1997.10 No.46  発行 1997年10月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel/Fax 0263-78-5002

 


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搭乗客のビデオカメラ原因、電磁波で計器着陸不能/今年3月羽田
 空港 JAS機、国内初
「欠陥住宅110番」の相談件数、18%は大手業者/日弁連発表
食品に独自の安全基準/スーパーの大近、3段階で分類
国際標準規格、5年内に全面見直し/ISO総会、日本提案へ
ISO9002取得へ、三和酒類
特定フロン回収、カーエアコンに利用者負担導入/来年から4,000
 円余
廃棄電子機器リサイクル、回収対象を限定/ドイツ、家電などを
 除外
売れ残り弁当もリサイクルで再び食材に/コンビニ、目指すは生
 ゴミゼロショップ
店舗内スクーター、身障者に貸し出し/ダイエーが2店で実験
戦地での安全確保へ/赤十字マーク変更の可能性


9月のニュースから

■搭乗客のビデオカメラ原因、電磁波で計器着陸不能/今年3月羽田空港 JAS機、国内初
 日本エアシステム(JAS)のエアバスA300が今年3月、機内で乗客が使用したデジタルビデオカメラの電磁波の干渉によると見られる複数の操縦計器の異常で、空港への計器着陸進入が一時出来なくなるトラブルを起こしていたことが21日、分かった。携帯電話やパソコンなど電子機器による操縦システムの異常は国際的に問題化しており、米国などで機体が急に傾いたなどの事例報告があるが、日本国内でこれほど深刻なケースが明らかになったのは初めて。JASなど航空各社は以前から、機内アナウンスで離着陸時はビデオ機器などを使用しないよう要請している。
 運輸省などによると、トラブルは3月13日夜、A300が青森発東京行きの最終便として羽田空港に進入中に発生した。飛行コースと自機の位置関係を示す「水平位置表示計」の針が突然、左右に大きく振れ始め、「姿勢指令指示計」の適切な機首角度と翼の傾斜角度を乗員に教える針も激しく揺れだした。
 滑走路への正しい降下進入角度を知らせる計器着陸装置「グライドスロープ」の誘導電波と自機とのズレを示す針も上下にぶれ、地上無線局からの距離表示も消失したため、計器着陸装置を利用した進入は不可能な状態になった。
 幸い天候は良く、乗員は地上の灯火を頼りに進入を続行。客室乗務員に調べさせたところ、乗客の1人がデジタルビデオカメラを動かしていた。
 カメラのスイッチを切った途端、全計器は正常に戻り、羽田空港に着陸した。JASで調査したが、詳しい原因は解明できなかった。
 機内での電子機器使用の問題は、運輸省の外郭団体、航空振興財団の委員会で調査研究が続けられているが、電磁波と計器異常との因果関係ははっきりせず、航空各社も乗客に使用しないよう「お願い」するしかないのが現状。
 こうした中でドイツ政府は今年6月、機内での電子機器使用を禁止し、違反者には禁固刑や高額な罰金を科す法案を閣議了承している。

 天候が良かったために事故になりませんでしたが、恐いことです。今回のケースからビデオカメラによる影響は明らかなようです。電磁波による計器異常のメカニズムが解明出来ていなくても、ドイツのような対応が望まれます。
 航空機などの安全を考える場合は、「絶対に事故にならない」というくらいの確証が必要です。またその安全確保に対して、個人が必要とする電子機器使用の優位性などは全くないと思います。もしも事故になったときは誰が責任を取れるというのでしょう。可能な限りのリスクを排除すべきところを、「お願いする」だけの対処では困ります。

■「欠陥住宅110番」の相談件数、18%は大手業者/日弁連発表
 日弁連の消費者問題対策委員会は10日、欠陥住宅被害110番の集計結果として、約1,000件の相談件数のうち、プレハブ・パネル工法やツーバイフォー工法などで大手業者が売り出した住宅の相談件数が177件と約18%を占めたと発表した。
 また構造的な欠陥が明らかになった189件のうち、軟弱地盤や基礎の構造が不十分など土地そのものに構造的な問題がある「欠陥土地」が81件あり、建物が建っている土地の状況を知らないまま購入している実態も浮き彫りになったとしている。
 日弁連は「大手業者だから大丈夫と安心しない方がいい。建設省が建築基準法を改正し、品質管理体制が優れていれば建築確認・検査を省略する制度を創設しようとしているが問題だ」と指摘している。
 全国的に知名度の高い大手業者14社についての相談は177件と前回(102件)より75件増えた。
 一方、相談で何らかの欠陥を訴えたのは797件。具体的な内容は複数回答で、外壁や内壁に亀裂が入った169件、雨漏りが151件、床や外壁が傾いている88件、ドアや窓が閉まらない84件などだった。

