1996.2 Vol.26  発行 1996年2月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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注意事項従わず医療過誤、「医師の過失推定」/最高裁が差し戻し
医薬品異物混入防止へ検討会/厚生省 3月めどに中間報告
容量2倍の錠剤を回収、バイエル薬品
「高温車内で破裂」缶ビールに注意表示
エアバッグは凶器!?
品質管理「ISO9001」規格、エンジ部門が取得/大成、ゼネコンで初
乾電池再利用を実証、信大工学部/最高73回の充電に成功
パソコンに環境対策/廃棄処理、省エネ、包装に配慮
環境審査員を養成/JACO 4月から資格取得セミ
アマゾンの足、飛行船構想が浮上/開発拡大懸念の声も
インターネットにホームページを開設

1月の新聞記事より

■注意事項従わず医療過誤、「医師の過失推定」/最高裁が差し戻し

 虫垂炎の手術後植物状態になったのは、医師の手術ミスが原因として、名古屋市北区の宮地孝典さん(28)と両親が、名古屋市北区の上飯田第1病院と医師に計約9400万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷の可部恒雄裁判長は23日、「医師が医薬品に添付された注意事項に従わず、それによって医療事故が起きた場合は、それによって特段の合理的理由がない限り、医師の過失が推定される」との初判断を示した。5裁判官全員一致の判決。
 判決は医師に課せられた“最善の注意義務”を厳格にとらえており、ほかの医療過誤訴訟にも影響を与えそうだ。判決は、注意事項に従わない医療慣行があることについて、平均的医師が現に行っている医療慣行は必ずしも医師の注意義務の基準(医療水準)とはならない、とした上でこの医療事故について検討。「仮に当時の一般開業医が薬の注意事項を守らなかったとしても、それに従っただけでは医療機関に要求される注意義務を尽くしたとはいえない」と認定した。
 そして宮地さんの脳機能低下と医師の過失との因果関係についても「注意事項通り頻繁に血圧測定をしていれば急激な血圧降下などを防ぎ得たはず」と肯定し、宮地さん側の損害などを認定するため、審理を差し戻した。
 宮地さんは7才だった1974年9月25日、腹痛と発熱を訴えて救急車で同病院に運ばれた。医師は虫垂炎と診断し、腰椎麻酔をした上で虫垂摘出手術を行ったが、宮地さんの手足はその後麻痺し、人の識別や話もできない状態になった。

 当然といえば当然の判決ですが、医療現場における患者の立場が非常に低いという現実を思い知らされます。「患者さんはお客様だ」という発想が稀薄で、「治療してあげる」という体質は他の製造業、サービス業の常識とは明らかに違います。

■医薬品異物混入防止へ検討会/厚生省 3月めどに中間報告

 医薬品に異物が混入するトラブルが相次いでいるため、厚生省は29日、専門家による「不良品等発生防止に関する検討会」を設置し、再発防止策などの検討を始めた。検討項目は「不良品発生の実態把握と原因究明」「不良品の発生防止策」「万一、不良品が発生した際の対応」など。3月をめどに中間報告、年内に最終報告をまとめる。特に中間報告では、注射剤の不良品発生防止策を中心に検討する予定だ。
 検討会のメンバーは、大学や病院、自治体、メーカーの代表者ら6人で、座長には小島茂雄・国立衛生試験所薬品部長が就任した。
 同省によると、メーカーからの医薬品不良発生の報告件数は、94年度は20件だったが、95年度はすでに44件に達した。このうち24件が注射剤で、特に昨年12月には8件が集中している。
 不良の内容は異物混入が24件中17件を占めた。ハエやハチ、髪の毛、金属片、ガラス片など、異物の種類も様々だ。
 厚生省は昨年12月19日付で、全国の注射剤製造所約200カ所を立入検査するよう、自治体に通知した。また、不良品を出した製造所からは再発防止のための報告書を提出させるなど対応を急いできた。

