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1999.4 No.64  発行 1999年4月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
インターネットでは主な記事を紹介します。

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中華航空機事故、6人全員不起訴処分/名古屋地検
信楽鉄道事故訴訟、JR西日本にも注意義務違反/大阪地裁、2社に
 5億円
血中ダイオキシン最高値検出、能勢町の施設従業員/労働省発表
自動車の安全性試験で6車種がAAAを獲得/自動車事故対策セン
 ター公表
佐久市、太田市がISO9001取得/全国の自治体で初
■クリーニング上がりの衣類で「化学やけど」/国民生活センター
 が注意情報
■排出規制のない航空機のCO2が増加/IPCCの特別報告書
■売れ残りの弁当箱の容器ごと飼料に/大日本紙業が発売
■健康福祉関連用具の「共用品」化/「共用品推進機構」発足
■病院や図書館での介助犬認める/京都府、都道府県レベルでは初


3月のニュースから

■中華航空機事故、6人全員不起訴処分/名古屋地検

 名古屋空港で5年前に起きた中華航空機墜落事故で名古屋地検は19日、愛知県警が業務上過失致死傷などの容疑で書類送検していた同機の機長(事故で死亡)ら6人全員を不起訴処分にしたと発表しました。機長、副操縦士については重過失を認定したものの死亡しているため立件できず、中華航空の当時の副社長ら4人は嫌疑不十分と判断したものです。 事故機を製造したエアバス社関係者について、名古屋地検は独自に嘱託尋問を行いましたが、最終的に刑事処分を見送りました。
 この事故は着陸やり直しの際、操縦士のミスが重なり起きたもので、マスコミでも機長、副操縦士のミスがなぜ起きたのか、あるいはエアバス機の設計と操縦方法・インターフェイスの問題はなかったのか、など活発な議論が行われました。また自動操縦中に手動に切り替えた場合に機体が危険な状態になるという特性を周知させていなかった、エアバス社の責任も問われていました。中華航空の責任として自動操縦に関する教育・訓練を十分せず、またエアバス社からの技術通報に基づく改修を怠ったなどが問われていました。
 名古屋地検ではボイスレコーダーやフライトレコーダーなどに基づき、機長らの最初のミスから墜落までの1分半を14に区分、その中で8段階の連鎖的なミスがあったと指摘しています。しかし、事故調査委が「教育、訓練は必ずしも十分ではなかった」と指摘した中華航空側の責任については「中華航空の教育訓練システムに問題は認められない」と認定しました。また機長らの搭乗直前の飲酒が疑われる原因となった遺体の血液からのエタノール反応についても、地検は答を示さず疑問が残ったままです。
 エアバス社側は当初から容疑者としての聴取を拒否、外交ルートで嘱託尋問を依頼し続けた結果、昨年10月参考人聴取としての嘱託尋問が実現したものの、同社幹部は多くの質問に対し証言拒否権を行使したといわれ成果はなかったようです。
 日本では航空機事故に対する刑事責任を追及することに注力しますが、欧米では再発防止に向けた真相究明を優先するのが主流で、処罰されなければ当事者が真実を語る可能性も高まるとの指摘もあります。しかし刑事事件として追及して欲しいという遺族が多かっただけに、せめて中華航空側の責任は追及できなかったのか、と感じてしまいます。

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■信楽鉄道事故訴訟、JR西日本にも注意義務違反/大阪地裁、2社に5億円

 滋賀県信楽町の第3セクター信楽高原鉄道で1991年5月、同鉄道と乗り入れ運行していたJR西日本の列車同士が単線上で正面衝突、42人が死亡、614人が重軽傷を負った事故で、総額11億3,600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が29日大阪地裁であり、両社に連帯して5億152万円を支払うよう命じました。
 判決によると、「欠陥のある信号保安設備をJR西日本が高原鉄道や運輸省に無断で設置、操作し、信楽駅の出発信号が赤に固定されるトラブルが発生。高原鉄道側がそのまま所定の安全確認手順に違反して列車を発車させ、JR西日本の運転士も安全確認を怠って列車を通行させたため事故が発生した」としています。
 三浦裁判長は、「JRは乗り入れの信楽高原鉄道線でも安全対策を講ずる立場にあった」と認定し、「JRが設置した信号設備『方向優先てこ』で、事故前にも信楽駅の信号異常が起きていたのに、社内で情報交換をしないまま放置、JR側運転士も行き違うはずの場所に高原鉄道列車がいないのだから停車すべきだった」と判断しました。
 JR西日本の桜井紘一・専務取締役鉄道本部長は「青信号でも(対向)列車が来るかもしれないと予見する義務が認められれば、徐行運転しなければならず、鉄道事業そのものが成り立たない」などと反発しています。しかし無人運行ではなく人が運転する列車・路線システムの場合、機械システムだけでは運行できないために行っているものです。したがって「青信号だから止まる義務がないなど」とのJR側の発言は、危険を人の安全行動で回避する感覚が欠落しているようです。裁判長の「JR側運転士も行き違うはずの場所に高原鉄道列車がいないのだから停車すべきだった」という判断は、運転士が取るべき当然の行動を怠った責任を問うもので納得のいくものです。
 JR西日本の桜井専務の発言は重大で、人を含めた安全管理システムをどのように考えているのでしょうか。事故の反省無き企業では、安全ポリシーは育ちません。困ったものです。

