1996.8 Vol.32  発行 1996年8月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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PL法施行1周年でシンポ/業者と消費者直接交渉、公表拒否の和解目立つ
コンニャク入りゼリー、乳幼児らの事故防止へ形状改善など指導を/長野県
 弁護士会が要望 農水省と業界に
新幹線三島駅死亡事故から半年、旧型車両のドア改修進むが…/「新型」で
 も指挟み事故、検知技術に限界も
缶の出火ご用心 カセットコンロ・スプレー…/東京消防庁95年火災統計、
 都内で倍増75件
公園遊具に独自安全基準/コトブキ、98年メドに製品改善
グリルガード見直し急/歩行者への安全意識、「RV」演出に不要の声も
危機管理にも「規格化」の波
家族の喫煙で子供に鉛汚染/静岡の医師が警告
O157情報を詳細に/行政機関や大学などインターネットで発信
車の環境への影響「仕様書」、日本で来月から提供/ボルボ、世界に先駆けて
アルミ缶、回収率米抜き65%/95年度

7月のニュースから

■PL法施行1周年でシンポ/業者と消費者直接交渉、公表拒否の和解目立つ

 製品の欠陥で生命や身体、財産に被害を受けた消費者の救済を目的にしたPL法が施行されて1年。このほど開かれた記念のシンポジウム「被害者は本当に救われるようになったのか?」(主催・PL法消費者全国連絡会)で、施行後1年の問題点が報告された。
 法施行後、PL法の該当ケースになった訴訟は新潟地裁長岡支部の1件だけだが、報告に立った日弁連消費者問題委員会副委員長の拓殖直也弁護士(名古屋弁護士会)は、施行以前に起こされた製品事故に絡む裁判が次々に和解していることに言及した。
 ただし和解条件の中に、和解内容やメーカー名を公表しないことが盛り込まれるケースが目立っており、拓殖弁護士は「中には和解したことさえ公表を拒むメーカーもある。これでは本当の被害防止につながらない」と述べた。
 これまでPLセンターが受け付けた相談で、審査の上で「裁定」に至ったのは「住宅部品」2件、「自動車」1件ぐらいで、ほとんどがメーカーと消費者の直接交渉で解決した、と報告されている。
 例えば「自動車」はこの1年間で約750件の相談があったが、約半数が相談だけ、メーカーと消費者の直接交渉での解決が残り半数とされている。また「家電製品」では相談(約80件)がすべて直接交渉に回されていた。
 こうした実態について、拓殖弁護士は「これだけ相談があるのに、ほとんど直接交渉で解決しているというのは不思議。検証の必要がある。調停、裁定などへの申し立てにはメーカー側の同意が必要となるなど、手続き上の問題もある」と話した。

■コンニャク入りゼリー、乳幼児らの事故防止へ形状改善など指導を/長野県弁護士会が要望 農水省と業界にドル

 乳幼児がのどに詰まらせて死亡するなど全国で事故例が報告されているコンニャク入りゼリーについて、長野県弁護士会消費者問題対策委員会(委員長・諏訪雅顕弁護士)は15日、「コンニャク入りゼリーは製造物責任(PL)法に触れる欠陥があるといっても過言でない」とし、メーカーに形状の改善などを指導するよう求める要望書を、全国の弁護士会としては初めて農水省と全国こんにゃく協同組合連合会など関連業界3団体に提出した。
 また、今年3月に長野市内の1歳10カ月の男児がコンニャク入りゼリーをのどに詰まらせて死亡した事故で、同日までに男児の遺族が死亡保障についてメーカーとの調停を簡裁に申し立てたことを明らかにした。
 コンニャク入りゼリーによる事故で調停が申し立てられたのは全国で初めてという。
 諏訪弁護士は「メーカーには表示で事故防止を図る動きもあるが、事故を無くすには商品の改善以外にない」としている。
 国民生活センターの調べだと、コンニャク入りゼリーでこれまでに全国で死亡事故4件を含む24件の事故が発生、うち10歳未満の事故が21件を占める。同対策委は、県内では長野市の死亡例のほかにも、1歳3カ月の幼児2人が病院に運び込まれ助かったことを明らかにした。

