1997.5 No.41  発行 1997年5月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel/Fax 0263-78-5002


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PL法施行後もトラブル少ない/大商が影響調査
金属疲労が原因/「のぞみ」リベット破損でJR断定
コードリールの一部商品に発火の恐れ/まいたまま使用で加熱
水中転落−脱出方法 車内にハンマー常備を/運輸省が勧告まとめ
96%山口村トップ 県内の市町村シートベルト着用率/長野県の連続調査1回目
カラーテレビ爆発、コンポは音が出ず/質が悪い日本の電気製品 中国紙が批判
O157再流行の兆し/原因究明や治療決め手欠き… 及び腰の厚生省
病院の質評価スタート/第3社機関、5段階で 競争原理導入へ
ダイエット食品に「注意」を表記/アサヒビール薬品
たばこ被害補償で3000億ドルの基金案/米2大会社が和解交渉

4月のニュースから

■PL法施行後もトラブル少ない/大商が影響調査
 大阪商工会議所は96年7月に施行された製造物責任法(PL法)が中小製造業に与えた影響調査(回答535社)をまとめた。86.5%(463社)がPL法対策を講じた。このうち半数以上の企業(260社)がコストアップになったが、90%以上は製品価格に転嫁していない。PL法施行後の製品事故・トラブルは「施行前と変わらない」が79.6%で目立った変化はない。
 具体的な対策ではPL保険加入が72.1%(386社)、PL法教育を従業員に実施が60.9%(326社)、社内にPL対策委員会など新組織を設置したのが39.8%(213社)。今後取り組む対策は「品質、安全対策の強化」が68.0%で最も多い。

 この結果については、大方の人が「こんなものでしょう」との印象を持つと思います。「PL保険や取扱説明書の注意表記に目を奪われ、製品の質が向上しなかったのでは」という消費者の危ぐもありますが、PL対策委員会など組織上の改善を行った企業が40%あったというのは結構なことだと思います。
■金属疲労が原因/「のぞみ」リベット破損でJR断定
 新幹線「のぞみ」の300系車両で今年2月、床下の防音板を固定するアルミ製リベットが折損した事故で、JR西日本とJR東海は11日、車両がトンネルに入った際の気圧変化で防音板がたわみ。リベットに想定以上の負担がかかって、金属疲労を起こしたのが原因と断定した。
 両社は5月からの定期検査時に、気圧の影響を小さくするため、のぞみ54編成(1編成=16両)の防音板に直径10ミリ程度の穴を開ける処置を取る。さらにリベットの本数を2倍にして、防音板の「固定強度」を上げる。西日本が98年8月、東海が99年5月に完了する予定。
 折損は2月の定期検査で判明。東海道・山陽新幹線で合わせて、22編成で計645本が折れ、防音板3枚が配管上に落下していた。走行に支障はないが、両社はリベットを付け替え、原因を調べていた。

 事故原因で「想定以上の何かがあった」という発言をよく聞きます。現在の科学技術は想定の上に成り立っていることが多いので注意すべきでしょう。「事故は起きるものだ」ということを前提にした検査体制や管理システムが望まれます。
■コードリールの一部商品に発火の恐れ/まいたまま使用で加熱
 家電製品とコンセントをつなぐ巻き取り式の延長コード(コードリール)の一部には、コードを本体に巻いたままの状態で使うと、基準を大幅に超えて温度が上昇、発火する恐れのある商品もあることが3月31日までの群馬県消費生活センターの調査で分かった。
 同センターは「使用する際は表示に注意するほか、安全のためにコードを全部引き出して使用して」と消費者に呼び掛けるとともに、メーカーに対して品質管理の徹底や表示内容に改善などを求める要望書を送った。

