1997.11 No.47  発行 1997年11月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ヘリ安全対策見直し/運輸省、調査・研究委を設置
乾電池液漏れ、ソニーが回収
食器から基準超す化学物質/子供用、全国で販売
列車衝突事故で運転士の過失断定/山梨県警
放射能漏れに備えヨウ素剤配布
品質保証国際規格認証取得を目指す/動燃東海事業所
英・日・独が上位3国、ISO14001の認証取得数/世界規模で拡大、工技院調べ
「間接喫煙が発病原因でない」証明、たばこ会社に責任/米の訴訟、和解
たばこ銘柄CM、来春打ち切りへ/未成年者の喫煙防止で業界合意
喫煙者率34%、今年も最低更新/JT調べ


10月のニュースから

■ヘリ安全対策見直し/運輸省、調査・研究委を設置
 8人が死亡したトヨタ自動車のヘリコプター墜落事故など今年になってヘリ事故が相次いでいることから、運輸省は22日、安全対策を見直すため「ヘリコプター運航の安全対策調査・研究委員会」を設置、東京都港区の航空振興財団で初会合を開いた。
 同省は、大型ヘリ事故が相次いだ1990年〜91年にも安全対策検討会を開き、運行と整備のガイドラインを作成した。今回はさらに同ガイドラインの追加措置について検討、来年2月ごろに結論を出す方針。
 トヨタ事故で、同省航空事故調査委員会は9月、最終報告で「建議」として、飛行ルートの気象状況をパイロットに的確に提供することや、研修などを行い急な天候悪化などの場合に機長が搭載計器を自由に駆使できるようにすることなどを求めた。  また、昨年4月に長野市でテレビ局の取材ヘリ同士が空中接触した事故で、事故調委は、相互の安全間隔を維持するための検討を同省航空局に求めた。
 こうした指摘を受け、同省は委員会で、目視による有視界飛行が多く、計器を使う経験が少ないパイロットの指導方法や、本来は機長の判断が中心の安全間隔維持について、何らかの指針を示すことが可能かどうか検討する。

■乾電池液漏れ、ソニーが回収
 ソニーの単三アルカリ乾電池に、アルカリ性の電解液が漏れるトラブルが多発し、同社が卸売店などからの回収に乗り出していることが25日に分かった。
 トラブルが起きているのは96年5、6月に同社の子会社が製造、使用期限が98年5、6月となっている約1,500万本。
 ソニーや電池の苦情を取り次いだ福井県生活科学センターによると、同県内の男性が1月ごろ購入した80本の乾電池の一部をトランシーバーに入れたところ液漏れを起こし、トランシーバーが壊れた。男性が同センターを通じ、購入した電池をソニーに送ったところ25日までにソニーから液漏れを認める回答があった。
 ソニーによると、時間の経過により電池内部のピンが曲がりひび割れが起きたことが漏れの原因。ソニー本社には数百件の苦情などがあり、苦情発生率は他の製品の15倍に上っている。ソニーの橋本一晃広報室担当部長は「よく調べて責任を持ってお客さんに告知しようと検討している」と話している。

 10月30日になりソニーは一般消費者に対しての回収を発表し、31日から順次社告を出しています。そのときの新聞記事によると対象の乾電池は当初の96年5〜6月製造分が96年5月〜97年4月製造分に訂正されていました。25日の段階では事態を完全に掌握して発表したのではないようです。始めは加工など製造上の問題を原因としていたのが、実際には設計あるいは材料などの問題だったのかもしれません。その結果、回収対象品は3,000万本にもなってしまいました。

■食器から基準超す化学物質/子供用、全国で販売
 全国で約5万2,000個販売された子供用の樹脂製食器から、食品衛生法の規格基準を超える化学物質「ビスフェノールA」が検出されたとして、大阪市環境保健局は3日、食器販売会社オーエスケー(大阪市東住吉区)に製品の回収命令を出した、と発表した。
 同市によると、先月9日に東京都が行った定期材質検査でスヌーピーの絵がついた子供用茶わんから、基準値の500ppmを超える960ppmのビスフェノールAを検出した。ビスフェノールAは食器素材となるポリカーボネート樹脂の原料。厚生省によると、すぐに健康に影響することはないが、慢性的に摂取すると血液中の赤血球の耐酸性が落ちるという。
 大阪市は先月16日、この茶わんについて回収命令を出し、市と大阪府が同社の製品を調査。スヌーピーの絵付きコップなど、抗菌剤入り子ども洋食器7品目で基準値を超えたため、同30日付で改めて製品回収命令を出した。

