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1999.11 No.71  発行 1999年11月12日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
インターネットでは主な記事を紹介します。

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■臨界事故のJCO、国の安全審査に不備?/原子力行政の問題浮かび上がる
■コンクリ片落下/開業から2年の長野新幹線
■山陽新幹線でまたコンクリ落下/北九州トンネル
■トンネル内の岩が崩落/JR飯田線で列車接触
■危険だった米の空/最低高度警告システムに問題?
■キロ、マイルの混用で探査機事故
■2000年問題で4カ国からの退去許可/米国務省
■11月から都立病院でカルテ開示/全国の自治体で初
■中途解約者に受講料全額返還/青山きもの学院


10月のニュースから

■臨界事故のJCO、国の安全審査に不備?/原子力行政の問題浮かび上がる

 茨城県東海村で起きた日本で初めての臨界被ばく事故では、核燃料加工会社のJCOの単純なミスが明らかになり、安全管理のずさんさに関係者のみならず国民にも大きな衝撃を与えました。電力需要の観点から原発の必要性を頭では理解しつつも、95年の旧動燃(現・核燃料サイクル開発機構)・高速増殖炉「もんじゅ」事故および97年の旧動燃・再処理工場で起きた火災爆発事故、そして今回の事故と2年に1度の大事故で原発システム全体への不信感は増幅しています。
 しかも核燃料サイクル開発機構の新型転換炉「ふげん」のくらげによる緊急停止、東京電力の柏崎原発復水器トラブル、日本原子力発電敦賀2号原発の1時冷却水水漏れ事故、東京電力福島第1原発での冷却配管のひび、関西電力高浜2号機の復水器の海水漏れ、「ふげん」の重水漏れ事故、九州電力玄海原子力発電所1号機の復水器海水漏れなど、この4カ月間だけでも多くの事故が発生しています。
 原発関連のニュースでは、ハード的な問題に加え人やシステムの問題が指摘されてきましたが、今回の事故で改めて考えさせられました。これまで「大丈夫だろう」と人任せにして、原発および原子力関連事業の安全性に対しては積極的に知ろうとしなかった国民も、今後の原子力行政について深刻に考えざるを得なくなりました。今回の事故の背景として、JCOを監督すべき国の安全審査が問題視され始めました。
 科学技術庁は旧動燃の再処理工場火災爆発事故後、原子力施設の安全点検を実施しましたが、JCOに対しては書類審査をしただけで問題ないと判断、施設への抜き打ち検査の対象にもしていなかったことが7日分かりました。同庁では、JCOの抜き打ち検査を行わなかったことについて「疑うべき合理的な理由がない」として対象から外したというのですが、疑わしい施設だけを検査することの非合理性が分かっていないようです。日常的に各施設の状況を把握しているのならまだしも、施設側の提供した過去の書類や情報だけで合理性は判断できるものではありません。同庁では“検証”という認識が欠落しているようで、現場を見ない単なる審査では、データの信頼性などを把握することは不可能です。したがって同庁の審査基準は、何か事故を起こさなければ検査対象としない、つまり住民に被害が及んでから事に当たろうとするシステムでしかないようです。ここに原子力行政の基本的な誤りが見られます?
 また、国の原子力安全審査指針そのものに不備があった可能性も出てきています。JCO東海事業所が83年11月、濃縮度の高いウランを新たに扱うため事業許可の変更申請を出した際、科学技術庁の審査後、原子力安全委員会の核燃料安全専門委員会が84年4月に「安全性は確保し得る」との判断を下していました。これまで同事業所のようなウラン濃縮度の高い施設を扱う指針がなかったため、審査会では一般的な「ウラン加工施設安全審査指針」を参考に審査したといわれています。この指針は、「臨界が起きない」という前提に立っているもので、万一臨界が起きたときの対策に関しては「考慮を要しない」と規定しています。このことから原子力安全委員会の判断も当然問われなければならないでしょう。京都大学原子炉実験所の小林圭二助手は「ウランの濃縮度が高くなればなるほど臨界に対する安全管理が重要になるのに、具体的な規制指針がなかったことが事故につながった一因ではないか」と話しています。
 どうも監督官庁の安全に対する危機管理の無さが企業を甘やかす結果になり、今回の事故が誘発されたように感じられます。ただ、今回の事故を契機に原発の必要性を問う意見が多く聞かれるようになり、その結果第三者が納得のいく安全性や、システムを維持管理するマネージメントの妥当性について国民が知る権利を持つことが再認識されれば前進です。原子力行政では被爆国であるという一面からか、不安をあおらないための取り扱いが正しい情報を国民に提供してこなかったように思えます。原発と共生するための原子力行政の基本は、情報の開示であり、「事故は必ず起きる」という視点での危機管理システムの構築を行い、国民の不安に「なぜ安全といえるのか」を丁寧に説明していかなければならないでしょう。

