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2008.3 No.171  発行 2008年3月26日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel:0263-50-6512/Fax:0263-50-6315

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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2月のニュースから

■米、過去最大の牛肉回収/「へたり牛を処理」6万5,000トン

 米農務省は17日、歩行困難の症状を示し食用が禁止されている「へたり牛」を処理していた疑いで調査していた、カリフォルニア州の食肉処理会社「ウエストランド食肉・ホールマーク食肉加工」に対し、適切な食品検査を怠っていたとして、2006年2月以降に処理、出荷した牛肉約6万5000トンを回収するよう命じた、と発表しました。米国で過去最大の牛肉回収だといいます。

 へたり牛は牛海綿状脳症(BSE)感染が疑われますが、BSE牛が市場に流通した証拠は確認されていない上、問題の牛肉の消費量も分かっていません。しかし、農務省は現時点では人体への危険は少ないとしています。日本の農林水産省によると、この処理会社からの対日輸出は無いとのことです。

 農務省の声明によると、この会社は牛が歩行困難の兆候を見せた際に義務づけられた「完全かつ適切な検査」を怠り、食品衛生上定められた規定に違反し、出荷牛肉は「食品として不適当」と判断されたものです。この牛肉は小学校のランチ用にも出荷していたといいます。

 発端は動物愛護団体が今年に入り、この会社の内部の様子をビデオで隠し撮りし、歩行困難牛を施設内に入れるため、作業員が電気ショックを与えるなどしていると告発したことです。農務省がこれを受け調査を開始、同社を営業停止とし、作業上の問題点を調べていました。

 さて21日、シェーファー米農務長官は当地で記者会見し、同社の牛肉回収問題について、「(農務省食肉検査官による)検査は適切に行われており、病気の牛ではなかった」と述べ、食の安全は守られていると強調しました。

 BSE感染牛は歩行困難の症状を示すことが多いのですが、農務長官は「検査時には牛が歩行可能だったことが確認されている」と強調、検査後、食肉処理される直前に1頭の牛が倒れたと説明しました。一方、農務省当局者は「貿易相手国が心配するような深刻な問題ではない」とし、米国産牛肉輸出には影響を与えないとの見方を示しています。

 事実関係は良く分かりませんが、回収命令を出した数日後に急きょ「問題はなかった」というのも何か釈然としません。日本への本格牛肉輸出への影響を懸念した措置のようにも思えます。


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ギョーザ中毒、原因農薬で210人死亡/97〜02年、中国江蘇省で

 中国江蘇省太倉市で1997年から2002年にかけ、中国製ギョーザによる中毒の原因とされる有機リン系殺虫剤「メタミドホス」による中毒事故が654件発生、210人が死亡していたことが1日、分かりました。中国の総合医学雑誌「中華中西医雑誌」(03年8月号)の論文を医学専門ウェブサイト「中華首席医学網」が1日までに伝えたもので、論文は、同期間中の市内での農薬中毒の約82%はメタミドホスが原因だったと指摘しています。

 1都市でこれだけの規模の中毒が起きていたことで、中国ではメタミドホスが農薬中毒事故の主要原因の一つだったことが裏付けられたことになります。

江蘇省は中国の農薬生産の中心地で、中国農業省などは、メタミドホスの中国国内での使用、販売を昨年1月1日以降全面的に禁止する通達を出していましたが、餃子中毒事件で回収されない農薬が未だに使われている現状が露呈、今後も農薬混入事件は続くのでしょう。

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中国製鋼材から放射性物質/イタリア、捜査を開始

 イタリアの捜査当局は、中国から輸入されたステンレス鋼材に人体に有害な放射性物質コバルト60が含まれていたとして、鋼材約30トンを押収、捜査を開始したと発表しました。国営イタリア放送などが1日、伝えたものですが、捜査当局は混入の経緯を明らかにしていません。しかしイタリアメディアは、中国での製造段階で誤って混入した可能性があると報じています。

 鋼材は煙突や貯蔵タンクなど主に工業製品用で、ナイフやフォークなど生活用品には使われていないため、一般市民への影響はなかったとしています。当局は国際刑事警察機構(ICPO)と協力し、中国の製造業者やイタリアの輸入元などを調べるとしています。

 鋼材は昨年5月、北西部リグリア州の港に到着したもので、その後、製品化のためイタリア全土の工場などに運ばれ、一部の製品は既にクロアチアやトルコなどに輸出されたといいます。

 コバルト60については1992年、台湾の大規模マンションの鉄筋からコバルト60の放射が確認されて大きな社会問題となったケースがあります。原因は82年、台湾陸軍化学兵学校に勝手に入り込んだ民衆が汚染された屑鉄などを拾い出し、それらスクラップが古物商経由で、製鉄会社に転売、建築用鉄鋼材として再利用されたものだと考えられています。

