1997.2 No.38  発行 1997年2月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel/Fax 0263-78-5002


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細胞の免疫機能、電磁波受け低下/労働省研究官ら確認
エアバッグ事故防止へPR強化/自動車各社、パンフなどで注意喚起
シートベルト装着 点滅ランプで促す/エアバッグ過信に警告、トヨタが「スパシオ」に採用
コンセントの発火現象防止用カバー/建設ゴム
携帯電話出荷に必要な証明 ISO9000採用/郵政省が検討
世界各国の法規データ共有化/自動車各社 環境対策などの動きに即応体制
衛生管理手法HACCP、新規取引の条件に/日本マクドナルド
おまんじゅう屋さんがISOに挑戦
ダイオキシン排出削減/厚生省新基準 24時間可動焼却炉に
ベンゼン汚染深刻/大気中濃度環境庁調査 半数近く基準上回る

1月のニュースから

■細胞の免疫機能、電磁波受け低下/労働省研究官ら確認
 高圧線や一般の家電製品から出る極低周波(周波数50ヘルツ)の電磁波に人の末梢血リンパ球をさらしたところ、がんなどの腫瘍細胞に対する攻撃機脳を強める性質を持つたんぱく質「TNF-a」の生産量が落ち込み、免疫機能が低下することが5日までに、労働省産業医学総合研究所(川崎市)の城内博主任研究官らの実験で分かった。
 大量の電磁波を浴びると、がんや白血病になるとの説をめぐり世界的な安全論争が続く中、細胞レベルでは極低周波が免疫機能を弱める働きを持つことを示したともいえ、城内研究官は「がんを誘発することを直接的に証明するものではないが、生体ががんに犯されやすくなる可能性もある」と指摘している。
 これを受け労働省は97年度から、動物実験により生物への具体的な影響の有無を調べるなど本格的な研究に着手、人体が浴びる電磁波の量を抑えるための対策や防護指針づくりなどに乗り出す。
 実験は城内研究官と名古屋大医学部のマリア・ビラヌエバ博士(現在はフィリピン在住)らが共同で行った。
 実験では、採取した血液を装置に入れ、免疫機能の重要な指標となるサイトカインと呼ばれるたんぱく質数種類について、磁場の変動に伴う変化を観察。その結果1、3、10ミリテスラでは「TNF-a」の量が通常の75%程度にダウンした。
 実際に一般家庭で浴びる磁場の強さは最大で0.01ミリテスラ程度。
 高圧送電線や家庭用電気製品からの電磁波はがんを発生させるかという論争について、全米科学アカデミーの研究評議会は昨年10月「がんなど健康被害に結びつく因果関係は確認できなかった」とする報告書を発表している。

 日本では磁場に関する基準がありませんが、ドイツでは5ミリテスラと法的に規制され、英国は2ミリテスラ、オーストラリアは0.1〜1ミリテスラと指針が定められています。日本もやっと対策に乗り出しましたが、昨年6月に千葉県の女性獣医が「乳腺腫瘍などになったのは、大学の助手時代に浴びた電磁波の影響である」として初の労災申請をしたこともあり、電磁波の健康に対する影響をどう評価するか注目されます。
■エアバッグ事故防止へPR強化/自動車各社、パンフなどで注意喚起
 自動車メーカー各社は米国で問題化しているエアバッグ事故の防止を狙って、その安全な利用方法のPRに力を入れる。特に、助手席にエアバッグがあるチャイルドシートを取り付ける際の方法などについて、消費者の注意を喚起していく。各社はすでに膨張率や構造を見直した新型エアバッグの開発などに取り組んでいるが、運輸省が指導に乗りだしたことを受けて、既存車両の安全対策PRを徹底する。
 取扱説明書やパンフレット、チラシ、販売店での呼びかけを通じて徹底するポイントは、@助手席エアバッグがある場合、チャイルドシートはできるだけ後部座席に取り付けるAやむを得ず助手席で使用する場合は座席を一番後ろに下げ、チャイルドシートを必ず前向きにしてシートベルトで固定するB運転者もハンドルに近づきすぎないように席を調整する−−など。
 業界の推定では、96年に日本で生産された乗用車の約7割に運転席エアバッグが、約4割に助手席エアバッグが装備されたと見られている。