 建設会社のISO9000取得が進んでいますが、実際に現場で作業する下請零細業者・個人の品質保証に対する意識はまだまだ低いのが現状です。一般住宅では、地耐力の検査もほとんど行われていないし、土地を埋め戻した情報なども分からないものです。また、カーペット、クロスや設備品などでも「正規の品が入ってこない」といって、安い代替品を使うケースもあります。おそらく大手企業の利益が多すぎる構造で、末端業者の利益が少ないために不正が減らないのだと思います。業界全体としての社会的責任を建設大手は認識して欲しいものです。

■食品に独自の安全基準/スーパーの大近、3段階で分類
 大阪府を中心に食品スーパーを展開する大近(大阪市、伊藤賢二社長、06-458-5261)は食品の安全性を評価する独自のガイドラインを導入した。この基準に基づき、店頭のほとんどの食品を3段階に分類。安全性が高い商品については目印となるシールを貼って消費者に分かりやすく表示する方式を採用した。食品に対する消費者の安全性志向の高まりに対応するのが狙いで、スーパーが独自の安全性基準を導入するのは珍しい。
 対象となる食品は総菜、魚介類を除く約1万の食品。原材料の品質、製造方法、殺菌方法など約10項目について基準を設定し、分類した。

 従来からこのスーパーではテレビなどで宣伝している商品にはすぐ飛びつかず、商品の品質評価後に店頭に並べる姿勢をとってきました。そこでもう一歩進めて「商品の品質など、なかなか店に聞けない」という消費者の判断を助けるようにしたのが今回のシールです。シールには「愛情良品」と印刷され、良品度の高い順にグリーン/赤/白の色を使っています。
 大近では独自の基準を作るのに各メーカーの工場を見学し、原材料の選定基準、製造方法・衛生管理、添加物などの情報を得て評価しています。現在は試験的に1店舗で行っていますが、他の店舗でも早い時期に導入したいようです。
 しかしまだ問題もあり、有機農産物の評価については農家に出向いても品質全般についての検証が難しく、現在のところ良品認定は行えない状況にあります。

■国際標準規格、5年内に全面見直し/ISO総会、日本提案へ
 通産省は23日からジュネーブで開く国際標準化機構(ISO)総会で、工業品に世界共通の形状や試験方法を定めた国際標準規格(約1万件)を5年以内に全面的に見直すよう提案する。規格に採用されてから長期間が過ぎて技術的に遅れているものや、世界の一部地域でしか通用しない規格の廃止などが目的だ。
 通産省は、@自動車部品などに関する時代遅れの規格A照明器具など利用地域が限定されている規格−−などがISO規格に混在していることを指摘。規格の廃止や新たな規格の策定を求める。
 提案にはすでにアジア・太平洋地域が賛同しており、採択される見込みとしている。日本提案は欧州偏重の現在のISO規格を国際競争時代にふさわしい形に改める狙いもある。

 規格の見直しは当然行うべきものですが、我が国の法律や規格などの見直しはどうなのでしょう。外圧による規制の緩和が始まりましたが、規制を無くすことの本来の目的である「国民の利益」に含まれる安全性の確保については人(企業)まかせのようです。
 電気用品取締法がますます形骸化する中、通産省の考えは「事故を起こしたら製造者には容赦しない」ということだけです。それは当然のことで結構なのですが、安全性が確保された製品を国内に流通させる検証システムはないままです。

■ISO9002取得へ、三和酒類
 三和酒類は、品質管理・保証の国際規格ISO9002の監査を9月末にも受ける。麦焼酎の品質確立と向上が目的。指導・審査機関は英国のロイド社で、98年6月の取得を目指している。
 同社は麦焼酎「いいちこ」で国内乙類焼酎のトップメーカー。製造・配送などで品質管理の「クレームゼロ運動」を早くから実施。ISO9002の取得で、それらのノウハウを文書化するとともに、外部の評価を受ける。