 コンニャクゼリーによる事故については、昨年秋に国民生活センターが「消費者被害速報」「警戒情報」を相次いで出し、業界に対応を促しました。その情報を受けて、業界団体の「全国コンニャク協同組合連合会」は10月に「この商品はのどに詰まると事故死をまねくおそれがあります」などと警告表示するよう通知しました。しかし実際の表示では、危険の内容を全く表示していない銘柄や「丸飲みしない」「小さく切る」など食べ方だけを表示した銘柄も多くあり、企業の対応は消極的でした。
 今年7月8日、先の団体に「全日本菓子協会」「全国菓子工業組合連合会」を含めた3団体は、「小さなお子様には与えないでください。小さなお子様の手の届かないところに保管してください」と表示したステッカーを商品に張り付けることを決め、会員企業に通知しました。また7月13日の新聞では、国民生活センターが異例の2度目の「消費者被害警戒情報」を出したことを報じていました。
 これはまさにPL問題で、関係企業は「表示だけで対応すべきでない欠陥」との認識をもたなければいけません。

■新幹線三島駅死亡事故から半年、旧型車両のドア改修進むが…/「新型」でも指挟み事故、検知技術に限界も疑問

 東海道新幹線の三島駅で昨年12月、男子高校生が「こだま」のドアに指を挟まれ、引きずられて死亡する事故が起きてから半年余り。自殺や誤って軌道に入り込んだケースを除けば、64年の開業以来、初めての死亡事故となっただけに、JR東海は旧型車両のドアの構造を改良するなど安全対策の徹底を急いでいる。
 新幹線はトンネル通過時の車内の気圧変化などを抑えるため、閉めたドアを外へ強く押し出して密閉する仕組みを採用。誤って指などが挟まれた場合、密閉後はまず抜けないという。三島駅で事故を起こした「0系」車両は、新幹線車両の中で最も古い型で、ドアが閉まると同時に密閉される。
 比較的新しい「100系」や「300系」の車両は「0系」と違って、時速5キロまではドアが密閉しない構造を当初から採用。今回は「改良の必要はない」とされた。しかし、これまでに確認されている乗客がドアに挟まれた7件の事故のうち、4件は新型車両で起きている。
 三島駅の事故では、静岡県警がホームで監視していた輸送主任ら2人を業務上過失致死の疑いで書類送検。被害者の両親も先月、JR東海に損害賠償を求める訴えを起こすとともに、同社首脳を業務上過失致死の疑いで刑事告訴している。 遺族側は「会社にはドアの構造を改善しておく義務があった。改善しないなら、それを補う安全対策を講じておくべきだった」と主張。
 これに対してJR東海側は、「ホームの監視を徹底し、駆け込み乗車の危険性を再三呼び掛けるなどして、安全対策とってきた。30年間で約30億人を運び、安全を確保してきており、基本的な保安体制に問題はない」としている。

 「今まで何年間事故がなかった」いう論理で安全を論じるのは、少々硬直化した考えかもしれません。今回の事故を例にキャンペーンでも行い「駆け込み乗車はどれほど危険なのか」を国民に知らしめるのも必要でしょう。
 また、乗客サービスや安全確保についての職員の認識および実践について、組織としてどの程度把握しているのかも気になります。最近のことですが、中央線「あずさ」号の車内で携帯電話を利用する人がいました。通りかかった車掌に「やめてもらいたいのだが」といったところ、車掌は「ああ、あれね」と返事しだけで何もしないことがありました。

■缶の出火ご用心 カセットコンロ・スプレー…/東京消防庁95年火災統計、都内で倍増75件

 カセットコンロ用のボンベや、殺虫剤、整髪料などのスプレー缶などから出火する火災がこと数年、東京都内で急増し、昨年は前年の2倍以上になったことが3日、東京消防庁がまとめた95年火災統計で分かった。
 カセットコンロの普及に加え、フロンガスの規制でスプレー缶に可燃性のLPガスが使われるケースが多くなったことが背景にある、と同庁はみている。
 同庁によると、この種の火災は都内で昨年、75件発生。前年の35件の2倍強、4年前に比べると約3倍に上っている。このうちカセットボンベから出火したのは42件、スプレー缶は33件。
 いずれも、ストーブなどの近くに置いていて破裂したり、捨てる前に台所で缶に穴を開けたところコンロの火が引火した事例などが目立つという。カセットボンベの場合、コンロへの装着が不完全で漏れたガスに火が付いた火災も多い。 このほか目立ったのが、動物がかかわった事例。ねずみが電気コードをかじったり、室内犬や猫がストーブを倒すなどして、計24件の火災を引き起こした。
 また、95年の都内の総火災件数は、前年より微減の6589件。火災による死者は同じく微減の134人だったが、うち高齢者は56人を占め、統計を取り始めた63年以来、最悪になった。