■水中転落−脱出方法 車内にハンマー常備を/運輸省が勧告まとめ
 自動車が誤って水中に転落し電動式窓ガラスが開かず、運転者らが水死したケースなどが指摘されている問題で、運輸省は7日、ドライバーに窓ガラス破壊用のハンマーを常備するよう求める緊急脱出方法についてまとめた。
 同省は、依頼したメーカーの調査結果が出次第、パンフレットなどを作成してドライバーに注意を呼び掛ける。
 警視庁によると、昨年の交通事故の中で車両が水没した死亡事故の件数は48件。今年1月末には三重県鈴鹿市の池に軽乗用車が転落し保母2人が水死、国会でも電動式窓ガラスが開かない場合の対応策が問題になった。
 まとめによると、水中に転落しても数分間浮くがドアは水圧でほとんど開かない、という。この間に窓から脱出しないと助からないと強調。
 さらに運転手の手が届く位置に置いた先端のとがった窓ガラス破壊用のハンマーなどで、窓が水面より上にあるうちに側面や後面部分のガラスを割るのが有効、と指摘している。しかし、強化膜入りの前面ガラスはひびが入るだけで逃げられないという。
 同省は「転落した場合は、まず冷静になることが重要。ハンマー常備は義務付けできないが、有効策の1つとして勧めたい」と話している。

 窓ガラス破壊用ハンマーはマスコミなどでも紹介され、すでに常備している人も多いと思います。ドライバーの行う安全対策としては、「走行中のドアはロックしない」などもあります。このような情報は運転免許更新などの場を利用して、もっと提供して欲しいものです。
 なお運輸省では今回の情報をインターネットのホームページで紹介しています。(http://www.motnet.go.jp/koho/DASSYUTU_.htm)
 この情報によれば窓ガラス破壊用ハンマーの販売状況としてメーカー設定品の販売数が95年で約3万6400本、96年で約3万5600本となっています。これにカー用品販売店の数が加わりますので、少しずつですが消費者の認識も変わってきているようです。
■96%山口村トップ 県内の市町村シートベルト着用率/長野県の連続調査1回目
 長野県交通安全対策室は15日、県内120市町村ごとに14日まで実施したシートベルト着用率調査の結果を公表した。昨年、日本自動車連盟が行った都道府県別の調査で長野が36位(62.8%)と低かったため、今後も毎月実施して市町村の意識向上のきっかけとする狙いの連続調査の第1回目。
 着用率は高い方から@木曽郡山口村 96.0%A上水内郡鬼無里村 93.9%B同郡信濃町 93.6%−−の順。
 低かったのは@北安曇郡白馬村 33.0%A東筑摩郡四賀村 34.8%B上水内郡豊能町 35.1%−−など。
 調査は生活道路を対象としたが、地域外の車もカウントした。市町村職員らが平日の午後2時からをメドに、1時間経過するか100台になるまで調べた。
 全県では計約1万6000台で着用率は64.3%だった。
 同対策室は「生活道路に観光客が入り込むなど、1回だけでは地域ごとのシートベルトに対する意識ははかれない」とし、今後も毎月5日前後に調査し、その都度結果を公表。着用率が常に低い市町村には住民大会の開催など、啓発活動を呼び掛けるという。

■カラーテレビ爆発、コンポは音が出ず/質が悪い日本の電気製品 中国紙が批判
 7日付の北京夕刊紙北京晩報は「消費者はなぜ、日本の電気製品にサヨナラするのか」との見出しで「日本の電気製品の質の悪さをめぐる問題は大きくなるばかり」とする中国消費者報の記事を転載した。
 記事は「日本製のカラーテレビは爆発し、冷蔵庫は火を噴き、コンポは音が出ない」などと激しく批判し「日本は一流の電気製品は欧米に輸出、二流品は国内で売り、三流品を中国に回している。日本の商社の北京駐在員も、この事実を認めている」とまで指摘した。
 さらに記事は「修理を希望しても日本のメーカーは修理担当者がなかなか見つからず、修理費用も高く、アフターサービスが悪い」との消費者の声を紹介した。
 国家工商行政管理局の機関誌中国工商報も3月末に、日本の電器メーカーの対応が悪かったとして「消費者無視の外国企業にはノーを」と呼び掛けた。さらに「中国の消費者を二等、三等扱いすることは許されない」との当局者の発言を紹介するなど、日本製品を標的にした民族主義的傾向が中国紙の論調で強まっている。

