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2000.9 No.81  発行 2000年9月11日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■警視庁、リコール隠しで三菱自工本社など捜索/組織的な隠ぺい立件へ
■雪印問題から相次ぐ、食品業界の品質問題
■患者取り違えで肺の一部切除/筑波大病院
■降圧剤誤投与で男性死亡/日大板橋病院
■血しょう投与ミスで患者死亡/山梨厚生病院
■家庭の待機電力年間9,800円/省エネルギーセンターまとめ


8月のニュースから

■警視庁、リコール隠しで三菱自工本社など捜索/組織的な隠ぺい立件へ

 三菱自動車工業のニュースは相変わらず続いていますが、警視庁交通捜査課などが27日、道路運送車両法違反(虚偽報告)の疑いで三菱自工本社や川崎工場など計5カ所を家宅捜索し、関係書類など約1,000点を押収しました。リコール制度が発足して以来自動車メーカーに対する強制捜査は初めてのことですが、日曜日の急な家宅捜索には三菱も運輸省も予期できない不意打ちだったようで、「運輸省の告発を待っていたら、担当者のメモや重要な証拠が散逸するおそれがある」との警視庁の意気込みが伝わってきます。警察の不祥事が続いていますが、今回はその素早さに応援したくなりました。

 折しもダイムラークライスラーの出資・協力関係で、三菱の発言権が大幅に狭められ今後の同社の行方が暗示されます。リスク管理とは人の管理のことでもありますが、今問題となっているのは「社会における企業のリスク」という大前提を無視し、経営者、管理者あるいは担当者の保身的リスク回避がまかり通っている企業のあり方です。企業として忘れてはいけない顧客の利益・安全をポリシーとせずに、エコノミックアニマルまがいの利益最優先の同社には厳しい制裁が必要です。数年前の総会屋事件がまだ記憶に残る中、「日本国社会にとって三菱自工は何であったのか」と考えたくもなります。

 利益優先、目先のリスク管理などがいずれ暴露され、企業の存続に関わるというケースとして、三菱事件は21世紀のこれからの企業のあり方の教訓にしなければなりません。

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■雪印問題から相次ぐ、食品業界の品質問題

 雪印問題がクローズアップした6月末から食品メーカーの回収騒ぎが続いていますが、消費者がクレームをメーカーや保健所などに報告する土壌ができてきたようです。その意味では雪印問題は消費者の自立をうながす絶好の機会だったようです。雪印問題は汚染源の北海道大樹工場の製造日改ざん問題などでさらにその悪意性が強まり、大阪府警の捜査が今後どのように進むのか注目されるところです。ところで福井の酪農家が始めた「雪印百株購入運動」に各地から賛同する声が集まっているといいます。運動の趣意書では「このまま日本最大の乳業メーカーが窮地に陥ることは農業者にとってメリットはない。この問題を機に安全、安心な雪印になってほしい」というもので、1万株購入の目標に対し現在6,000株までめどが付いたようです。雪印社員が聞いたら涙が出そうな運動ですが、消費者としてはどうなのでしょう。

 多くの雪印製品の中で自宅で常に購入するものはどれだけあるのかと確認してみたら、カッテージチーズだけでした。これも、どこでも売っているというだけで、これでなければならないという理由はありません。日常生活で雪印に依存していたわけでもなく、特に困ることはないし、と考えてくると雪印を擁護する理由もなく、醒めた目では「最悪の場合雪印の消滅もやむを得ない」との考えも浮かびます。一部の管理職をすげ替えて雪印の体質が変わるとは思えない、という気持ちもありますし…。

