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2000.1 No.73  発行 2000年1月11日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■データねつ造再発覚、MOX燃料断念/関電、高浜原発4号機
■日航MD11乱気流事故、自動操縦装置に欠陥/運輸省調査委
■危険、厚底靴での運転/交通事故総合分析センターが実験
■市販の腐葉土にレジオネラ菌/琉球大グループ検出
■遺伝子組み換え食品の安全・表示論議
■品質ISOの取得やめます/トヨタ
■家電に省エネ効果表示/通産省、JIS規格改訂
■アトピーの子に宿紹介/アトピッコハウス


12月のニュースから

■データねつ造再発覚、MOX燃料断念/関電、高浜原発4号機

 関西電力は16日、英国の燃料加工会社BNFLで製造されたプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料データに新たにねつ造が見つかったため、輸送された8体すべての使用を断念すると発表しました。この9月に高浜原発3号機用のMOX燃料で発覚したデータねつ造問題にはびっくりしましたが、同原発4号機用の燃料でも同じくデータねつ造が行われていたのです。
 関電では3号機のデータねつ造発覚後英国に人を派遣し、4号機向けは大丈夫なのかを調べて「問題なし」との最終結論を出していました。これを通産省・資源エネルギー庁に提出、同庁も調査結果を追認、「妥当」として原子力安全委員会に報告していました。関電が英国で何をどのように調査したのか詳細は分かりませんが、結果から見る限りお粗末な調査だったのでしょう。それよりも関電の報告を何も検証せず信じた資源エネルギー庁や、原子力安全委員会の問題の方が深刻で、原子力安全行政の無策を感じる国民への説明責任が問われます。茨城県東海村の臨界事故では、科学技術庁が燃料加工会社のずさんな作業を見逃していたことに対し、監督官庁の責任が大きく問われたばかりなのに…。
 さて発覚したねつ造は、検査の単位である燃料ぺレット200個のうち100個分を既に合格した別のデータから流用する単純な手口であったことが分かっています。このデータを入手していた関電は「200個分をそっくりコピーすると考え、100個だけ流用するとは思わなかった」と、まるで子供の言い訳のように述べています。数字の配列を調べれば簡単に分かることであり、監督官庁、関電共に管理者としての基本的な資質が問われる事件でした。
 ところでBNFLがスイスの原発用に製造していたMOX燃料から放射線漏れが起きて回収していたことが23日明らかになっています。環境保護団体グリンピースがスイス政府の原子力安全査察局に確認したもので、BNFLが1996年にスイスの電力会社NOKのベツナウ原発用にMOXを納入したのですが、3ロットから放射線が漏れていることが分かり、BNFLは97年に問題のロットを回収、作り直していました。なにかと問題のある会社のようなので、技術的に問題がなければ他の企業を選択するか、それができないのであれば、定期的な監査の実施を含めたマネジメントの大幅な見直しが必須です。

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■日航MD11乱気流事故、自動操縦装置に欠陥/運輸省調査委

 97年6月に名古屋空港に向けて降下中の日航MD11型機が三重県志摩半島沖で突然激しく揺れ、乗客ら11人が重軽傷(うち客室乗務員1人は99年2月に死亡)を負った事故で、運輸省航空事故調査委員会は17日、「自動操縦とパイロットの操作が複合して激しい揺れが起きた」とする調査報告書をまとめました。自動操縦装置の設計に事故の原因が考えられるため、事故調査委は同日、米連邦航空局(FAA)に対し、製造元のボーイング社が装置を改善するよう勧告しました。日本が航空先進国である米国に勧告をするのは初めてですが、同様の事故は世界で3件発生しており、すでに米運輸安全委員会(NTSB)が5月25日、同じ勧告をFAAに出しています。
 報告書によると、同機は自動操縦で着陸のため降下中、気流の変化で運用上の速度限界(時速675キロ)を超過、機長が速度を抑制しようと操縦かんを引いて機首を上げたところ、自動操縦が解除され機首が大きく上に向いてしまいました。機長は機首上げを押さえようと操縦かんを前後に操作したのですが、手動操作時に機体の姿勢を安定させる「LSAS」システムとかみ合わず、かえって機首の上下を招いたと分析しています。
 勧告では「自動操縦が解除されても、機体の姿勢が急激に変わらないよう設計の変更」、「自動操縦装置の速度制御に関する設計の見直し」、「操作方法についてのパイロットのシミュレーター訓練の充実」を求めています。
 一般に緊急時における人の行動では大きなリアクションが起きやすいので、機械が人間の過剰な動きを検知し、適切にコントロールするようサポートするのが理想です。しかし現在の技術では自動操縦装置とパイロットの操縦との連携がうまくかみ合わないことか多く、同じような事故が繰り返し発生していることを重要視しなければなりまん。勧告でも提案しているように、技術的に設計変更ができない場合は、操縦マニュアルの改定や警報装置での対応が重要になるでしょう。ただ警報装置で適切な人の行動を促すには、技術的なマン・マシンインターフェイスの再評価・開発が必要になると思います。

