1997.8 No.44  発行 1997年8月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel/Fax 0263-78-5002


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抗がん剤「塩酸イリノテカン」、投与の24人死亡/副作用の開示 厚生省に遅れ
副作用死相次ぐ抗がん剤/厚生省「情報配布を」、2社に指示
PL保険制度、事故増えて扱い増加/今年上期400件超
シートベルトで乳児が窒息死/母が目離した十数分
病院食からO157を検出/岡山の集団食中毒
給食メロンからO157/千葉の保育園集団感染、調理過程で付着か
「O157対策」改善ない学校給食施設/自治体は公表を、厚生省要請
ペースメーカー誤作動の恐れ/携帯電話とPHS、混雑時は電源切って JR東日本キャンペーン
携帯電話、運転への影響初の本格調査/警視庁、来月に走行実験
福祉用具規格、標準化を推進/通産省、多機能化に対応
点字表示付きのメニューを導入/吉野家、全店で
「大気汚染の元凶、電力業界」/独政府
米たばこ訴訟、個別の州で初の和解/ミシシッピ州、25年で3,800億円

7月のニュースから

■抗がん剤「塩酸イリノテカン」、投与の24人死亡/副作用の開示 厚生省に遅れ
 「肺がんなどの治療に使われる抗がん剤「塩酸イリノテカン」の投与を受けた患者のうち、すくなとも24人が副作用と見られる原因で死亡していたことが、30日までに分かった。イリノテカンは強い副作用があることが分かっていた。厚生省は製薬会社から報告を受けてきたが、95年9月までに発売直後の死亡例について公表しただけで、その後増えた死亡数や経緯などの情報を公開していない。重要な副作用情報の公開が遅れたことについて厚生省と製薬会社の責任が問われそうだ。
 塩酸イリノテカンは、ヤクルト本社と第一製薬が94年4月から販売を開始。これまでに約5,000人に投与された。副作用が原因と見られる死亡が分かったのは、このうち97年3月までに第一製薬が販売した薬を投与された約3,100人の内24人(0.8%)。愛知県がんセンターの福嶋雅典内科医長が5月に厚生省に副作用情報の開示を求め、これに第一製薬が代わって回答した結果分かった。投与後に白血球や血小板が急激に減少するなどの原因で死亡したという。ヤクルトの販売分については明らかにされていない。

 こうして事件に発展しないと情報を開示しないのは相変わらずです。製薬会社は厚生省の指示が欲しいのか自らは何もせず、厚生省は企業に遠慮?があるのかこれまた対応が遅くて困りものです。
■副作用死相次ぐ抗がん剤/厚生省「情報配布を」、2社に指示
 肺がんなどの治療に使われる抗がん剤「塩酸イリノテカン」の副作用による死者が相次いでいる問題で、厚生省は28日、製造元の第一製薬とヤクルト本社に「緊急安全性情報」を医療機関に配布するよう指示した。
 厚生省によると、1994年4月の発売開始から今年3月までに5,445人に投与され、白血球減少などの副作用による死者は、第一製薬の「トポテシン」(商品名)で26人、ヤクルトの「カンプト」(同)では16人の計42人に上っている。
 塩酸イリノテカンは肺がんのほか、子宮頚がんや胃がん、直腸がんなどの治療に使われるが、臨床試験中の副作用による死亡率が約4%に上るなど、白血球を作る骨髄機能の低下や下痢などの重い副作用が分かっていた。
 緊急安全性情報では、投与の際の患者や家族への説明と同意や投与後2週間の血液検査を求めているほか、「白血球が血液1立方ミリメートル中3,000個未満」だった投与中止基準に「血小板が同10万個未満」も加え、白血球や血小板が30%以上減少している場合も投与を中止するなど、適用基準を厳しくしている。
 厚生省の安部道治安全対策課長は「今後は必要な情報は必要な時期に出すよう改善していきたい」としている。

