1995.5 Vol.17  発行 1995年5月27日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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副作用起こす医薬品の併用 添付文書に一覧表/厚生省秋にも
日本の水産品輸入禁止/EU衛生面理由に
PL対応、ビン持ちやすく
運転席エアバッグ/トヨタも全車標準に
高校生に消費者教育を/PL法の理解へ教材
「欠陥トラック所有者に商品券」GMの和解は無効
米ロータスとマイクロソフト 鹿児島の業者を訴え
メーカーに無過失責任/銃乱射事件でサンフランシスコ地裁

4月の新聞記事より

■副作用起こす医薬品の併用 添付文書に一覧表/厚生省秋にも

 厚生省は複数の医薬品を使った時に起きる副作用を防止するため医薬品の添付文書の表示を全面的に改訂する。医薬品は特定の薬と併用すると、しばしば相互作用のために強い副作用を起こす。新表示ではこうした薬を一覧表にし、副作用の症状や回避のための方法などを明示する。併用による副作用で多数の死者を出したソリブジン薬害の反省が改訂のきっかけとなった。医薬品業界を指導し早ければ秋から順次、新表示に改める。
 添付文書は、医師や薬剤師向けに書かれた医薬品の説明書。厚生省は昨年から「医薬品添付文書の見直しなどに関する研究班」を設置して記載事項の見直しを進めてきた。新表示案は同班の伊賀立二・東京大学教授らのチームがまとめた。新表示では、同時に投与すると相互作用が起きる薬や食物を一覧表にし、それぞれについて「併用しない」「併用には8時間以上間隔をおく」「◯◯の症状が出たら中止する」といった具体的な対策を示す。
 新たに「相互作用機序」という欄を設け、併用すると体内でどんな反応が起きるのか、過去どんな報告があるのかを説明。さらに「危険因子」として「じん障害がある場合」など特に注意すべきケースも明示する。
 厚生省は今回の検討結果を受け、医薬品メーカー約80社に新しい表示法で添付文書を試作するよう要請した。試作文書の内容を検討したうえで、正式に改訂を決める。順調にいけばこの秋から順次、新表示に切り替えていく。

 副作用情報は、正確にしかも細かな点まで必要ですので、今回の動きは良いことでしょう。ただこのようなことは製薬メーカーが率先して基準を作り、厚生省に報告すればいいのでは、とも思います。
 監督省庁からは「一人立ちしていない」と思われ、また業界にとっても不本意な行政指導が負担になっているのに、どうも企業の積極的な動きが出てきません。
 新薬が次から次へと出てくる中、重大な副作用のあるものも多く含まれます。副作用を多くしないと「効く薬」は作れないという技術の上になり立っているかのようです。
 一般商品と違い、消費者(患者)が製品(薬)や医者を選びにくい現在、医療制度全般の環境を整備し、消費者の利益を図って欲しいと思います。

■日本の水産品輸入禁止/EU衛生面理由に

 【ブリュッセル10日鈴木(佳)共同記者】欧州委員会当局者が10日明らかにしたところによると、欧州連合(EU)は日本製のすべての水産食品の輸入を、製造・加工工程での衛生状態や製品管理の劣悪さを理由に全面的に禁止した。
 欧州委によると、EUの専門家チームが3月、日本のEU向け水産食品の製造・加工の状況を確認するため、青森県などの加工業者を現地調査した。
 その結果、水産品の製造・保管状態には衛生面や管理面で重大な欠陥があり、保健上危険であることが明らかになった。このため、こうした状況が改善されるまで、日本の水産食品すべての輸入禁止措置をとったとしている。
 欧州連合(EU)が日本の水産食品の全面輸入禁止を打ち出した問題で、厚生省は11日「EUの指摘を受けるまで、衛生管理面の問題をチェックできなかった行政責任は重い」と深刻に受け止め、自治体任せになっていた業者の監視指導体制など制度全般の見直し作業を始めた。
 厚生省によると、食品衛生法による製造・販売業の許可が必要な水産業者は練り製品と缶詰の関連業者に限られ、今回問題になったホタテ加工場などは対象外となっている。
 しかしEUが1993年7月に細かい衛生基準を盛り込んだ「水産食品の衛生に関する規則」を施行したため、厚生省は輸出品取り扱い施設の「認定制度」を準入、基準をクリアした全国80施設にEU向け食品の製造加工を認めている。
 特に貝毒の問題を抱えるホタテ加工場については昨年5月、衛生管理などに厳しい条件を設け、認定施設は北海道と青森県の13カ所だけだ。
 青森県は「必要な監視指導はしていた」としているが、厚生省乳肉衛生課は「衛生上の問題点があったのは事実。禁輸の早期解除のためにも、問題業者への強い対応が必要だ」と認定取り消しを含む措置を同県に指示する一方、なぜ不衛生な状態が見逃されたのかなど制度の問題点を洗い直したいとしている。

