1998.1 No.49  発行 1998年1月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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UA機、乱気流事故/1人死亡102人けが
リコール認識に甘さ/運輸省が自動車会社に指導
ベンツ、今度は超小型車の「スマート」が横転
先月の北陸新幹線混乱の原因分かる/列車の順序めぐりデータ修
 正の遅れ
ろうそく耳ケア商品で事故多発/国民生活センター、公取委は業
 者に警告
パイオニア、UL認定資格を取得/国内メーカで初
新型インフルエンザ香港で/鳥から感染、人同士の可能性も
良品計画がISO9001を取得/小売業界で初めて
接待社会、自主改善を/通産、国際標準をにらみ企業に要請
シートベルト着用23%だけ/米、映画の乗車シーンで
コンビニ夜間閉店、温暖化に「効果なし」/ヨーカ堂グループ


12月のニュースから

■UA機、乱気流事故/1人死亡102人けが

 28日午後11時10分ごろ、成田発ユナイテッド航空(UA)826便ボーイング747型機(乗客374人、乗員19人)が、成田空港の東1,800キロの北大西洋上で乱気流に巻き込まれ、機体が300メートル急降下し乗員や乗客が天井や床にたたきつけられました。同機はUターンして29日午前2時26分、成田空港に到着し、負傷者は千葉県成田市の成田赤十字病院などで手当を受けましたが、東京都の会社員(32)が頭を強打し頭がい内出血で午前3時過ぎに死亡、けが人102人のうち頚椎損傷などで重傷者5人、12人が入院する事故となりました。
 事故の前に新東京航空地方気象台は北大西洋上の南北700キロ、幅最大350キロにかけての空域で、乱気流が発生する恐れがあるとの情報を各航空会社に出していました。しかし実際に同機が乱気流に遭遇したのは、この発生予想地点より南東に約500キロも離れていたことから防ぎようがなかったようです。晴天乱気流で300メートルもの降下は珍しいということで、このため死傷者がでる事故になったものです。ただ乗客の証言によるとシートベルトの着用サインはでていなかったようです。
 12月30日には事故調査のためのUA機のフライトレコーダーがダレス国際空港に到着し、米運輸安全委員会(NTSB)による解析とともに、パイロットの事情聴取も近く始まることになりました。
 UA側では、「同機が気流に最初にぶつかった際に軽い揺れを感じたため、この時点で機長はシートベルト着用サインを点灯、乗客に日本語と英語による機内放送でも案内した。しかし一部の乗客はシートベルトを締めないまま、その後の急降下に遭ってしまったようだ」と話しており、乗客の証言と食い違っています。
 またNTSBではベルト着用のサインの有無については「レコーダーを解析してから」としているものの、「フライトレコーダーは旧式のため、限られたデータしか記録されていない」とも述べ、完全な事故原因調査ができない可能性も示唆しています。
 事実の解明はこれからですが、事故当時機内では機内食のサービス中であり、スチュワーデスが配膳用ワゴンを運んでいたことから、乗客・乗員にも注意はでていなかったのかもしれません。
 12月も航空機事故が多く、ロシア軍機が6日に住宅地に墜落し57人が死亡、住民24人が行方不明となっています。15日にはタジキスタンからUAEのシャルジャ空港に向かっていたツポレフ154旅客機(乗客77人、乗員9人)が、空港から約12キロの砂漠に墜落、85人が死亡しています。19日にはインドネシアのジャカルタからシンガポールに向かっていた、2人の日本人乗客を含む104人乗りのシルクエア航空機がインドネシア南スマトラ州で墜落しています。
 10月にはアルゼンチン旅客機がウルグアイで墜落し75人全員が死亡したり、歌手のジョン・デンバーが自家用軽飛行機の墜落により死亡するなど、最近は事故があってもすぐに忘れてしまうほどです。被害者や当事者でない人はすぐに忘れてしまいますが、航空機はどこまで安全なのかを考えると、ちょっと恐いものがあります。