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■コンクリ片落下/開業から2年の長野新幹線

 8日午前2時20分頃、群馬県松井田町の長野新幹線一ノ瀬トンネル(安中榛名−軽井沢間・6,165メートル)下り線を作業員が巡回中、レール外側にコンクリート片が落ちているのを見つけました。コンクリ片は長さ約20センチ、幅約4〜8センチ、重さ約200グラムで、コンクリートの接合部がある天井から落下したものです。 この個所は、山陽新幹線福岡トンネルで6月に起きた崩落事故の「コールドジョイント」ではなく、トンネルの施工時にできる打ち継ぎ目部で、微妙な亀裂が拡大し欠け落ちたもののようです。
 開業からわずか2年ほどしか経っていない長野新幹線でコンクリ片が落下したことに、JR関係者はショックのようですが、利用者からは「なぜなんだ」という疑問も出てきそうです。地震などの災害時にコンクリート製の構造物が壊れるのは理解できるものの、経年変化による劣化がこれほど早く出るとは考えにくいものです。同トンネルでは2週間に1度、トンネル内を徒歩で巡回検査していて、コンクリートの接合部分も、通常の検査項目に入っていたのですが、これまでの検査では「表面にはひびがなく、ノーマークだった」といいます。
 このことから現在の定期巡回検査では、このようなコンクリ片の落下を未然に発見できるものではないということなのでしょう。表面にひびがなければ何も検査しないというのが、はたして妥当かどうか気になるところです。事故を未然に防ぐためには、兆候だけを確認する消極的な検査だけでなく、定期巡回検査数回に1回は打音検査を行うなどの見直しが必要でしょう。

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■山陽新幹線でまたコンクリ落下/北九州トンネル

 9日午前4時10分頃、山陽新幹線小倉−博多間の北九州トンネル(北九州市八幡東区、長さ11.7キロ)で、長さ334センチ、幅40センチ、重さ226キロのコンクリ塊が5つに割れて線路わきに落下しているのが始業前点検で見つかりました。
 福岡トンネルの事故後、JR西日本では山陽新幹線の全14個所のトンネルで約2,000個所のコールドジョイントを発見し緊急補修工事を実施しましたが、今回の崩落事故はコールドジョイントとは別の原因の「打ち込み口」と呼ばれる突起部分で起こりました。今回の緊急補修工事での重要点検項目ではなかったために、事前に発見できなかったと思いたいのですが、どうもそうではないようです。この個所は2年に1度の定期検査で7月に目視点検を行い、異常はなかったとしていましたが、崩落したコンクリ塊の断面には一部茶色に変色した部分がありました。同社でも「コンクリートの浮きが前からあった可能性がある」と考えていることから、現状の定期検査の方法に問題がありそうです。
 また、事故現場から東京司令所に事故の第一報が届くまでに約1時間もかかり、その後も幹部への連絡にとまどり午前6時前にようやく全線運行停止を決定しました。このときすでに始発から8本の列車が発車した後で、幸い新たな事故はなかったものの、安全確認のない路線に乗客を送り出す結果となりました。6月の福岡トンネル、9月の停電事故のときの同社内の情報連絡は混乱を極めたと指摘されていますが、今回も何ら改善はなかったということです。
 ところが今回の「打ち込み口」にひびが入っていた個所は、今年7月17日の定期検査で発見されていたのにもかかわらず、そのまま放置されていた事実が14日、明らかになりました。ひび割れを発見した作業員がその部分を「Cランク」と判定し、打音による検査も行わずに放置したものです。しかも同社幹部は北九州トンネル事故直後にこのひび割れの事実を把握していたものの、一切公表はしませんでした。同社のずさんな検査体制と、それに輪をかけたような安全運行の責任の無さが改めて浮き彫りになった形です。
 同社幹部は「劣化状況は社内データなので公表しなかった。隠す意図はなかった」と釈明しましたが、隠す意図があったから公共交通機関に求められる情報開示をしなかったことは明白です。まったく…何とかならないものでしょうか、JR西日本は。

