1996.1 Vol. 25  発行 1996年1月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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JISマーク民間機関で審査/通産省 手続き簡素化
航空機の衝突防止装置 年明け正式運用/運輸省
「飲料用紙容器で指負傷」飲食業者がPL訴訟/大日本印刷など相手に
PL法「中小企業も責任を」/取引先から要請48%
乳児の回りにたばこ置かないで! 誤飲事故のトップに/厚生省まとめ
ディズニー、絵本を自主回収/ラミネートフィルム 安全性の問題で
異物混入でワクチン回収/化血研
塩野義製薬含む3社、ホルモン剤など回収
異物混入事故相次ぎ、対策チーム設置/塩野義製薬
ISO9000シリーズ 来年度に導入実験/建設省 業者選定に生かす
「ISO/DIS14001」認証/リコー、品質保証機構から初の取得
触媒でPCB無害化/シャイン電子が処理技術
米でパトカー6万台リコール
英で禁煙規制法導入の動き

12月の新聞記事より

■JISマーク民間機関で審査/通産省 手続き簡素化

 通産省・工業技術院は11日、JIS表示許可の申請方法を簡素化し、民間検査機関での審査に合格すればJISマークを表示できるように改善すると発表した。来年1月1日から実施する。
 従来、工業技術院が実施してきた工場審査に変わるもので、12日の閣議で国内機関への申請手数料を定める政令を決め、民間検査機関の認定作業を始める。外国企業については一足早く、外国の検査機関で合格すれば工場検査なしでJIS表示を認めている。

■航空機の衝突防止装置 年明け正式運用/運輸省

 運輸省は1月4日から、パイロットに他の航空機の接近を知らせ、回避行動を促す航空機衝突防止装置(ACAS)の運用を正式に始める。90年から試験運用してきた。日航など航空大手3社の旅客機のうちACASを搭載しているのは約6割で、同省は搭載の義務化も検討する。 ACASは航空機に電波の送受信機を積み、電波のやりとりで相手の航空機の接近状況を確認する。パイロットには他機の接近を知らせ、危険な距離まで近づくと垂直方向の回避行動を命令する。
 試験運用では管制業務への影響などを調べた。管制官が十分状況を把握し、パイロットが危険を感じなくても装置が作動してしまう例もあった。しかし「管制業務に与える影響は少ない」として、正式運用する。

■「飲料用紙容器で指負傷」飲食業者がPL訴訟/大日本印刷など相手に

 新潟県のレストラン経営者が「飲料の紙容器で指を負傷したのは、構造上の欠陥が原因」として、容器の製造元の大日本印刷など2社を相手取り、製造物責任(PL)法に基づく損害賠償請求訴訟を25日までに、新潟地裁長岡支部に起こした。
 訴えたのは新潟県大和町のレストラン経営者(42)。相手方は大日本印刷と完成品製造元の大阪府大阪市の食品メーカー。
 訴状によると、今年7月7日、業務用に同日購入した紙容器入り紅茶を開ける際、プルリング型の注ぎ口を押さえていた左手親指を負傷。傷は長さ15ミリ、深さ1、2ミリ程度で出血、業務に支障が出た。突起した注ぎ口のへりの部分が鋭い形状で安全性を欠き、製造者側に過失責任がある、と主張しており、91万円の損害賠償を求めている。
 経営者側は「負傷が製品構造と無関係というなら、立証責任はメーカー側にある」としている。
 大日本印刷は「同タイプの容器は5000万個出荷しているが事故はない。事故後の実験でも出血例はなかった。注ぎ口に横に張り出した部分があるのは水切りを良くするためで、材質も柔らかいポリエチレンを使用、欠陥とは意識していない」(環境安全部)と反論している。

 事実関係ははっきり分かりませんが、製造者側のコメントで気になる点があります。
「同タイプの容器で今まで事故がない」といっていますが本当でしょうか?情報収集のネットワークが今まで十分機能していたということであればいいのですが、「環境安全部に報告がなかっただけ」ということも考えられます。
 また被害者が提訴するからには、何らかのシャープエッジが存在していると思われ、その危険の程度および「水切りを良くするための形状」が、はたして不安全と相殺するようなメリットであるかどうかも気になります。