 「必要な時期に出すよう改善していきたい」とありますが、必要な時期の判断は誰がするのか少々気になります。
■PL保険制度、事故増えて扱い増加/今年上期400件超
 中小企業の製造物責任(PL)事故が増えている。日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会で構成する中小企業製造物責任制度対策協議会が運営している「中小企業PL保険制度」では、発足して21カ月で合計1,056件の事故に対して保険金が支払われており、扱い件数も毎年増加傾向にある。
 同協議会では、96年7月の設立以来、半期ごとに事故件数を集計している。それによると、95年7〜12月は192件だったが、96年1〜6月は307件、7〜12月は321件と増え続けている。最近の集計によると、今年は1〜3月ですでに236件と急増しており、今年上半期では400件を超える見通しとなった。
 月平均で見ると、95年7〜12月が32件、96年1〜6月が51.1件、7〜12月が53.5件、今年1〜3月が78.6件と今年に入り急激に増加している。
 事故の内訳は製造業が一番多く全体の51%を占め、ついでメンテナンス会社などの請負業が33%、販売業が16%となっている。
 製造業の中では機械・器具製造や鉄鋼非鉄金属・同製品製造、自動車・自動二輪車用駆動・制動部品製造などに関する事故が多い。また、請負業ではスプリンクラー、給排水管設置、修理やビル建設・内装工事、屋内電気配線工事、昇降機設置・修理などに関する事故が目立つ。販売業では家具、衣類、文房具、食器などの販売やガソリンスタンド、飲食店などでの事故が多い。

 この保険は例えば、給配水管の取り付けミスなど一般の損害賠償責任に対しても適用されるものです。いわゆるPL訴訟に発展するものはそれほど多くはないようです。しかし、何らかの被害を被った人・企業が損害賠償請求を行い、保険により紛争が解決される仕組みはいいことでしょう。
■シートベルトで乳児が窒息死/母が目離した十数分
 20日午前7時半ごろ、三重県海山町上里で、同県芸濃町岡本368、会社員川村直樹さん(31)の車で寝ていた長女の梨華ちゃん(生後11カ月)が、母親が車から離れている間にチャイルドシートのシートベルトに首を引っかけ窒息死した。
 尾鷲署の調べによると、直樹さんは近くのオフロードレース場で、オートバイの8時間耐久レース「海山8時間エンデューロレース」に参加しており、母親は梨華ちゃんが寝ていたため車内に残し、食べ物や飲み物を直樹さんに届けた。十数分後に車に戻ったところ、梨華ちゃんがぐったりしており、病院に運んだがすでに死亡していたという。同署は、梨華ちゃんが何らかの理由で動いたため、シートが外れてずり落ち、首にシートベルトが引っかかったとみて調べている。

 チャイルドシートは銘柄によっては座席に固定しづらいものもあるようです。また子供がいつのまにかチャイルドシートを抜け出してヒヤッとしたという人も多いと聞きます。気をつけたいものです。
■病院食からO157を検出/岡山の集団食中毒
 岡山市は23日、労働福祉事業団・岡山労災病院(同市築港緑町)で6月に起きた病原性大腸菌O157による集団食中毒で、6月19日夕の給食メニュー「冷やし日本そば」の冷凍保存食から菌を検出したと発表した。
 患者の便から検出された菌とDNAのパターンも一致し、感染源を調べている市の専門家検討会は「冷やしそばが食中毒の原因となった可能性が高い」と結論付けた。
 また同病院は厚生省の食中毒対策のマニュアルを守らず、給食を約半分しか保存していなかったため、市は「検査できなかった他のメニューも汚染されていた可能性は否定できない」とした。
 同病院では6月23日夕から入院患者や看護学生らが相次いで下痢や腹痛など食中毒の症状を訴えた。これまでに171人に症状が出て、89人の便からO157を検出した。

■給食メロンからO157/千葉の保育園集団感染、調理過程で付着か
 千葉県柏市の市立東中新宿保育園で発生した病原性大腸菌O157による集団感染で、千葉県衛生部は22日、保育園が給食で出したメロンの冷凍保存サンプルからO157を検出した、と発表した。
 厚生省食品衛生課によると、メロンからのO157検出は全国で初めて。他の流通先で発症例がないことから、県衛生部はメロン自体の汚染はなく、保育園での調理の過程で菌が付着したと見ている。
 県によると、O157が検出されたのは6月27日昼の給食で出したメロン。患者から検出した菌とDNAパターンが一致した。