 青森県が「必要な監視指導はしていた」と言っていますが、本当に「必要な監視指導」を行ったかどうかをISO9000の考え方で検証すればよいと思います。
 最近はサービス産業でも、ISO9000を取得するところが多くなりました。行政の仕事の中でも採り入れられるところは行って欲しいものです。
 さて、この問題は5月に入ってからEUと日本の協議が行われました。
 その結果、禁輸解除に向け日本側が、「国による水産加工場の定期査察など、衛生・製品管理面で監視・認定措置を強化、改善を図る」、とすることで合意しました。
 具体的には、都道府県に権限が委任されている加工工場認定・監視の業務を、厚生省が食品衛生監視員を直接指名し工場査察を行うなど、国の関与が強まります。

■PL対応、ビン持ちやすく

 アサヒビール飲料(東京・墨田、佐野主税社長)は7月に施行される製造物責任(PL)法をにらみ、より安全性に配慮した新型ボトルを開発した。「三ツ矢サイダークリアボトル」の容器がそれ。従来品に比べてビンの傾斜部分を滅らしたほか、側面に2つの大きなくぼみをつけてビンが手から滑り落ちにくいように工夫した。
 新型ボトルの特徴は@胴の直径を71.6mmから66.5mmに細くしたAボトルの・傾斜部分を減らして直線部分を増やしたB側面に2つのくぼみを設けた−−など。いずれの工夫も、商品のメーンターゲットである中高校生が持ちやすく、落としにくい形状にすることを前提に考案した。ビンの破損が原因で消費者がケガをすることがないよう、PL法の施行に先駆けて容器の形状を見直した。

 今までも、ビンの形状が悪いために誤って落とすことがあったのでしょう。消費者の不利益が分かっていても、十分な対応をしてこなかった事例としてとらえた方がいいかも知れません。
 「PL対応で◯◯をしました」という企業の言動には、宣伝効果を狙っているものもあるようです。しかし、消費者が「今まで放っておいたことを、ようやく始めただけ」と思っていることを忘れてはいけません。

■運転席エアバッグ/トヨタも全車標準に

 トヨタ自動車は26日、96年秋までに運転席エアバッグを全乗用車に標準装備する、と発表した。まず96年秋までに運転席に備え付け、97年春までには助手席にも標準装備かオプション設定する。また5月からエアバッグのオプション価格を引き下げ、同時に国内メーカー初の後付けエアバッグも発売する。

■高校生に消費者教育を/PL法の理解へ教材

 全国の高校で消費者教育の出前授業を実施している日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会は、7月から製造物責任法(PL法)が施行されるのを前に、このほど学習教材用のテキスト「製品の安全」とビデオ「コント生活向上委員会−−製品と安全」を作った。
 両教材ともPL法の解説と同時に、製品事故が製品の欠陥と誤使用の両面から起きているとして、製品の正しい使い方、事故が起きたときの対処法をまとめているのが特徴。
 具体的にはテキストでは、電子レンジ、へアドライヤー、テレビ、化粧品などの事故を例に取りながら、それが欠陥によるものか誤使用が原因かをイラストなどを使って説明。
 さらに事故の未然防止のため製品を購入した際、必ず取扱説明書や警告表示に目を通し正しい使い方、手入れを怠らないよう促している。
 また、製品に不具合があったときのメーカー側からの新聞などによる社告に注意することや、事故時に原因究明、損害賠償などのため最寄りの消費生活センターなどに届け出ることも消費者の果たすべき重要な役割と強調している。
 ビデオは@容器に書かれた警告を見ないで、洗浄剤を使ったために起きた事故A点検を忘れて大けがにつながったマウンテンバイクの事故B電子レンジの誤使用で、卵を爆発させたケース−−など高校生にも身近な事例をコント形式で見せ、ハイテク化、高性能化した製品に潜む思わぬ落とし穴にも目を向けさせている。
 学習教材を作った同協会の宮本一子さんは「若者たちの製品購入の動機は、安全性よりも利便性に傾きがち。教材が高校生にPL法の意義を理解させ、賢い消費者へのステップアップにつながる一助になれば幸いです」と話している。テキス卜は1冊400円、ビデオは1巻1万円(いずれも送料別)。また同協会では両教材を使った出前授業の希望校も募集している。問い合わせ先は、郵便番号152、東京都目黒区中根2-13-18第百生命都立大学駅前ビル、(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会、電話03(3718)4678。

 良い取り組みだと思います。悪徳商法で被害者になる若い人が多い現在、彼らの基本的なものの見方(良いもの/悪いもの、安全と不安全)に対するガイドが必要だと思います。
 物の効用とリスクが判断できる賢い消費者が増えてくれば、限られた企業が残っていくのでしょう。