 医薬品メーカーの品質保証体制の改善にどの程度寄与するのか分かりませんが、とりあえず様子を見たいと思います。

■容量2倍の錠剤を回収、バイエル薬品

 バイエル薬品(本社大阪市)は22日、同社が製造販売した医家向けの高血圧・狭心症治療薬の容器に、容量が2倍の錠剤が混入していたことが分かり、同薬品の回収を始めた、と発表した。
 回収しているのは「アダラートL錠10mg」。容器は10mgの錠剤1000個入りだが、20mgの錠剤が1錠入り込んでいるケースが兵庫県と福島県の病院で2例見つかった。気付かずに20mgの錠剤を飲むと、頭痛、動悸などの副作用が出る恐れがある。
 混入の可能性があるのは昨年11月から12月にかけて作られた4494本。回収は19日に始め、これまでに8割近くを医療機関などから集めたという。
 混入の原因について同社は、製造工場(滋賀県甲賀町)の瓶詰め工程で、10mg錠剤のラインに切り替える際、確認が不十分だったため前工程の錠剤が入ったと説明している。

 前工程の錠剤が入ったという原因は分かるのですが、なぜ検査で発見できなかったのでしょうか。特性値の検査でなく単なる大きさや重さの全数検査は、大した設備もなくできるような気がするのですが‥‥。

■「高温車内で破裂」缶ビールに注意表示

 キリンビールなどビール4社は、高温の自動車内に缶ビールを放置しないよう缶に注意書きを表示することを検討する。近くビール酒造組合に各社の担当者が集まり具体的な内容を詰める。
 これは、群馬県消費生活センターが「車内に放置した缶ビールが破裂した」という苦情から、昨年末に缶ビールの加熱実験を実施、直接日光を浴びた車内と同程度の高温で28缶中23缶が破裂するという結果が出たため。急ぎ業界で対応策をまとめることにした。

 このような実験を行っていなかったということは、自動車内には缶ビールを置かないと思っていたのでしょう。工場出荷から店頭に並ぶまで、お客が購入・運搬し冷蔵庫に入れるまで、冷蔵庫から胃袋にはいるまでのストーリーを考えれば分かりそうなものですが、案外抜けているものです。

■エアバッグは凶器!?

 「ユーザーの使い方によっては助手席エアバッグは凶器となる」―。ボルボ・カーズ・ジャパンは国内自動車メーカーの運転席および助手席エアバッグの標準装備競争に警鐘を鳴らした。ボルボでは成人がシートベルトを締めている場合における助手席エアバッグの有効性については認めながらも@子供が助手席に立つA助手席に設置されたチャイルドシートに子供が座るB母親が子供を抱いて助手席に座る―などの場合には膨らんだエアバッグに挟まれたり、吹き飛ばされる可能性があると指摘している。このため、ユーザーのドライビングパターンに合わせてオプションで設定すべきだと判断しており、助手席エアバッグの標準装備を進めるトヨタ自動車、日産自動車との安全装備に関する考え方に違いを見せた。

 運転席と助手席エアバッグの安全競争が激しくなっていますが、このニュースはハード面の充実のみに目がいっていることへの指摘だと思います。消費者には、使い方といったソフトの情報(エアバッグは万能ではないこと)も同時に提供しなければなりません。
 側面衝突時に効果のあるサイドエアバッグをベンツと供に採用しているボルボとしては、日本のメーカー以上に安全を考慮してきた自負があるのでしょう。最近のエアバッグ競争が、単に売るための手段になってしまっているのが苦々しく思えたのかも知れません。

■品質管理「ISO9001」規格、エンジ部門が取得/大成、ゼネコンで初

 大成建設はゼネコンのエンジニアリング部門で初めて、ISOの品質管理に関する国際規格「ISO9001」の認証を取得した。
 同社のエンジニアリング本部は工場や物流施設などの建屋建設を補完する位置付けで、生産設備や物流設備の設計・施行を担当している。外資系の医薬品メーカーなどで、国内の施設建設の際に、建設会社にISO規格に沿った品質管理システムを求める例が増えたため、土木・建築部門に先駆けて認証を取得した。

