1997.9 No.45  発行 1997年9月10日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel/Fax 0263-78-5002


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8病院に認定証/医療機能評価機構
チャイルドシート 装着なら死亡率8分の1/警視庁など適切な使用呼びかけ
初のダイオキシン訴訟/茨城県の焼却場 住民ら操業停止求め
アルファルファもやし原因か、O157中毒相次ぐ/米の2州、100人超す発病
O157で米加工工場操業停止に
米のO157ひき肉事件余波/ハンバーガー消えた 業者回収、チェーン店直撃
ダイオキシン、5年で90%削減/12月から法規制を実施
米ニューヨーク州、無公害車販売を義務付け/連邦地裁が裁定、98年型から販売
直角2方向出入口で車いすも“楽々”/近鉄、京都線にエレベーター
缶ビールに点字のメーカー名表示/キリンビール
米たばこ産業、113億ドル支払いで和解/フロリダ州に25年間で

8月のニュースから

■8病院に認定証/医療機能評価機構
 医療の質向上を目指し病院機能を第三者の立場で評価する日本医療機能評価機構(館竜一郎理事長、略称JCQHC)は8日、一定水準を満たすとして認定証を発行した病院名を公表した。JCQHCは今年度から本格的に活動を開始、認定公表は今回が初めて。17病院が審査対象となり、福岡県の小倉第一病院など8病院が認定を受けた。認定証の有効期間は5年間。今年度は104病院の評価を予定している。 認定を受けた病院は以下の通り。
 小倉第一病院(福岡県)、川越胃腸病院(埼玉県)、山下病院(愛知県)、日鋼記念病院(北海道)、総合病院聖隷浜松病院(静岡県)、近森病院(高知県)医真会八尾総合病員(大阪府)、ボバース記念病院(大阪府)

 今年5月号のASPニュースでも紹介した病院認定制度です。そのときは35病院が希望しているとの記事でしたが、実際は17病院を審査したようです。そのうち9病院は一定水準に満たなかったわけですが、今まで医療の質など考えないことが多かったのでこんなものでしょう。それでも審査を受ける、という病院は評価できると思います。
 JCQHCは今年度240病院、来年度は1,000病院の審査を行いたいとしていましたが、今年度希望する病院は現在104でしかないようです。患者の求める医療の質を積極的に考えようとしない病院は、審査結果を心配して尻込みするのでしょう。そこにはCS(顧客満足)の考えは全く存在しないのです。
 ともかく審査制度がスタートしたので、患者サイドに立った評価を希望する積極的な病院にとって、プラスになるよう願いたいと思います。
■チャイルドシート 装着なら死亡率8分の1/警視庁など適切な使用呼びかけ
 自動車に乗車中に交通事故にあった6歳以下の子供のうち、チャイルドシートを装着していたケースでは、非装着の場合に比べ死亡率が約8分の1にとどまっていることが29日までの警視庁と運輸省などのまとめで分かった。同庁などは、シートは子供の被害の軽減に大きな効果があると分析しているが、一方で使用法を誤ると大けがに通じる可能性もあるため、適切な使用を呼びかけている。
 同庁などのまとめによると、92〜96年の5年間の交通事故(車両が大破してしまった事故を除く)で、チャイルドシートを装着していて死亡した6歳以下の子供は1人、非装着では74人だった。重軽傷者は装着時2,777人、非装着時で約3万人で、全死傷者のうちの死亡率の割合を示す致死率は、非装着時が装着時の約8倍に上っている。
 今回の分析で、交通事故被害の軽減のうえでチャイルドシートの効果が明らかになったと警察庁などは見ており、今後、使用を推進したいとしている。ただシートの使用法が適切でなかったりしたため起きた事故も国民生活センターなどに報告されただけで28件あり、うち2件はベルトが首にからまって子供が死亡したケースだった。

