1995.6 Vol.18  発行 1995年6月27日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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PL法で原因究明機関ネット/通産、6月発足
取扱説明書目安を例示/通産省 PL法に備え報告書
電子機械工業会PL法指針/メーカー間の訴訟合戦回避
厚生省 輸入販売元を業務停止/ペースメーカー被害で
脱水槽すき間に落下の靴下出火
PL追及で経営大揺れ/ダウ・コーニング破産法申請を検討
タカタ製シートベルト 自主回収で合意
小さな子供向けPL注意絵記号/日本玩具協会が作成
高圧線の電磁気とガン 関係証明できぬ/米物理学会見解を発表
「ホット」論争再び
CEマーク実施率 欧メーカーは50%?

5月の新聞記事より

■PL法で原因究明機関ネット/通産、6月発足

 通産省は15日、製品事故の被害救済を円滑化するため、通産検査所を中核にした「原因究明機関ネットワーク」を6月1日に発足させると発表した。製造物質任(PL)法の施行を前に、消費者や企業などの紛争当事者にとって、適切な原因究明がしやすい仕組みづくりを構築するのが目的。日本電気用品試験所、化学品検査協会など83機関が原因究明機関として登録しており、事故内容に応じて適切な機関を紹介し、適切な情報を提供する。
 同ネットワークは、通産検査所、地方通産局、消費生活センター、日本自動車工業会、日本化学工業会など600以上の機関にネットワーク台帳を設置。依頼者はこれらの窓口機関を通じて、適切な原因究明機関の紹介を受け、依頼者との相談を踏まえて有料で原因究明のための調査・分析を実施する。

 実績を見ないことには何とも言えませんが、評価できる動きだと思います。

■取扱説明書目安を例示/通産省 PL法に備え報告書

 通産省は2日、7月に施行される製造物責任法(PL法)に備えて検討していた消費生活用製品の表示・取扱説明書の適正化の具体案として、カラーテレビの説明書の在り方についての報告書をまとめた。
 拘束力はないが、同省は「製造物責任が問われる製品の設計・製造過程だけでなく、表示面でも安全水準を高めるための目安」(消費経済課)としている。
 報告書は@取り扱いに必要な事項はすべて説明するA敬語や謙譲語は分かりにくくなるのでなるべく使わないB1文節は短く40字程度−−などとした上で、警告表示や使用方法など17項目にわたって具体的な表示内容を列挙。説明書の紙は耐久性があるA4判の冊子で、用紙は縦長、文字は横書きが標準的としている。
 通産省は関連業界や消費者団体とともに代表的な家庭用品の表示モデルを検討しており、近く塩素系の家庭用洗浄剤についても報告書をまとめ、ガスコンロとプラスチック製スキー靴についても検討する。

 表示・取扱説明書の具体的な指針と言うことで参考にされる企業もあると思います。ただ「安全水準を高める目安」の趣旨を「この指針の表現だけ記載すれば大丈夫」と勘違いしないようにしたいものです。
 このような指針は「最低限このくらい必要」ということであり、より分かりやすい文章をユーザーに提供しなければなりません。

■電子機械工業会PL法指針/メーカー間の訴訟合戦回避

 7月の製造物責任(PL)法施行を控え、日本電子機械工業会(EIAJ)は完成品と部品メーカー間の責任分担について指針をまとめた。
 EIAJがまとめた指針はPLに基づきメーカーが消費者に損害賠償した際、完成品側と部品側の責任分担の目安となるもの。部品メーカーが責任を負わない場合として、@納入時の技術水準では欠焔を発見できないA完成品側の指示による設計で欠陥が発生し、部品側に過失がないB完成品側が通常予想される故障発生率を想定した安全設計をしていない、など全部で7項目を挙げている。
 パソコンやテレビなどの事故が起きた場合、半導体やディスプレーに責任が集中する可能性もあり、PLは消費者の補償機会を広げる一方、部品メーカーと完成品メーカーとの間に訴訟合戦を起こしかねない。今回の指針は「加盟企業を拘束するものではなく、議論のたたき台」(EIAJ)だが、賠償請求が増えた際の重要な目安となる。

 以前からPL問題に取り組んでいる大手企業では、日本のPL法が施行されてもその対策に苦慮することはないようです。
 ところが、大手企業の中には部品を製造している中小の下請企業に対して「部品の事故に関する製造物責任は下請が負う」という契約を結ぶなど責任を転嫁する動きもあるようです。100%壊れない部品などあり得ないことで、それを承知で部品の仕様や特性を選択した安全設計をするものですし、それこそ完成品メーカーの「腕の見せどころ」というものです。

