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1999.8 No.68  発行 1999年8月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
インターネットでは主な記事を紹介します。

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■首都高の安全管理大丈夫?/鉄ぶた飛び、標識落下
■ジュースの異物でけが/マクドナルドに賠償命令
■屋根裏に収納したストーブでぼや/電波で自動点火?
■チャイルドシート用保護カバーを回収/トミー
■まだまだ続く医療事故/徳島、愛知、宮城
■取り違えを防ぐ薬液充填済み注射器/各社の動き
■「核兵器製造でがん」/米政府認める
■生鮮食品全てに原産地表示など/改正JAS法成立
■野菜のダイオキシン汚染測定法開発/新手法で高い値に


7月のニュースから

■首都高の安全管理大丈夫?/鉄ぶた飛び、標識落下

 今年4月、東京都江戸川区の首都高速7号線で側溝(排水溝)の鉄ぶたが跳ね上がり、走行中の車を直撃し運転していた男性が死亡した事故で、建設省は21日、茨城県つくば市の同省土木研究所で再現実験を行いました。実験では、ふたが穴にはまった状態でも上を自動車が走行すると浮き上がって外れるほか、ふたが路上に投げ出された状態では跳ね上がって反転したりすることが確認されました。
 首都高速道路公団は死亡事故発生後、鉄ぶたが飛んで車のバンパーなどを壊した事故は過去5年間に3件と説明していました。ところが28日、警視庁交通捜査課などの調べで同様の鉄ぶたが外れて飛ぶなどした事故は、過去10年間に20件も発生していたことが分かりました。このため同課では適切な安全対策をとらなかったことが今回の死亡事故につながったと見て、業務上過失致死容疑で公団の刑事責任追及に向けて担当者の事情聴取を続けています。
 一方6日午前7時すぎ、東京都目黒区青葉台3丁目の首都高速道路3号線下り車線の側壁に設置されていた非常電話の案内標識の鉄柱が折れ、下の国道246号に落下するという事故が発生しました。標識は走行中の乗用車を直撃し、フロントガラスが割れボンネットが大破しましたが運転していた男性にけがはありませんでした。警視庁高速隊の調べでは、落下したのは非常電話や非常待避所などを示す3枚の標識を取り付けた約5.3メートルの鉄柱で、公団によるとこの鉄柱は今年1月23日、震災対策として停電しない案内標識を導入した際に取り替えたばかりだったといいます。
 公団が7日に調査したところ、このポールを含む42本がメーカーのミスで公団の基準より薄い鉄板で作られていたことが判明しました。公団の基準では単柱式の標識のポールは、高さが4.8メートル以上のものは厚みを8.1ミリにするよう定めていますが、今回落下したポールの厚みは6.6ミリしかありませんでした。このため同じ型式の326本を調べたところ、41本が基準を満たしてなくこのうち5本には亀裂が入っていました。これら基準外のポールは全て大阪市の「丸一鋼管」が製造し、今年1月に東京の設備工事会社「道路エンジニアリング」に納入、同社が首都高3号線と4号線に設置したものでした。メーカーでは「発注を受けた際、基準を間違えて製造し、出荷時の検査でも見落として納入してしまった」と話しています。公団では品質検査は行っていなかったといいますが、設備工事会社での受入検査も行っていなかったのでしょう。いい加減というよりも品質を考える必要性を感じていなかったようです。もちろん公団が安全や品質を軽視していることが最大の誘因であると思います。
 ところで首都高速道路公団に限らず、一般に公団から受注する業者は、関連会社や特定の指定業者に偏ることが多いようですが、このような発注体系が努力しない施行業者の品質軽視の体質を助長しているようです。地方自治体でも特段の理由もなく入札をせず、随意契約で特定の業者に発注することがあります。権力を誇示したい発注元(わいろの温床?)がある限り、安全軽視の工事は無くならないのでしょう。

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■ジュースの異物でけが/マクドナルドに賠償命令

 日本マクドナルドが製造・販売したオレンジジュースを飲んだ際、異物がのどに刺さりけがをしたとして、名古屋市の女性(29)が同社を相手取り40万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日名古屋地裁でありました。野田武明裁判長は「女性の傷は混入した異物が原因と認められる。飲料は通常有すべき安全性を欠いており、PL法上の欠陥があった」として、同社に対し10万円の支払いを命じました。
 判決によると、女性は98年2月、昼休みに勤務先近くの「マクドナルド伊勢町通店」で「ダブルチーズバーガー」を購入し勤務先でオレンジジュースを飲んだところ、異物が刺さる痛みを感じ出血、嘔吐したため近くの診療所で診察を受けたところ「咽頭部に傷が付いている」との診断を受け、2日間自宅静養をしたものです。判決理由で野田裁判長は「ジュースを飲んだ直後に傷を負っていることなどから、傷の原因は混入した異物」と認定、「製造工程を検討すると異物が混入する可能性は否定できない」とし、「製造工程上、混入はあり得ない」とする同社側の主張を退けました。その上で「異物が何かは分からないが、混入の事実が明らかである以上、飲料の欠陥の判断には影響しない」と述べました。 今回の判決は女性が飲んでしまったと思われる異物が何であったか、またそれが製造工程上混入する可能性があったかの過失責任を追及するのではなく、ジュースを飲んだためにけがをしたという事実から「飲んだジュースに欠陥があった」と認定しています。非常に分かりやすい論理で、PL法の趣旨が生かされた好例だと思います。