■公園遊具に独自安全基準/コトブキ、98年メドに製品改善

 観覧いすメーカーのコトブキ(東京・千代田区、深沢重幸社長)は米国や欧州の安全基準に基づき、公園遊具に関する独自の安全基準を設けた。遊戯中の落下事故や狭さく事故を防ぐのが目的。98年4月をメドに同社の全製品を安全基準に沿った仕様に改める。
 現在、日本ではPL法に対応した遊具の明確な安全基準は設けられていない。同社は95年4月から、米国材料試験協会の「公共の場に設置する遊具の安全に関する基準」などを参考に検討を続け、96年3月「コトブキ安全基準」を作成した。 例えば子供が落下した際のけがをできるだけ小さくするため、遊具を支える土台を地中に埋める。費用との見合いで地上に置かねばならないときはゴムシートをかぶせる。誤って首を絞めないようにアスレチック遊具にはワイヤ入りのロープを使う−−など。

 ASPニュース7月号では、建設省が遊戯施設での安全対策の強化を指導する通達を出すニュースを扱いましたが、遊戯施設での安全性についての動きが少し出てきました。
 日本では遊戯施設での安全基準そのものが未整備であることから、このような企業の対応を契機に業界への浸透、そして国内規格への整備につながることが望まれます。

■グリルガード見直し急/歩行者への安全意識、「RV」演出に不要の声も

 レクリエーショナル・ビークル(RV)などのオプション装備であるフロントグリルガードの改良、見直しが進んでいる。歩行者と衝突した際、通常の車に比べて歩行者に大きなダメージを与えるといった指摘が一部で出され、運輸省もその安全性調査に乗り出した。メーカーは「付けた方が悪い場合と良い場合があり安全性を一概に判断できない」(トヨタ自動車)としているが、樹脂カバーを付けるなどの対応を急いでいる。
 三菱自動車工業が、2日発売したオフロードタイプRV「チャレンジャー」。オプションカタログにあるグリルガードの注意書きには、わざわざ「ガードパーツではありません」と記載されてある。強い衝撃が加わると後方に倒れる仕掛けになっており、歩行者に対する衝撃を緩和するのが狙いだ。完全なファッションパーツであることを認めている。
 同社では、モデルチェンジの機をとらえ、順次同様の製品に切り替えていく方針だ。また、トヨタは従来の鉄パイプ製に変わり、オール樹脂を採用したり、前縁部の芯材に空間を設けて衝撃を和らげるなどの工夫を凝らし、日産自動車も突起感を無くし小型曲面形状にデザインを変更するなど、各社とも対歩行者への安全性を意識した見直しを進めている。
  今のところ、グリルガードの危険性については「確たる裏付けがない」(運輸省)のが実状。各メーカーも実態を把握するため、ダミーによる衝突実験などを通じてデータ収集に乗り出している。「。

■危機管理にも「規格化」の波準

 阪神大震災から17日で1年半がたつ。大震災がもたらした教訓を風化させてはならないとの思いを出発点に、徳谷昌勇成蹊大教授ら有識者が企業の緊急事態への対処方法を標準化するよう国に提案した。これを受けて通産省・工業技術院は「危機管理システム」技術報告書を広く公表し、21世紀初頭のISO規格化を目指して作業に着手する。
 同報告書は災害のほか株暴落や金融不祥事、スキャンダルなどおよそすべてのリスクを対象にしている。報告書は「株主や従業員、市民社会、取引先の信頼を勝ち取り、企業間での競争優位性の確保につながる」ほか、「企業の経営安定性の客観評価が可能」とメリットを挙げている。
 同報告書について工技院は「いわば規格化の前段階のタタキ台。規格の表現といったテクニカルな問題よりも、産業界の意識を高めるのが最大の狙い」(標準部)と、発案にいたる動機こそが重要と力説する。