 昨年は感染経路がなかなか特定できませんでしたが、今年は冷凍保存サンプルが役立っています。各施設は指定の期間保存して欲しいものです。
■「O157対策」改善ない学校給食施設/自治体は公表を、厚生省要請
 全国一斉点検で病原性大腸菌O157を防止するための温度管理が不適切だった学校給食が約6割に上ったことなどから、厚生省は24日までに、改善計画を8月下旬までに示さない施設の名前を公表するよう都道府県など関係自治体に要請した。
 厚生省によると、食中毒を起こす可能性がある施設名の公表は過去に例がなく、昨年の大阪府堺市のような学校給食による大規模な集団感染が再発する前に防止対策を徹底させる狙いだ。
 同省は自治体が公表しなかった場合には、国として自治体ごとの施設数だけを明らかにし、本年度末に実施する次回の一斉点検で改善が見られず改善計画も示されない施設について実名を公表、営業停止の行政処分も検討する方針だ。 厚生省は同日までに、関係自治体に対し衛生管理が不十分だった施設について、必要項目ごとに改善勧告を出すことや改善計画書の提出を求めることなどを通達した。

 O157に感染した人は8月1日現在、すでに835名、入院した人は386名で死亡者は3名となっています。各都道府県で昨年実施された学校給食施設の一斉点検後今回(今年4月、5月)の一斉点検でも、あまり改善が進んでいませんでした。
 給食施設などの改善には多額の予算が必要で、「努力する」としか言えない現場の声が伝わってきます。厚生省の指摘は大事ですが、それだけで改善しないのであれば、それらの原因を探り他の有効な施策(国の補助や民間の協力など)を考えるべきでしょう。
■ペースメーカー誤作動の恐れ/携帯電話とPHS、混雑時は電源切って JR東日本キャンペーン
 JR東日本は携帯電話やPHSの電波で心臓ペースメーカーが誤作動を起こす可能性があるとして、混雑した電車内では電源を切るよう求めるキャンペーンに乗り出す。今月下旬から同社管内の駅構内や電車内にポスターを掲示、乗客に呼び掛ける。これまで乗車マナーの観点から使用自粛を求める例はあったが、ペースメーカー対策を理由に自粛を求めるのは初めて。
 今年3月に公表された「不要電波問題対策協議会」(郵政省などで構成)の指針で、携帯電話は「植え込み型心臓ペースメーカー装着部位から22センチ程度離すこと」とされている。通勤電車など込み合う車内では、ペースメーカーの利用者と、他の乗客の携帯電話が密着する可能性があるため、乗客に協力を求めることにした。

 昨年4月に小田急電鉄が携帯電話の車内使用自粛を求めて「ご遠慮ください」という社内放送を始めました。その後、関東大手6社が追従し、関東で最後に残った京王帝都電鉄も6月20日に実施しました。
 面白いもので関東と関西では取り組みが異なり、関西圏のJRや私鉄各社は「控えめに」といった表現にとどめています。
■携帯電話、運転への影響初の本格調査/警視庁、来月に走行実験
 ドライバーが携帯電話を使用していたことが原因と見られる交通事故が急増し、社会問題化していることから警察庁は23日までに、実際の市街地の道路と似せたコースを使って走行実験を行い、電話の使用が運転に及ぼす影響を本格的に調査する方針を決めた。ブレーキやハンドル操作にどのような影響を及ぼすかを同庁が具体的に調べるのは初めてで、結果を今後の対策に生かす。
 走行実験は来月、同庁の外郭団体「自動車安全運転センター」の安全運転中央研修所(茨城県ひたちなか市)で5日間にわたって実施。ドライバーが携帯電話を使用している時とそうでない時で、ブレーキをかけたりハンドルを切ったりする時間や操作の正確さに、どのような差がでるかを調査する。
 携帯電話の使用がからんだ事故には車両同士の追突事故が多いことから、試験車の前後に車を走らせて、ドライバーの反応を見る実験も行う予定。ハンドルを持ったままで通話が可能ないわゆるハンズフリー装置についても、運転に及ぼす影響を調べる。
 同庁によると、今年に入ってから5月末までの携帯電話の使用が原因と見られる交通事故は全国で944件発生しており、全事故件数の0.3%を占める。うち死者は10人で、負傷者は1,357人に上っている。