 多少誇張がありそうですが、「日本は一流の電気製品は欧米に輸出、二流品は国内で売り、三流品を中国に回している」というのはなぜか納得してしまいます。
 世界標準の製品を全てのユーザーに提供しない多くの企業では、国内向けのものより欧米向けの方が安全対策は充実しています。バージョンを設定し仕向地別に製品をグレード?分けする商品はよくあり、規制の緩い国にはそれなりの製品を輸出しています。
 このような企業では、途上国の消費者にリスクを負わせることで世界的なビジネスを成立させています。これで国際競争力のある企業というのはどうも変です。
■O157再流行の兆し/原因究明や治療決め手欠き… 及び腰の厚生省
 昨年、全国で猛威を振るった病原性大腸菌O157が、3月に横浜市で6歳の女児が死亡するなで再び流行の兆しを見せ始めた。夏を控え、大量感染に陥りやすい学校給食対策が最大の焦点だが、厚生省は、原因究明や治療面での決め手を欠いたまま。「カイワレ大根犯人説」で業者から損害賠償を求められたこともあってか、取り組みに及び腰が目立つ。一方、「万全の対策を取った」はずの文部省も「大量に食材を扱う以上、危険から完全には逃れられない」と不安を募らせる。
 「夏の病気という思い込みがあった。これから万全を尽くそうと思っていたのに…」
 3月23日、O157による今年初の死亡者が出た横浜市の五反田哲哉・衛生局総務課長は悔しさを隠せない。重症の6歳児が入院したという連絡が市に入ったのは3月下旬。今年になって数人の発症が報告されていたため、本格的な対策に取り組み始めた矢先だった。
 「なぜまたカイワレなのか、聞けるものならカイワレに聞いてみたい」
 愛知県蒲郡市で発生したO157感染でカイワレ大根から菌が検出されたのを受け開かれた4日の厚生省緊急記者会見。境宣道・同省食品保健課長の冗談めかした言葉には、感染防止の有力な手立てがつかめないいらだちがにじむ。
 「O157はすでに多くの食品に広がっている可能性があり、遺伝子の分析もすぐ原因特定につながるわけではない。カイワレだけを取り上げる特別な対応はしない」と食品保健課。治療の決め手もなく、省内からは「積極的に対処できないのは昨年のカイワレ騒動の後遺症で及び腰になっているのでは」との指摘まで出されている。
 危惧されるのは給食による集団発生だが、「給食制度は文部省の権限。こちらから見直して欲しいとはいえない」と厚生省の幹部。縦割り行政の陰に隠れ、後ろ向きだ。
 だが、不安を持つ教育関係者は多い。学校給食による食中毒患者は、1994年度には約5500人、95年度は約4000人と、毎年大量発生しているのが実状だからで、「食中毒と共存する道を探るしかない」と語る幹部も。

 それにしても一般家庭で発生する食中毒に比べ、給食や仕出し弁当など大量に調理するところでの食中毒の多いこと。プロのはずが実際はそうでもなく、明らかに衛生管理上の問題があるようです。
 厚生省のやるべきことは、国民の健康を確保するための安全基準やガイドラインを作成することです。「給食制度は文部省の権限」とありますが、それはルールをいかに守らせるかというマネジメントのことでしかありません。
 健康について一番知り得る立場である厚生省が、他の省庁に対し何も行動を起こそうとしないのは縦割り行政の問題ではなく、単なる怠慢でしかないと思います。いずれにしても各省庁で、独自の対策を模索することのムダにはうんざりです。
■病院の質評価スタート/第3社機関、5段階で 競争原理導入へ
 第3者機関が病院の質を評価するという日本で初めての活動が、4月から始まった。米国では一般的な取り組みだが、日本でも医療費抑制策の進行に加え、患者の病院選び意識の高まりで、競争原理の働きにくい病院の質向上が迫られているからだ。ただ、各病院の裁量に結果公開を任せるなど、仕組みには不完全さも目立つ。情報公開に対する病院関係者の意識改革の必要性など、今後に残された課題も多い。
 評価活動を始めたのは、財団法人日本医療機能評価機構(館竜一郎理事長)で、厚生省や日本医師会、日本病院会などが出資している。米国の医師会などによるJCAHO(医療機関認定合同委員会)をモデルに95年7月に設立した。 同機構は調査員300人の育成や、145病院を対象にした運用調査を終え、今月、評価活動をスタートした。現在35病院から評価を受けたいとの申込みがあるという。
 97年度は240病院、来年度からは調査員数を増やして、年間約1000病院の評価実施を目標に掲げている。日本には約9500病院があるが「できるだけ早く一巡させたい」(河北博文専務理事)という。
 書面審査と訪問審査で@服薬指導の実施状況など患者への情報提供A院内感染対策など療養環境B学会へ積極的に参加しているかといった診療の学術性−−など、合計400数十項目を5段階で評価する。同機構が決めた一定の基準を総合点で超えた場合、認定証を発行する仕組みだ。
 評価費用は病院側の負担で、入院ベッド数が200床以上の大型病院の場合で180万円。評価データの所有権は病院側に属し、各病院は審査を受けたかどうかや、その結果について公表する義務は負っていない。

