1998.3 No.51  発行 1998年3月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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オークランドの停電、復旧の見通し立たず/企業の休業、旅行自粛
エアバッグ誤作動、米道路交通安全局120万台調査
米軍機、ロープウェーのワイヤ切断、乗客20人死亡/イタリア
日産、新型パワーウィンドウを開発/水没した車からの脱出可能へ
福祉用具に安全基準を導入/日本健康福祉用具工業会
ダイオキシンで産廃施設建設中止/甲府地裁
危険物管理の法令違反68%/総務庁行政監察結果
校正証明書を無償添付/東日製作所
環境ISO取得へ自治体の動き活発
たばこのリスク管理へ厚生省が検討会/個人のし好でとらえず
喫煙禁止法案が否決される/独、連邦議会


2月のニュースから

オークランドの停電、復旧の見通し立たず/企業の休業、旅行自粛

 2月20日に発生したニュージーランド最大の都市オークランド中心部の停電は、復旧のめどが立っていません。日系の大手商社や銀行など世界の大手企業が集まっている中心地区のため、経済活動に与える影響は甚大とみられています。
 23日に電力会社マーキュリー・エナジーは、停電事故の完全復旧には、少なくとも10日間はかかるとの見通しを明らかにしました。同社によると、市中心部に通じる4本の送電ケーブルが損傷を受け、送電量が極端に落ちたといいます。原因はケーブルの老朽化など考えられるようですが、はっきりしていません。
 隣国のオーストラリア外務省は24日、国民に対し、停電が続くオークランド市中心部への旅行を自粛するよう勧告を出しました。外務省の旅行自粛勧告は内戦など治安状態の悪いことを理由に出されますが、都市の一部地域の停電のためというのは珍しいことです。25日現在オークランド中心部の停電は、中心部への電力供給量が通常の10分の1といわれています。日本食レストランなど数軒が休業していますが、民間企業の中にはコンピューターなどの機器を運び出し、電力のあるビルや郊外に移って業務を再開したところもあります。
 人口30万人を超える都市での停電事故でいまだに復旧できないというのは異例のことですが、電気がなくては何もできない社会になっている現在の、日頃考えない盲点を感じます。私達は電気はいつもあるものと思い、仮に停電があってもごく数分あるいは災害時の1〜2日程度に考えてはいないでしょうか。ましてや東京など大都市での停電が10日以上続いたときの経済的な被害などはちょっと想像がつきませんが、インフラの質の問題を考えてしまいます。ところで停電などによる被害は電力会社に請求できるのでしょうか。考えてもみませんでしたが、電力会社と私たち住民・企業間の契約関係はどうなっているのでしょうか。
 不可抗力である災害などは別としても(いろいろ意見が出るとは思いますが)、設備の老朽化や人為的ミスなどで突然電力がストップし、休業や長期避難生活をせざるを得ない状況下では、電力会社の責任は当然問われるでしょう。電気の質では、瞬停、瞬断といって連続的に電気が供給できないため、電子機器が誤動作する問題がありますが、一般にはこれらは電力会社が提供する許容できる「電気の質」とされ、ユーザーが自己防衛で対処しているのが現状です。
 ニュージーランドの電力会社マーキュリーエナジーは、ばく大の補償に悩まされることになるようですが、同様の事故がわが国で起きた場合はどうなるのでしょうか。
 JRの電車が遅れても責任はとってくれない(特急が2時間以上遅れれば特急料金だけは戻ってきますが…)現状は分かっているし、電力会社の責任はどこまであるのか分かりません。おそらく電力会社は現在の技術水準と経済性(電気料金)を盾に、対応不可能であったといってくるでしょう。阪神大震災で通電後の火災に対する電力会社の責任については特に議論になっていないようですし、裁判がいくつか起こされてからその積み重ねで確定していくものなのでしょう。
 普段の生活では何も不自由せず便利な社会のようですが、何かのときには頼りにならない、補償もしてくれないといった側面をもつ、危うい社会でもあります。