 ポリカーボネートだけを使った食器は全て「ビスフェノールA」が基準内であることから、抗菌剤を混ぜた新製品では安全・品質検査などしなかったのでしょうか。おそらく従来製品と生産行程のほとんどが同じため、「原材料に抗菌剤が入っているだけ」ということで安全の確認をせず、また量産品に対しても定期的な安全確認はしていないのでしょう。困ったことというか、実際この業界ではこの程度の企業が多いのかも知れません。
 抗菌剤入りの商品が市場にあふれていますが、「効果が持続しない」、「効果が全くない」といった商品も多く、国民生活センターでも問題視されています。そのような状況下、安全をうたった商品が逆に不安全というのでは、詐欺みたいなものです。

■列車衝突事故で運転士の過失断定/山梨県警
 JR中央線大月駅構内の特急スーパーあずさ13号と回送列車の衝突事故で、山梨県警捜査本部は29日、制御系機器類の鑑定結果から回送列車の自動列車停止装置(ATS)のスイッチが一時的に解除されており、運転士(24)の過失が事故原因と断定した。今後、運転士の事情聴取を進め、業務上過失傷害容疑で立件するための詰めの捜査を行う。  これまでの調べで
1. 停止信号が出ていたのに回送列車の運転士が列車を発車させた
2. 回送列車のATSは正常だったが、作動した形跡はなかった
3. 衝突とほぼ同時期に運転士が手動の非常ブレーキをかけていた
−−などが判明した。
 このため捜査本部は運転士がATSのスイッチを一時的に切っていたとみて、運転士本人や関係者から詳しく事情を聴く方針。
 運転士は事情聴取に対し「ATSのスイッチについては記憶にない」と繰り返しており、スイッチは事故後、オンの状態だった。

 JR中央線が1日半もの間不通となってしまい、テレビでも大きく取り上げられた事故です。原因は運転士の信号の見誤りとATSのスイッチが切られていた、ということのようです。JRによると運転士の信号見誤りはこの2年半で69件もの報告があり、今年8月に起きた静岡県沼津市のJR東海道線で停車中の貨物列車に普通電車が追突、脱線し、乗客43が負傷した事故も運転士の「信号に気を取られて貨物列車に気付くのが遅れた」との証言があります。
 また、昨年11月に長野駅構内で特急あさまに回送列車が衝突した事故でも、回送列車の運転士の信号の見落としと、構内の信号配置の問題が指摘されています。人間が運転する以上あり得ることですが、今回の事故で気になったことは、運転士がATSスイッチを切ることができたかどうかです。
 ATSシステム導入直後に運転士がスイッチを切ることが多く問題となり、その後スイッチが切られないような対策をしたと聞いていました。ところがそれは(今回の回送列車の場合は)運転席のスイッチの上にカバーをしただけのものでした。これでは「切る」という意志があれば誰にでも切ることができるものです。
 今回の事故で、運転士が故意に切ったかどうかはまだ明らかになっていませんが、どうやらマン・マシンシステムとしての安全レベルが低かったようです。

■放射能漏れに備えヨウ素剤配布
 フランス北部ノルマンディーの地方当局は17日、原子力発電所の近くに住む住民約1万6,000人に対し、万一、原発からの放射能漏れがあった際、身を守るためのヨウ素剤を無料で配布すると発表した。
 ヨウ素剤配布は、旧ソ連のチェルノブイリ原発のような事故の発生に備え、フランス政府が今年始めから進めている原発周辺住民への安全対策の一環。 原発から半径10キロ以内の6,000世帯の住民に配布され、事故の際は当局の指示によって服用。放射能被爆によるがんの発生の予防を図る。