 建設関連の企業が積極的にISO9000シリーズ取得に向けて動き出したのは評価できると思います。

■乾電池再利用を実証、信大工学部/最高73回の充電に成功

 信大工学部(長野市)の武井たつ子助教授らのグループが、理論的には可能とされながらも具体的な実験データがなかった市販乾電池の充電実験に成功し、充電を繰り返すことにより最高73回の使用に耐えることを国内で初めて実証した。
 乾電池に充電する場合、最大の懸念は液漏れや破損の事故。このため、乾電池メーカーは商品のラベルで充電しないよう消費者に注意を促している。武井教授らの実験では、液漏れはわずかにあったが、破裂は1回もなかった。
 実験は昨春から、おもに信大工学部機能物質科学研究室で行い、武井教授のほか国際技術交流協会(愛知県一宮市)の小沢昭弥理事長ら7人が加わった。
 小沢理事長によると、乾電池は放電で電位が低下するが、電池内部の構造が崩れない限り、電圧をかければ理論上は何度でも再利用できる。
 国内の使用済み乾電池は、市町村が処理を委託している全国都市清掃会議(東京)の回収分だけでも94年度は約4440トン。北海道で埋め立てたり、金属部分は再生しているが、運搬費の高騰で自治体の負担は重く、再生した金属も料金を払って業者に引き取ってもらっている。

 「乾電池を再充電できる」とうたった商品がすでに売られていますが、効果や安全性などが検証されていない商品のようです。今回の実験により、電池メーカーなどの本格的な商品開発が期待されます。

■パソコンに環境対策/廃棄処理、省エネ、包装に配慮

 パソコンの環境対策を考えようという動きが、メーカーの間で広がっている。国内パソコン市場は、95年度約520万台、96年度約750万台と急拡大。家庭への普及も進んでいることから、そのエネルギー消費問題や数年後に発生する廃棄処分問題に対応しようというもの。新製品の開発・設計時に環境影響評価を行う動きや、小電力などの特徴を持つ「グリーンパソコン」の商品化といった試みが始まっている。
 コンピューター業界では、日本電子工業振興協会(電子協)が95年8月、「情報処理機器の環境設計アセスメントガイドライン」を制定した。通産省が前年に「再生資源の利用の促進等に資するための製品設計における事前評価マニュアル作成のガイドライン」を発行したのを受けての動きだった。
 電子協のガイドラインはNEC、富士通などすでに会員企業が制定していた社内規定を参考にしており、新製品開発時に処理の容易性、省エネルギー性、包装材の減少などを評価するよう求めている。
 富士通では93年4月にガイドラインとして制定した「製品環境アセスメント規定」を、95年下期から全製品に採用した。NECも「製品アセスメントガイドライン」による評価を95年3月から義務づけている。
 中でも95年後半に、開発時の環境影響評価が必要な商品として注目を集めるようになったのがパソコン。従来の大型コンピューターはほとんどがリースのため、メーカーに戻って再利用・廃棄ができた。しかし、パソコンは性能向上が急激なため、役割を終えたときにはすでに回収する価値がない。しかも95年度は前年度比5割増の520万台まで市場が急拡大、家庭にも普及してきたため「5年後には500万台の処理が大きな問題になる」(NEC)と予想される。
 このため各メーカーは、パソコンを自社のガイドラインよりきびしく適用する「環境配慮製品」にしている。さらに開発時の事前評価だけでなく、実際の廃棄処分問題を考える動きも出てきている。電子協では94年春に「廃製品回収リサイクル専門委員会」を設置。コンピューター関連製品の現在の回収実態調査を始めている。96年3月には報告書がまとまる予定だ。