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■エアバッグ誤作動、米道路交通安全局120万台調査

 米道路交通安全局(NHTSA)は23日、「エアバッグ装置が不適切に作動した」とのユーザーからの苦情を受けて、GMとクライスラーの自動車合わせて約120万台に装着のエアバッグ制御システムについて調査しているとの報告書を明らかにしました。
 調査対象はGMの96〜97年型のシボレー・キャバリエ、ポンティアック・サンファイヤーなど約78万台と、クライスラーの95年型ダッジ、プリモス・ネオンなど約37万5,000台です。
 報告書によると、走行中タイヤが道路のくぼみや縁石に当たったときなど、わずかなショックでエアバッグが作動するという苦情が194件寄せられています。また両社の他車種や日本のスバルやマツダ、スウェーデンのボルボなどについても同様の苦情があるため、別途調査しているようです。
 エアバッグの誤作動という表現ですと、欠陥のように思われますが、メーカーにいわせればエアバッグの動作条件内かもしれません。欠陥エアバッグなのかこの程度のものなのかは、今後の調査・検討が必要でしょう。当初からエアバッグの作動条件を詳細に説明した説明書をユーザーあるいはカタログなどに掲載することで、ユーザーに過大な期待を抱かせずに済んだようにも思えます。

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■米軍機、ロープウェーのワイヤ切断、乗客20人死亡/イタリア

 イタリア北部・アルプス山中のトレンティーノ州カバレーゼ市郊外で3日午後、ボスニア平和安定化部隊(SFOR)を構成する駐伊・米海兵隊所属の戦闘爆撃機がスキー客を乗せたロープウェーのワイヤに接触して切断、ゴンドラが落下する事故があり、乗客20人全員が死亡しました。
 米海兵隊は11日になり、事故前から規則違反の低空飛行が行われていた実態を示す証拠の隠滅を命じていた疑いで、海兵隊航空部隊の部隊長を解任しました。
 海兵隊の発表によると、解任されたのはノースカロライナ州チェリーポイント海兵隊航空基地のワッターズ中佐です。
 中佐は今回の事故とは直接の関係はないものの、10か月前のイタリアのアビアノ基地所属当時、規則違反の超低空飛行に加わっていました。事故発生後、低空飛行の模様を撮影した個人用ビデオテープがあれば消去するよう部下に命じていたものです。
 海兵隊は「この種の違反は非常に稀なケースだ」と弁明していますが、いままで違反飛行を見逃していたマネージメントの責任はあるようです。
 日本でも米軍基地から離れた山間地での低空飛行訓練に不安の声が上がっていますが、ルールを守って欲しいものです。政府では何かあったときの責任が取れない以上、米軍の安全面での確証を求める意味からもイタリアの事故は注目する必要があるでしょう。2月6日にはペルシャ湾に展開している米軍のFA18戦闘機ホーネット2機が、クウェート市の東約130キロのペルシャ湾上で空中衝突し墜落する事故も発生していることですし…。

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■日産、新型パワーウィンドウを開発/水没した車からの脱出可能へ

 国内では車の水中への転落死亡事故が年間数十件発生していますが、水圧でドアが開かず、またパワーウィンドウの電気回路の故障により窓の開閉ができなくなることがあります。このため日産自動車では、水中でも正常に作動するパワーウィンドウを開発し、2月始めに発売した小型ワゴン「キューブ」から採用を始めました。日産では99年度末までに商用車を含む全車に標準装備する計画でいます。
 日産が新たに開発したパワーウィンドウは、内蔵したセンサーが浸水を検知し、通常「開く」「閉じる」の2つの回路両方に電流が流れてしまうところを、「閉じる」ための回路へ電流を流さなくするものです。このため衝突などによる破損がなければ、バッテリーが機能する数分間の間で窓を開けて水中に出ることが可能になるものです。