■リコール認識に甘さ/運輸省が自動車会社に指導

 富士重工業が欠陥車隠しをしていた問題をきっかけに、運輸省が国内の自動車メーカー12社に指示した再発防止の総点検で、欠陥が見つかりながら2年間も放置していたケースなどの報告があったことが25日、明らかになりました。
 同省によると、日産ディーゼル工業は2年前、除雪車のブレーキ装置の耐久性に欠陥があることが判明。しかし、同社の品質管理部門はリコール届けをせず、生産工程で対策をしただけで放置していました。また三菱自動車工業、マツダ、ヤマハ発動機の3社は、社内試験や苦情などから部品の改造をしましたが、安全性にかかわるものではなかったため届け出を怠っており、三菱自工など計7社では、販売店からの苦情を処理する社内規定が不十分で改善が求められました。
 今年のリコール届けは78件で、制度が始まった69年に次ぐ多さというのも気になるところで、高度化する製品といった理由で片づけてしまうことはできません。今後、日本の工業製品はメーカーの自己認証で品質や安全を社会的に認めていく方向にありますが、ルールを守れない企業というのでは困ります。
 おそらく社内では品質システム規格であるISO9001や米国ビッグスリーの要求するQS9000規格に準拠した企業活動を行っていると思います。かたちは整ったものの、これら規格の大きな目標であるマネジメントが行き渡っていないようです。これでは“あんの無い”たい焼きみたいなものです。


■ベンツ、今度は超小型車の「スマート」が横転

 ドイツ週刊誌シュピーゲル最新号(12月20日発売)によると、ダイムラー・ベンツ社はミニベンツ「Aクラス」の発売延期に続き、今度は「スウォッチ」で知られるスイスの時計メーカーSMHと共同開発した2人乗り超小型車「スマート」の生産開始を半年延期する方針を伝えました。理由はAクラスと同じ横転のためで、大衆向け新型小型車2車種の足回りの弱さのためにベンツ社全体が揺らいでいるようです。 しかし今回の騒動でドイツ国内フォルクスワーゲン社などライバル社でもESPを導入するなど、安全対策の波紋が広がっているようです。
 VW社からESPを受注したITT・オートモティブ・ヨーロッパ社では当初、ESPの需要を2000年までに年間10万台と予想していたようです。ところがシュピーゲル紙によると、VWではすでに100万台のESPをITTに注文し、さらに数百万台のオプションを発注したと伝えています。思わぬこととはいえ、最先端の技術力を持つ企業の優位性を見た気がします。


■先月の北陸新幹線混乱の原因分かる/列車の順序めぐりデータ修正の遅れ

 11月16、17日に大混乱した東北、上越、北陸3新幹線の原因は、新幹線の実際の列車順序がコンピューターシステムと食い違ったためだったことが、JR東日本の調べで分かりました。JR東日本によると、16日の停電発生で上越、北陸新幹線が約3時間止まったため、上野車両基地から列車を出庫する際、指令員は本来先に出す予定だった北陸新幹線あさまに代えて東北新幹線やまびこを出しました。ところがあさまを後にするという順序変更を、運行統括するコンピューターシステム「コスモス」上で行わなかったため、コスモスは「あさまが先に来るはずなのに」と矛盾として判断。コスモスの心臓部に当たる「ダイヤ予想機能」がダウンしてしまいました。その後あさまを後回しにする修正をしましたが、同様の矛盾が次々に重なり、機能ダウンが回復しないままダイヤを修正できなくなったとのことです。
 事故の原因が分かったのですが、何ともお粗末ではないでしょうか。人と機械をマネージする情報伝達・命令系統が機能しておらず、またコスモスのソフトウェアには矛盾を人に伝える機能がないようです。「あさまが先に来るはずなのに来ない」といった閉ループ思考(演算)にはまりダウンするようなソフトでは、他にも問題点がいっぱいあるかもしれません。


