1995.9 Vol.21  発行 1995年9月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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家電、自動車 住宅が上位に/欠陥商品110番
住宅部品PLセンター、相談件数が倍増/多いホルムアルデヒド被害
缶破裂事故相次ぎ 注意を呼び掛け/東京消防庁
PL対策で独自基準/オフィス家具協会
キリン、ビール445万本回収へ/細菌混入、苦情
ISO14001が国内でも取得可能に SGS
迫られる中小企業のISO14000対応/まず内部監査整備
違法コピー情報1000件 和解31件、和解金1億円/今年前半 米BSA発表
違法コピー防止、初の中学生向け著作権読本作成/文化庁、来年度から

8月の新聞記事より

■家電、自動車 住宅が上位に/欠陥商品110番

 7月1日の製造物責任(PL)法施行にあわせた日弁連と消費者団体が共同で実施した「欠陥商品事故110番」の中間報告が31日、まとまった。
 6月下旬から7月上旬に全国43地域で実施した110番は今年で6回目だが、相談件数は昨年より約130件減少し、過去最低の計494件となった。
 商品別の相談件数は、家電(99件)、自動車(83件)、住宅や付属設備(62件)が上位を占め、例年通りの傾向。地域別では、東京(95件)、大阪(89件)、札幌(36件)などの順だった。
 相談件数の減少について主催者側は「製品事故が減ったのではなく、PL法施行に合わせて産業界が設立した民間PLセンターに消費者の苦情や相談が流れたためではないか」と分析している。
 具体的な相談例では「新車で高速運転中にブレーキを踏むとハンドルに異常な振動が起こり、部品を取り替えても直らない」(東京、個人タクシー業の男性)「リンパ腺の炎症の治療で投与された抗生物質の副作用で、味覚と臭覚がなくなった」(東京、団体職員の女性)などがあった。

■住宅部品PLセンター、相談件数が倍増/多いホルムアルデヒド被害

 住宅部品PLセンター(東京都千代田区二番町4の5、ベターリビング内、センター長北畠照躬氏、電話03-5211-0575)は、同センターに電話で寄せられる相談内容をまとめた最新の「危害情報受付概要」をまとめた。それによると、7月1日からの製造物責任(PL)法の施行後、それまで月平均50件前後だった相談件数が、7月1カ月だけで101件と倍増した。「PL法に対する消責者や関連産業の関心の高まりが倍増の要因では」とセンターでは見ている。
 94年9月から95年7月末までの相談件数は597件。このうち実際のPL事故に該当する人的被害は14件、物的被害は10件の計24件で全体の相談の4%にとどまった。相談の中で最も多かったのは、PL法の解釈や自社のカタログなどがPL法に合致しているかを問い合わせる相談、センターの組識や危害情報などを問い合わせる相談などだった。
 また、ホルムアルデヒドに関するクレームは、94年9月から6月までの10カ月間の相談件数が6件だったのに対し、7月1カ月だけで4件とクレームが多発している。センターでは大阪の開業医から調停申請のあった「輸入合板によるホルムアルデヒド被害」に関する事案について審議検討したが、被申請人との調停合意が得られなかったため手続き条件がそろわず、受理できなかったことを明らかにした。

 裁判外紛争処理機関(ADR)によせる相談内容についての情報が少しずつでてきました。消費者の相談だけにとどまらず、企業の相談も受け付けてくれますので、ぜひ利用して欲しいと思います。
 さっそく他のADRである家電製品PLセンターに、取扱説明書のガイドラインについて確認したところ、次の解答が得られました。
 家電製品協会で作った各種ガイドラインは、全部数配布して在庫が無くなってしまいました。このため「家電製品における総合製品安全ガイドラインズ」(3部構成)として出版会社から販売することにしました。注文は、(財)日本規格協会(TEL03-3583-8041)、なお価格は3500円です。
 電話での応対は丁寧でした。
 工業会に加入していない中小企業は、PLや業界の対応に関する情報も不足がちです。ADRを利用することで、消費者の利益につながる企業対応ができれば何よりです。

■缶破裂事故相次ぎ 注意を呼び掛け/東京消防庁

 連続真夏日の記録を更新した東京都内で、腐蝕した一部のスプレー缶が暑さなどで破裂する事故が2件起きていることが26日までの東京消防庁の調べで分かった。
 いずれの事故もけが人はなかった。しかしメーカー側は危険があるとして、概に商品の回収を進めており、同庁も一部の店で売られたり、一般家庭で使われているケースがあると見て注意を呼び掛けている。
 7月下旬、三鷹市のアパートで洗面所の棚にあったアサヒペン社(本社大阪市)のスプレー缶「アサヒペン ニュースプレー」(300ml)が破裂、跳ね上がって天井板に3センチ突きささり、塗料が飛び散った。
 また8月19日、北区の金物店に陳列中の同じスプレー缶が「バーン」という音を立てて破裂した。2件は共に気温が上がる午後に発生、缶は両方共底が抜けた。
 同社によると、破裂する恐れがあるのは「ニュースプレー」と「ミニスプレー」の黒、つや消し黒、チョコレートの3色。90年に製造を中止したが、18万本が製造された。製造後5、6年で内部の塗料とフロンが反応し缶を腐蝕させ、夏の高温で缶の内圧が高まると破裂する場合があるという。