■厚生省 輸入販売元を業務停止/ペースメーカー被害で

 ペースメーカーのリード線が破損し健康被害が出た問題で、厚生省は30日、輸入販売元のセンチュリーメディカル(東京都世田谷区)を薬事法違反で31日から30日間の業務停止処分にすることを決めた。不良品の事故による処分としては、過去15年で最も重い処分という。同時に、リード線を製造したテレクトロニクス社(本社オーストラリア)と同社の国内管理人、医療産業(東京都文京区)の2社に、始末書を提出するよう命じた。
 問題のリード線は、「アキュフィックス心房用J型ぺーシングリード」。リード線の内部にあるJ型の保持ワイヤーがリード線を突き破るなどの破損事故が相次ぎ、国内では埋め込まれた754例のうち43件に破損もしくは破損の疑いがあることが分かった。うち1例では心臓が機能障害を起こし、患者が一時ショック状態に陥った。海外では、約600例で破損したとみられ、死亡2人を含む13件の健康被害が出ている。
 このリード線はテ社が厚生省から輸入承認を受けたものとは異なるタイプで、事故発覚後、セ社などが改めて品質をチェックしたところ、1万回の折り曲げに耐えるという同省の基準を満たさず、4000回前後で破損することも判明。
 さらにテ社とセ社は、破損によるものと疑われる健康被書が出た後も定められた期間内に厚生省に報告することを怠った。3社は関係医療機関に対して当初、不具合の発生率は「0.017%で極めて低い」とする文書を配布、事故発生後も速やかに連絡しなかったという。
 テ社と医療産業は、リード線の保持ワイヤーについての情報をセ社に提供しておらず、セ社が事故発生当初に適切な対応をとれなかった一因ともなった。
 米国では米食品医薬品局(FDA)が22日、テ社に対し、工場での管理体制に問題があるとして、製造・販売の差し止めを命じている。
 処分を受けてセンチュリーメディカルは30日、遠藤巌社長が6月30日付で辞任すると発表。同社は3月に関係役員・幹部社員6人を降格、減棒とする措置をとっている。

 ASPニュース12号で紹介しましたが、その後の動きです。

■脱水槽すき間に落下の靴下出火

 二槽式洗濯機の脱水槽のすき間に落ちた靴下が原因で出火したとみられる火災が起きていたことが、26日までの東京消防庁の調べで分かった。同庁は「脱水槽の押さえぶたをしっかり閉め、洗濯物の飛び出しを防いでほしい」と注意を呼び掛けている。洗濯機は1987年製造だった。
 火事は、20日午前零時ごろ東京都江東区潮見の木造住宅で発生。天井や壁を焦がし、消火に当たった家族が足などにけがをした。
 同庁が調べたところ、1階の洗濯機付近が激しく燃えていた。モーターで回転する脱水槽のすき間に靴下が落ち、モーターの回転軸に絡みついていたことが分かった。
 同庁は、靴下が原因で脱水モーターに負荷がかかり、過大な電流が流れ配線がショートし出火したとみている。

 これは十分予見可能なことであり、洗濯機メーカーによるハードの安全設計で対応すべきことだと思います。

■PL追及で経営大揺れ/ダウ・コーニング破産法申請を検討

 米化学会社、ダウ・コーニング(ミシガン州)が連邦破産法11条(会社更生手続き)の適用申請の検討を始めた。同社製のシリコーンの充てん剤が豊胸手術に使われ、健康を害したとして20億ドルの損害賠償を請求されたのが原因。訴訟が拡大して賠償請求額が膨らむ恐れが出てきたため、同社は4日、支払い能力を超える可能性があるとの判断を明らかにした。米国社会でのPL(製造物責任)追及の厳しさを象徴している。
 ダウ・コーニングは充てん剤生産を92年に中止、破産法を実際に申請し、適用された場合でも工業用途向けのシリコーン生産などを続け、責任を持って賠償するとしている。
 シリコーン製の充てん剤は体内に漏れ出すと、免疫不全などを引き起こすという。ダウ・コーニングのほかブリストル・マイヤーズ・スクイブ、バクスター・インターナショナルなども訴えられ、賠償額は現段階で計42億ドルに上る。

■タカタ製シートベルト 自主回収で合意

 米運輸省は23日午前(日本時間同日深夜)、安全性に問題の出ていた日本の自動車部品メーカー、タカタ(東京・港)製のシートベルト締め具(バックル)を自主回収することで、日米自動車メーカーと合意したと発表する見通しだ。当初はりコール(無償回収・修理)に発展するとの観測も流れたが、最悪のケースは回避されることになる。一部で難航する日米自動車摩擦との政治的関連を指摘する声もあるが、自主回収費用の一部を米ビッグスリーが負担することから考えても、その関連は薄いと見られる。
 自主回収に乗り出すのは日米の自動車メーカー11社。各社はこれを受けて、製品供給元であるタカタとそれぞれ費用分担の交渉に入る。

