不当表示防止法に違反するとして、同社に対し一般消費者へその旨を公示することなどの排除命令を行ないました。


 「124S超音波蚊よけ器」と「OMR-03ミニライト付き蚊よけ器」は、特定の周波数の音波を発することで、蚊を寄せ付けないことを謳った器具で、「超音波蚊よけ器」については1998年から、「ミニライト付き蚊よけ器」は2001年から、商品の包装にて「蚊をシャットアウト」「蚊が逃げる!」「血を吸うメスの蚊が嫌う周波数の音波を発生」などの文言を記載していましたが、実際には音波は発生するものの、蚊を寄せ付けない効果は認められなかったといいます。

 公取委では、この件が不当景品類及び不当表示防止法に違反するものと判断、オーム電機に対し、この2製品について不当表示を行なっていたことを一般消費者に公示し、再発防止案の策定と社員への周知、今後は事実と異なる表示を行なわないことを求める排除命令を行ないました。オーム電機では、2製品の販売を10月に停止しています。

 今はもっともらしい説明により、信じてしまう商品が溢れていますが、まずは「本当かな?」と疑い、企業にその説明の根拠を聞くくらいの努力が必要かも知れません。しかし本来はそのような作業は国が行うべきかもしれません。また10年も前から販売されていた商品の表示が、科学的根拠があるかどうかを調べないで放置してきた、国のム責任もあると思います。

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家電5品目に耐用年数表示/通産省、メーカーに義務付け方針

 経済産業省は13日、製品の老朽化による事故を防ぐため、普及台数が多い洗濯機、テレビ、エアコン、扇風機、換気扇の家電5品目について、安全に使える耐用年数や注意事項を製品本体に表示するよう、メーカーに義務付ける方針を固めました。

 14日に成立する見通しの、改正消費生活用製品安全法(消安法)に制度概要を盛り込み、政省令で5品目を指定することになります。耐用年数は、経産省がまとめる「基本的考え方」に沿って、各メーカーが「製造後10年間」など製品ごとに定めるとしています。

 今年8月に東京都内で長年使っていた扇風機が発火し老夫婦が焼死するなど老朽化家電の事故が続発、このため製品に「耐用年数を超えて使用すると事故の恐れがあります」などの注意事項や問い合わせ先を表示し、消費者に一定期間後の点検や買い替えを促す狙いです。

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暖房器具のご使用前に愛情点検を/三洋電機、新聞で呼びかけ

 三洋電機では30日、冬シーズンの到来に合わせて、暖房器具の点検の呼びかけを新聞紙上で行いました。
「電源コードの取り付け部やコード、プラグに傷、変形やふくれはありませんか?」「電源コードに触ると、電気が入ったり切れたりしていませんか?」「電気暖房器具の運転中に異常音や焦げ臭いにおいが発生していませんか?」との見出しで、「このまま使用を続けると、発煙・発火に至るおそれがあります。このような症状がある場合には、すぐに使用を中止し、お買い求めの販売店か最寄の弊社修理相談窓口に修理・点検をご相談ください。」との内容です。

 ストーブなどに対しては「ガス・石油燃焼器具は換気にご注意ください!」の見出しに、「1時間に1〜2回(1〜2分)は換気をしてください。換気が不十分な状態で使い続けると不完全燃焼のおそれがあります。」と記載されています。

 これらは各製品の取扱説明書で注意されているので、基本的には使用者の責任で安全を確保するものです。もちろん裁判で争われてもメーカーが敗訴することはないでしょうが、同社では30年以上前の扇風機の事故で死者を出したことから、家庭での電気製品の取り扱われかたには神経を使っているようです。同社の考えは不明ですが、消費者から訴えられることを考えるのではなく、顧客の不幸な事故をいかに無くすか、というポリシーだとすれば、歓迎できるものです。

 ところで経済産業省が13日、安全に使える目安となる標準使用期間(耐用年数)や注意事項を製品本体に表示するようメーカーに義務付ける方針を固めましたが、メーカーは期間を過小に表示する懸念があります。今後流通する中古品について、消費者は安全性の自己判断を強要されることになるのでしょうか? であれば、自動車のように法律で定められた使用者の日常点検義務がない家電製品でも、「してはいけない」注意ではなく、「お客様に守っていただくこと」などの要請文を取扱説明書内に明記した方がいいと思います。