■PL対策で独自基準/オフィス家具協会

 コクヨや内田洋行、イトーキなど家具メーカー102社が加盟する日本オフィス家具協会(会長・中村喜久男岡村製作所社長)は製造物責任(PL)法の施行に対応して、独自の設計基準を設定した。従来はJIS(日本工業規格)に準じて、各メーカーが個別に机やイスなどの強度を決めていた。しかし、PL訴訟になれば、業界イメージの低下につながりかねないため新基準を設定することにした。
 強度の基準は机、イス、収納家具など主要オフィス家具5品目で設定した。会員企業から過去の事故データを集め、JISでは足りない点を改善した。例えばイスでは過重強度のみを試験してきたが、新基準は座るのと立つのを繰り返した場合の強度の計測も義務付ける。

 JISに限らず、規格の取得に関しては、「○○規格を取得していれば問題ない、それ以上の安全対策は過剰品質である」という人がけっこういました。問題ないのは販売上のことであって、製品の安全性評価を正しく論じたくなかったようです。コスト最優先のもとで安全が軽んじられていたということです。
 今回の独自基準は評価できますが、基準設定のきっかけが「PL訴訟になれば、業界のイメージの低下につながりかねない」というのでは、ユーザーの安全を考えての対応ではないのかもしれません。

■キリン、ビール445万本回収へ/細菌混入、苦情

 キリンビールは10日、同社の取手工場(茨城県取手市)で7月中旬に生産した「太陽と風のビール」の一部にペクチネイテス菌と呼ばれる細菌が混入し、消費者から濁りや異臭の苦情があったとして7月中、下旬に同工場で生産した同銘柄のビール約445万本を回収すると発表した。
 回収するのは大瓶45万本と350ml缶283万缶、500ml缶117万缶。東京、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、長野、山梨、福島の1都8県で販売、既にかなりの部分は飲まれているとみられる。消費者が買ったものは無料で新品と交換する。
 キリンビールによると、この菌は口に入れても人体には無害だが、ビールに混入すると色が白く濁ったり、硫黄のようなにおいがしたりするという。
 キリンビールは、ビールの回収状況などを見ながら当分の間、「太陽と風」のコマーシャルをすべて中止する。
 同社の説明によると、異常が起きたのは取手工場で7月17、18の両日に製造されたビールで、今月7日、8日に消費者から「濁りや異臭があった」という苦情があり調査したところペクチネイテス菌の混入が分かった。これまでに20件の苦情があったという。 同社は原因は調査中だが、醸造の最終工程であるろ過の段階で混入した可能性が高いとしている。
 キリンビールが製品の異常が原因でビールを回収したのは「これまでにほとんど例がない」(同社)という。

 「悪いことは重なる」といいますが、実際キリンの品質管理体制はどうなっているのでしょうか?7月の景品ビールジョッキの問題と合わせて考えると根は深そうです。

■ISO14001が国内でも取得可能に SGS

 ISO9OOOなどの認証機関を認定するスイスのSAS(ジュネーブ)はこのほど、同国の民間認証機関であるSGSスイス社(ジュネーブ)をISO14001の認証機関として認可した。これによりSGSグループ147カ国(日本を含む)の認証会社もISO14001の認証機関として資格を得たことになった。ISO14001は96年7月末に国際規格として制定される予定で、まだ国際規格案(DIS)段階だが、「企業が現時点でDISのISO14001を取得した場合、来年の国際規格制定と同時にDISが外されることになる」(西健SGS開発事業部長)としている。

■迫られる中小企業のISO14000対応/まず内部監査整備

 企業の環境保全体制についての国際規格「ISO14000シリーズ」の最終案が、先にノルウェー・オスロで行われた第3回環境管理専門委員会総会でほぼ固まった。96年7月末にも国際規格として施行する見通しだ。今後、この国際規格が中小企業にどのような影響を及ぼすのか、どのような準備が必要なのか。日本環境認証機構専務の福島哲郎氏に聞いた。
――ISO14000シリーズが施行された場合、中小企業への影響は。
 「ISO14000取得に早い時期から取り組んできたのが大手電気メーカーなどの輸出型企業だ。14000取得の企業は、契約取り引き先や部品調達先に対して自社の環境方針の徹底を求めなくてはならないことになっている。もちろん強制でないから、取引先はその求めを拒否することもできる。だがその場合、もう部品を買ってもらえなくなることも覚悟しなくてはならない」
――つまり建前として「強制ではない」が、実際は調達先にかなり強制的効果を持ち得るということですね。
 「そういうことだ。それがISO14000の持つ一種のいやらしさであり、恐さでもある。中小企業の中でも、対象となり得るのは1次下請けで、従業員が50人から100人程度の主要パーツを生産しているところだろう。施行まであと1年ということを考えると、早く準備を始めなくてはならない」
――具体的な対応策は。
 「まずは内部監査体制の整備だ。14000を取得するためには外部監査を毎年1回継続して受けなければならない。このため社内で内部監査人を育成していくことが必要だ」
――施行を前にして、欧州連合(EU)内の企業の動きは。
 「ドイツのシーメンス社では本社と海外生産拠点について2、3年内に環境監査要項(EMAS)を取得し、海外の自社以外の部品調達はISO14000シリーズ取得の事業所にしていく方針を打ち出している。ほかにボッシュ、AEG、フィリップスも同様の方針を出しており、これらの企業と取り引きしている日本企業は14000シリーズ取得を迫られる可能性も出てくる」