 さて、食品業界の品質問題で回収となったのは、手元の新聞記事の日付で8月2日/デンマーク製生ハムからリステリア菌検出、8月4日/清水食品のミニトウモロコシ缶詰にヤモリの死がい混入、8月9日/キリンビバレッジのトマトジュース缶にハエ混入、8月9日/富山県のアイスクリーム製造業エビスのアイスクリームから大腸菌検出、8月10日/越後製菓のせんべいに針金混入、8月13日/カルビーのポテトチップスにトカゲ混入、8月15日/日本水産の冷凍食品「チャンポン」に異物混入、8月17日/関東協同牛乳の加工乳で異臭、8月18日/山崎製パン千葉工場で食パンに虫混入、8月18日/日本ケロッグのシリアル「フルーツフルブラン」から異臭、8月19日/ヤクルトのジュースにプラスチック破片混入、8月22日/ブルボンのチョコレート菓子に虫混入、8月23日/味の素の冷凍食品「中華丼の具」にプラスチック片混入、8月24日/デルモンテのトマトソース缶にガラス片混入、8月25日/ミツカンの食酢飲料紙パック不良、8月26日/カゴメの野菜ジュース缶にかび発生、8月26日/山崎製パン仙台工場の和菓子やケーキにプラスチック片やゴムの異物混入、8月27日/味覚糖のゼリーにかび発生、8月29日/日清製粉の乾燥麺の賞味期限表示の誤り、8月29日/明治乳業のチーズにゴムの異物混入、8月29日/明治屋のイチゴジャムに異物混入、8月29日/日清食品の即席焼きそばに虫混入と、一気に読むには疲れるほど続きます。これら食品メーカーの衛生管理が突然悪くなることは考えにくいので、今までも同様な品質問題が多くあったと考えられます。

 数年前のことですが、私のところでもプリンに金属かす混入、牛乳に黒いすす混入、漬け物に虫の幼虫付着と続いて事件?が起きました。販売店や保健所に報告しても、商品取り替えと企業からの菓子折程度の反応でしかありませんでした。クレームに対する企業内の衛生管理の見直しなど、行われたという確証がなくわだかまりがあったのですが、食品業界はこんなレベルだったのでしょう。不特定多数の人に商品を売る場合でもクレームした人にだけ対処、という一部のディスカウンターと同じ企業が多かったのですが、最近は回収が日常的に行われることから各企業も神経質なほど回収の対応しています。雪印事件を機に、回収リスク(コスト)を考えた品質や衛生面の厳格な管理が行われるようになることは、歓迎できることです。そういう意味では、雪印は社会に少し貢献したのかもしれません。

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■患者取り違えで肺の一部切除/筑波大病院

 茨城県つくば市の国立筑波大付属病院で7月、2人の患者の検査結果を取り違えて肺がんではない患者に肺がん手術を行い、肺の一部を切除する医療ミスがあり、約3週間たった4日、深尾病院長らが記者会見してミスを公表しました。患者2人は現在も入院中ですが経過は良いとのことです。

 同病院によると、肺がんの疑いのある入院患者2人の肺の組織を採取して調べる検査を6月2日に実施、60代の男性は肺がんで、30代の男性は肺がんではないと診断されました。ところがこの検査結果が取り違えられ、7月4日、肺がんではない患者に対し肺がん手術を行ったといいます。10年以上の経験がある執刀医は取り違いに気付かないまま手術を行い、患者の肺の1〜2割を切除してしまいました。しかし切除した組織からがん細胞が発見されなかったため、7月12日に取り違えの可能性に気付き、同13日、患者に説明、18日に検査結果を取り違えたことを確認したものです。取り違えた原因について同病院では「病理検査の段階で、患者から採取した組織を入れた容器を取り違えた。病理部で容器の患者番号を書き間違えた可能性が高い」と述べています。

 また発表が遅れたことについては「公表に関する患者の同意を得るのに時間がかかったことや、事実関係を全て固めた上で公表したかった」などと述べています。しかし同病院では7月28日文部省に事故について報告し、同省から早期に発表するよう指導を受けていたともいわれるように、病院自ら情報を管理できないお粗末な姿を露呈しています。事故の原因は分からなくても事実を速やかに患者や社会に報告・謝罪を行うことが先決であることがなぜできないのでしょうか。事故原因の究明とその対策および予防措置などのは次の段階で、そこには「なるべくなら穏便に済ませたい」とする保身意識があり、その結果文部省に相談したのでしょう。
この場合「穏便にする」という消極的な態度は、「隠ぺいできるものならそうしたい」と明言していることと同義で、同病院の非CS経営の体質が見えてきます。