■家族の喫煙で子供に鉛汚染/静岡の医師が警告

 家族の喫煙によって、有害な鉛の濃度が幼児の体内で増加していることを、静岡県立こども病院の加治正行医長が突き止め、「幼児の前では喫煙を控えてほしい」と訴えている。 たばこには鉛が含まれており、喫煙者の間で血液中の鉛濃度が高いことは知られていたが、受動喫煙による幼児の鉛汚染の危険が示されたのは国内で初めて。
 加治医長が外来を受診した子供211人の血中鉛濃度を原子吸光光度計で測定したところ、新生児から1歳まで鉛濃度は月齢とともに上昇。1歳以上では、年齢や男女で差がなかった。
 1歳から小学校入学までの幼児で受動喫煙の影響をみると、血液1デシリットル中の鉛濃度は、子供の前で吸う喫煙者がいる家庭で最も高く、平均4.15マイクログラムあった。子供の前で吸わないよう配慮している家庭では、喫煙者のいない家と同程度で、それぞれ3.22、3.06マイクログラムだった。
 加治医長は「幼児は鉛の排泄機能が未熟で、脳に蓄積しやすい。人体に有害とされる1デシリットル当たり10マイクログラムを超えた子は、幸いいなかったが、血中鉛濃度が高いほど知能の発達が遅れるという報告もある。受動喫煙の健康被害は鉛についても注意すべきだ」と話している。

■O157情報を詳細に/行政機関や大学などインターネットで発信

 全国で多数の患者を出している病原性大腸菌「O157」について、厚生省など国公立の機関や各地の大学などがインターネット上に多くの情報を流している。
 情報提供しているのは、厚生省のホームページのほか、国立予防衛生研究所、東京都立衛生研究所、大阪府環境保険部などの国公立の機関、大阪大、大阪私立大、名古屋大、岡山大などの医学部や付属病院。
 多数の患者が出た大阪府堺市の対策本部の情報を集めたページもあり、合計で30近い関連ページが立ち上がっていると見られる。
 これらのホームページへはいずれも、大阪大学医学部が編集した関連ページのリンク集などから、アクセスすることができる。各ページは、臨床例の報告、海外事例など医師間、病院間での専門的な医学情報の交換、提供のために使われているだけでなく、一般の人に向けた基礎知識や予防法、これまでのO157関連ニュース集なども盛り込まれている。
厚生省のホームページは
http://www.mhw.go.jp/
大阪大医学部が編集したリンク集は
http://www.med.osaka-u.ac.jp/doc/o157.html

■車の環境への影響「仕様書」、日本で来月から提供/ボルボ、世界に先駆けて

 スウェーデンの自動車メーカー、ボルボは、1台のボルボ車が製造、使用、廃棄・再利用の各段階でどんな化学物質を使用・排出しているかなどについてまとめた車種別の「環境仕様書」を作成、日本の輸入元が世界に先駆けて8月から顧客に配る。輸入元のボルボ・カーズ・ジャパンが4日、発表した。同社によると、自動車メーカーが車の環境に与える悪影響に関するデータを顧客に提供するのは世界で初めて、という。
 同社は仕様書作成の狙いについて「消費者に車のマイナス面についての理解を深めてもらい、将来的には車購入時の一つの基準として活用されることを期待している」と話している。

■アルミ缶、回収率米抜き65%/95年度

 アルミ缶メーカーなど38社で構成する「アルミ缶リサイクル協会」が16日までにまとめた1995年度の飲料用アルミ缶の回収率は、前年度比4.6ポイント増の65.7%となり初めて米国を上回った。
同協会の調査によると、輸入缶を含めたアルミ缶の販売総本数は、159億2000万缶で、地方自治体、メーカーなどを通じて回収された缶は104億7000万個に達した。

終わりに

 O157事件が大きく報じられていますが、最近の日本における抗菌グッズに代表される清潔志向なるものとの関係がどうも気になります。
 抗菌グッズを持つことにより、努力せずに「清潔になりたい」、「清潔になれる」といった考え方のことです。 同じようなことが食品を扱う企業・流通・調理する人の間でもあるのかもしれません。近代的な設備や清潔そうなコンテナ・容器、冷凍食品などに安心し、食品取り扱い上の基本的な安全配慮を怠ってきたのであれば、問題です。
 食品に限らず一般の安全問題でも、システムなどに依存した気のゆるみが出てきやすいので要注意です。  
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