 病院や町医者では、お金を払って治療を受ける患者を「お客さん」とする認識は非常に少ないようです。「弱い立場だから」、「治療してもらっているから」などと遠慮してしまう患者が多いのも彼らの意識を変えない要因だと思います。
 医療機関の相対的な比較ができるよう、今回の活動は期待したいところです。ただ日本医師会や日本病院会の出資団体であるのが少々気がかりです…。
 本来、このような社会的に必要とされる法人にあっては、国あるいは民間の機関で設立目的の達成度などを評価し、指導すべきでしょう。
■ダイエット食品に「注意」を表記/アサヒビール薬品
 アサヒビール薬品は、製造物責任(PL)法対応の一環として、ダイエットサポート食品の新商品に妊産婦などが摂取をやめる旨の表記を盛り込んだ。ダイエット効果があるといわれている原材料の「ガルシニア」がカロリーを脂肪に変えるのを防ぐことから、カロリーを必要とする人に注意を呼び掛けたもの。
 新商品は21日に全国発売の菓子栄養調整食品「ハイチョイス ショコラビスキュイ」(200円)で、包装容器裏面の下部に「妊産婦の方や乳幼児、疾患のある方等はおさけ下さい」と表記した。

 アサヒビール薬品のことではないのですが、「こんなことを今さら」というPL対策商品が多くあります。あたりまえのことを特に「PL対策」として強調する企業が多いのは、「我々はこんなに努力している」との宣伝だからでしょうか。
 そういえば対策商品というのも変なもので、消費者のことを考えているのではなく、「何かあったときのため」の対策商品と考えているのでしょう。ですからこのような企業でCS(顧客満足度)を掲げていても、見せかけだけかもしれません。
■たばこ被害補償で3000億ドルの基金案/米2大会社が和解交渉
 米2大たばこメーカーのフィリップ・モリスとRJRナビスコ・ホールディングズが、たばこによる健康被害をめぐる訴訟の原告団や関係州の司法長官と、被害補償のための基金を設置する案を軸に和解交渉を進めていることが16日明らかになった。
 基金の規模は3000億ドル(約37兆8000億円)で、決着すれば、米国で大きな社会問題となっているたばこ被害に関する争いが大きな転換点を迎えることになる。
 米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、交渉にはフロリダ、ミネソタ、コネティカット、ミシシッピ、ワシントンとアリゾナの6州の司法長官が参加、関係者は交渉の事実を認めたが、和解合意までにはなお時間が必要としている。
 交渉では25年間の補償金の支払いのほか、米食品医薬品局(FDA)によるたばこの広告看板やたばこ広告への人物写真の使用禁止などの規制を受け入れることも含まれているという。

 先月のニュースに引き続き、たばこメーカーの歩み寄りが見られます。和解内容の具体的数値は変わるかもしれませんが、米国内でのたばこメーカーの基本的な姿勢は定まってきたようです。

終わりに
 厚生省では病原性大腸菌O-157による食中毒の発生状況をインターネットでも公表しています。それによると4月28日現在(1997年発生状況)、33都道府県で有症者累計197名、無症者累計90名、入院者累計107名、死者累計1名となっています。
O-157先進国といわれるカナダを含めた北米では毎年2万〜3万人がO-157に感染し、この10%が発症しています。そのうち2〜3%が重症となり、200〜300人の死者が出ています。日本も油断をしているとO-157先進国となりそうです。
 気を付けたいことは「きれい」と「清潔」の違いであり、包装容器を含めた見た目のきれいさに惑わされないようにしましょう。

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