 運輸省が公表した注意喚起文書とほとんど同じ内容のようです。
 ところでエアバッグ事故防止のPRだけでなく、シートベルトの正しい装着方法も積極的にPRして欲しいものです。一番大事なのはシートベルトだとメーカーも認めているのですから‥‥。
 寝そべって運転したり、走行中に車の中を移動したり、子供を負ぶったまま運転したりと、車の中も家の中と同じに考えている人が多いのは、どうもメーカーの作り出した快適な車のイメージが影響しているような気がします。
■シートベルト装着 点滅ランプで促す/エアバッグ過信に警告、トヨタが「スパシオ」に採用
 エアバッグ装着車でもシートベルト着用の徹底を−−。そんな狙いから、トヨタ自動車は、シートベルト未着用警告ランプを、より目立つ点滅式とし、このほど発売した新型車「カローラ・スパシオ」に初採用した。最近、乗用車のエアバッグ標準装備化が進んでいるが、その過信からシートベルト装着を怠るケースも多いことから、ドライバーへの着用意識を高める新たな“武器”として採用。今後発売する新型車にも採用を拡大する。
 シートベルト未着用警告ランプは従来もメーター表示盤内に装備されていたが、未装着時に単に赤いランプがつくだけだった。これを点滅式としたもので、装着し忘れはもちろん、「面倒くさい」とシートベルトをしない人にもランプの点滅が気になり、装着を促す効果を持たせようというわけ。

 点灯式のランプを点滅式にすることで注意を促す効果はありますが、消極的な安全対策でしかないようです。表示というのは慣れてしまえば気にならなくなるものです。
 むしろブザー音の方が効果があるでしょう。うるさい音を止めるためのシートベルト装着が、いつしか自然になるでしょう。生命に直接関わる安全装置を解除、無効にするときには、不快な刺激が有効だと思います。
 もっと積極的な安全対策として、シートベルトをしないとギアが入らず発進できない車も考えられるのですが、どうでしょうか‥‥。
■コンセントの発火現象防止用カバー/建設ゴム
 建設ゴム(名古屋市昭和区阿由知通4-18-4、社長稲木明美氏、TEL 052-851-7211)は、コンセントとプラグの間にたまったほこりが湿気を帯びて通電、発火を引き起こす“トラッキング現象”を防止するカバー「セフティピック」を発売した。価格は5個入りパックで600円。年間50万個の販売を目指す。
 セフティパックはコンセントとプラグの間に挟んで使用することで接触部を密閉、ほこりや水分の侵入を防ぐ。電気絶縁性シリコンゴムを使用し、火花の発生を防止する効果もある。
 トラッキング現象は電気関連の火災原因としては大きな割合を占めるが、一般にはまだ知られていない場合が多い。このため、地方自治体の消防局からは、トラッキング現象への注意を呼び掛けるためセフティピックを配布したいという引き合いも多いという。
 同社はホームセンターなどを通じた小売りに加え、消防署とセフティピックの使用実績を共同で行うなど、トラッキング現象への認知活動にも力を入れていく。

 値段も安くこれならば家中のコンセントに使っても大した負担にはならないでしょう。
 興味があるので問い合わせたところ、残念なことに一般の小売店に出回るにはしばらく時間がかかるようです。電力会社や消防など大口に納めるところやギフト用としての需要が多いため、と説明していました。
 ただ、個人でも12個単位で直接購入でき、数量が100個とまとまれば半額で購入できるとのことです。
 資料とサンプルを手配しましたので次号で何か報告できるかもしれません。
■携帯電話出荷に必要な証明 ISO9000採用/郵政省が検討
 郵政省は、携帯電話や簡易携帯電話(PHS)端末出荷に必要な技術基準適合証明書に、品質保証の国際規格である「ISO9000シリーズ」を採用する方向で検討を始めた。携帯電話など移動端末や基地局は法律で「特定無線設備」とされており、販売するには郵政省の検査に通った製品と同じスペックであることを証明する同一性説明資料の提出が義務付けられているが、同一性説明資料とISO9000の概念が似通っていることから、ISO9000を取得している工場からの申請資料提出を削減しようというもの。現在、郵政省は活用範囲を検討中だが、97年度中には実施する予定だ。
 携帯電話やPHSは年間数百万台のオーダーで普及していることから、大型の基地局と異なり製品ごとの出荷検査は不要。しかし、通話できないといったトラブルを避けるため、市場に出すには技術基準適合証明書や同一性を担保する説明資料、さらに部品の設置や写真・図の提出が義務付けられている。郵政省は無線局扱いになっている携帯端末の検査を民間に開放する規制緩和方針を打ち出したが、その検査方法についても省力化を検討したもの。

