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1999.7 No.67  発行 1999年7月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
インターネットでは主な記事を紹介します。

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■走行中の新幹線にトンネル壁落下/「ひかり」屋根大破
■小規模水道も規制/厚生省方針
■スペアタイヤが不要に/自工会とタイヤ協会が検討
■農産物で独自の認証制度/長野県臼田町
■クレーム情報全社で共有/トヨタ、来年開始
■病院のカルテ開示/埼玉医大、信大病院
■ダイオキシン排出量半減/環境庁推計
■ダイオキシン排出規制強化へ/厚生省、環境庁で見直し
■クレジットカードのリサイクル/ビザ
■車のアイドリング停止で逆効果?/警察庁の試算


6月のニュースから

■走行中の新幹線にトンネル壁落下/「ひかり」屋根大破

 27日午前9時25分頃、JR山陽新幹線小倉−博多間の福岡トンネルを走行中のひかり351号に200キロもあるトンネル壁の一部が落下、9号車のアルミ製の屋根(厚さ1.6ミリ)が約16メートルにわたり裂けてめくれ上がり、パンタグラフなどが破損しました。幸い乗客乗員にけがは無かったものの、事態を重視した運輸省は28日、新幹線を運行するJR東日本、東海、西日本の3社に対し7月末までに全国のトンネルを一斉点検するよう指示しました。
 原因は側壁の落下部分周辺でコンクリートで継ぎ足して固めていく際にできる「コールドジョイント」と呼ばれる施工不良の継ぎ目が見つかったことから、ここから壁の一部がはがれたものと見られています。事故にあった「ひかり」は空調設備が屋根の上全体を覆っている旧型車両であったため、客室の天井が直接破損することはなく、乗客にけが人はでませんでした。
 しかし「のぞみ」など最近の車両では、屋根に空調設備がなく落下物は客室内にまで達することが考えられます。壁の崩落の時間がずれて別の車両が通過していれば、大惨事になった可能性もあり、ぞっとする思いです。
 施工業者が基準を守っていなかったことも考えられることから、JR側の検査に問題がなかったか問われます。また新幹線トンネルの点検は運輸省令で2年以内に1回実施することが定められていて、このトンネルでは昨年11月と今年4月に目視検査が行われたといいます。しかし検査後2カ月でこのようなトンネル壁落下というのではあまりにもお粗末で、検査内容そのものが見直される必要があります。
 運輸省鉄道局によると同様の内壁落下事故が起きないよう、ハンマーでたたく検査をすべきだといっていることから、JRの検査が甘かったようです。目視検査で異常がないとするチェックは日常点検的なもので、年1回程度行う定期点検ではより厳しくするのが安全管理上当然のことでしょう。

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■クレーム情報全社で共有/トヨタ、来年開始

 トヨタ自動車は、現在5〜6カ所の窓口に入ってくるユーザークレームをデータベース化し、社内の関係部署から自由に閲覧できるシステムを2000年中に完成させる方針です。現在ユーザーの苦情を電話などで受け付ける窓口は、お客様相談部、サービス部、総合ショールームや営業本部などにありますが、サービス部に入った苦情が新車販売部門では分からないなど、クレーム情報が積極的に活かされてはいないようです。
 トヨタほどの企業でも品質に関係するユーザークレームを、当該部門での処理事項と考えていたようで少々驚きです。電話で応対する窓口のパソコンに定められたフォーマットの入力画面があり、ユーザーから提供してもらう様々な情報を入力していると思っていたのですが、まだ製造業ではそこまでいってないのでしょうか。
 クレームは面倒な処理ごとと考える企業もあるようですが、クレームを寄せる顧客へのCS向上のみならず、開発・設計部門にとっては貴重な品質情報でもあり、活用しないのはもったいないことです。ISO9001でも顧客の苦情の再発防止のため是正処置、予防措置のシステムが要求されていますが、そのシステムを構築する際の効果的な対応として、ユーザークレームを含めた顧客情報の共有化というのは当然考慮されるべきでしょう。

