1996.10 Vol.34  発行 1996年10月8日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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JISを大幅改廃/2〜3割削減も 通産省3年計画
ソフトインテリア 米の安全基準に対応/トヨタ、採用を順次拡大
介護用具、安全性の評価基準を/通産省の懇談会報告
二輪車の自動点灯義務付け
自転車事故「安全教育足りぬ」/少年・両親に賠償命令 山形地裁支部
ISO14001世界一斉に発行
英でもたばこ訴訟/喫煙者40人、「肺がん誘発」と賠償請求
「たばこCM出演で肺がん」提訴
パソコンソフトの無断コピー、違法認め1億4000万円賠償/大阪の企業、日米3社と和解
サントリーを提訴/独紳士服「ヒューゴ・ボス」、景品のジャンパー配布差し止め求め
「労働安全衛生システム」、規格化へ国際会合/ISOきょうから

9月のニュースから

■JISを大幅改廃/2〜3割削減も 通産省3年計画
 通産省は鉱工業品の形状、材質などを定めているJISを全面的に見直す。産業界から「硬直的な規格は技術革新の妨げになる」などの批判を受け、「存在意義が問われている」と判断した。来年度から3年間で約8000の全規格を洗い出し、必要な規格を再策定する。
 塚原俊平通産相は20日の閣僚懇談会でJIS見直しの方針を表明する。通産省は10月から有識者の審議会を開き、年内に見直しの基本方法を決める。来年度から関係業界や消費者団体などの意見を聞いて全規格を個別に点検することにしている。
 自民党内には「行革の一環として規格策定を民間移管し、100人の担当職員の削減が可能」との声もあり、見直し作業を監視していく方針だ。
JISは1949年に導入された。形状を決めることで部品の汎用性を高め、強度などを定めて品質向上を誘導し、JISマークを付けることで消費者を保護する目的があった。しかし品質が改善し製品が多様化してきた現状に合わず、時代遅れの点も目立ってきた。
 このため通産省は規格がなくても支障のないものは廃止する。技術水準が向上したものは改定するが、技術革新の変化が激しいものは固定化した規格にせず参考として示す標準情報(TR)にとどめる。材質などを定める仕様基準でなく材質を問わず強度などを定める性能基準に移行したり、二重基準を避けるため国際規格があるものはそろえる。

 今回の見直しで期待されるのは、材質などの仕様基準から最終ユーザーの利害に直接関係する性能基準への移行かと思います。欧米の規格の考え方にようやく一歩近づいたということです。
 また公共機関ではJISが尊重されるため、品質の良い規格外の新商品では購入されないケースが多かったようです。これも今後改善されていくのでしょう。
■ソフトインテリア 米の安全基準に対応/トヨタ、採用を順次拡大
 トヨタ自動車は衝突時に乗員の頭部などが車両室内各部にぶつかる2次衝突に対する安全対策として、衝突吸収構造の「ソフトインテリア」の採用を拡大する。米国で2次衝突の安全基準が98年から導入される予定で、これをにらみ開発したソフトインテリアを、国内向けおよび北米向け輸出を主力とする「ウィンダム」の新型車に初採用した。今後、ソフトインテリアの技術を高めながら、採用を拡大する計画である。
 ウィンダムに採用したソフトインテリアは、フロントピラー、センターピラーのガーニッシュ、ボディーの間に衝撃吸収のためのリブを内蔵させ、ルーフサイドレールの表面を衝撃吸収パネル構造とした。これによる2次衝突の頭部障害を低減するインテリアとした。
 米国では同国道路交通安全局(NHTSA)が定める連邦自動車安全基準(FMVSS)で2次衝突に対する安全基準を新たに設定、98年から段階的に導入する。 この新基準はダミーの頭部を車両室内各部にぶつけて障害のレベルを測定し、一定の安全水準を確保するもの。
 トヨタは、こうした動きを受けてソフトインテリアを開発。現段階では米国の新基準による確認はしていないが、独自試験で有効性があるとしてウィンダムで初採用した。