■初のダイオキシン訴訟/茨城県の焼却場 住民ら操業停止求め
 茨城県新利根町の城取清掃工場をめぐり、ゴミ焼却場の排煙に含まれる有毒物質ダイオキシンによる健康被害を訴えている同町と竜ヶ崎市の住民らは12日までに、同工場を管理運営する竜ケ崎塵芥処理組合を相手取り、来月にも即時操業停止と同市板橋町に新設する焼却場の建設差し止めを求める行政訴訟を水戸地裁竜ケ崎支部に起こすことを決めた。ダイオキシン汚染をめぐる裁判は全国で初めて。
 住民らの依頼を受けて大阪・摂南大学の調査グループは城取清掃工場を中心とする半径2キロ以内の土壌汚染調査を実施した。その結果、最大で1グラムあたり250ピコグラムの濃度のダイオキシンが検出された。
 この値は、環境庁が96年12月にまとめた都市部平均の12.5倍に、一般の地域の濃度の125倍に当たるという。住民らは「周辺の汚染は明らかだ。現状の汚染をそのままにして、新たに清掃工場を建設するのは許せない」などとして同工場の即時操業停止と新工場建設の差し止めを求める。
 一方海老原竜生竜ケ崎市長は「操業を停止したら周辺のゴミの処理ができなくなる。新工場についてはダイオキシンが排出されないよう万全を期すつもりだ」と話している。

 住民の怒り対して「操業を停止したら周辺のゴミの処理ができなくなる」としか説明できないようでは、市長としては失格でしょう。ここには住民の健康を守るために努力をする、という姿勢が見られません。
 住民が住む環境は行政が与えるのではなく、共に作り上げていくのが基本です。話し合いによっては、将来的な計画の提示により税金のアップも了承されるかも知れません。
 決まっていること、先例のあることなど誰でもできることのために首長が選ばれたのではないと思うのですが…。
■アルファルファもやし原因か、O157中毒相次ぐ/米の2州、100人超す発病
 2病原性大腸菌O157に汚染された種子が原因と見られるアルファルファもやしの食中毒が米国で相次ぎ、米疾病対策センター(CDC)は「新たな感染形態」として、今月の疾病死亡率週報(MMWR)で注意を呼びかけた。
 アルファルファもやしは、種子を水耕栽培し、芽の部分を生で食べるなど、日本で感染原因と疑われたかいわれ大根と類似点が多いことから国内の専門家も注目。竹田美文・国立国際医療センター研究所長が、28日から大阪府堺市で始まるO157に関するシンポジウムに報告し、対策の在り方などを議論する。
 CDCによると、今年6、7月、ミシガン州で60人、バージニア州で48人がO157による食中毒を発病した。食材調査などで、同じロット(生産単位)の種子から生育したアルファルファもやしが原因らしいと分かり、両州の患者から検出された菌の遺伝子パターンも一致した。種子の調査は続いているが、まだ菌は検出されていない。
 CDCは、類似のケースとして日本のカイワレ大根の例や、米国でのアルファルファ種子のサルモネラ汚染などを紹介。「種子は、サルモネラやO157などの病原菌がついた動物のふん便に汚染される可能性がある」として「乳幼児や高齢者、妊婦らは生のアルファルファを食べないことで(食中毒の)危険を減らせる」とまで指摘している。
 一方日本では、昨年夏の堺市の集団発生でカイワレ大根が原因と疑われ、厚生省が米国産種子の調査に乗り出したが、菌は検出されず決め手はないままになっている。 竹田所長はCDCが種子の汚染の危険についてかなり踏み込んでいるのが印象的だ。米国で問題になり始めたO157の新しい感染形態に注目したい」と話している。

■O157で米加工工場操業停止に
 米農務省は31日、米コロラド州で7月に発生した病原性大腸菌O157の集団感染の感染源とされているハンバーガー用冷凍ひき肉製品を製造したハドソン・フーズ社(アーカンソー州)に対してネブラスカ州加工工場の操業停止と全ての在庫製品の廃棄、全製品の回収を支持した。
 農務省の同工場の立入検査の結果、精肉が工場に運ばれる前に菌が付着した可能性が強まったが、工場内の加工工程で取るべき食肉安全措置に問題があった、として強い措置に踏み切った、という。