■PL法「中小企業も責任を」/取引先から要請48%

 長野県中小企業団体中央会加盟の協同組合構成企業で作る県中小企業労働問題協議会が18日までにまとめた「PL法に関する緊急調査」で、半数近くの企業が、納入部品が原因でPL訴訟など賠償問題が生じた場合の責任分担などを明記した契約締結など、取引先から新たな要請を受けたことが分かった。
 調査によると、PL法施行に当たり、取引先から要請を受けた企業は全体の48.8%。特に製造業では58.0%と高く、非製造業の27.0%を大幅に上回った。
 要請内容は、「賠償責任が発生した場合、責任対応を求めた新たな契約を結んで欲しい」「問題の内容によっては(親企業が下請に対し)保証を求めることが可能」など。このほか、「納入物品に10年以上の長期品質保証」を求められたケースもあった。
 同協議会は「受注確保に苦しむ中小企業に、親企業が不当な賠償責任を負わせているケースもあるかも知れない」として、今後具体的なケースを調査していく方針だ。
 調査は12月1日に200社対象に125社から回答を得た。

 部品の品質保証期間をPL事故による提訴期間である10年に合わせるような安易な考えは、「リスク管理を全く行っていない企業」ということを暴露しているようなものです。
 このような場合は逆に「この親企業との取引は、部品を納入している中小企業のリスクが増大することになる」と考えて、取引中止のリスクと併せて評価すべきでしょう。

■乳児の回りにたばこ置かないで! 誤飲事故のトップに/厚生省まとめ

 子供が身の回りのものを誤って飲み込む事故のうち、最も多いものはたばこで、年齢層別では生後半年から1年未満の乳児が全体の半分近くを占めていることが29日、厚生省の1994年度の家庭用品に関わる健康被害病院モニター報告で分かった。
 大量に服用するとショック症状を起こすゴキブリ駆除用のホウ酸団子を誤って飲み込んだ例もあり、同省は「乳幼児は身近にあるあらゆるものを分別なく口に入れてしまうため、保護者は細心の注意を払うことが大切」と警告している。
 94年度の報告は名古屋第一赤十字病院など8病院の小児科と松本市の信州大付属病院など8病院の皮膚科から集めた。
 報告によると、誤飲は671件発生。1位はたばこで345件(51%)。ついで医薬品・医療部外品が86件(13%)、おもちゃが25件(4%)。
 たばこを飲み込んだ子供の7割以上が生後6〜11カ月の乳児。はいはいやつかまり立ちをするようになった子供が灰皿の吸いがらなどを口に入れるらしい。大量に飲むと腎臓障害を起こす恐れがあるエチレングリコールを主成分とする保冷液をジュースと間違えて飲んだ例もあった。
 一方、皮膚科関連の報告は318件。最近、10代の女性がピアスやイヤリングなどによるアレルギー性接触皮膚炎を訴える事例が増えている。金属別ではニッケルが原因とみられるものが最も多かった。

 誤飲は注意することで対処しやすいのですが、金属アレルギーはやっかいです。
 金属アレルギーに一度なると治らないため、「ピアスはしない、いちばん危ないニッケル製品には十分気をつける」という日頃の心がけが唯一の予防法とも言われています。
 ヨーロッパでは、ニッケル製品の販売規制を行っていて、スウェーデンでは金属製品のニッケル含有量は総混合量の0.05%以下に定めています。
 日本では何の規制もなく含有金属の表示義務すらないため、メーカーの表示を信用しがちですが、これには注意が必要です。94年に東京都内のデパートで購入した「ノンニッケル」「ニッケルを使用しない特殊技術」とうたったアクセサリーを分析したところ、「10%前後ものニッケルが含まれていた商品があった」という調査報告があるからです。