 これは自然な流れだと思います。
 現在ISO9000シリーズを取得した企業(事業所)は、世界で12万カ所、日本でも2000カ所を超えているといわれています。
 企業そのもの品質が良くないと、継続的に製品の品質を維持できない、と考えるこの規格の論理が多方面で認められてくるのでしょう。
■世界各国の法規データ共有化/自動車各社 環境対策などの動きに即応体制
 トヨタ自動車、日産自動車など自動車メーカー各社は98年にも、世界各国の自動車法規に関するデータを共有化する。環境・安全問題の高まりや、自動車検査に関する基準認証を日米欧で統合する動きが進んでいることに対応する。現在は各社ごとに独自に入手・保管している情報を業界共通のデータベースに統一し、複雑化する各国の法規に即応できる体制を整える。
 法規データの共有化は、大手メーカー5社が中心となって組織する「V-CALSコンソーシアム」が進める。各社が保有するデータの洗い出しや、データを蓄積する際の仕様共通化の作業に着手した。
 自動車業界は新車の開発期間を約半分に短縮するため、電子ネットワーク上で設計から生産準備などの作業を完了させる実証試験に乗り出している。データベースができれば、完成車メーカーのほか車体・部品メーカーなども随時閲覧できるようにして、各国が法規を変更しても迅速に開発作業に反映できるようにする。

 各国の安全規制などの情報を収集する能力は、企業により大きな差があります。情報提供を商売している会社と違い、これらの情報は出し惜しみする必要はないと思います。
 先進国が後進国を技術援助するのと同じに、ピラミッドの頂点に立つリーディング企業は積極的に情報を公開し、中小企業を援助すべきでしょう。
 そのような意味からも、今回のケースは評価できることだと思います。
■衛生管理手法HACCP、新規取引の条件に/日本マクドナルド
 日本マクドナルドは97年から、食中毒を防ぐ衛生管理手法であるHACCPの採用を、新規取引の条件として食品メーカーなどに求める。既に従来の取引先100社合計150の全食材工場がHACCP導入を完了。今後は取引業者の食材購入先にも導入を促す。病原性大腸菌「O-157」騒動でHACCPを採用する企業は増えたが、取引の条件とする例は珍しい。
 マクドナルドグループは各国でHACCPの導入を推進。日本では自社の全店舗で既に採用しているほか、ゼンチク、伊藤ハムなど食肉業者やUCC上島珈琲、ケンコーマヨネーズ、野菜集荷業者なども導入を完了した。今年から衛生管理の内容をマクドナルドが独自に設定した厳しい水準に高める。HACCP導入に伴うコストは取引先が負担する。
HACCPは最終製品をチェックする従来の手法と異なり、工程ごとに病原菌や異物混入の危険を特定・分析し、その防止に必要な管理項目を設けてチェックする。

 昨年夏ぐらいからニュースに登場するようになったHACCPですが、積極的に導入している企業はその新たな展開についても対応が早いものです。
■おまんじゅう屋さんがISOに挑戦
 おまんじゅう屋さんが品質管理・保証の国際規格「ISO9001」に取り組んでいる。五十二萬国本舗(福岡市博多区博多駅前1-24-10、社長森恍次郎氏、TEL 091-431-0052)はグループ企業を含めISOの認定取得に挑戦中だ。予備審査も終えて97年春、遅くも夏には取得の見込みという。
 同社の創業は起源が天正15年(1587年)というから、安土桃山時代から。栗大福、栗蒸しようかん、紅葉もちなど、季節ものが好評。このおまんじゅうの老舗がISOの認定取得に挑戦というのはほかに例をみない。森社長は「まんじゅう屋とISOとは笑い話のようだが、人の口に入るものを、職人芸だけでつくる時代ではない」と真剣そのもの。
 マニュアル化された菓子づくりだが、熟練の職人さんはそれまでの蓄積を生かして社内塾である「ISO塾」を開き、塾頭として若い人に技を伝えていく。
 ISOの認定取得に挑戦するグループ企業は、黒田如水にちなんで福岡都市圏中心の「如水庵」、東京中心の「東京如水庵」と、辛子めんたい、馬刺の薫製などの「味蔵」。