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■血中ダイオキシン最高値検出、能勢町の施設従業員/労働省発表

 労働省は26日、大阪府能勢町のゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」の元従業員ら92人の血液から過去最高のダイオキシンが検出されたと発表しました。 調査は労働省の調査研究委員会(委員長・高田勗中央労働災害防止協会労働衛生検査センター所長)が検査を希望した元従業員16〜72歳の92人を対象に、98年10月から11月にかけて実施したものです。検査結果によると血中脂肪1グラム当たりのダイオキシン濃度は最高が805.8ピコグラム、最低が13.4ピコグラム、平均84.8ピコグラムでした。検査した約2/3の人が国内の一般的な人(20〜30ピコグラム)を上回る値を示し、100ピコグラムを超えた人が15人、400ピコグラムを超えた人が4人もいました。
 焼却炉関連施設の近くで作業し在職期間が長い人ほど値が高いことから、研究委では汚染された焼却灰などの粉じんを吸入したのが原因とみています。
 「やはり高濃度のダイオキシンに汚染されていたか」という印象ですが、同じ日、元従業員2人は「大腸がんや重い皮膚病になったのは施設内の高濃度ダイオキシンが原因」として、淀川労働基準監督署(大阪市)に全国初のダイオキシン労災を申請しました。申請したのは竹岡光夫さん(67)と畑中克男さん(61)の2人です。申請書などによると、竹岡さんはごみを炉に入れるクレーン操作や、焼却施設内の計器の点検を担当していましたが、退職後に大腸がんが見つかり2度の手術を受けています。また畑中さんは、焼却灰をセメントで固める作業などを担当していて、約3年前から顔や足などに黒い色素が沈着し、ニキビ状の皮膚炎ができました。ダイオキシンに触れる恐れのあるほこりが舞う施設内での作業も、通常の作業服と目の粗いマスクだけで特別な安全対策は取られなかったということです。労災申請により職場環境における安全対策が問われることになりますが、全国で約26万人の従業員が働いている焼却施設の環境・作業手順はどうなっているのでしょうか。気になるところです。

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■自動車の安全性試験で6車種がAAAを獲得/自動車事故対策センター公表

 運輸省の外郭団体である自動車事故対策センターは17日、国内で販売されている自動車の安全性を評価した1998年度自動車安全情報を公表しました。今回の試験車は最新モデル18車種です。
 同センターでは95年から試験結果を公表してきましたが、今回の全面衝突試験で初めて運転席と助手席共にAAAの車種が出ました。しかも日産のサニー、富士重工のレガシィ、マツダのボンゴフレンディなど6車種が獲得し、自動車メーカーの安全性向上の努力がうかがえます。
 同センターの提供している自動車安全情報ですが、1月の運輸省の発表によると現在のブレーキ性能や衝突安全性や救出のしやすさなどに分かれている評価を、2000年度からは総合評価に移行することを決めています。このため1999年度からは試験車両を17台から40台に増やし、側面衝突試験を開始するなど試験の拡充を図ることにしていて、消費者にとってはとても歓迎できるものです。

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■佐久市、太田市がISO9001取得/全国の自治体で初

 長野県佐久市と群馬県太田市の両市は1日、全国の自治体で始めて品質保証の国際規格であるISO9001の認証を取得しました。佐久市の対象は市役所の全てで、太田市の対象は市民生活部の市民課、保険年金課となっています。行政は最大のサービス業という認識も出てきているようですが、両市に共通しているのは市民への公平で高品質のサービスを提供する顧客志向型行政を目指していることです。
 佐久市では1996年11月に行政改革大綱を策定、積極的な行革に取り組むため市民参加の行政改革懇話会を設置していました。同市では同懇話会の提言を踏まえて、常に行政改革に取り組むことのできる持続性のあるシステムであるISO9000の認証を取得したといっています。また、三浦大助佐久市長は「国際イベントの誘致など、地方分権の進展にともない激化する自治体間の競争に勝ち残る」としていますが、ISO取得のPR次第ではUターン・Iターン者など都会から移住する人にも好感を持たれ、地方都市の人口増にも寄与するかもしれません。
 環境ISOといわれる「ISO14000」シリーズ取得を目指す自治体は多く、昨年1月の白井町(千葉県)の取得からすでに10件以上になっています。たしかに自治体にとっての環境問題は避けて通れないものですが、サービス業としての顧客の要求品質に答えるためのISO9000シリーズの重要性も認識して欲しいものです。

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