 日本ではとかく発生源だけが注目されますが、今回のケースのように衛生管理面で被害を拡大した工場・施設なども厳しく処分する米国を見習いたいものです。
■米のO157ひき肉事件余波/ハンバーガー消えた 業者回収、チェーン店直撃
 米国人の「国民食」のハンバーガーが消えた店も−−。
 米農務省がアーカンソー州の冷凍ひき肉製品業者ハドソン・フーズを米コロラド州で7月に発生した病原性大腸菌O157の集団感染の感染源とほぼ断定し、同社が2,500ポンド(約1万1,340トン)という米国史上最大のハンバーガー用冷凍ひき肉の回収を始めたことで、米国のファストフード店の一部では22日、メニューからハンバーガーが消える店も出始めた。
 スーパーでも大手のウォルマート、セーフウェーなどが全店の店頭から問題の冷凍ひき肉を撤去。
 米ハンバーガーチェーンのバーガーキングは同日、ハドソン・フーズから納入された全ての牛肉を自主回収するとし、影響を受ける店は全約7,200店の25%と発表したが、午後になって実際に影響を受けているのは10%と下方修正した。影響を受けた地域はアラバマ州、テキサス州など27州に上る。
 同社の一部店舗では牛肉不足からハムとチーズを挟んだサンドイッチを昼食用に販売したが、ハンバーガーが食べられないと知り、店を変更する客もいた。 米国のテレビニュースも「ビーフはどこ」と大きく報じている。

■ダイオキシン、5年で90%削減/12月から法規制を実施
 政府は25日の事務次官会議で、廃棄物焼却施設と製鋼用電気炉から排出される発がん性物質のダイオキシン類を抑制するため、大気汚染防止法と廃棄物処理法の政令改正などを決めた。26日の閣議で正式決定する。
 これにより欧米に比べて遅れていた国内のダイオキシン対策が、12月1日から初めて法の規制に基づいて実施される。
環境庁は「焼却施設からのダイオキシンの排出量は年間5.3キロと推定されている。新たな規制により5年間で排出量の90%を減らすことができ、汚染の状況も欧米並に改善できる」としている。
 大気汚染防止法の政令改正などでは、ダイオキシン類を「排出抑制が必要な物質」に指定し、大気中の濃度を1立方メートルあたり0.8ピコグラムに減らすことを当面の目標とした。
 廃棄物処理法の政令改正などでは、規制の対象となる焼却施設の設置を都道府県知事の許認可の対象にし、年1回の排出濃度測定を義務付けた。排出量が基準値を超えている場合、知事が立ち入り調査し、必要があれば改善勧告、許可の取消、罰金(300万円以下)などの処分ができるようにした。
 さらに規制対象外の小規模施設の処理基準を定め、ドラム缶や簡易な施設を使った焼却は認めないことにした。

 特定の施設に対してですが、法律で規制することが決まり少しはよくなるのでしょう。地方自治体によっては大型の24時間炉の建設ができないところも多く、広域での処理システム作りも大変なようです。
 最近はイトーヨーカ堂など大手のスーパーや、いわて生協など食品包装ラップを塩ビから塩素を含まないポリオレフィン系のラップに切り替えるところが増えています。コストは若干高いのですが、薄いためゴミの減量化のメリットがあるとのことです。
 経済性から使われることの多い塩ビですが、広く社会の負担するコストを考えると、元を絶つのが一番のような気がします。当初は産業界に厳しく受けとめられますが、困るところから新技術が出てくるものです。最近のゴミ処理に関する新技術はまさにそのいい例だと思います。
■米ニューヨーク州、、無公害車販売を義務付け/連邦地裁が裁定、98年型から販売台数の2%
 米のオルバニー(ニューヨーク州)連邦地裁は、98年型モデル車から州内で販売する台数の2%を電気自動車(EV)などの無公害車とする州政府の義務付け案を指示する裁定を下した。無公害車の販売義務付けでは最も厳しいといわれていたカリフォルニア州が実施延期を表明しており、ニューヨーク州が98年実施に踏み切れば、他州、自動車メーカーに与える影響は大きい。
 ニューヨーク州の無公害車の販売義務付けは、98年型モデル(97年10月からの販売開始)の2%を無公害車とし、2003年にはその比率を10%にまで引き上げるというもの。カリフォルニア州の初期の案と同じ内容だ。カリフォルニア州は96年、原案を緩和、2%義務付けを延期する代わりに、2003年には一気に販売台数の10%を無公害車にすることを決めた。
 ニューヨーク州の方針に業界は激しく抵抗しており、控訴の構え。理由は「寒さが厳しいニューヨーク地域でEVが耐え得る技術を備えていない」という技術面と、充電所などの環境整備が整っていないことだ。法案実施までにはなお曲折がありそうだ。
 しかし、連邦および州の大気浄化法に基づく無公害車の販売義務付けは、5年後にはほぼ全州で実施される方向にある。メーカーの「技術未整備」を理由にした抵抗姿勢に行政サイドは不信感を持っており、メーカーは量販体制の確立が避けられない状況にある。