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■福祉用具に安全基準を導入/日本健康福祉用具工業会

 福祉用具メーカー約230社で構成する日本健康福祉用具工業会では、業界基準のない福祉用具の標準化に乗り出します。SGマークを取得できるように商品ごとに安全性の評価基準を作り、JISやISOの規格にも適合するよう標準化を目指します。 昨年6月に通産省の後押しで発足した日本健康福祉用具工業会ですが、昨年7月に通産省が福祉用具規格の標準化に乗り出した(ASPニュースNo.44に掲載)のに呼応するものだと思います。
 より安全性について配慮されるべき福祉用具や介助用品ですが、市場の拡大とともに工業会でも基準に適合する製品の必要性を認めてきたようです。多品種の中から価格差を考慮して自分に一番適した安全な用具が購入できれば理想ですが、これで少しは良くなるかもしれません。
 ただ厚生省の肝いりで昨年7月に発足した類似の団体である全国福祉用具製造事業者協議会では、福祉用具のソフト面からのアプローチを活動目的にしています。両工業会・協議会の活動が、プラスの関わりとなり安全基準が作られることが望まれます。今までの福祉ビジネスでは厚生省が担当でしたが、現在通産省や建設省、警察庁まで絡んできているようです。こと安全に関する問題では産業界の足並みを揃えるよう、監督官庁で協力して欲しいものです。

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■ダイオキシンで産廃施設建設中止/甲府地裁

 山梨県若草町に建設中の産業廃棄物中間処理施設に対し、「操業されれば有害物質が排出されて健康被害が出る」と周辺住民が建設中止の仮処分を申し立てていましたが、25日に甲府地裁による「建設続行を禁止する」という決定がありました。
 生田瑞穂裁判長は「ダイオキシン類の排出で住民の健康が侵害される恐れがあり、被害は広範で深刻なものになる可能性がある」として住民側の主張を認めたものです。注目されるのは「業者側が汚染防止対策などの具体的資料を出して住民の健康侵害の恐れがないことを明らかにすべきだ」とし、業者側に安全性についての立証責任を科したことです。業者側の「ダイオキシン類はバグフィルター(ろ過式集じん機)を通して除去する装置を採用するので、規制値を下回り安全」との主張に対し、「装置の具体的な仕様が明らかにされず、(予想される)ダイオキシン類発生量の数値計算の根拠も不明確」などとして退け、他にダイオキシン類排出による危険性がないことを立証する資料がないことから、建設続行は認められない、としたものです。
 健康問題や自然破壊などの心配から最近では環境アセスメントなど行われていますが、多くの場合業者や市町村側の主張を通すためのシナリオが作られており、地域の住民の心配を払拭するデータの提出がないまま押し切られることが多いようです。今回のケースは業者側のデータに対しメスを入れ、その客観性を疑問視したもので、当然のことと感じるものの大変評価できる決定だと思います。また業者がバグフィルターの仕様を明らかにしないなど、根拠あるデータを示そうとしなかったのはもともと提出できるものではなかったということでしょう。

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■危険物管理の法令違反68%/総務庁行政監察結果

 ガソリンや赤りんなどの危険物を取り扱う全国の202業者のうち、危険物を漏らしたり、許可されていない危険物を貯蔵するなどで消防法令に違反していた業者が68.3%に達したと、総務庁が16日に発表した危険物の安全確保に関する行政監察結果で実態が明らかになりました。
 7割近くもの業者の違反が見つかったことになりますが、この状況は一体どういうことなのでしょうか。日本では法を遵守することに対するモラルが低くて困りますが、不法投棄などでは業者に限らず一般住民によるものも多く、廃棄自動車の処分などは都会でも田舎でも困っています。
 法を守ることが社会人の最低限の義務であり、社会・国全体の利益を守る基本であることを理解せず、目先の利己的経済行動をとる人が多いようです。これら人種は隣近所から政界、銀行、企業など到るところに巣くっていて、最近の贈収賄事件の下地を作っているようです。
 自分(だけ)に優しい、反省しない日本人が多いようです。情けないことです。

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■校正証明書を無償添付/東日製作所

 トルク機器業界では校正証明書を無償添付する動きが相次いでいます。トルク機器のトップメーカー、東日製作所(東京都大田区大森西1-16-5、辻洋社長、03-3762-2452)では、今年1月から全てのトルク機器に対して校正証明書(検査成績書付き)を無償添付しています。また中村製作所(東京都品川区大井4-4-4、石森晴社長、03-3775-1521)では1月下旬から、顧客からのFAX請求に対し無償で同書類(トレイサビリティ体系図、検査成績書付き)を送付しています。
 東日製作所では、「証明書は1通2,000〜3,000円で発行していたが、世界では同書類の無償添付は当たり前」と、無償化に踏み切ったと話しています。
 ISO9000シリーズの認証取得企業はこの書類が定期的に必要となるので、歓迎できる動きでしょう。