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■トンネル内の岩が崩落/JR飯田線で列車接触

 17日午後3時55分頃、長野県下伊那郡天竜村のJR飯田線伊那小沢−中井侍の小沢トンネル(長さ393メートル)内で、天竜峡発豊橋行きの普通列車の運転士が異常音を聞き、列車を緊急停止させました。JR東海によると、トンネル側面から崩れ落ちた岩が、列車の前部の排障機(線路上の障害物をはねのける装置)などに触れたといいます。 現場は天井部分はコンクリート張りで、側面は素堀で岩盤が露出していて、列車の進行方向に対し右側面の内壁が高さ1.7メートル、幅3.7メートル、厚さ0.7メートルにわたって崩れ、岩の総重量は約2トンにも上るものでした。
 側面の岩盤が露出したトンネルは急峻な地形を走る飯田線には29個所もありますが、他の路線ではほとんどなく、山陽新幹線福岡トンネル事故後の緊急点検でも天井部分のコンクリート部の点検だけを行い、岩盤の側壁は点検していなかったといいます。運輸省は18日、素堀トンネルについても点検するよう鉄道各社に指示しました。

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■2000年問題で4カ国からの退去許可/米国務省

 米国では海外における2000年問題によるコンピューター誤作動を懸念しています。特に厳冬期の旧ソ連4カ国(ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ)では、電気などのエネルギー供給が停止する恐れのあることから、4カ国の必要要員を除く米大使館員や家族に対し、新年を前に任地を離れて国外に出る許可を出しました。これと同時に旅行者や在住者向けの渡航情報では、影響の程度が明らかになるまで4カ国への旅行延期や退去を促しました。
 米国では政府主導で着々と対応が進んできているようですが、我が国政府も29日、2000年問題に関して高度情報逓信社会推進本部(本部長・小渕恵三首相)を開き、年末年始に当たっての国民向け留意事項を正式決定し、発表しました。30日の主要紙朝刊に政府公報として大きく掲載されていましたので、見た方も多いと思います。年末まで後2カ月というこの時期の発表のため、国民の過剰な反応を配慮し「チェックすることをお奨めします」などのおとなしい表現となっています。必要性を感じたら事前の準備をする、という自己責任の観点では「お奨めします」は「してください」と置き換えるのがいいでしょう。
 お風呂に水を張ってトイレ用の水を確保するなど、政府発表を機にそろそろ個人用チェックリストを作り年末に備えた方がいいかもしれません。

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■11月から都立病院でカルテ開示/全国の自治体で初

 病院のカルテ開示はいくつかの病院で始まり、国立大付属病院でも今年2月にガイドラインを策定し3年以内の実施を予定しています。また日本医師会も来年1月から「診療情報の提供に関する指針」の実施を決めています。このような状況のなか、自治体の動きも出てきました。東京都は4日、都内に14ある都立病院を対称に患者が求めればカルテなど診療目的に作成された書類を原則開示するガイドラインを策定し、11月1日から実施することにしました。全国の自治体の中では初めてのことだといいます。
 患者にとってカルテに記載された内容が難解であることも考慮し、希望があればカルテと別に分かりやすく説明した要約書も交付するとしています。開示される情報はカルテ、看護記録、処方内容、検査記録やエックス線写真などで、10年間保存している全ての診療情報となっています。国立大病院の開示では過去の記録については明記されていなく、医師会の開示対称も来年1月時点からの情報だけとなっています。このことから東京都のガイドラインは一歩進んでいるようです。
 ただ、がんなどの難病で告知が治療効果に悪影響を与える懸念がある場合や、虐待を受けている未成年者の情報を親が請求するなど、関係者の権利利益を損なう恐れがある場合などは情報提供を拒否できるとしています。すでに亡くなった患者の記録については、遺族が求めても対象外としています。
 医師のセカンドオピニオンを得るのも楽になり、患者や家族にとっては歓迎できるものです。病院対患者からの関係から、医師対患者の関係がより分かりやすくなりなるのも良いことでしょう。ただ担当の医師が情報を提供するため、医師により患者への説明方法や接し方が異なることもあるでしょう。できれば専門のコーディネーターを交えて、患者の希望を聞いてくれるシステムが欲しいものです。

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