この8月1日から、NTTドコモでは「14151」番を押せば「ただいま運転中のため、電話に出られません」というメッセージが流れるサービスを始めました。料金は無料で、しかも相手のメッセージを録音することもできるので、ぜひ利用したいものです。
■福祉用具規格、標準化を推進/通産省、多機能化に対応
 通産省は急速に多機能化が進む福祉用具の安全性を確保するため、包括的な基準作りに乗り出す。現在20項目程度に限られている福祉用具の日本工業規格(JIS)対象を40程度に拡充するほか、情報通信機能などを備えた福祉用具の標準化に取り組む。あいまいな基準が輸入障壁になるのを避けるため、国際的に通用する明確な基準を作る狙いもある。
 福祉用具の複合化の例としては、障害者向けの自動車運転装置が、事前に駐車スペースを確保するための通信機能を備えるケースなどが想定される。ただ現在のJIS規格が単体の福祉用具しか対象にしておらず多機能化で安全面が疎かになる懸念もある。このため複合化した福祉用具の標準化に向けた調査費を98年度予算の概算要求に盛り込む。

国際的に通用する明確な基準を作るというので期待したいと思います。新規に参入する企業にとって、安全面など技術的なガイダンスの提供は欠かせないものです。
■点字表示付きのメニューを導入/吉野家、全店で
 吉野家ディー・アンド・シーは国内の牛丼店全554店に点字表示つきメニューの導入を始めた。ラミネート加工したメニューに日・英・中の3カ国語で品目や値段を点字付きで表示している。8月にはドーナツ店の「ダンキンドーナツ」全68店にも、冊子型の点字付きメニューを配置する。外食産業で点字のメニューを置いている店は珍しい。
 最近は高齢者や体の不自由な人が障害なく暮らせるよう「バリアフリー」施策を導入する企業が増えている。吉野家では今回、店長の意見を採用したとしており、今後も「出来る範囲で環境を整備していく」(宮内秀之販売促進部長)。点字メニューの制作は、点字印刷会社のメディア・ミューズ(東京、福本正幸社長)が請け負った。

 外食産業など身近なところでのバリアフリーの対応は、日頃関心のない人にバリアフリーについて気付いてもらう効果もあるでしょう。
 同じく点字対応についてですが、東洋アルミホイルプロダクツは、家庭用アルミ箔の箱にアルミホイルであることを8月から点字で表示することにしました。
■「大気汚染の元凶、電力業界」/独政府
 ドイツ連邦統計庁は3日、「温室効果ガスなど大気汚染の最大の原因は電力業界」との調査結果を明らかにした。ドイツ政府が環境破壊問題で、汚染源を名指しで公表するのは初めて。
 調査結果によると、ドイツの1993年の温室効果ガス排出量は計11億トンに達した。電力、農業、食品加工、化学、交通、ごみ処理などの産業分野と家庭で全体の79%を占め、中でも電力業界が全体の約40%だった。
 統計庁は「94年以降も、傾向に大きな変化はない」としている。

 日本の場合はどうなのでしょう。おそらく同じように電力業界の環境負荷は大きいのでしょう。各産業界別の大気汚染の現状を示すことで、産業界同士の競争を促して欲しいものです。
■米たばこ訴訟、個別の州で初の和解/ミシシッピ州、25年で3,800億円
 米ミシシッピ州政府は3日、米たばこ会社4社を相手取り、喫煙を原因とする病気の医療費支払いを求めた訴訟で、たばこ会社側が同州に33億6,000万ドル(現在のレートで約3,800億円)を支払うことで和解したと発表した。 米国内40州の政府は先月20日、会社側が将来の損害賠償請求訴訟を免れる代わりに、医療費など計3,685億ドル(約41兆7,000億円)を支払うことで和解が成立したと発表していた。 しかし、個別の州ごとの具体的な和解内容は決まっておらず、和解額などの正式合意に達したのは40州の中でミシシッピ州が初めて。今後同様な和解がフロリダ、テキサス両州とも成立する見通し。

終わりに
 福祉ビジネスが注目される中、厚生省などが行っている日常生活用具や補装具の給付制度の問題が指摘されています。
 例えば、聴覚障害者用通信装置(FAX)の給付を受ける場合の価格設定は、14万8,000円と市場価格の数倍にもなっています。これはその価格内での販売が保証されていることであり、市場原理が働かないというのです。
 「福祉用具はもらうもの」という意識があるようですが、限られた財源でより多くの人に安く良い製品を提供するためには、この給付制度の見直しが大事だと思います。

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