 事故を絶対起こさないという目的での安全対策は、フランスでも日本でも同じだと思いますが、根本のところ、つまり「誰のための安全対策なのか」というところで違いがあるようです。
 日本の場合、安全対策する側の立場が優先で被害を受ける人の立場に立った考えが少ないのが現状です。世の中には「絶対」などあり得ないとし、万一のときの対策こそがリスク管理の重要な要素だと考えるべきです。我が国(企業)の安全対策のコメントでは、根拠もない非論理的な「大丈夫」という発言が多すぎます。「対策が不十分」とみなされることを恐れて、無理に繕っているようにしか思えません。これは情報開示の基本理念を理解していない、あるいは理解しようとしない問題とつながっているようです。

■品質保証国際規格認証取得を目指す/動燃東海事業所
 動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の改革問題で、科学技術庁原子力局の今村努審議官は6日、今年3月に火災・爆発事故が起きた東海事業所(茨城県東海村)の再処理工場について、品質保証の国際規格であるISO9000の認証取得を目指す考えを明らかにした。

 動燃関係のニュースではうんざりすることが多かったのですが、これはちょっといいニュースです。
 「本当にできるのかな?」といった感じですが、逆の見方あるいは意地悪な見方をすると「ISO9000のシステムで通用するのかな?」といった興味もあります。

■英・日・独が上位3国、ISO14001の認証取得数/世界規模で拡大、工技院調べ
 通産省・工業技術院の調査によると、環境マネジメントシステムの「ISO14001」の普及が世界46カ国・地域、2,296企業・事業所に広がっていることがわかった。96年9月に規格が正式発行したISO14001だが、企業の地球環境問題への関心の高まりを背景に、世界規模で急速に広まっていることが数字の上からも明らかになった。
 工技院が10月21までに集計した各国の認証取得数は、規格制定の主導国となった英国が440件でトップ、ついで日本が425件、ドイツが320件と続く。また、地域別では、欧州地域が6割、アジアが3割を占めた。
 日本は87年に発行した品質システム「ISO9000シリーズ」規格で、国際規格としての重要性の認識が発行当初は乏しく、認証取得の取り組みが出遅れたものの、環境マネジメントシステムでは世界トップレベルの対応を図ってきた。ただ認証数を事業所数や国民総生産(GNP)比で各国と比較した場合、「日本の経済規模では、一層の普及・拡大が求められる」(管理システム企画課)という。
 日本では9月末までに425社・事業所が認証を取得、月約30件ペースで増加しており、業種、企業規模とも幅が広がってきている。

 大したものです。
 ちなみに韓国は153件で5位につけ、米国は55件とずいぶんと出遅れています。 横並びなのか、各企業の環境に対する意識が非常に高いのかは分かりませんが、とにかくいいことでしょう。願わくば身近な環境、つまり個々の人に対する製品設計上の配慮が向上するといいのですが…。

■「間接喫煙が発病原因でない」証明、たばこ会社に責任/米の訴訟、和解
 米航空機の乗務員ら約6万人が機内での間接喫煙による被害への損害賠償を求め、米フロリダ州の裁判所で争っていた集団訴訟は10日、肺ガンなどにかかった乗務員らの今後の個別訴訟では、たばこ会社に「発病は間接喫煙が原因でない」と証明する責任があることを確認して和解した。
 長期間の間接喫煙で発病したと主張する乗務員による訴訟が容易になる上、間接喫煙にされされる他の職種の労働者救済にも大きく道を開く可能性がある。
 和解では、被告のたばこ会社5社のうちフィリップ・モリスなど大手4社が3億ドル(約360億円)でたばこ被害の治療研究を行う財団を設立することでも合意した。弁護士費用4,600万ドルは支払われるが、原告への損害賠償金は含まれていない。
 たばこ会社側は今年6月、増大するたばこ訴訟を抑制するため、40州の州政府と25年間で3,685億ドルを支払う和解案を結び、連邦議会の承認を待っている。
 今回、挙証責任で譲歩してまで和解に応じた背景には、不利な評決で各州政府との和解成立に支障が出るのを恐れたためとの見方もある。
 米国では国内便は禁煙だが、国際便は喫煙可能。たばこ会社側は今回、米国に着陸する国際便での禁煙を定める法律成立を支援することも原告側に約束した。
 集団訴訟は今年6月に始まり、50億ドル(約6,000億円)の損害賠償を求めていた。