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■危険、厚底靴での運転/交通事故総合分析センターが実験

 警視庁などが所管する財団法人「交通事故総合分析センター」は6日、厚底靴の危険性についての実験結果を発表しました。これは11月1日茨城県で起きた軽乗用車が道路標識のコンクリート柱に激突、助手席の女性が死亡した事故の運転手が「厚底のブーツをはいていてブレーキが踏めなかった」と話していたことから、急きょ行ったものです。
 実験は20−40代の女性ドライバー9人を対象に、ドライビングシミュレーターを使って実施しました。かかとの平らな運動靴、かかとの高さが8センチのブーツ、同11センチでつま先も6センチの厚さがあるサンダルの3種類の靴をはいて市街地コースを模擬走向した結果を比較したものです。時速60キロで障害物が画面に現れた場合、ブレーキを踏むまで平均時間は、運動靴では0.61秒かかったのに対し、ブーツでは0.62秒、厚底サンダルでは0.66秒かかりました。ブレーキを踏んでから停車するまでの平均距離は、運動靴で29.64メートル、ブーツで29.95メートル、厚底サンダルで30.65メートルとなり、靴によって1メートル強の差が出ています。また人によっては運動靴と厚底サンダルでは停止距離が2.8メートルも違った結果となったといいます。
 厚底靴をはいて不安定な姿勢で歩いている人を見かけますが、その靴のまま車を運転する人も多いのでしょうか。困ったことです。クルマで運転する際には、たまにはく靴でもアクセルやブレーキの踏み加減が変わり、ペダルと床に靴の一部が引っかかることがあります。最適でない操作状況下での車のコントロールでは、運転経験がものをいいますが、それよりも何事につけても「危うい感じ」を持つ感覚(センス)が鈍っていることが問題だと思います。しかし事故を起こす彼らを「危険な機械を操作するための心構えがない、未熟である」と簡単に片づけてはならないでしょう。実のところ彼らは「資格を持った免許保持者であり、事故はドライバーの問題である」とし、快適なクルマのイメージを前面に展開、安全運転啓発を積極的に行わないメーカーの販売戦略の犠牲者かもしれません。ドライバー本人が自損事故で傷害を負うだけならまだしも?、同乗者や事故に巻き込まれる他車にまで被害を拡大する交通事故では、莫大な利益を得ているメーカーの社会的責任を拡大して考える必要があるでしょう。
 もちろんメーカーにも言い分があり、クルマの安全対策は十分行い、車の運転技術向上のための施設や教室などを開催していることなどを挙げるでしょう。しかし、末端の販売店で厚底靴の客への応対で、「その靴で運転すると危ないですよ」など助言するセールスマンは、どのくらいいるのでしょうか。ほとんどいないような気がします。

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■市販の腐葉土にレジオネラ菌/琉球大グループ検出

 ガーデニング愛好者にレジオネラ肺炎が多発したオーストラリアでは、腐葉土中からレジオネラ菌が広く検出されているようです。このたび琉球大学医学部第一内科(斉藤厚教授)などのグループが実施した調査で、日本でも土壌や淡水中に生息し吸い込むと肺炎を引き起こす恐れのあるレジオネラ菌の一種が初めて検出されました。日本では1996年、この菌が原因の肺炎で造園業の男性が死亡しましたが感染源は不明のままで、同グループでは腐葉土が原因の可能性があるとみて調査を行っていました。調査は国内4都市の園芸用品店で、カシ、ナラなどの落葉広葉樹からつくられた肥料と砂、肥料などの混合土計19袋、腐葉土以外の園芸土13袋を購入して43種類あるレジオネラ菌のうちのどのタイプが含まれているかを調べたものです。
 グループでは調査結果をこのほど米国の臨床感染症誌に報告し、「抵抗力の弱い高齢者や子供らが腐葉土に水をやるとき、舞い上がる菌を吸い込まないように口や鼻を遠ざける必要がある」と注意を呼びかけています。
 24時間風呂で問題視されたレジオネラ菌ですが、健康な人がすぐに感染するというものではなく、一般土壌にはさまざまな細菌が存在していることを思うと過剰に恐がる必要はないと思います。ただ最近のガーデニングのブームではきれいなイメージが先行したファッション的要素も多いので、「土はきれいなものではない」ということは承知すべきでしょう。アパートやマンションなどで、鉢物の植え替えを狭いベランダや部屋の中で行う人は注意する必要がありそうです。