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■病院のカルテ開示/埼玉医大、信大病院

 今年2月の国立大医学部付属病院長会議でカルテ開示に向けた指針が作成されたことを受け、カルテを開示する病院が出てきました。埼玉医大病院(埼玉県毛呂山町)は1日、患者や患者本人の同意を得た家族からの請求に応じて7月1日から、カルテや検査記録を開示すると発表しました。遺族からの請求は受け付けなく閲覧が原則、主治医が立ち会い内容を説明、コピーはできない、としています。
 信大病院(長野県松本市)も4日、7月1日からカルテや検査フィルムを原則的に開示する方針を決めた、と発表しました。埼玉医大病院と同じく患者や患者本人の同意を得た家族からの請求に応じて開示するものですが、同院では本人が亡くなった場合でも、本人が開示を求めていたことが文書などで証明されれば、父母や配偶者、子が請求できるものです。開示は担当医の立ち会いのもとで行われ、カルテのコピーやフィルムも希望に応じて提供する方針です。
 両病院ともカルテ開示が必ず行われるわけではなく、埼玉医大病院では請求を受けてから2週間以内に、院内に設けた医療情報提供委員会が開示の可否を決定します。信大病院では請求を受けてから15日以内に病院長が患者に及ぼす治療面での効果や情報提供の必要性を考え、開示するかどうかを判断するとしています。請求しても明確な理由が無いまま開示されないことも懸念されますが、信大病院では病院関係者や外部有識者でつくる病院長の諮問機関「診療情報提供委員会」に諮り、開示の是非を審議することにしています。 適切な医療行為が行われているのか、患者の様態が突然急変するなどの原因を明らかにできるなど、患者と病院が信頼し合える医療に近づくことになるでしょう。ただ、病院にとってのデメリット情報は開示しない、ということも十分考えられます。そこで患者が開示請求を拒否されたときの理由を文書で提供するルールも必要になるでしょう。また、その拒否理由が適正かどうかを、第三者機関などでを審査できるシステムも欲しいものです。
 いずれにしても病院の情報開示が一歩進んだのは事実で、評価したいと思います。

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■ダイオキシン排出量半減/環境庁推計

 環境庁のダイオキシン排出抑制対策検討会は25日、大気中などに排出されるダイオキシンについての初の発生源別リストを公表しました。それによると98年の大気への排出量は2,900〜2,940グラムで、同時に算出した97年の排出量6,330〜6,370グラムに比べ約55%と半減したようです。これは廃棄物焼却炉の排出規制が97年12月に強化されたのが大きいと見られます。
 しかし21日に明らかになった国連環境計画(UNEP)初の報告書では、日本の排出量が最高(3,981g)で、2位の米国(2,744g)の1.5倍、欧州11カ国の中で最高のフランス(873g)よりも桁違いに多くなっています。報告書は1995年前後に発表された国の調査や研究論文などを基に、ダイオキシンとジベンゾフランの大気中への年間排出量をまとめたものです。
 他の国では、ベルギー(661g)、英国(569g)、オランダ(486g)、ドイツ(334g)、カナダ(290g)、スイス(181g)、オーストラリア(150g)、ハンガリー(112g)、スロバキア(42g)、デンマーク(39g)、オーストリア(29g)、スウェーデン(22g)となっていて、いかに我が国の排出量が突出しているかが分かります。
 環境庁のデータで昨年度が前年度に比べ半減したといっても、多くの国では1995年頃のデータでも500グラム以下となっており、日本のダイオキシン対策の遅れは隠せようもありません。報告書によれば、ごみの焼却などに対する規制が強化された結果、排出量が減少傾向にあることが明らかになったとしています。元々埋め立てごみの多い欧米諸国に対し焼却ごみの多い日本では、他の国よりはるかに厳しい規制が必要なはずです。そのためにはまず、全排出量を1,000グラム以下にするくらいの努力が必要だと思います。

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■車のアイドリング停止で逆効果?/警察庁の試算

 警察庁科学警察研究所は4日、駐停車時に自動車のエンジンを止める「アイドリングストップ」を都市部で信号待ちの際に行うと渋滞が起き、一定区間での車1台当たりの二酸化炭素(CO2)排出量が3.2倍に増えるとの研究結果を発表しました。 警察庁は「信号待ちや渋滞時に行うと、発進遅れが急加速につながり、安全面からも好ましくない。荷物の積み下ろしや人待ちなど、おおむね1分以上駐車するときに行うのが適当」とドライバーに呼びかけています。
 この研究結果はテレビニュースでも紹介されましたが、少しおかしなところがあります。つまり信号待ちの先頭車両は青信号になった時点でエンジンをかけ、2台目以降は前の車の発進時点でそれぞれエンジンをかけるというシミュレーション条件です。アイドリングストップで停止しているドライバーが青信号になってからエンジンをかけるというのは考えにくく、「そろそろ始動した方がいいかな」とクロス側の信号が黄信号になればエンジンを始動すると思われます。また2台目以降の車も前の車が発進してからエンジンを始動するというもの考えにくく、前方の信号が青になれば始動するものと考えられます。警察庁が考えるよりもドライバーはスムースな車の流れを考えているものです。どうやら警察庁は渋滞の発生を恐れるあまり、シミュレーション時に複数の条件を最悪のケースに設定した結果を発表したようです。
 環境庁は「一律には言えないが、運転者の判断で例えば1分以上の停止が予想されるような場合に考えてみてはどうか」と弱気なコメントを述べています。発表されるデータは通常、作成者の意図が反映されるものです。膨大なシミュレーションの中で、今回のような特定の条件のデータを公表したというのは警察庁の意図が見えます。したがってCO2の排出をできるだけ少なくするための方策を検討している環境庁としては、警察庁のシミュレーションがどの程度信頼性があるのか、実体にあったものなのかを検証をしなければなりません。しっかりして欲しいものです。

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