1996.7 Vol.31  発行 1996年7月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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PL法施行から1年、苦情の件数急増、産業界も体制整備
 /情報公開などに課題も
PL法施行1年の現場から/長岡で初訴訟 メーカー過剰反応、
 個人にはやはり高いハードル
動燃もんじゅ事故再現実験/危険な水素発生、
 想定外−−安全に疑問
遊戯施設安全対策、4割で強化必要/建設省、来月にも通達へ
PL訴訟、米医療機器業界にさざ波/最高裁判決契機に
クライスラーの欠陥車問題/監督官庁と対立、見解相違で法廷闘争も
暗い夜空を大事にしよう、光害防止の指針作成へ
 /環境庁、屋外照明の光量に基準
アルミ缶、米の回収率65.4%/リサイクル協調べ、再生率は日本の倍
衆院全委員会室 禁煙、次期国会から/世界のすう勢だし…

6月のニュースから

■PL法施行から1年、苦情の件数急増、産業界も体制整備/情報公開などに課題も

 製造物責任(PL)法が昨年7月1日に施行されてから満1年。各地の消費者相談窓口への苦情申告件数が急増、家電や自動車など業界団体が「相談センター」を相次いで設立するなど産業界の体制も整ってきた。
 国民生活センターのまとめによると、全国の消費生活センターに寄せられた製品事故情報は1995年度は合計3677件、前年度に比べ61%も急増した。
 電機、自動車、住宅など11業界が消費者との紛争処理に当たる「PLセンター」を設立。訴訟に備えて企業が入る「PL保険」の収入保険料も、95年度は68%と大きく増えるなど企業側の関心も高まった。
 ただ、企業側が心配したPL裁判ラッシュはなく、新潟地裁長岡支部に提訴された1件だけ。
 メーカーや業界団体の拠出金で設立され。苦情受付や原因調査も企業の従業員や派遣社員というPLセンターの中立性を疑問視する声もある。
経企庁は「経済のサービス化への対応は重要なテーマ」(幹部)として、国民生活審議会での論議を踏まえ、サービス分野で起きた事故などの救済に向け法整備の可能性を探る方針だ。

 PL法施行から1年が経過し、新聞などで取り上げられることが増えてきました。「クレーム件数は増加するけれどもPL裁判は増えないだろう」と当初からいわれていましたが、結果を見る限りその通りです。
 PL法はもともと「製品事故による争いごとを起こさないためのもの」ではなく、製品の安全性を作り込むことで企業・消費者双方の利益につながる社会を築くはずのものです。業界主導の相談センターは「相対交渉取次機関」などともいわれますし、権限のない消費生活センターでは、この現状は仕方のないことかもしれません。
 しかし反省点も多く指摘されており、企業でもこの1年の経過にほっとしているようではダメでしょう。
■PL法施行1年の現場から/長岡で初訴訟 メーカー過剰反応、個人にはやはり高いハードル