 最近のトヨタはエアバッグやGOA(衝突安全ボディー)など、新聞・TVなどで積極的に安全対策のメッセージを流しています。
 これはこれでいいことだと思いますが、正しいシートベルトの装着法、運転時の姿勢、同乗する子供に対する安全配慮など運転マナーについての問題でも、自動車メーカーのしっかりしたメッセージが欲しいものです。
 車など使い方によりその安全性が極端に損なわれる商品では、宣伝であっても行ってはいけないことを消費者にはっきり知らせるべきです。
■介護用具、安全性の評価基準を/通産省の懇談会報告
 通産省の福祉用具産業懇談会(機械情報産業局長の私的研究会)は5日、高齢化の進展による介護器具など福祉用具市場の急速な拡大をにらみ、「製品の安全性や信頼性に関する評価システムを確立する必要がある」とする中間報告をまとめた。
 中間報告は福祉用具市場が94年度時点で6200億円と、複写機市場に匹敵する規模に成長したことを指摘。介護ベッドや紙おむつなどを含む「在宅介護関連分野」は年率16%の伸びを示し、「成長期に入った」と位置付けている。
 そのうえで、利用者の要望が商品開発などに反映されるシステムが確立できていないなど、業界側の対応の不備を挙げ、体制整備が緊急の課題であると強調している。報告は「福祉用具の評価基盤の確立は今後の業界構造高度化のカギを握る」とし、用具研究や評価基準の標準化を進める「福祉用具センター」構想の推進を打ち出している。

■二輪車の自動点灯義務付け
 運輸省は12日、バイクについて、エンジンが作動すると前照灯が自動点灯する構造を義務付けると発表した。他の車からバイクを見えやすくし、交差点での事故などを防止するのが目的。97年10月発売の新型車などから実施する。
 また、車両総重量が8トン以上の大型トラックなどに義務付けていた大型リアバンパーを、97年10月から7トン以上のトラックにも義務付ける。

 これはいいですね。ただ、50ccのスクーターなど原付扱いのものはどうなるのでしょう?免許がいらない乗り物のためか、彼らの運転マナーは悪く、車を運転していると危険を感じることがあります。
 ハードでできる対策(速度制限装置や今回の自動点灯ライトなど)は積極的に採用して欲しいものです。
■自転車事故「安全教育足りぬ」/少年・両親に賠償命令 山形地裁支部
 92年1月、山形県新庄市の歩道を走っていた同市内の男子中学生(当時14)の自転車に衝突され死亡した同市内の女性(当時62)の遺族が「子供に対する交通安全教育を怠っていた」などとして、中学生とその両親に損害賠償を求めた訴訟で、山形地裁新庄支部(宍戸充裁判官)は「女性も前をよく見ていなかったと推測され20%の過失があるが、日没後の無灯火など中学生には交通安全上問題となる行為があり、両親が教育監護義務を尽くしていなかった結果、事故を起こした」と認定した。
判決によると、中学生は自転車の通行が禁止されている歩道を走行中、女性とぶつかり、女性は頭を強く打ち9日後に死亡した。
原告代理人は「子供に対する親の交通安全教育の義務を認めたのは異例だと思う。交通マナーの乱れに警鐘を鳴らす判決だ」と話している。

 確かに自転車に乗る人のマナーは非常に悪いものがあります。
 自転車の通行が許可された標識のあるところは別ですが、歩道は基本的には自転車の通行が禁じられています。しかし、これすら理解している人は多くいません。
 自転車は道路を走行すべき乗り物です。車に追いやられて歩道を通行したい気持ちは分かりますが、「ルール違反をしている」といった気持ちがないのが問題のようです。 歩道でありながらベルを鳴らしながら人を押しのけて走る自転車の多いのは、そのためでしょう。
 これは学校教育の問題ではなく、社会人一般の公共の場所でのルールを守らない(知ろうとしない)意識・行動に問題があると思います。日本人社会の良くない点です。
■ISO14001世界一斉に発行
 国際標準化機構(ISO)は1日付で、環境管理・監査システムの国際標準規格であるISO14001を世界一斉に発行した。10月中旬にも、監査の指針を盛り込んだ同14010など14000シリーズの残り規格を発行する。これをうけて通産省・工業技術院は、ISOに対応した日本工業規格(JIS)を10月20日に始動する。
ISO14000シリーズはすでにスタートしている品質管理・ISO9000シリーズに続く企業経営に有効なシステム管理規格。9000は現在、世界81カ国の国家規格として導入・制定されている。
規格に合致していれば、企業・工場はISOのお墨付きを受けられる。製品の輸出や企業の海外進出にあたって、1つの基準になるとの見方が大きい。14000シリーズは当初、95年中の発行が予定されていたが、各国がそれぞれ十分に納得のいく運用を求めたため、その意見調整に手間どった。