 いいことです。工業製品と違いスペックや品質が見にくい食料・飲料用製品などは、ぜひISO9000の取得で消費者の信頼を得るようにしてもらいたいと思います。

■特定フロン回収、カーエアコンに利用者負担導入/来年から4,000円余
 通産省は1日、オゾン層破壊の原因である特定フロンについて、自動車や家電メーカーなど各業界が策定したフロン回収の自主計画に基づく回収事業を来年始めから開始すると発表した。カーエアコンについては、利用者負担を盛り込み、販売店などで特定フロンを回収する際に、1台4,100〜4,300円の費用を利用者が負担する。1998年始めに東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏1都3県で開始し、同年秋をめどに全国で実施する。
 同日開いた「オゾン層保護対策推進に関する協力要請会議」で決まった。4,100〜4,300円の間としている負担費用の具体的な金額は、実施までに詰める。

利用者負担はやむを得ない面もありますが、最終的に発言力の弱い消費者につけが回る気がしないでもありません。フロンを使用したことの経済メリットが、企業利益と販売価格にバランス良く生かされていたということでもないでしょうに…。

■廃棄電子機器リサイクル、回収対象を限定/ドイツ、家電などを除外
 ドイツ環境省は廃棄電子機器回収に関する新しい条例案を10月にも閣議に提出する方針だが、過去の提案に対する地方自治体と業界からの反対を考慮して、異論の多い製品はとりあえず回収義務の対象から外す方針である。環境省スポークスマンによると、回収が義務付けられるのはコンピューターとディスプレー、放送設備と電話機で、洗濯機・冷蔵庫などの家電製品と民生用電子機器は対象外となる。
 回収した機器は集積場において業界が無償で引き取り、リサイクルすることになる。ドイツの地方自治体は、自治体が回収する場合は1台あたり10マルクの回収費を業界から受け取る必要があると主張していた。条例案の最後の詰めを行うため、10日に環境省と自治体団体、業界団体のトップによる協議が開かれる。
 ドイツでは95年からドイツ・テレコム、シーメンスなどが出資する共同出資企業ゴスラルが廃棄電子機器のリサイクルを行っている。廃棄機器の80%がリサイクルされ、残る廃棄物の一部はさらに熱源として利用されている。
 同社はこの種の企業としては欧州最大で、2万台の年間処理能力を持つ。しかしドイツ国内で廃棄される電子機器は年間150万台におよび94年にはこのほか300万台の電話機がゴミとして捨てられた。

 家電製品や民生用電子機器は対象外というものの、日本のリサイクルシステムとの考え方に違いがあるようです。日本では誰が負担すべきかの真剣な議論がないまま制度を作ることを優先し、「受益者負担」の言葉のもと、消費者が負担することが多くなります。しかし消費者が製品を購入することに、それほどの重みがあるのでしょうか。それよりも廃棄物処理のことを考えずに売ることに専念し、ばく大な利益を上げて大きくなった企業の責任はどうなのでしょう。
 環境問題では企業の負担が多すぎるとの言葉も聞かれますが、社会全体のバランスの中でどのように分配させるのかを考えて欲しいと思います。特にテレビCMでばく大な広告料を払っている企業は、真剣に考えて欲しいものです。

■売れ残り弁当もリサイクルで再び食材に/コンビニ、目指すは生ゴミゼロショップ
 コンビニエンスストアや外食産業の間で、生ゴミ・ゼロショップを目指して生ゴミをリサイクルする動きが活発化している。店舗などから出る売れ残りの弁当や食べ残しの残飯などをたい肥化(コンポスト)、契約農家がこの肥料を使って有機栽培した野菜を再び食材として利用する仕組み。
 ローソンはコンビニ業界で初めて店頭生ゴミの完全リサイクルに着手した。売れ残った弁当や総菜をまとめて指定の廃棄物処理業者に回収を委託、各店舗から集められた生ゴミは専用移設に運ばれ、そこでたい肥に加工される。たい肥は協力たい肥メーカーに移され、鶏・豚糞や豆腐かすなどを加え、約3ヶ月で良質の有機肥料を作る。肥料はローソンの契約農家が買い取り、野菜を栽培、再度弁当や総菜用に利用する仕組みだ。
 同社では神奈川県下の約200店舗で実験を開始、5年間で全国全店での導入を検討している。
 ファミリーマートでも12月から生ゴミの再利用に着手、ローソンと同様に加工された肥料を契約農家に販売、弁当や総菜に使う野菜として生まれ変わらせる計画だ。また、現在生ゴミを全て焼却処分しているセブンイレブン・ジャパンでも、再利用について「避けては通れない問題」(同社)とし、ゆくゆくは具体策を示しそうだ。