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■遺伝子組み換え食品の安全・表示論議

 消費者が食品に遺伝子組み換え原料が使用されているかどうかを気にしていることから、食品の選択判断を助けるねらいの「使用」「不使用」表示の基準は、11月に農水省が日本農林規格(JAS)法の品質表示基準案を公表し、2001年4月からの正式導入する見通しとなっています。しかしこの基準は「組み換え原料不使用」表示の食品であっても遺伝子組み換え原料の混入が許され、しかもその混入上限が明示されないものです。大豆やトウモロコシでは厳密な分別管理が難しいこともあり、ある程度の混入は避けられないということは理解できますが、日本語の「使用」「不使用」の対語を解釈すると、「不使用」は“使用していない”意味であることは明白です。まぎらわしい言葉の登場と、メーカーが行う表示内容の信ぴょう性が消費者団体からは疑問視されています。 農水省の動きとは別に、遺伝子組み換え原料の安全性を確保するため厚生省は14日、食品衛生法に基づく「食品・添加物等の規格基準」の改正案をまとめ、2001年4月からの「安全」表示の義務付けを決め、安全審査に合格した遺伝子組み換え食品だけを流通させることにしました。
 品質(安全性)確保に向けての両省の動きなのですが、これら基準改正から実際に流通する食品の品質が確保されるのか大いに疑問があります。メーカーの申告による「使用」表示がないことには厚生省の安全性審査も意味がなく、厚生省の安全審査を通らない遺伝子組み換え作物が混入した「組み換え原料不使用」表示の食品が流通するおそれがあります。
 ただスーパーなど流通関係では消費者の「非組み換え食品」表示の関心の高さから、食品メーカーとの間で今後の対応を模索していて、この対応が注目されます。その結果、販売業者が自社で扱う「非組み換え食品」表示の信頼性を独自に検証するシステムを構築すれは消費者の不安は払拭できでしょう。スーパーなどが行う顧客満足度を向上させる行動が、一部業者の不正をただすことにつながります。もちろん行政や民間団体での市場抜き取り検査が適宜行わればいいのですが、事件が起きないと何もしないような気がします。 ところで遺伝子組み換え作物を開発している米生命科学大手モンサントの英国本部では、カフェテリアで組み換え作物を使用しないことになりました。欧州連合(EU)欧州委員会が10月、遺伝子組み換え作物を使った食品に使用表示を義務付けたため、英国のグラナダ・フード・サービシズは、同社が運営するモンサントの社内食堂では、組み換え作物を一切使用しないことにしたためです。このため「モンサントが自社の組み換え作物から守られている」という矛盾を指摘する声が出ているようです。