■英でもたばこ訴訟/喫煙者40人、「肺がん誘発」と賠償請求
 肺がんにかかった英国の喫煙者40人が27日、「タール含有率の高いたばこが肺がんを誘発した」として、英たばこ会社のインペリアル・タバコとギャラハーを相手どり損害賠償請求訴訟を起こすと発表した。英国でこうした訴訟は初めて。
 原告側は「たばこに含まれる一部成分が発がん物質であることは1950年代後半から明らかだった。タバコ会社は自主的にタール含有率を下げ、発がんの危険性を最小限にする義務を怠った」としている。
 これに対してインペリアル・タバコは、「このような訴えに対しては徹底的に争う用意があり、勝訴する自信がある」としている。

■「たばこCM出演で肺がん」提訴
 【マーシャル(米テキサス州)13日AP共同】長年、米たばこ会社フィリップ・モリスのコマーシャルに登場してたばこを吸い続けたため、夫の俳優デービッド・マクリーンが肺がんで死亡したと、妻のリロさんがこのほど、同社など計5社を相手に、マーシャルの裁判所に損害賠償訴訟を起こした。請求額は明らかになっていない。
 マーシャル・ニューズ・メッセンジャー紙が12日伝えた。同紙が入手した訴状によると、デービッドさんは1960年代に、同社の製品マルボロのテレビコマーシャルに登場。長年、テレビやポスターで「マルボロマン」として人気者になった。

 雑誌の裏表紙の広告や、テレビCMの映像は覚えている人も多いと思います。その彼の死亡に関してタバコメーカーが訴えられるのですからアメリカは違います。
 メーカーとしてはCM出演に際し、将来に訴訟を起こさないという同意を俳優との間で取り付けることになるのでしょうか?
■パソコンソフトの無断コピー、違法認め1億4000万円賠償/大阪の企業、日米3社と和解
 大阪市の大手ソフト開発会社が世界最大のソフト会社マイクロソフトなど3社のパソコンソフトを社内で無断コピーしたとされる問題で、ソフト開発会社が違法コピーを認め、3社に対し総額約1億4000万円の賠償を支払うなどの内容の和解が10日成立した。 和解したのは、マイクロソフト社の他、米国の大手ソフト開発会社ロータスと日本語ワープロ「一太郎」を開発したジャストシステム。社団法人コンピュータソフトウエア著作権協会が交渉の仲介などを努めた。
 和解内容は@ソフト会社が3社の違法コピーを認め謝罪文を提出するA今後違法コピーを行わないことを確約するB少なくとも3年間は3社の全製品に関する著作権協会の立入検査を受け入れるC3社に総額約1億4000万円の賠償金を支払う−−など。 3社の代理人によると、賠償金は正規のライセンス料の約2倍で、違法コピーに絡んだ事件では過去最高額。著作権協会による監査権を認めるなど、3社側の「全面勝利」(ロータス)の内容になっている。
 3社はソフト開発会社からの内部告発を受け、今年3月、大阪地裁に証拠保全を申請。同地裁は同月13日、同社大阪事務所で保全手続きを行い、約80台のパソコンのうち30台について、保全対象のソフト数種類のコピーを確認した。
 保全手続き後、ソフト会社側が全社の約730台のパソコンのうちかなりの台数で違法コピーがあったことを認め、和解を申し出たため、3社は訴訟を起こさず交渉を進めていた。