■ろうそく耳ケア商品で事故多発/国民生活センター、公取委は業者に警告

 国民生活センターはろうそくタイプの耳ケア用品について、事故が多発しているとして「現在市販されている商品は使用を控えたほうがよい」と発表しました。この商品はろうを染み込ませた筒状の布の一方を耳に当て(細いほうを少し差し込む)反対側(耳の外に出ている部分)に火をつけ2/3程度燃えたら火を消すもので、「圧力差による吸引効果で耳あかが取れる」「壮快感がある」などとうたっているものです。
 同センターによると、これまでに報告された事故は計70件で今年8月から急増し、「耳が聞こえなくなった」「中耳炎や外耳炎になった」「鼓膜が破れた」などの声があったといいます。
 同センターでは、これらの報告を受け6銘柄をテストしたところ、どの銘柄でも耳内部に固形状のろうが50ミリグラム前後付着したほか、ろうが耳の中に溶け落ちたケースも確認しています。今回の試験結果によると耳や筒の中に付着した耳あかのようなものは、色や形状は耳あかに似ていたが赤外分光高度計で分析した結果、耳ケア用品に含まれるろうの成分と同様の固形炭化水素であることが分かりました。
 また公正取引委員会は5日、「たっぷりたまった耳あかを奥まで掃除」などと、耳あかを取る効果があるように広告したのは、景品表示法違反の恐れがあるとして、通信販売会社「クレリッチ」(本社、東京都新宿区)に警告を出しました。
 テレビなどで紹介されヒット商品になったものだということですが、自分で見ることのできない耳の奥のケアを火をつけた道具で行うことに感覚的な違和感(危険感)はないのでしょうか。購買層はよく分かりませんが、危険に対する原体験の少ない消費者が過度の清潔志向と体験先取り欲求をいやすために使いたがるもののような気がします。しかし、良いもの悪いものを見分けられないよう情報を操作するメディアにも責任があると思います。


■パイオニア、UL認定資格を取得/国内メーカで初

 米国の安全規格であるULを自社製品に自ら認定できる「UL TCP(トータル・サーティフィケーション・プログラム)」をパイオニアが取得しました。国内メーカーでは初めてのことで、これにより第三者(UL)の認定作業が不要となり、商品開発期間の短縮やコストの削減が見込まれています。今回の「UL TCP」資格はパイオニアの埼玉県・所沢工場が対象で、同工場で行う製品の安全試験評価が、ULの試験評価と同レベルと認められたことになります。
 通常は製品のサンプルをULに送り試験し、その試験レポートを使った生産工場での立入検査を終えないと製品の生産ができなく、認定取得までには3〜6か月程度かかるものです。したがって新製品を投入する場合の短い開発期間のうち、多くの時間をこのUL認定に費やしているわけです。
 UL TCPは年4回の抜き打ち工場検査など、その維持管理が難しいのですが、パイオニアの取得は同社の品質・安全レベルを常時保つことを社内外に表明するものです。なかなか大変なことですが、他の大手電子・電機メーカーは、まだそのレベルではないのでしょうか。


■新型インフルエンザ香港で/鳥から感染、人同士の可能性も

 香港特別行政区政府は27日、新型インフルエンザA(H5N1型)の主要な感染経路は鳥からとする検査結果を発表しました。発表では血清検査の結果、養鶏場などの関係者29人のうち5人、また医療関係者54人のうち1人、検査担当者73人のうち1人など計9人から抗体が見つかりました。
 香港政府はすでに24日午前零時以降、中国本土から香港への鶏の輸入を全面的に停止しています。
 5月21日に死亡した男児(3)から初めて確認された新型インフルエンザは鳥だけに感染するとみられていたもので、これが人同士の感染の可能性があることから大きな問題になってきました。感染患者は相次いで見つかり、28日の香港政府発表では、新型インフルエンザの感染が疑われていた60才の女性(すでに死亡)の感染が確認され、感染者は12人(うち4人が死亡)、感染の疑いのある患者は8人となっています。
 実は日本の厚生省では「新型インフルエンザ対策検討会」をこの5月に設け、10月24日に報告書をまとめたばかりでした。この報告書では、鳥の持つウイルスが変異して患者が発生する状況の注意深い調査や、ワクチンの生産体制を整えるよう求めています。またこれまでの新型ウイルスの遺伝子を分析したところ、鳥のインフルエンザウイルスと混ざる傾向が強いといい、新型が発生する地域について、「鳥と密着して生活している中国南部が第一の候補」としていました。さらに報告書は、新型が大流行した場合、日本国民の25%に当たる約3,200万人が感染する恐れがあると予測しています。
 香港政府保健局の陳局長は、「感染者の数がそれほど多くないため、人から人への感染があったとしてもそれほど感染力は強くない」と見ていますが、日本では新ワクチンの開発にようやく着手したばかりで供給が可能となるのは1998年5月になるようです。厚生省厚生科学課では「もし、それまでに日本に新型インフルエンザが上陸すると予防手段がない」とまでいっています。またワクチンを量産できるメーカーは北里研究所など全国で5社しかなく、しかも千葉県血清研究所によると原材料である鶏の有精卵が大量に供給できる状態でもないようです。心配なことです。