 製造物責任(PL)法をめぐる第1号訴訟は昨年12月に起こされた。ただしPLに詳しい弁護士が多い大都市でなく、新潟地裁長岡支部。この突然で意外な提訴は消費者問題の関係者を驚かせた。
 最初はPL法なんて言葉しか知らなかった。裁判するつもりも全くなかった」と、訴えを起こした新潟県小出町のレストラン経営渡辺恭章さん(43)。
 渡辺さんは昨年7月、業務用の紅茶入り紙パックのせんを開けたときに、ポリエチレン製の抽出口の縁で左手親指に長さ約1.5センチの切り傷を負ったと主張、飲料メーカーとパックを製造した大日本印刷を相手に、91万円の損害賠償を求めた。
 訴訟に至るまでには複雑な経緯があった。まず事故の翌日、渡辺さんから連絡を受けた飲料メーカーの担当者が来訪。「このときはまだ単なるクレームのつもり。メーカー側が『必要ない』というので、診断書も取らなかった。
 メーカー側は「早急に対応する」と言い残したが、その後は大日本印刷から突然「内容証明郵便を送る」との電話が入ったり、示談を提案されたり。メーカー側の弁護士らとも断続的に話し合ったが、結局、9月末に渡辺さんが求めた謝罪と10万円の賠償に「応じられない」と回答され、訴訟を決意したという。
 またメーカーとの直接交渉とは別に、渡辺さんは県消費生活センターなどにも相談したが、こちらでも結局、解決できないとあきらめた。
「その後はPL法を勉強した。ただPLを意識していたのはメーカー側の方で、交渉のたびに『PL』の言葉を聞いた。明らかにPL法への過剰反応。法律がなければ、とっくに解決していたのかも」
 PL法では消費者側の立証負担が軽減されたが、製品の欠陥やそれによって受けた被害などを立証しなければならないことに変わりはない。しかし「全面勝訴でも、弁護士費用の方が高くなる」ため、渡辺さんの裁判は弁護士を使わない「本人訴訟」だ。
 「製品は(PL法上の)通常有すべき安全性を欠かない」と反論するメーカーを相手に、渡辺さんの孤軍奮闘が続く。さらにメーカー側は「製品が法施行以前の出荷でPL法に該当しない」との主張も展開、PL法適用かどうかも争点にされてしまった。
 渡辺さんは「診断書は取っておけばよかった。消費者は最悪のこと(訴訟)を考えて行動してほしい。ただし、裁判は一個人にはきつい。裁判外で解決ができる機関を早く整備してほしい」と訴える。

 この訴訟はPLの専門家などでも大した関心事ではないようですが、このニュースで指摘されているように消費者が自己の権利を主張し、企業と交渉するのがいかに難しいのかを考えてみる必要があります。
 このような企業と個人の争いにおける優劣の差があまりにも顕著である場合、企業のエゴを放置することにもなりかねません。社会制度の未整備な部分が、国民に不利益を強いているように思えます。

■動燃もんじゅ事故再現実験/危険な水素発生、想定外−−安全に疑問

 昨年12月に起きた高速増殖炉原型炉もんじゅ事故で動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が実施した再現実験で、床の鉄板に穴が開き、漏れたナトリウムが床下のコンクリートと反応した結果、微量ながら水素が発生していたことが28日分かった。
 高温のナトリウムがコンクリートに含まれる水分と反応すると水素が発生し、4%以上の濃度に達すると引火、爆発する恐れがあることが知られている。このため、もんじゅでは仮に漏えいがあってもコンクリートに触れないよう回収することが安全確保の大前提だった。
 実験中に採取した空気を分析した結果、穴が開いたと見られる時刻の直後のサンプルで水素濃度が0.17%と、穴が開く前の0.04%から大幅に増えたことが分かった。
実験は事故を防ぐために別の水素検知器が3%以上の濃度を検出した場合は直ちに中止することになっていたが、センサーは作動せず動燃はこれまで「水素は発生しなかった」と発表していた。

既存技術・データへの過信からか、「想定していなかった」ということをよく聞きます。しかし、何らかの要因(時間的、経済的)によって「想定したくなかった」というのでは困ります。最近の事故の中にはそのようなことが多いので気になります。

■遊戯施設安全対策、4割で強化必要/建設省、来月にも通達へ

 スリル感を高め若者や子供の人気を集めている海賊船やコースターといった遊園地などの乗り物(遊戯施設)のうち、約4割がこのままでは子供の転落事故につながる恐れがあり、安全対策の強化が必要なことが27日、建設省建築技術審査委員会が公表した調査報告で分かった。同省では来月にも全国の都道府県などに、施設所有者に安全対策の強化を指導するよう通達する。
 調査は、95年10月に兵庫県東城町のレジャーランドで小学1年の女子児童が振り子状に動く遊具から転落死する事故が起きたのをきっかけに、建設相の認定を受けている遊戯施設303機を対象に実施した。
 調査結果によると、半数近い122機で安全対策の強化が必要なことが判明。それぞれの施設について、すり落ちないよう足で踏ん張れるように身長制限や年齢制限を厳しくしたりシートベルトの設置、大人の同伴を求めるなど安全対策の強化を求めている。
 一定速度を超えるような乗り物については、建築基準法で建設相の認定が必要。このため、スリル感を高めた遊戯施設の多くが今回の調査対象に含まれている。ただ、最近流行のバンジージャンプといった「装置と呼べないものは対象となっていない」(建設省)という。