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東京ガスが乾燥機で注意呼び掛け/神奈川など9都県で販売

 東京都内のエステサロンなどで、マッサージオイルをふき取って洗濯後、乾燥機にかけたまま放置したタオルや衣類から自然発火する事故が相次いでいます。衣類に残った油分が、乾燥時の熱風で「酸化反応」を起こして約400度まで発熱・発火するのが原因とみられ、経済産業省と東京消防庁は、美容ブームを背景に増加するエステ店の業界団体などに注意を呼びかけています。

 一般には油の付着した衣類を洗濯して乾燥、という何でもない行為ですが、洗い残りの油分で乾燥機から発火、という想定外の事故なのでしょう。まだ周知されていない事故なので、乾燥機の注意書きにとどまらず、テレビや新聞等での「意外な危険」などとした国の啓もう活動が必要でしょう。

 東京消防庁によると、乾燥機をめぐる自然発火は、都内では平成13年1月から今年9月までに計27件発生、人的被害は報告されていませんが、ガス・電気などの熱源や機種に関係なく起きており、ほとんどがマッサージオイルなどを使うエステサロンやアロマテラピーの店だったといいます。

 今年5月に新宿区内のエステ店で起きた火災でも、アロマオイルをふいて洗濯したタオルなど計28枚を乾燥機にかけたままにしたところ、自然発火したといいます。

 東京ガスが販売した衣類乾燥機では、平成10年から19件の火災が発生、うち13件が業務用だったことから、同社はエステ店など油分を多量に使う業種への販売を自粛していました。

 エステ店は全国に1万1000店以上あるとされ、経産省と東京消防庁は、全国のエステ店が加盟する「日本エステティック業協会」などを通じて注意を促しています。

 東京ガスは8日、ガス衣類乾燥機で油分が付着したタオルや衣類を乾燥させて火災になった例が多くあったとして、過去20年に東京、神奈川、茨城など九都県で販売した約20万台について、顧客に注意喚起のダイレクトメールを送ると発表しました。

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中国で先天異常が急増

 中国で生まれつき障害のある子供の出生率が2001年の1万人当たり104.9人から、06年には145.5人に急増していたことが10日までの中国紙の報道で分かり、研究者は水や大気など環境汚染の影響を指摘しています。

 中国英字紙、チャイナ・デーリーによると、国家人口計画出産委員会の江帆副主任は四川省成都で開かれた会議でこのデータを報告、「中国では先天異常の子が30秒に1人誕生しており、状況は年々悪化している」と語り、また「(先天異常の増加は)総合国力強化や社会経済の持続的発展に直接影響する」と懸念を示しました。

 産炭地として有名な山西省の計画出産担当者は、炭鉱周辺で「先天異常が全国平均よりはるかに高い」と報告、環境汚染との関連性を強く示唆しました。同省は先天異常の出生率が全国31の省・直轄市・自治区で最も高いといいます。

 香港紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、江副主任のデータに関連し、上海の復旦大学の呉超群教授は「遺伝などの要因もあるが、われわれの調査では環境汚染の影響が非常に大きい」と分析したといいます。

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メーカーの偽証、次々に明らかに/内部告発の影響

 マクドナルドが10年以上前から期限切れトマトを使っていたことが発覚するなど、相変わらず食品業界の不祥事は続いています。

 しかし消費者の感覚では、今まで隠してきた企業の不正が明らかになるのは、驚きであっても歓迎すべきことです。また多くの不正が明らかになった背景には、不正を暴く内部告発が増えてきたこともあり、歓迎したいものです。

 昨年4月に施行された公益通報者保護法の主旨である「正当な内部告発は国益につながる」との考えが理解され、社会正義に照らした行動をとる人が増えてきたのだと思います。

 しかし毎日のように企業・業者の不祥事のニュースを見るたび、社会の変化を敏感に感じることのできない企業がいかに多いかと、あぜんとします。

 今年の食品業界の不祥事と内部告発先を整理してみました。
1月の不二家事件はマスコミへ告発、6月のミートホープ事件は農水省とマスコミへ、8月の石屋製菓事件は会社と保健所、茨城県の水産会社4者の偽装シジミ事件は農水省、10月の赤福事件は保健所と農水省、比内鶏事件は保健所、船場吉兆事件は保健所にそれぞれ通報されています。

 これでも不正をやめられない企業と言うのは、不正による利益享受が長年続いているため、企業体質改善の勇気を出せないのでしょう。しかし改善が早ければ早いほど企業リスクは小さくなるので、一刻も早い対処が彼らの生き残りと考えなければなりません。

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