■直角2方向出入口で車いすも“楽々”/近鉄、京都線にエレベーター
 近畿日本鉄道は京都線新田辺駅に全国初の駅用直角2方向出入口方式の構内エレベーター(定員9人)2基を導入する。同エレベーターは出入口を、ホームでは墜落などの危険が少ない線路と平行方向にし、橋上の改札階では駅コンコースの旅客動線に支障のない線路と直角方向にしたもの。車いすの乗客もエレベーター内で少しカーブすれば前進のまま出入りでき、高齢者や身障者らがより利用しやすくなる。このエレベーターは12月初旬から供用開始する予定。新田辺駅では合わせて誘導チャイムの新設や既設構外エレベーター、車いす対応便所、橋上駅舎新階段などの改良も行うことにしており、総工費は約2億1,800万円。
 新タイプのエレベーターは同社も委員を務める「駅用エレベーター設備の研究・開発委員会」(主催・財団法人交通アメニティ推進機構)が95年度から開発を進めてきたもので、今回の新田辺駅へのの導入に当たっても、交通アメニティ推進機構のほか京都府、田辺町が支援している。製造は三菱電機。

 これはいいです。既存の物の延長で考えず、「実際何に困っているか」の発想からこのようなエレベーターができたのだと思います。
 安全や品質に関する設計でも同じような発想が求められます。
■缶ビールに点字のメーカー名表示/キリンビール
 キリンビールは自社の缶ビールの缶蓋に、メーカー名を記載した点字表示「キリンビール」を上旬から順次導入し始めた。メーカー名表記は目の不自由な方の要望によるもので、国内ビールでは初めてという。導入した缶は「ビール工場」と「LA2.5」を除く通常缶。導入容器は250ml、350ml、500mlの3サイズ。 また、「ビール工場」と「LA2.5」は、中旬から飲み口が従来より大きい「飲み口ワイド缶」にし、スペースの関係から、ビールであることが分かる点字表示を行う。一方、両タイプの特徴を備えた缶も検討しており、「98年の早い時期に両方を満たしたい」(広報部)としている。

■米たばこ産業、113億ドル支払いで和解/フロリダ州に25年間で
 米たばこ産業を相手取り、たばこによる健康被害に対する損害賠償を求める訴訟を起こしていた米フロリダ州は25日、たばこ産業側が113億ドル(約1兆3,000億円)を支払うとの条件で和解したと発表した。
 CNNテレビなどによると、たばこ産業側は一時金を除いた部分を25年間にわたって分割払いし、たばこ広告も厳しく制限するという。州が起こしたたばこ被害訴訟ではミシシッピ州(約36億ドルの支払い)に次いで2番目の和解成立。
 米たばこ産業は今年6月、喫煙被害に伴う医療費を補填するため、今後25年間に3,685億ドルを支払う内容で40州と合意に達し、連邦議会で最終的に合意が確認されるのを待っている。フロリダ州は今回の和解により、連邦議会での合意確認に有無にかかわらず、たばこ産業から和解金を受ける権利を確保したことになった。

 米政府内部の分析を伝えるニュースによると、たばこ訴訟の和解案が実施されれば、2002年までに米国内での喫煙者(成人)が、最低1,000万人減少するようです。これはたばこメーカーが和解案を実施するために、たばこを1箱当たり77セント前後引き上げることを試算した結果だということです。
終わりに
 米国のたばこ訴訟の結果から、たばこメーカーは自国でのたばこ消費の低迷が予想されることから、海外展開に力を入れています。中南米、東欧、アジアなどが狙われているようですが、我が日本はどうなるのでしょうか。
 たばこによる健康被害の問題に取り組む弁護士グループが、喫煙が原因のがん患者らを対象とする「たばこ病被害者の会」を結成することを8月に決めました。このような被害者の会は初めてということですが、メーカー責任を問う訴訟を来春ごろまでに起こすようです。
 喫煙者にも「たばこの被害者」という意識を持ってもらうにはいい動きだと思います。
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