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■チャイルドシート用保護カバーを回収/トミー

 車のチャイルドシートの義務化に伴いチャイルドシートや関連商品が多く販売されているようですが、トミーは7日、今年2月から発売した自動車のチャイルドシート用保護カバーを回収する、と発表しました。回収対象は「トミーベビー おひさまガード」「ポケットモンスター おひさまガード」の2商品です。この保護カバーは車内のチャイルドシートを太陽の熱や紫外線から保護する商品ですが、車内が高温になるとチャイルドシートの金属部分が熱くなり、子供がやけどをする可能性があると判断したため回収を決めたものです。同社によると、6月中旬に「子どもがやけどを負った」という消費者からの苦情があり、夏場に入ることもあり今後の事故防止を考えて対処したとしています。
 炎天下に駐車中の車の車内は非常に高温になることは、スプレー缶が爆発する事故があるなどよく知られており、カバーを掛けていてもチャイルドシートは車内温度と同じになることは常識でしょう。直射日光をさえぎることを最大の機能として開発したため、車内の高温下でシートの金属部によるやけどまで考えていなかったのでしょうか。安全性の検討は、少々お粗末であったような気がします。
 2商品は6月末までに約3万4,000個を出荷、流通在庫分は今月始めから回収しています。消費者が購入した商品については、着払いでトミーに送ると商品価格と消費税分を返金するとしています。問い合わせはフリーダイヤル(0120)103143です。

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■取り違えを防ぐ薬液充填済み注射器/各社の動き

 テルモは薬液をあらかじめ充填した状態で販売する注射器を開発し、来年から発売する予定です。海外ではすでに同様の注射器が出回っていますが、薬品の取り違え事故防止に役立つことから今後病院の業務合理化と共に採用するケースが増えてきそうです。今回開発した注射器は点滴溶液の成分を調節するビタミン剤やぶどう糖液などを充填したもので10品種程度を発売することにしています。この注射器では点滴溶液が詰まった袋の口の部分に注射器の針先を差し込み、薬液を袋に注入するだけで済みます。このため薬液が詰まったアンプルから注射器で吸い上げる作業がなくなり、薬品の取り違え事故の軽減に効果がありそうです。
 また米系医療用具メーカーの日本ベクトン・ディッキンソンでは、福島市内に新工場を建設し同様の注射器を来年4月から日本で生産、国内製薬企業向けに製品を供給することにしています。
 安全性向上のためにいいことです。できれば病院内の保管管理状態を考慮して、各病院からのラベリングや容器色のオプションが設定できるといいでしょう。医者が自ら薬品容器を確認、薬液を取り出し患者に注射する場合より、単に物(注射器)を移動する人の安全マネージメントに注意する必要があります。

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■生鮮食品全てに原産地表示など/改正JAS法成立

 日本農林規格(JAS)法の改正案が15日の衆院本会議で可決され、2000年春に施行される予定です。これにより現在任意表示のため、あいまいさが指摘されている有機農産物については、農薬および化学肥料を3年以上使用していない農地で栽培され、第三者の認証を受けた場合にのみ「有機」表示ができることになります。このシステムが適切に運用されれば、「わら1本入れたから有機栽培」というような犯罪まがいの表示は減ることでしょう。また現在ゴボウ、タマネギなど9品目に表示義務のある原産地表示は、全ての生鮮食品に義務付けられることになります。小売店が正しい表示?をしてくれれば、品質情報が増えるので期待できます。
 ただ市場では偽ブランド米など虚偽の表示が溢れていることから、違反者防止のための改善命令や罰則を厳格に適用する必要があります。しかしパックされた生鮮食品トレイのラベルを貼り替えることが「加工」になるとの都合のいい解釈で、売れ残りの商品に新しい日付表示をすることもあり、生産者・流通・小売店を含めた関係者のモラルは期待できそうにありません。
 消費者が商品の鮮度(細菌、大腸菌数)やDNA鑑定など、低料金で手軽に調査ができる食品品質調査システムが必要になるでしょう。民間の調査会社が多く参入し、消費者個人が疑わしい食品を評価できる社会が望まれます。

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