 家庭へのパソコンの急激な普及により電力事情が厳しくなるという指摘があり、米国などでは早くから省エネ対応の機器が商品化されていました。わが国でも最近はモニターやプリンターなどで、使用していないときの消費電力を抑える商品が増えてきました。
 夏場のエアコン使用時期に電力各社が設備ぎりぎりの対応をしているニュースなどで、電力事情の一般への認識も少しは高まってきました。商品の差別化という企業主導型の省エネ機器ですが、電気は無限にあるものではないと考える消費者がもっと増えなければなりません。
 省エネエアコンも多く出回り、今年は省エネ冷蔵庫も続々出てくるようです。

■環境審査員を養成/JACO 4月から資格取得セミ

 日本環境認証機構(JACO、東京都港区赤坂1-11-28、社長江川英晴氏、エ03-5572-1723)は、4月から環境審査員(監査人)研修事業に着手する。環境審査員は96年夏に発行する国際標準化機構(ISO)の環境マネジメントシステム「ISO14000シリーズ」に規定され、ISO規格の認証に必要な公式資格。
 同社は95年から環境マネジメントシステム、環境審査人養成などのセミナーを実施しているが、受講者の中から公式資格の取得につなげたいとのニーズも多く、14000の発行に先立ってセミナーのラインアップを完成させることにした。
 企業の環境管理システムの国際規格、ISO14000は今年夏に発行するが、環境審査員は14012の規定。具体的には環境関連の業務経験があり、認定機関(日本ではJAB)が認定した審査員研修機関の研修を終了した人が審査員評価登録機関の評価を得て、登録される仕組み。登録された環境審査員は認証機関(審査登録機関)が個々の事業所のISO14000審査を行う際の審査員を努めることができる。
 今後、日本の事業所のISO14000シリーズ認証取得が本格化するのに伴い、認証機関の環境審査員に加え、内部に公式資格保有者を抱える企業も出てくるため、環境審査員は年400〜600人が必要になると見られている。
 JACOは電機・電子機器メーカーが中心に設立した認証機関だが、こうした審査員の需要を見越し、セミナー事業の経験をもとに公式環境監査員要請に乗り出すことにした。

■アマゾンの足、飛行船構想が浮上/開発拡大懸念の声も

 【リオデジャネイロ12日共同】ブラジル政府は、アマゾン地域の新たな輸送手段として、環境破壊の可能性が少ない飛行船の導入を検討する運輸、環境などの各省合同委員会をこのほど設置した。コスト、技術面の調査を経て、早ければ、1997年中にも初飛行を実現したいとしている。
 面積にして日本の20倍近いアマゾン川流域は、現在も河川が主要な交通手段。一部に幹線道路はあるものの、多くは雨期に使用不能となる。
 運輸省によると、周囲の樹木を伐採して建設される飛行場を必要としない飛行船は環境への影響も少なく、木材、鉱物資源、農産物の輸送、観光用、奥地の住民の足として最適という。エンジン音も小さいので、貴重な動物を驚かすことがないのも利点だ。
 ただ、環境保護団体グリーンピースは「これまで道路がないため自然が守られていた奥地に、飛行船が入って開発が拡大する心配もあり、計画は慎重に進めるべきだ」としている。
 飛行船導入は以前から持ち上がってはいたが、95年以来、ブラジル経済の安定でアマゾンへの投資が増大、計画が現実味を帯びるようになった。

 たしかに観光用としての利用は慎重にすべきでしょう。どのような手段であれ、今まで人の立ち入らないところに人が入るようになると環境は必ず変わってしまうものです。

終わりに

 今年は環境に関するニュースが今まで以上に多くなるでしょう。商品を売り利益を求める企業に、開発から廃棄までの環境ストレスの負担を求める動きはさらに強まるでしょう。
 PL・品質・環境など企業の努力すべきことは、増えることはあっても減ることはないのでしょう。

◆インターネットにホームページを開設

 この1月16日、サーバー「インターネット安曇野」の“テクノプラザ”にASP研究所のホームページを開設しました。
 現在ASPニュースなどを掲載していますが、今後は安全や品質に関する他の情報も掲載し、内容の充実を図りたいと思います。
http://www.azumino.cnet.or.jp/