■ディズニー、絵本を自主回収/ラミネートフィルム 安全性の問題で

 ウォルト・ディズニー・エンタプライズ(東京都)は8日、ラミネートフィルムがはがれやすく、子供がのどを詰まらせる可能性があるため、玩具絵本の「スクイーズ・ミー」シリーズを自主回収すると発表した。自主回収は、米国で消費者から絵本のカバーに施されている合成樹脂のラミネートフィルムがはがれやすく、子供が飲み込み、のどを詰まらせる可能性があるとの報告を受けたため。事故は発生していないが、ディズニーは米国で11月1日から自主回収を実施、全世界で自主回収することを決めた。わが国で輸入販売権を持つゴールデンブック(東京都)に同シリーズを自主回収するように依頼したもの。12日付新聞に広告を掲載するなど消費者向けの告知を行い、自主回収を進める。
 回収対象は「おさわがせミニー」や「がんばれシンバ」など7タイトル。94年11月に発売以来、7万5000冊を販売している。問い合わせ先は0120-78-9133(フリーダイヤル)。

 このようなニュースになると分かりますが、絵本の表紙に施されているフィルムを飲み込んだときに「PLリスクになる」と考えるのは少々難しいことです。
 米国の安全意識に教えられるようです。

■異物混入でワクチン回収/化血研

 (財)科学及血清療法研究所は25日、異物混入が報告された3種混合ワクチンの自主回収作業を22日から始めたと発表した。異物は製造過程で除去できなかったワクチン原液中のたんぱく質の変性物である可能性が高く、健康被害の恐れはないという。

■塩野義製薬含む3社、ホルモン剤など回収

 塩野義製薬は26日、合成副じん皮質ホルモン「リンデロン懸濁注」のビンの中に、ガラス片が混入しているものが1本見つかったため、同じ製造ラインで同時期に作られた4万6550本の回収を始めた、と発表した。ガラス片はビンの破片と見られる。縦14ミリ、横4ミリと大きく注射針を通過しないため、同社は「健康被害が起きる可能性はない」としている。
 また、昭和薬品化工は同日、鼻水、くしゃみを伴う風邪、じんましんなどに使う抗ヒスタミン剤「テンポラールシロップ」にガラス片が混入していたため、製品の回収を始めたと発表した。回収するのはガラス片が見つかった製品とほぼ同時期に愛知県瀬戸市の同社瀬戸工場で製造した2282本。
 一方、医薬品製造の東洋ファルマーも富山県の井波工場で製造した子供用の風邪薬「アルペン子供シロップ」にハエが混入していたため、シロップ1万2500本余りの回収を始めた。

■異物混入事故相次ぎ、対策チーム設置/塩野義製薬

 塩野義製薬は自社製造の医薬品に異物混入事故が相次いでいるのを重視、塩野芳彦社長が直轄する対策プロジェクト・チームを設置した。同時に品質管理体制を見直し、出荷段階での品質検査を2度実施する体制に改める。同社は主力の抗生物質などで今年だけでも3件の異物混入事故が発覚、いずれも医薬品の回収に乗り出している。

 今年の4月から医薬品メーカーに対し、バリデーション(製造管理および品質管理の検証と文書化)が義務付けられます。しかし義務付けられたからといって、外部の厳格な検証無しには効果は期待できないかも知れません。

■ISO9000シリーズ 来年度に導入実験/建設省 業者選定に生かす

 建設省は13日、公共工事に対する新たな品質保証体制への要求などが高まっていることを踏まえ、品質管理・保証に関する国際標準規格「ISO9000」シリーズを導入したパイロット工事を96年度に実施すると発表した。併せて公共工事への同シリーズの適用方針も決め、当面は諸外国のような入札の必要条件とするのではなく、企業評価の1要素として業者選定の参考とする方向で対処することにした。
 対象となるのは関東地方建設局などが発注する直轄工事で、数件程度を予定。実施方法としては入札参加者を同シリーズによる品質管理が行える施工者とし、入札参加希望者の品質システム、品質マニュアル、品質計画書を事前に審査する「施行計画審査型一般競争入札」とする。
 またパイロット工事の実施に際して、品質管理システムの審査や同シリーズ適用の効果を把握するため、学識経験者を含む検討委員会を設置し公正な評価が行える体制を整える。