 肺ガンなどにかかり「なんでがんになったのか」と考えていくと、疑わしいものを消去としていく過程でたばこを“白”と断定できないことが多いと思います。被害者救済の面では企業側の「発病は間接喫煙が原因ではない」とする考えではなく、「発病には何らかの影響を及ぼした」と考えるべきでしょう。
 とかく原因が分からないときには、被害者側(訴える側)に因果関係の立証責任を問うことが多いのですが、安全問題では科学・技術的にも、また情報収集能力にしても圧倒的に企業が優位にあります。そのため公平さ(フェア)を求める社会では、企業自らが“白”であることを立証する考え方が論理的にも自然なのでしょう。

■たばこ銘柄CM、来春打ち切りへ/未成年者の喫煙防止で業界合意
 国産、外国のたばこメーカー、販売会社の業界団体「日本たばこ協会」は、未成年者の喫煙防止策として1998年4月1日から、テレビ、ラジオでたばこの銘柄のコマーシャルをしないことを申し合わせ9月30日、広告代理店など関係先に伝えた。 協会によると、米国などほとんどの先進国では社会的な批判からテレビでのたばこの銘柄のCMはないといい、日本も遅れてこれにならう形となった。
 このほか映画や屋外のテレビボード、インターネットでも、個別の銘柄の広告は取りやめ、街頭での見本たばこの配布もやめるとし、テレビではわずかにたばこのマナーCMなどが残るとしている。
 業界では85年4月、たばこの広告や販売促進活動について自主基準を作成。基準は改定のたびに厳しくなり、テレビでの銘柄CMについては95年10月以降は平日の夜10時54分以降しか放送できなくなり、総放映時間にも上限を設けるなど規制してきた。 しかし最近の調査で夜11時台の青少年のテレビ視聴率も高まっていることが判明、未成年者の喫煙に対するメーカーの責任を問う社会的批判をかわす狙いもあって、放送時間をさらに遅い時間に設定するよりは全面的な銘柄のCM打ち切りで合意した。

 いいことです、といいたいところですが、あまり効果がないCM放映を無くすことだけのようです。それを「青少年の健康を考えて」というのは、どうなんでしょうか。

■喫煙者率34%、今年も最低更新/JT調べ
 成人のうちたばこを吸う人の割合は34.6%で、2年連続で過去最低となったことが27日、日本たばこ産業(JT)がまとめた「全国たばこ喫煙者率調査」で明らかになった。男性の喫煙者率が下がったことによるもの。禁煙運動の盛り上がりや健康志向の広がりなどが、背景にあると見られる。
 調査は今年5月に実施。全国で1万6000人にアンケートを郵送し、約1万1200人から回答があった。それによると、男性の喫煙者率は56.1%で、前年より1.4ポイント減少し、6年連続で過去最低を更新した。女性は前年比0.3ポイント増加の14.5%。ここ数年14%前後で横ばい状態が続いている。
この結果、男女を合わせた全体の喫煙者率は過去最低だった前年(35.1%)をさらに0.5ポイント下回った。

 喫煙率低下というものの、男性ではまだ56.1%もの人がたばこを吸っているというのはどうなんでしょう。非喫煙者への迷惑を考えないで「自分ががんになるのだから、いいじゃないの」とうそぶく人もいます。発展途上的な文化、他人をかえりみないマナーをまだ引きずっているようです。

終わりに
 たばこを吸う人ののマナーの悪さも気になるのですが、問題はたばこに限らずいろいろな場面で迷惑を受けている人、それを見ている人にあるようです。
 「面倒だから」「言ってもダメだから」などと省エネ活動に専念する人が多く、人に迷惑をかけている人を黙認することが多いようです。まあ、個人の利害しか眼中にないのでしょうが、巡り巡って日本の社会全体の問題として大きくのしかかってくるような気がします。
 このような日本人の生活態度もある意味でのリスクと考えると、日本はまだまだ途上国並の社会環境でしかないようです。

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