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■環境ISO取得へ自治体の動き活発

 環境マネジメントシステム「ISO14001」の認証を取する自治体の動きが広がってきました。千葉県白井町が1月に全国の自治体に先駆けて取得し、さらに新潟県上越市も2月に取得しました。また大阪府は98年度中にISOの認証を取得する方針を表明しました。
 上越市では97年4月に地方公共団体として初めてISO14001の認証取得を宣言、認証取得こそ白井町に先を越されたものの、2000年度を目標として取り組む環境保全活動の内容は非常に高いレベルで、日本環境認証機構(JACO)でも「大手電機メーカーが驚くレベル」と評価しているものです。
 上越市では新年度を「環境行動元年」と位置付け、市庁舎の電気使用量削減、フロンガス回収、職員のノーカーデー(月1回)、風力発電装置設備設置の調査などを挙げて予算化しました。
 また事務用品などはグリーン購入を進め、公共工事にはリサイクル材の使用を促進するなどの活動も打ち出しています。このため企業にとっては、大口消費者である自治体に対し環境に配慮した商品やサービスを売り込むチャンスでもあります。また、グリーン調達制度による業者や商品選択の公正性も期待できます。

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■たばこのリスク管理へ厚生省が検討会/個人のし好でとらえず

 厚生省は24日、「21世紀のたばこ対策検討会」を発足、第1回会合を開きました。検討会は厚生省保健医療局長の私的諮問機関で、医師、メーカー、学識経験者ら17人で構成されています。
 わが国のたばこ対策は95年に公衆衛生審議会が厚生相に意見具申した「たばこ行動計画検討会報告書」に基づき、防煙対策、分煙対策、禁煙支援・節煙対策の3つの柱で啓発普及を中心に進められてきました。
 ところが最近では、女性を含む若年者の喫煙率の上昇、たばこ消費量の拡大、たばこ関連疾患による死亡者数の増加やそのための医療費の増大などが問題視されています。厚生省の97年版「厚生白書」では初めてたばこ問題を取り上げ、「喫煙習慣は個人のし好の問題にとどまるのではなく、健康問題であることを踏まえ、たばこ対策を一層推進することが求められている」としています。
 このような背景と欧米でのたばこ対策が強化される中、日本でもたばこによる総合的なリスクを把握し対処する必要性が認識されてきたようです。

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■喫煙禁止法案が否決される/独、連邦議会

 独連邦議会では5日、公共の建物や職場などでの喫煙を原則的に禁止する法案が、与野党の反対多数で否決されました。法案は公共の建物、公共交通機関、職場では喫煙所以外を禁煙とし、自治体や企業などには喫煙所の設置を義務付けようとしたものです。禁煙違反者には最高100マルク(約7,000円)の罰金、職場への喫煙所設置の義務などを怠った企業などには最高5,000マルク(約35万円)の罰金が科せられるものでした。
 このニュースを「独は喫煙の自由を優先」と表現した新聞がありましたが、これは安易に日本の愛煙家を安心させるものです。米国とまではいかないものの、独でも法案を議会に提出し、たばによる健康被害や社会的ロスに対処しようとしているので日本とはレベルが違います。
 世界はいま禁煙の傾向にあり、灰皿がおいてなければ禁煙区域だと考えるのが一般です。また、食事中でも平気でたばこを吸う日本人が嫌われていることも知っておくべきでしょう。

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終わりに

 ISO9000シリーズの認証取得が進んでいますが、日本を代表する旅館、石川県・和倉温泉(七尾市)の「加賀屋」が日本のホテル・旅館業界で初めてISO9002を取得しました。理想のサービスを追及し、お客のクレームをゼロにする取り組みの結果、ということですが立派なことです。
 また、リサーチ業界でもSRG市場調査総合研究所がISO9001の認証を取得していますし、病院や診療所などのISO9000シリーズ認証取得を支援する任意団体、ヘルスケアISO研究会(東京・渋谷)も発足しました。
 一般に製造業の場合は、取引上の都合でやむなく?認証を取得したものでしたが、顧客に提供するものやサービスの品質をより高めようとする動きが活発になってきたようです。これがISO取得企業の本来あるべき姿だと思います。

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