 公共工事にISO9000シリーズを導入し品質の維持向上に取り組むのは非常に良いことだと思います。日本における下請・孫請けの個人業者の施工に対し、どの程度浸透できるかがポイントになるでしょう。

■「ISO/DIS14001」認証/リコー、品質保証機構から初の取得

 日本品質保証機構(JQA)は、国際的な環境管理システム規格「ISO/DIS14001」による環境監査業務を開始し、25日、第1号の認証をリコーの画像生産事業部御殿場事業所に対し行った。
 96年7月に国際規格が正式に発行されれば、ISO/DIS14001による認証取得企業は、変更部の審査でISO14001に移行できる仕組み。JQAでは来年7月のISO14001の発行前に、50件程度の認証を予定している。

 大手企業では「ISO14000シリーズ」取得の準備を始めるところが増えてきて、97年から98年度末をめどに認証を取得するようです。

■触媒でPCB無害化/シャイン電子が処理技術

 シャイン電子(大阪市港区波除2-4-2、社長三原良平氏、エ06-584-4417)は触媒を利用して、ポリ塩化ビフェニール(PCB)を効率的に分解処理する技術を確立した。触媒で炭素と塩素分子の分解を促進、1500℃から1300℃下で燃焼させるだけで、PCBの残留測定値は人体に影響しないレベルにまで下がった。
 PCBは1300℃以下で燃焼すると不完全燃焼を起こし有害なダイオキシンを発生するため処理が難しい。安定的で結合性の強い炭素と塩素分子をいかに効率よく分解し、無害処理できるかが燃焼処理のポイントだった。同社の処理方法ではPCBを構成する炭素と塩素分子の分解を促進するため、ナトリウム、水酸化ナトリウム、ベンゼン、ガソリンなど約10種類の揮発性の高い触媒を混合した点が大きな特長。

 行政の対応が十分でないため、全国で問題になっているPCBを早い段階で処理できれば画期的なことです。

■米でパトカー6万台リコール

【デトロイト7日AP共同】米国の大手自動車メーカー、フォード・モーターは6日、同社生産のパトカー、クラウン・ビクトリア(1993〜1994年型)にハンドル取付ボルトが緩みやすい欠陥があったため、6万2800台をリコールする、と発表した。
 同社によると、過度の使用によって、問題のボルトが緩むとハンドルの制御がしにくくなったり、不可能になる。
 この欠陥が原因の事故が1件報告されたが、負傷者は報告されていない、としている。

■英で禁煙規制法導入の動き

【ロンドン23日共同】23日付の英紙ガーディアンは、英政府がレストランを含め公共の場所での喫煙を規制する法律の導入に乗り出した、と報じた。3年前に始めた喫煙に関する自主規制措置が不発に終わったためで、環境省は強制的な規制が必要と判断している。これに対して、飲食店業界からは「商売ができなくなる。悪夢だ」と反発の声が上がるなど、喫煙権をめぐって大きな論争に発展しそうだ。
 同紙によると、環境省は1992年に、2年以内に「効果的な喫煙政策」を飲食店を含む公共の場の80%に導入することを打ち出した。この政策は飲食店などの自主的協力で、単に喫煙、禁煙場所を分けるのではなく、両所を壁で隔てて、喫煙場所では効率的な換気扇の設置を求めている。
 ところが、同省が今年実施した調査では、このような喫煙政策がとられていたのは、学校で77%、通常の店で63%と目標の80%に届かず、レストランとパブはそれぞれ36%、14%にとどまっている。

終わりに

 PL法が施行され半年が過ぎました。日本の社会が今後どのように変わっていくのか、この2〜3年が大事でしょう。
 製品を作る側と使う側がお互いの利益と責任を謙虚に考えることは、公平な社会の実現に一歩近づくことになるでしょう。

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