 当時、約1,600世帯が放射能汚染家屋に住んでいたため、10年間の間に数千人が被爆、ガンや白血病を発症したり、倦怠感などに悩まされたといいます。

 今回はイタリアで中国産のステンレス鋼材からコバルト60の放射が発見されたとのことですが、やはり鋼材の原料にコバルト60が含まれていたと考えられそうです。

 スクラップにはさまざまな物質が含まれる可能性が高いのですが、台湾での汚染鋼材事件があったものの、中国では原料の段階で放射線測定をしていないのでしょう。今後の放射能検査強化が求められます。

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血液抗凝固剤で死亡例21人/原因は中国製原材料

 米製薬バクスター社が中国製の原材料を使って製造している血液抗凝固剤(ヘパリン)の投与後に起きた血圧低下などの異常が米国内で448例報告され、同剤と関連している可能性がある死亡例が21人に上ることが、29日付の米紙ニューヨーク・タイムズが報じました。

 バクスター社は販売した同剤を回収中で、米食品医薬品局(FDA)も既に、同社に原材料を供給している中国上海市の西にある製剤会社「常州SPL」の工場を検査しているといいます。同じ製剤が、日本など外国で販売されているかどうかについては不明ですが、気になります。

 同紙によると原料は豚の腸から抽出される成分で、中国の卸業者2社が常州SPLの工場に納品しているものですが、昨年、豚の伝染病が中国全土に拡大した際、メーカー側が原料確保のために、中国政府の監督が及ばない地方の零細業者から供給を受けたことが原因と見ています。

 FDAはまた、同工場が04年にバクスター社への原材料輸出を開始する前、実施すべき検査を怠ったことを認め、中国当局も工場を検査していなかったとしています。異常は1月初めて報告され、以降、相次いで類似例が見つかったといいます。

 FDAやバクスター社は、因果関係が立証されたわけではないとして慎重に調査中ですが、FDAは調査の中間報告で「一部のヘパリンが、容認できない作業設備の業者からの原料で作られているようだ」と問題の存在を示唆しています。

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ギョーザでなくても原料不安/産地表示義務に拡大の動き

 中国製ギョーザ中毒事件をきっかけに、政府、与党が食品の原料がどこの国で作られたかを示す原産地表示義務の拡大を検討しています。表示に外国名が見当たらなくても、輸入食材が含まれている場合があり、消費者の不安が強まっているため、表示の費用がかさんで食品値上げにつながりかねなく、現実に原産地をすべて表示できるのかという課題も残っています。

 輸入される加工食品は、どこの国で加工されたかを示す表示が必要ですが、表示義務が原料には及ばないため、ギョーザの原料がどこで作られたかまでは表示されていないのが現状です。

 さらに国内で加工された食品についても、原料の表示義務があるのは、もち、こんにゃく、調味した食肉・魚介類など生鮮食品に近い20種類の加工食品だけです。また、この20種類に該当しても、製品重量の50%未満の原料は原産地表示が任意のため、ギョーザのように多様な原料を含む加工食品では、表示に外国名がなくても、大半が輸入原料というケースもあります。

 さて伊藤園が新たな取り組みとして、「ニンジン」はオーストラリア、米国、ポーランド、日本産、「トマト」はポルトガル、中国産などの原産地表示を始めました。昨年11月下旬以降に製造した「1日分の野菜」など3種類の野菜飲料が対象で、すべての原料の原産地表示をしています。

 食品の表示偽装が相次ぎ表面化し始めた昨年の夏から、消費者から産地の問い合わせが多く寄せられるようになったのがきっかけで、消費者の声がメーカーを動かしたことになります。

 味の素冷凍食品は「ギョーザ」などの原料原産地を、自社のホームページで公開、イオンも独自ブランドの自然食品について、原料の原産地表示に踏み切る方針でいます。

 こういった先行例は一部にとどまっていますが、農水省は当面の策として「原料の原産地を知りたい消費者は、メーカーに問い合わせてほしい」と呼び掛けています。

 一方東京都は13日、国内で製造された冷凍加工食品について、原材料ごとの原産地表示を義務付ける方針を固めました。都消費生活条例の施行規則の改正に向け、都消費生活対策審議会に近く諮問することにしていて、法律より厳しい都独自の規制になる見込みです。石原慎太郎都知事は2月の定例記者会見で「国に先んじて、原産地表示をすべてに及ぶような形にする規定を考えたい」と述べていました。

 狂牛病事件では、うま味成分に様々な原材料が使用されている事が分かり愕然としましたが、消費者のための表示改善の義務化について政府は動きませんでした。そろそろ消費者の不安を払拭する表示システムを作ってもらいたいものです。

 もちろん、表示を気にしない人もいるし、商品に全てを表示できない、と言う声もありますが、主要な原材料だけ商品に記載、残りはホームページなどで全情報を公開する事もできるのです。基本的には全ての情報を公開、との立場が客観的な安心・信頼を得る方法だと思います。

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小林製薬「銀の除菌・消臭効果」で過大表示/05年以降の出荷累計2500万個

 小林製薬は13日、消臭剤など「銀イオンの除菌・消臭効果」をうたった製品のすべてについて、実際には銀の含有量が少ないため十分な効果がなく、消費者に誤解を招く表示をしていたと発表、申し出があれば返品に応じることにしました。