24時間営業・大量廃棄などで、とても環境にやさしいとはいえないコンビニですが、ローソンの取り組みは評価できます。身近なコンビニの環境への取り組みは、消費者の意識も変える効果があるでしょう。
 ローソンではまた、業界初めての天然ガスを燃料とする低公害の配送車を導入、実験を始めました。積極的に環境問題と取り組む企業の姿勢が感じられますが、バリアフリーやお客の満足度なども同じポリシーから生まれてくるように思います。

■店舗内スクーター、身障者に貸し出し/ダイエーが2店で実験
 ダイエーは11日から23日まで千葉県と福岡県の2店舗で、高齢者や身体障害者を対象に、店舗内で簡単に利用できる電動スクーターを無量で貸し出す実験を実施する。身障者などが社会参加しやすいような環境を作る「タウンモビリティ」と呼ばれている運動の一環。こうした実験に民間企業が取り組むのは初めてという。
 期間中は新浦安店(千葉県)と笹岡店(福岡市)の店頭に電動スクーターを4〜5台設置。インストラクターが利用者に操作説明をしたうえで貸与する。ダイエーは利用してもらった後、アンケートに協力してもらい、利用上の問題点や営業面への影響などをつかむ。
 こうした実験は英国が79年に始め、現在では170カ所の店舗などに設置している。日本でも高齢化社会への対応策の一つとして中央省庁や自治体が実験に取り組み、広島市や武蔵野市などで実験が行われた。

 このような実験を企業が始めたことで、バリアフリーのすそ野の拡大が進みそうです。車いす用の買物カートを置いているスーパーもまだ少ない現状で、ダイエーの取り組みは歓迎できます。

■戦地での安全確保へ/赤十字マーク変更の可能性
 22日の英紙デーリー・メールは、国際的な人道救援組織、国際赤十字のシンボルとなっている赤い十字マークが、赤いひし形あるいは赤い六角形に変わる可能性があると報じた。
 同紙によると、赤十字のマークは、キリスト教以外の宗教が絡む戦争が増えるにつれて、病院や救急車、一般市民の避難場所に掲示しても中立を示すマークとは受けとめられず、十分な安全や保護が保証されなくなってきた。イスラム教諸国が使用する赤新月のマークについても事情は同じという。
 このため国際赤十字の幹部は、少なくとも戦場ではこの2つのマークの使用をやめ、文化的に中立なマークに変えることを検討しており、有力候補は赤いひし形か赤い六角形だという。

赤十字マークは世界中どこでも通用すると思っていましたが、そうでもないのですね。安全を確保するためのシンボル・表示などは、言語と同じく「異なる文化圏では通用しない」、と頭に入れ直す必要があります。

終わりに
 9月は航空機事故が多かったように思います。手元の新聞記事でも、3日にカンボジアでベトナム航空機墜落で65人死亡、6日にボルネオで双発機墜落で10人死亡、13日にアフリカ沖で独、米両軍機が消息を絶ち、これは空中衝突と見られています。14日に米メリーランド州の航空ショーでステルス戦闘機が墜落、19日には米モンタナ州で訓練飛行中の米空軍B1爆撃機が墜落しています。米軍によると9月の軍用機の事故はこれで6件目という異常事となっています。21日にはロサンゼルス郊外で小型機がビルに衝突し4人が死亡、そして26日にはスマトラ島でガルーダ航空機が墜落しました。
 それぞれの事故の関連はもちろんありませんが、他の交通手段より安全と言われている航空機の安全に対するハード・ソフトそして保守や乗員・関連業務者の意識など、何か警告されているようです。

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