 ASPニュース95年5月号、7月号では鹿児島の事務機器販売会社が違法コピーし、賠償金を支払うことで和解したニュースを取り上げました。どう見ても争いにはならないということが浸透することで、違法コピーが減少していくのでしょう。
 しかし、ソフトによっては異常に高い価格のものもあり、またその価格の根拠があいまいなものも多いのが事実です。他に類似の商品がなく異常に高いソフトなどはその性能によっては独禁法に抵触するものもあるような気がしますが‥‥。
■サントリーを提訴/独紳士服「ヒューゴ・ボス」、景品のジャンパー配布差し止め求め
 ドイツの大手紳士服メーカー、フーゴ・ボスと日本法人のヒューゴ・ボスは3日、サントリーに対して缶コーヒー「BOSS(ボス)」の景品ジャンパーの配布差し止めと、損害賠償の支払いを求めて東京地方裁判所に提訴したと発表した。
 サントリーも反訴しており、無償配布商品に対して商標権侵害の有無を問う珍しい裁判として注目を集めそうだ。
 サントリーは92年に缶コーヒー「ボス」を発売。93年から販促のため「ボス」のロゴを付けた「ボス・ジャン」と呼ばれるジャンパーを消費者に無料で計5万着配布した。 フーゴ・ボス側はサントリーの販促活動が大規模で、景品への問い合わせが自社の「ボス」ブランドの紳士服を扱う店舗にあるなど、商品価値に大きな影響を与えていると主張。話し合いを続けてきたが平行線をたどったため、先月20日に提訴に踏み切った。サントリーは「宣伝活動に対して商標権を主張することは理解できず、提訴は誠に遺憾」として先月29日に同地裁に反訴、徹底的に争う方針。

 「宣伝活動に対して商標権を主張することは理解できない」とサントリーはずいぶん強気ですが、紛らわしいネーミングにより(それが宣伝活動であっても)、不利益を蒙ったのですから権利の主張は理解できます。
 サントリーは「ボス・ジャン」の販促活動を企画するときには、宣伝活動と商標権についての明確な考えを持っていなかったし、また衣料品メーカーの商標の調査もしていなかったのではないでしょうか。
 フーゴ・ボス側の申し入れで「ボス・ジャン」の影響に驚きながらも、急きょ戦略を練ったような気がします。
■「労働安全衛生システム」、規格化へ国際会合/ISOきょうから
 国際標準化機構(ISO)は5、6日の両日(現地時間)、ジュネーブで労働安全衛生管理システムに関する国際ワークショップを開く。米英仏中など10カ国と国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)が参加するが、ここでの議論を機に同システム規格の検討が本格化するものと見られる。日本からは通産省、労働省、中央労働災害防止協会、産業界、連合の関係者が出席して、同システムの標準化で予想されるメリット、デメリット、国内のニーズなどを報告する。
 労働安全衛生システムの国際規格が実現すれば、品質管理(ISO9000シリーズ)、環境管理・監査(ISO14000)に次ぐ第3の管理システムとなる。16000シリーズでの制定が有力視されている。
 この分野の国家規格を有する英国では、安全衛生面の企業損失が営業利益のおよそ1割を占めるといわれる。企業活動のグローバル化で世界共通ルールが求められており、事故や問題の個別対策の中身でなく、経営上、最小限必要な管理手法を定めたものとなりそうだ。

 ISO14000が発行し、労働安全衛生システムも近い将来、企業が当然取得すべき規格となるでしょう。中小企業にとっては負担が増えるばかりですが、中心となる管理システム規格を取得すると、他の個別モジュール(品質、環境、労働安全衛生)を低価格で取得、維持できるようにすべきでしょう。
終わりに
運輸省の外郭団体、自動車事故対策センターは今年3月に国産乗用車8車種の全面衝突時の安全性能の比較試験結果を掲載した冊子を作成しました。このときに行われたアンケート調査の結果が非常に好評のため、今後も定期的に公表されるようです。
 今年度はトヨタコルサ、コロナ/日産セフィーロ、パルサー/フォルクスワーゲンゴルフ/富士重工レガシィ/本田オデッセイ、CR-V/三菱ディアマンテ、デリカスペースギアの10台が予定されており、97年3月頃の公表予定になっています。
 なお3月に配布された冊子の内容はインターネット(http://www.osa.go.jp/)でも公表されています。
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