 子供の転落の恐れだけで4割というのは相当な数です。これでは安全対策が野放し状態であるとしか思えません。他の危険要因を考えると恐ろしいほどです。

■PL訴訟、米医療機器業界にさざ波/最高裁判決契機にく

 米国の医療機器の製造物責任(PL)訴訟をめぐり、医療機器業界にさざ波が立っている。業界はこれまで連邦法を盾に「政府の規定に従って製造した機器はPL訴訟の対象にならない」と主張してきたが、米連邦最高裁判所がこうした考え方を否定する判決を下したからだ。業界では「判決によって医療機器メーカーを訴えるケースが増える可能性がある」と警戒感が強まっている。最高裁判決が下ったのは心臓のペースメーカーをめぐるPL訴訟。フロリダ州の女性患者が「配線の設計ミスでペースメーカーが機能せず、生命の危険にさらされた」と心臓血管器具大手メーカーのメドトロニックを訴えていた。これに対し「米食品医薬品局の規定を満たした製品であり、当社に責任はない」と反論していた。

 連邦法の規定は最高の安全レベルを示しているわけではありません。時代とともに変化する製品の危険に対しては、この最高裁の判断は当然だと思います。今まで企業が楽をしていたということでしょうか…。

■クライスラーの欠陥車問題/監督官庁と対立、見解相違で法廷闘争も

 欠陥車に対する処置をめぐって、米クライスラーが監督官庁と対立している。カリフォルニア州自動車局(DMV)が同州レモン・ロー(欠陥商品法)に同社が違反しているとして、規定に従わない場合は同州への新規出荷を60日間差し止める方針を打ち出したのに続き、全米高速道路交通安全局(NHTSA)が95年型クライスラー・シラスおよびダッジ・ストレイタスの後部座席シートベルトに欠陥があるとしてリコールを求め、法務省に提訴した。
 DMVは、90〜91年に同社がカリフォルニア州で販売した自動車のうち116台にクラッチの騒音、過剰振動、ブレーキオイル漏れなどの欠陥があり、購入者に新車との交換あるいは代金返済を公表すべきであったにも関わらず、公表しなかったのは欠陥商品法に反するとして、60日間出荷停止という厳しい制裁方針を打ち出した。
 同社は現在、月間平均1万6000台以上の自動車を同州で販売、実際に制裁が課せられると3万2000台、ざっと5億ドルの減収を余儀なくされる。しかし、同社は「欠陥車はせいぜい25台程度で、欠陥商品法に基づき公表もした」と、見解の相違をたてに、上告裁判所に訴えるなどの対抗措置を取る考えだ。
 一方、NHTSAは95年5月以前に製造されたシラス、ストレイタスの後部座席のシートベルトの留め金が規定の10秒間に3000ポンド(約1350キログラム)の負荷に耐えられないとしてリコールをを求めた。対象車は9万1000台。これに対して、同社は「試験装置をシートベルトの留め金近くにセットすれば、正常に作動する。試験法に問題がある」として、リコールに応じない意向を崩していない。