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■品質ISOの取得やめます/トヨタ

 トヨタ自動車は8日、「ISO9000シリーズ規格」を今後、本業の自動車分野では採用しないことを明らかにしました。これまで自動車関連ではエンジン工場の下山工場(愛知県豊田市)が96年10月にISO9001を取得しましたが、3年後の99年の継続受診は行わず、今後他工場でも新規に取り組まないことにしたものです。トヨタでは認証に必要な手順が複雑で非合理的であること、認証を取得しなくても海外との取引に特に支障がないこと、などを理由に上げています。
 トヨタでは65年にデミング賞を取るなど品質管理には積極的に取り組んできましたが、数年前からISO9000シリーズの取得企業が増える世界的な動きに加え当時の米ビッグスリーが同規格をベースにQS9000の制度を設け、この規格取得を取引の条件するなど「どんな手順でどう展開するのかを確かめるため」(技術系幹部)に、下山工場で導入したといいます。しかし「この程度のことはすでに実践している」(同)として、これ以降の導入は取りやめることにしたものです。また「世界的に認証機関のレベルに差があり、ISOの取得だけで本当に実力が測れないことも一因」と指摘しています。
 独自の品質マネージメントシステムでISO9000シリーズ規格に頼る必要がなく、かつ取引上のデメリットも生じないトヨタならではの選択だと思います。国際規格と異なる企業独自のマネジメントシステムを客観的に評価できるのであれば、トヨタ以外にも実力ある企業は気になるところでしょう。企業活動を行っているからには内から品質を改善・維持するシステムを構築するのが当たり前で、トヨタのように独自のシステムを客観的に評価して優れている場合には、企業の取り得る選択の幅が広がるということでしょう。外部から要請されて品質マネジメントシステムを作り始める企業では、やはりISO9000規格をクリアしないことにはどうしようもありませんが…。トヨタはまた、ISOでも環境管理の「14000シリーズ」は実効性が高いと評価、会社を挙げ認証取得を進めています。すでに国内全ての15工場と海外14工場の主要拠点で取得したといいます。

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■家電に省エネ効果表示/通産省、JIS規格改訂

 通産省は家電製品の省エネルギー効果をラベルで表示するよう日本工業規格(JIS)の改正を決めました。対象となる製品は、エアコン、電気冷蔵庫、テレビ、蛍光灯器具、VTR、電気冷凍庫の6品目です。省エネ・ラベルは、4月に施工された改正省エネルギー法に基づき、2003−2005年度省エネ目標基準値にどこまで省エネ効果が近づいているかをパーセントで示すものです。たとえば基準値の80%まで達していれば「80%」とラベルに表示、基準値よりも10%優れていれば「110%」と表示することになります。ラベルを貼ることは各メーカーの判断に任されていますが、貼る場合には通産省などの認定が必要になります。このためすでに基準値に達している製品はすぐにでもラベルを貼ることが想定され、追従するメーカーも省エネ製品開発の努力をせざるを得ないことになりそうです。
 国内では省エネ効果に優れたコンピュータ製品の日米共通の省エネ・ラベルはありましたが、家電製品ではこれまで同様のラベルはなく、すでに導入している欧州連合(EU)や米国では、電機メーカーの開発を促す要因にもなっていました。業界内でのけん制から突出した省エネ効果のラベル表示が可能かは分かりませんが、お互いに競い合い優れた製品開発に生かして欲しいものです。

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■アトピーの子に宿紹介/アトピッコハウス

 アレルギー対応製品を販売している「アトピッコハウス」(横浜市中区、後藤坂社長)では、アトピー皮膚炎に悩む子供たちも安心して泊まれる宿を紹介するサービスを始めました。アトピーの原因は卵や大豆などの食材のほか、ダニや化学物質など人によってさまざまで、同社では「症状の悪化が心配で旅行もできない」という親たちの悩みに答えるため、と話しています。
 現在、アトピーの子にやさしい宿として紹介しているのは、長野県の白馬村や原村など4カ所と群馬、静岡県などのペンションや温泉宿の計14件です。それぞれ同社の助言を受けてアレルギー対応食の調理法を学んだり、畳や壁紙を天然素材にした専用室を作ったりしています。宿泊の仲介は無料ということもありこのサービスは好評で、紹介を始めた6月以降全国から800件以上の予約や問い合わせが寄せられたといいます。実際にアレルギー対応製品などを販売していることから、顧客の悩みやニーズに即したサービスを始めたようですが、評価できる取り組みです。顧客をより満足させる品質・サービスの提供が、顧客の増加へとつながることを期待します。問い合わせなどは同社、電話045-241-8812まで。

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終わりに

 コンピューターの西暦2000年問題は、完全を期したはずの原発で表示などのトラブルが相次ぎ対応の不完全さが明らかになりましたが、大きな事故や混乱がなく一安心でした。
ただ一つ気になるのは、通産省ではトラブル発生について「第三者に影響が及んだ、ある程度大きなトラブル」の報告だけを要請し、詳細な情報収集を計画していないことが12月29日に分かったことです。このため、専門家からは「コンピューター社会初の異常事態なのに、問題をきちんと把握することができない」との指摘があります。今後の教訓とするための姿勢がない、「とりあえず被害がなければいい」とするリスク管理の甘さは相変わらずです。

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