 対象は「銀の消臭元」や「銀のブルーレットおくだけ」「トイレその後に」など計15製品で、2005年以降の累計の出荷数量は計約2500万個、売上高は59億円に上るといいます。

 昨年12月、公正取引委員会から銀の効果を表示する根拠を示すよう求められ、社内調査を進めていたもので、同社の調査によると、配合された銀だけではカビや雑菌を除去したり、増殖を抑えて悪臭を防ぐ効果は確認できなかったとしています。

 宣伝で使う言葉の客観的根拠を得るための実験は、開発段階で当然行うものですが、同社はそれを怠り、「他の成分により、製品全体としては効果があった」と苦しい言い逃れをしています。

 銀の効果をうたった製品の不当表示をめぐっては、昨年アース製薬が公取委から排除命令を受けていますが、この業界大手である企業の質がこの程度というのは、効果があっても無くても消費者が検証しづらい商品という、騙しやすい商品の特性を利用しているからだと思います。

 機能をうたうことで宣伝効果を倍増できる商品では、常に誇張された宣伝・販売が行われています。このような商品こそ業界大手企業の社会的責任として、正しい情報提供を消費者に提供しなければなりません

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高カカオをうたったチョコレート/国民生活センターが注意喚起

 チョコレートは普通30〜40%のカカオを含みますが、最近カカオ分が多いことをうたった「高カカオチョコレート」が、各社から発売され、種類も急激に増え、売り上げを伸ばしています。

 国民生活センターでは、高カカオチョコレートはカカオの含量が多いことから、脂質が多くエネルギーは相対的に高くなり、また利尿作用や興奮作用のあるテオブロミンやカフェインが含まれていたり、アレルギーを起こす人がいることも知られているため、摂取には注意を必要とする人もいる食品として、消費者に情報提供することにしました。

 近年、残留農薬やカビ毒の一種であるアフラトキシンが、チョコレートの原材料である生鮮カカオ豆から検出され、積戻しや廃棄が行われていた報告もあるとしています。

 また最近の健康ブームの中、嗜好品として楽しむ範囲の摂取では問題ないものの、健康効果などを過度に期待して摂取することは望ましくないと、注意を促しています。

 センターでは、カカオ分70%以上の高カカオチョコレート12銘柄(1パッケージ当たり45g〜117g)及び参考として普通のチョコレート3銘柄(同65g〜70g)を対象に、脂質の過剰摂取やカフェイン等生理作用のある成分の問題等と併せて衛生面について調べた結果を次のように公表しました。

 高カカオチョコレートは、脂質の割合が40.7〜53.5%であり、普通のチョコレートと比べて1.2〜1.5倍含まれていた。高カカオチョコレートの脂質量は、もし50gを摂取したとすると(テストした銘柄の1パッケージ当たりは45〜117g)、高カカオチョコレートでは、脂質を20.4〜26.8g摂ることとなり、100gを食べたとするとそれだけで30〜49歳女性の生活習慣病予防のために目標とすべき脂質の1日の摂取量(表1参照)に相当する。また、エネルギーは592〜655kcal/100gで、普通のチョコレートと比べるとやや多かった。主に間食として食べられることを考えると、日常の食事にそのままプラスされてしまうため、食べる量に注意する必要がある。

 気管支拡張、利尿、興奮等の生理作用があるテオブロミンは580〜1100mg/100g、カフェインは68〜 120mg/100gで、普通のチョコレートの4倍くらい含むものがあった。その他の食事等から摂取する分もあわせて考えると、テオブロミンやカフェインも普段より多めに摂取してしまう可能性があるため、健康な人が嗜好品として楽しむ分には問題ないが、これらに敏感な人(幼児やお年寄り等)や気管支拡張薬として使用されているテオフィリン等の医薬品を使用している人は摂取量に注意が必要である。また、テオブロミン量やカフェイン量が表示されている銘柄はなかった。

 土壌からの由来と思われる重金属のカドミウムについて測定した。チョコレート中のカドミウム含量は、銘柄によって差があった。すぐに健康被害を及ぼす量ではないが、チョコレートのカドミウムは含量が低いことが望ましく、引き続き品質管理等が適切に行われることが必要であると思われる。

 ニッケルが普通のチョコレートの1.9〜3.8倍含まれていた。ニッケルは、接触性の金属アレルギー物質として非常に多くの症例報告があり、経口摂取によっても発症する可能性が報告されているため、ニッケルアレルギーを有する人は注意したほうがよい。

 カビ毒の一種であるアフラトキシンは熱に強いものが多く、加工時に分解されることなく商品に残留する可能性がある。カカオ豆は、収穫後、発酵させる過程があり、そのときカビに汚染されアフラトキシンを産生する場合がある。調べた結果、多くの高カカオチョコレートからはアフラトキシンが極微量検出されたが、汚染として問題となる量ではないと思われた。今後も原材料の品質管理等の適切な実施が必要である。

 健康ブームとして特定の食品を偏って摂取する人も多いことから、気を付けたいものです。

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