■小さな子供向けPL注意絵記号/日本玩具協会が作成

 日本玩具協会(日玩協、東京・墨田、佐藤安太会長)は7月に施行されるPL(製造物責任)法対策として、小さな子供にも注意事項が理解できる独自の絵記号を作製した。特に危険度の高い7項目をまずデザインし、来年4月1日までに業界各社の商品に採用していく。子供に直接注意を喚起することでPL法対策の充実を図る。
 絵記号は「口にいれない」「水にぬらさない」「火に近付けない」「人に向けない」などの絵柄。協会で制定した「PL−注意表示ガイドライン」のうち、犯すと特に危険なAレベルの7項目を採用した。
 3、4歳の子供でも絵のイメージから注意事項を理解できるように分かりやすく、シンプルでアイキャッチとしても目立つ図案を作製した。平仮名の注意文と併記して、パッケージや取扱説明書に印刷する。
 日玩協では24日、会員企業関係者300人を集めて都内で緊急セミナーを開き、PL法の対応策と同時に絵記号の採用を発表した。6月初めに干葉県幕張で開く「'95東京おもちゃショー」で説明ブースを設置し、来春にも完全実施する考え。

 たしかに分かりやすくはなっていますが、はたして効果が期待できるか少々心配です。「三歳児でも教えれば90%以上が認識する」と言っていますが、併記された言葉を読まないと大人でも分からない絵記号があります。
 ちなみに下記絵記号は、「ひとにむけない」と「おとなといっしょ」の言葉が併記されています。

■高圧線の電磁気とガン 関係証明できぬ/米物理学会見解を発表

 【ワシントン19日=共同】高圧送電線の電流から出る電磁気ががんを発生させるかどうか、長い間論争になっている問題について、全米物理学会はこのほど「約1000の研究結果を検討したが、がんとの因果関係を明確に証明するものは何もない」とする見解を発表した。
 見解は「送電線付近の電磁気の強さは5〜10ミリガウス。屋外では通常これをはるかに上回る電磁気にさらされている。家庭内の電気製品からも出ており、送電線からの電磁気が特にがんと関係があるとは考えにくい」と結論づけている。
 がんとの関係については、約3年前にスウェーデンの国立カロリンスカ研究所が送電線の近くに住む子供の白血病が増加した、とする研究を公表。ほかにも因果関係を示唆する論文が多く出ていた。
 全米物理学会は生物物理学者を含む約4万1000人で構成。研究成果のほか学術的、社会的問題について提言をしている。送電線や家庭用電気製品から出る電磁気が危険という説に基づいて訴訟に発展している例もあることから同学会は科学的な根拠があるかどうか調べていた。

 送電線の電磁気とガンの因果関係は薄いようですが、電磁気が生態にどのような影響をおよぼすかはまだ未知の部分が多く、今後の研究を見守りたいものです。

■「ホット」論争再び

 米メリーランド州の男性が、ドライブスルーで店員から受け取ったコーヒーをひざにこぼし、足や腹部にやけどを負ったとして、総額200万ドル(約1億7000万円)の損害賠償を求める訴訟を起こしたからだ。
 マクドナルドのコーヒーをめぐっては、ひざにこぼしてやけどをしたニューメキシコ州の女性が同社を訴え、昨年12月、60万ドルの賠償額で決着している。
 この裁判では、多くの客からコーヒーが熱過ぎると苦情があったのに、対策が講じられなかったことを陪審が重視、多額の賠償額につながった。(ウィルミントン、AP=共同)

 米PL制度改正法案は3月に下院、5月に上院本会議で可決されました。内容の異なる両法案を上下両院協議会で一本化し、年内にも採決する見通しですが、大統領が拒否権を使って修正を迫るようです。

■CEマーク実施率 欧メーカーは50%?

 欧州連合(EU)の工作機械の安全基準を満たす「CEマーク」(欧州安全規格)の貼付(ちょうふ)が95年1月から義務付けられた後、初の第11回欧州国際工作機械見本市(EMO)でその実施状況が注目されたが、欧州メーカーへの浸透度は50%程度で、まだ不透明感が色濃い。逆に日本メーカーの実施率は100%で、規制への律義さと、通商摩擦予防への憤重な配慮がうかがえる。
 フランスの中小工作機機メーカーと思われるアルモで、「どうして機械にCEマークが付いていないのか」と尋ねたら、逆に「それは何だ」と聞かれた。自分のところはプジョー、シトロエンなど自動車メーカーに長い間納めており、「そんなものは要求されないし、必要はない」とのことで、それより品質管理・保証の国際規格であるISO9000、9001の方が大事で、年内に取得できるそうだ。

終わりに

 最近の「PL対応した」という取扱説明書を見ると、どうも画一的な表現、構成が目立ちます。ユーザーに注意を促すというより、「定められた文章を記載すればPL対応だ」と考えているのであれば問題だと思います。
 また、取扱説明書の一番の目的である「使い方」の説明も不十分なことが多いようです。


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