■「欠陥トラック所有者に商品券」GMの和解は無効

 【フィラデルフィア17日AP・DJ=共同】米フィラデルフィア連邦高等裁判所は17日、ゼネラル・モーターズ(GM)が燃料タンクに欠陥のある小型卜ラック所有者に1000ドル分の同社商品券を提供することで和解することを認めた1993年の連邦地方裁判所の決定を無効とし、地裁に差し戻す判決を下した。
 高裁は、新車と買い替える余裕のない所有者などにとってこの商品券は無価値であるとして、和解の公正さに疑問を投げ掛けたほか、商品券提供はGMの[巧妙な営業活動である」とする原告の乗用車安全センタ−(CAS)の主張を認めた。
 和解を不満としていたCASは、和解決定時点で500万〜600万台と推定されたトラックの自主的回収(リコール)をGMに求めている。
 73〜87年に製造された問題のトラックは、燃料タンクが車体の側面にあり、側面衝突時に炎上する危険性が指摘された。GMは昨年12月、交通安全計画への5100万ドル拠出で米運輸省と合意、約10億ドル必要と推定されたリコールを回避した。

 企業というのは色々考えるものです。短期的な経済損失をいかに下げるのかが重要で、他のことは眼中にないといったところでしょうか。

■米ロータスとマイクロソフト 鹿児島の業者を訴え

 米パソコンソフト大手のマイクロソフト(ワシントン州)とロータスディベロップメント(マサチューセッツ州)の2社は共同で、鹿児島市のOA機器販売会社を相手取り「製品を違法コピーした」と鹿児島地裁に提訴した。2社が加盟する米ソフト著作権保護団体、ビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA、本部ワシントン)が10日東京都内で発表した。通報をもとにBSAが調査して、両社が訴訟を起こしたとしている。
 訴えられたのは有限会社、総合事務機三和(大岩根保社長)。BSAによると、同社はマイクロソフトなどのソフトを許可なしにコンピューター上にコピーして販売やリース業務をしていた。米2社側は日本の著作権法違反にあたるとして、違法コピーの差し止めと損害賠償約230万円を求めている。BSAは昨年5月に東京事務所を開設。12月から違法コピー情報を受け付ける「ホットライン」を設け有効な情報の提供者に1万〜10万円の謝礼を支払っている。情報をもとに今年に入って約100件を調査している。

 昨年のASPニュース12月号で取り上げたBSAの取り組みは、「日本にはなじみにくいのでは」と言われていました。しかし今回の訴えの決定的情報は当事者内部の情報であったということなので、どうもそうでもないようです。
 企業が違法行為を行っていた場合、従業員が自らの会社を訴えるための情報提供を行うのに、あまり抵抗がなくなってきたということでしょう。
 現在BSAによる違法コピー撲滅キャンペーンは着々と進行していて、すでに100件以上の情報提供を受け、そのうち11件の和解交渉が進められています。

■メーカーに無過失責任/銃乱射事件でサンフランシスコ地裁

 【ロサンゼルス11日=共同】1993年7月にサンフランシスコの法律事務所で男が半自動銃を乱射、8人を殺し6人を負傷させ、自殺した事件で、サンフランシスコ地裁は10日、犯行に使われた半自動銃のメーカーには無過失責任があるとの犠牲者の遺族らによる訴えを認め、遺族らは同社を相手取り訴訟を起こせるとする判決を下した。
 銃を使った犯罪の被害について、銃器製造者の責任を認定する判例は、米国内でも初めてとされる。
 この訴訟は、昨年5月に銃規制運動を進めている「ブレイディ銃暴力防止センター」が遺族などと共に起こした訴訟の1つ。同時に訴えられた特殊な引き金や弾倉の製造元、犯人に銃を売ったネバダ州の販売店などの責任の有無については、今年夏までに判断が出る見通し。
 判決では、問題の銃はカリフォルニア州法が89年に販売などを禁じた高性能銃に該当するとしてメーカー側の事件への責任を指摘。担当判事は判決理由の中で、メーカーは銃を一般市場での販売のため送り出した時点で、銃がカリフォルニアへ流れ、犯罪に使われる可能性を予見できたはずだと述べた。

 銃のように性能を追求すると危険度が増す商品の場合、製造メーカーはスペックに対して厳格な基準を持たなくてはならないということでしょう。
 一般製品でも性能が良くなると危険度が増すことがあるため、少し考えてみましょう。
 まず操作方法の変化はどうか、ユーザーの対応できるインターフェースになっているかどうか。ユーザー層の拡大による使用・操作環境の拡大などよくあることでしょう。
 また、人間の運動能力に対して適当な出力であるかどうかも重要です。
 結局、製品(部品)が置かれた「ある環境」の中で、接点(部品対部品も含む)があるすべてのインターフェース設計が大事になるのでしょう。
 もちろん、「ある環境」の定義が一番大事だと思います。

終わりに

 トヨタ自動車が運転席エアバッグを全乗用車に標準装備することを発表しました。
 日産自動車に先行されたエアバック装備ですが、最近の若い人を中心とした安全への関心の高さも見逃せない理由の一つでしょう。
 「エアバッグ装備で事故が増えるかも知れない」との意見もあるようですが、はたしてどうでしょうか。
 ブレーキの性能が良くなればスピードを出してしまう行動パターンがあります。これはブレーキの性能を試して特性値を経験として記憶できるため、限界までスピードを上げてしまうからです。
 エアバッグが装備してあっても、それを試す人はまずいないでしょうから、安全の確信がないまま運転することになります。
 この慎重な行動を誘う意識があるため、事故の増加には直接つながらないでしょう。


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