■良品計画がISO9001を取得/小売業界で初めて

 良品計画は衣料、雑貨、食品などの「無印良品」全商品について、国内の小売業としては初めてISO9001規格の認証を取得しました。
 同社では販売サービスまでを含む業務の標準化を進めるため、96年3月から認証取得に取り組んできたもので、PBブランド商品を持つスーパー各社などは出遅れた格好になりました。
 海外の販売拠点として、英国、香港、シンガポールなど13店を展開中の同社では、今後の欧州地域での出店や商品調達のメリットを期待しているようです。


■接待社会、自主改善を/通産、国際標準をにらみ企業に要請

 通産省は、グローバル・スタンダード(国際標準)にのっとった企業経営の観点から、企業間の商談に際しての接待や金品授受といった民間ビジネスの商慣行について、経済界に再考を促す方針を明らかにしました。
 公務員に職務にかかわることで頼み事をしてカネを送ると贈賄罪に問われ、厳しく?処罰されますが、民間ビジネスの場合は接待や金品を送ることがごく普通に行われています。
 欧米では近年、民間企業同士の商談であっても、商談獲得のための過度の利益供与をした場合などは「商事賄賂」とみなすとらえ方が有力になっています。日本の経済界の問題意識は低いといわれていますが、通産省では国際的な立場から「カネを渡して仕事を獲得する」といった不透明な営業姿勢が残る商慣行には改善の余地があると判断しました。近く開催する「外国公務員増賄問題検討会」の場を利用して経済界に自主的な対応を促す考えでいます。
 贈賄行為に甘い我が国では通産省がこのような旗を上げても、企業が腰を上げるまでには時間がかかるのでしょう。


■シートベルト着用23%だけ/米、映画の乗車シーンで
 米国の映画の中の乗車
シーンではシートベルトの着用率がきわめて低いことを、ミシガン州立大学のブラッドリー・グリーンバーグ教授が調査結果をまとめました。これによると昨年ヒットしたハリウッド映画50本では、車の運転場面で、シートベルトを着用していたのは運転手が23%、同乗者で14%でした。登場人物が若者の場合はさらに低く、運転者で10%、同乗者が9%しかありませんでした。教授は「こうした映画は、実際の社会で死亡事故が最も多い若者に対して、誤ったメッセージを送っている」と警告し、調査を支援した交通安全団体は、映画会社に改善を要求しています。
 同じくたばこをポイ捨てするシーンなど、社会的に慎むべきことを映画やTV番組で堂々と見せるのも誤ったメッセージなのでしょう。「おもしろければいい」といった風潮がまかり通っているわが国では、さてどうでしょうか…。


■コンビニ夜間閉店、温暖化に「効果なし」/ヨーカ堂グループ

 イトーヨーカ堂グループは12日、コンビニエンスストア1店舗が夜間8時間閉店しても「温暖化ガス削減にはほとんど効果はない」ことを訴える独自の二酸化炭素削減量の試算結果を明らかにしました。地球温暖化対策として一部でコンビニの深夜営業自粛を求める声が出たことに対して、反論するのが狙いのようです。
 試算によると、8時間閉店で削減される1店舗あたりのCO2量は1.96キログラムCで、4トントラック1台が17分(時速50キロで14.3キロメートル)走行したときの排出量に相当するとしています。
 企業独自の試算でいろいろのデータが出てきます。これらのデータが社会的に認知されるためには、データの算出基準を公表すれば信頼度は増すのですが、試算結果だけでは「企業に都合のいいデータかな?」などと、うがった見方をしたくなります。


終わりに

 トヨタの「プリウス」が人気のようです。当面役所や企業、団体など、環境への配慮をアピールしたいところが多く購入するようですが、個人で購入する動きはどうなのでしょう。我が家でもちょっとした話題になっています。
 聞くところによると純粋に月産1,000台でコスト計算すると、単価は500万円をはるかに超えるともいわれ、それが215万円ならば超お買い得車かもしれません。おためし価格のためか、戦略的な価格設定に対し他メーカーからは苦情は出ていないようです。
 99年には日産やホンダなど各社が同様な車を発売するので今から楽しみです。

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