 ISO14000関連の動きはこれから活発になるのでしょう。
 9月に入り、荏原が英コンサルティング会社と業務提携し、日本で環境コンサルティング事業に本格的に進出することを発表しました。

■違法コピー情報1000件 和解31件、和解金1億円/今年前半 米BSA発表

 米国のコンピューターソフトウエア著作権保護団体「ビジネスソフトウエアアライアンス」(BSA、ワシントンDC)は2日、95年6月末までの半年間に日本では1000件にのぼる違法コピー情報を受け、そのうち200件について調査した、と発表した。すでに31件の和解が成立しており、和解金合計は1億円に達している。
 調査によると、違法コピーが多く行なわれているとみられるのは、メーカー、銀行、保険会社、商社、専門学校、コンピューターリース会社――など。従業員が社内のソフトを余分にコピーし、自宅に持ち帰って使うものや、コンピューター機器販売業者がサービス用に違法にインスト−ルするケースが目立っている。BSAでは世界での訴訟件数は500件以上にのぼり、日本はまだ1件だけだがハードウエアの売り上げに対するソフトウエア販売からみた日本の違法コピー率は67%と世界でも高い状況にあるという。

 「コンピューター、ソフトがなければただの箱」のとおり、ユーザーが享受できる製品機能はソフトウェアで決まります。確かに高すぎるといわれるソフトもあり、CADソフトなどでは開発販売会社が、サービスとして複数台分コピーすることもありました。 1台のコンピューターを使用する場合、新たな機能を得るためにソフトを買うのは当然なのですが、そのソフトを試しに使ってみたいのも事実です。
 最近CD-ROMで各種のアプリケーションソフトの体験版を集めたものが販売され、なかなか好評のようです。このソフトは元々ソフト業界が違法コピーを減らすために始めたものですが、その目的を達成しつつあるようです。

■違法コピー防止、初の中学生向け著作権読本作成/文化庁、来年度から

 文化庁は著作権の保護意識を高めるため、96年度に初めて中学生向けの「著作権読本」を作成、学校の授業で取り上げてもらう方針を決めた。来年度予算の概算要求に約6300万円を盛り込む。読本は3年生を対象とし、著作権の概念などについて分かりやすく解説する。同庁では「コンパクトディスク(CD)やビデオソフトなどに触れる機会が多くなる中学生のうちから、著作権の大切さを認識してもらいたい」と話している。
 文化庁はこれまでも教師向けにコンピュー夕ープログラムの著作権保護の必要性を訴える管理手引を作っているが、生徒向けの読本を作成するのは今回が初めて。小学生では理解が難しいが、義務教育課程での啓発が望ましいとの考えから、中学校3年生と盲・聾(ろう)・養護学校の第3学年の「技術家庭」の授業の中で、コンピュータープログラムの扱いなどと併せて数えることを計画している。
 読本では著作権とは何か、なぜ保護の必要があるのか、違法コピーの罪などについて、分かりやすく説明する。読本は約48万部作成し、各学校に1学級分ずつ配布する予定だ。

 良いことですが、小学生でも分かりやすい例で教えれば決して難しいものではないと思います。権利と義務についての基本教育は具体例を示し、できるだけ早い時期に行って欲しいものです。

終わりに

 7月1日にPL法が施行されましたが今のところ大きなニュースはありません。企業によっては「拍子抜け」といった感想を持つところもあるようです。
 しかし企業が行った対応は、PL法の精神に立脚したものばかりではないようです。消費者の安全よりも「訴えられたらどうしよう」的なものが多いため、その対応は「企業のために」が優先され、したがってその内容は硬直化しがちです。
 「消費者が誤使用してけがをすることを防ぐ」対策としての警告や表示には、「消費者にけがをさせてはいけない」という配慮がどのくらい含まれているのでしょうか。
 警告表示や取扱説明書の表記は一度決めたら最後、なかなか見直しをしないのでしょう。回りくどい注意文を目にするとがっかりしてしまいます。
 このようなPL対応では、企業が「顧客満足度の向上」を掲げてみても、形骸化した標語を聞かされているように思えます。


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