■暗い夜空を大事にしよう、光害防止の指針作成へ/環境庁、屋外照明の光量に基準

 暗い夜空を守ろう−−環境庁は照明などによって夜空が明るくなり、星が見えにくくなったりする「光害」を減らすため、屋外照明の光害防止ガイドラインを今年度内に作成する。上空に漏れる照明光の量に一定の基準を設け、改善を求める目安にする。光害は天体観測に影響が出るほか、農作物の生長を狂わすなど新たな公害として関心を集めており、環境庁も対策に乗り出すことにした。
 環境庁は、7月に天文学や照明学の学識経験者、地方自治体の代表者などからなる研究会を設置して、ガイドラインづくりの作業に入る。
ガイドラインは屋外照明器具を対象にし、器具が出す光の総量のうち上空に漏れる量の比率(上方光効率)やその量、建造物をライトアップする時の明るさなどについて、基準を設ける。
屋外照明の基準については国際照明委員会(CIE)と国際天文学連合(IAU)が共同で国際的なガイドラインづくりを進めており。今週にも骨格が固まる予定。現在の検討委では市街地の上方光効率を25%以下に押さえるなどとしており、環境庁の作業も国際基準に添った内容となる見通しだ。 光害に対しては岡山県美星町が89年に光害防止条例を定めている。

 最近のTVニュースですが、東京では照明や大気汚染が原因で8年前に比べ星の見える程度が半分になったということです。

■アルミ缶、米の回収率65.4%/リサイクル協調べ、再生率は日本の倍

 アルミ缶リサイクル協会(理事長大畠芳昭氏=昭和アルミニウム缶社長、03-3582-9755)は、「米国におけるアルミ缶リサイクルに関する調査報告書」をまとめた。米国ではアルミ缶リサイクル活動で約30年の歴史があり、缶回収率も65.4%と、日本の61.1%より高い。一方で販売缶の本数は日本の6.5倍ある。また回収された缶の再生比率も82.7%(日本は40%)に上る。報告書ではこうした実態を踏まえ、同国の回収方式の現状や消費者への啓発活動などをまとめている。
 【回収方式の現状】米国の回収はデポジット式(販売時に供託金が上乗せされ、消費者が容器返却時に金を受け取る)とカーブサイド収集式(住民が缶などを道端に出しておき、業者が回収する)、ドロップオフ式(住民が回収かごなどに缶を持ち寄って入れる)、バイバック式(缶を専門のバイバックセンターに持ち込み、対価を受け取る)の各式が混在している。小売店の回収コストなどの問題からデポ式はあまり人気がなく、バイバック式が主流になっている。
 【ゴミ処理の有料化】シアトル市などはゴミの処理費用を家庭から直接徴収、住民意識を高めている。さらに保管システムとしてカーブサイド収集が積極的にPRされている。
【ペナルティ制度】ニューヨーク市では市職員がリサイクルポリスの役職を与えられ、缶や袋の中身をあけて中身をチェック、違反者には警告書を発行、なお改善されぬ場合に罰金を徴収している。
【消費者への啓発活動】行政、学校、民間団体で活動を積極展開、その効果に対する評価も高い。方法ではテレビやラジオのPRの他、各地域に密着した地道なものもある。シアトル新聞や市民向けダイレクトメールがあり、啓発費用に年70万ドルが支出されている。

■衆院全委員会室 禁煙、次期国会から/世界のすう勢だし…

 衆院議院運営委員会の警察小委員会は5日、次期国会から全委員会室内を禁煙とすることを決めた。議運委に報告し了承を得た後、全衆院議員に「禁煙決定」の通知書を配布する。 衆院では現在、本会議場を除き各委員会室には灰皿が用意されており、閣僚や議員は審議中も喫煙できる。しかし「禁煙は世界のすう勢だし、健康に対する意識も高まっている」(山下八州夫・小委員長)との判断から、今年の連休前から検討を進め、禁煙に踏み切った。

終わりに

 PL法により何が良くなったかというと、マスコミなどの取り扱いが積極的になり、欠陥や事故情報が多く公表されてきたことぐらいでしょうか?「事故がおきたときどうするか」の企業対応では、大事な被害者救済の理念が忘れられているようです。  
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