 思わず微笑んでしまうニュースですが、ISO9000の取得をためらっている企業にぜひ聞かせたいものです。「人の口に入るものを、職人芸だけでつくる時代ではない」という顧客に提供する品質第一の考えには共感します。
 パンや牛乳といった食品会社による不正のニュースや、コンニャクゼリー事故では企業の顧客無視の対応など、あまりいいニュースがない中、このような企業があるとほっとします。頑張って欲しいと思います。
■ダイオキシン排出削減/厚生省新基準 24時間可動焼却炉に
 ゴミ焼却の際発生し、発がん性などが指摘されている猛毒の化学物質ダイオキシンについて、厚生省の削減対策検討会は23日、今後建設される焼却炉は原則として、24時間稼働する「全連続焼却炉」とし、ダイオキシン類排出濃度の新基準を廃棄1立方メートル当たり0.1ナノグラムと定めることなどを盛り込んだ「発生防止等ガイドライン」をまとめた。
 同省は国庫補助の対象を原則として全連続焼却炉に限定するなどして、施設更新を促進する方針。既存炉の改造、更新が進み、全ての施設が全連続炉に更新される見通しの20年後にはほぼ100%の削減を達成したい考えだ。

 世界で最も厳しい欧州と同じレベルの新設炉で0.1ナノグラム以下とする基準は、評価できると思います。ただ既存の焼却炉、特に全連続焼却炉でない16時間、8時間運転炉でのダイオキシン濃度を測定するときの条件に問題を指摘する人もいます。
 厚生省が全国の自治体の焼却施設を対象に行っているダイオキシン発生調査について、長野県廃棄物問題研究会が県廃棄物対策課にその方法を問い合わせています。県では「燃焼の開始、終了付近を除き、炉内の温度が800度に達して1時間経過してから4時間測定」と回答しています。
 これに対し「最もダイオキシンの発生量が減る理想的な燃焼状態の時間を選んでいる」、「発生量が減少している時間帯のデータで総量をどのように推定するのか」といった疑問の声が上がっています。
■ベンゼン汚染深刻/大気中濃度環境庁調査 半数近く基準上回る
 環境庁は28日、水銀など未規制の大気汚染物質による汚染状況の調査結果をまとめた。水銀は目安となる国際基準を下回ったものの、自動車排ガスに含まれていて4月から規制が始まるベンゼンは測定地点の半数近くで基準値を上回った。
 調査は95年に実施、水銀は全国29地点、ベンゼンやトリクロロエチレンなど揮発性の有機化合物については9地点で大気中の濃度を測定した。
 このうちベンゼンの濃度は9カ所中4カ所で、近く設定される基準値の1立方メートル当たり3マイクログラムを超えた。特に濃度が高かったのは福岡県大牟田市の4.8マイクログラム、大阪市の3.9マイクログラムなど。環境庁はベンゼンについて4月から大気汚染防止法に基づいて規制する。
 また工場や廃棄物が発生源とみられる水銀については、工場周辺の住宅地域で同3.2ナノグラムで、世界保健機構(WHO)の1マイクログラムを大きく下回った。

 この4月から規制が始まるベンゼンが測定地点の半数近くで基準値を上回ったということは何を意味するのでしょう。規制実施を目前にひかえどのような対策が行われていたのか気になるところです。

終わりに
 日本でもバリアフリーという言葉が定着してきましたが、世の中それほど障害者にとって住みやすくなっているわけではありません。企業のバリアフリー商品という言葉には注意し、正しい評価をしたいものです。
 フランスの話題なのですが、ワイン製造元のシャプティエ社はフランスで初めて点字ラベルを採用し、年間200万本のボトル全てに使用しているとのことです。目の不自由な人でも産地や年代が確かめられるというものです。
 「グルメの国ならでは」というコメントがありましたが、日本と違って成熟したバリアフリー社会なのかもしれません。

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