 さて困ったことに同病院は、昨年7月、入院中のゼロ歳児が抗生物質のバンコマイシンを過剰に投与され血流障害を起こし、手の指が壊死し片手の指5本を切断していたことが25日になり分かりました。小児科に入院していた乳児は昨年7月メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染し、バンコマイシンの投与を受けましたが、主治医が誤って研修医に10倍もの投与量を指示しました。この過剰な量の投与に研修医も気付かず、そのまま看護婦に書面で指示、誰も誤りに気付かずに過剰投与が行われてしまいました。ところが乳児の点滴漏れのため看護婦が別の研修医に報告、そのチェックの際に投与量の誤りが分かったものです。

 点滴漏れのおかげ?で乳児は3回の誤投与で済んだのですが、点滴が手の甲の皮下に漏れたこともあり血流障害を起こして指が壊死、昨年11月に切断手術を受けました。

 主治医が投与量を誤って伝えたのは「別の体の大きい患者と思い違いをした」ためで、「25ミリグラムを1日3回」のところを「250ミリグラム」としてしまいました。また同医師は口頭で指示したことに対し、「感染の報告を別の病棟で受けたので、口頭で指示をしてしまった」と述べています。それにしても勘違いがそのまま研修医に引き継がれ、看護婦も分からなかったということは、病院全体が「日常行うべき安全のための検証」を行わず、安全を提供されるべき患者のことが完全に無視されています。

 同病院はこの事故を患者への補償問題が浮上した今年7月に初めて文部省に報告、茨城県と同県警には25日になって報告しています。ここでも公表の遅れた理由で「公表が必要とは思っていなかった。隠す気はなかった」と述べ、この病院の無神経さに呆れるばかりです。
高度な先端医療を提供する特定機能病院で8月に2件もの不祥事が発覚したことは、監督省庁の責任も問われます。

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■降圧剤誤投与で男性死亡/日大板橋病院

 東京都板橋区の日大板橋病院で11日、パーキンソン病の男性患者(89)にブドウ糖を投与しようとした医師が誤って降圧剤を注射、患者が死亡する事故が起きていたことが17日分かりりました。同病院では警視庁板橋署に届け出たほか、厚生省、文部省など関係当局に報告したとしています。同病院によると、この患者は7月31日に食べ物が飲みこめないなど体調不良を訴えて神経内科病棟に入院、8月9日からは肺炎も併発していたといいます。同病院ではブドウ糖を投与するなどの治療を行っていましたが、11日未明、当直医師が看護婦にブドウ糖液を用意するよう指示し、看護婦は注射液をナースステーションの処置台の上に置いたまま、病室の見回りに出たといいます。ところがステーション内には他の患者のために別の看護婦が用意した降圧剤入り注射器も置かれていたため、当直の医師が注射器を取り違えたものです。

 「間違えてください」ともいわんばかりの初歩的なミスですが、“もの”の受け渡し作業の責任意識が全くないようです。注射器を準備する者が処置する人間に“確実に渡す”義務が履行されていないのです。これでは看護婦が「忙しい」とする労務管理以前の問題であり、プロとはとてもいえません。

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■血しょう投与ミスで患者死亡/山梨厚生病院

 山梨県山梨市の山梨厚生病院で1月、腸閉塞の手術を受けて入院中の東京都の男性患者(当時70)に、患者とは血液型の異なる血しょうが投与され、2週間後にその男性が多臓器不全で死亡した事故が20日、明らかになりました。

 同病院によると、男性は山梨県内で脳こうそくのリハビリ中に起きた腸閉塞で、昨年12月に同病院に入院、同24日に手術を受けたものです。その後多発性脳こうそくから腎不全を併発、治療のための血しょう投与を行っていましたが、1月20日、誤ってA型の凍結血しょうを投与してしまいました。男性の血液型はAB型でしたが担当の外科医師(35)が投与伝票に血液型をA型と誤記入したために起きた事故です。付き添いの家族が容器にA型と記載されているのに気付き、看護婦に知らせたのですが予定投与量の20%に当たる80ミリリットルがすでに投与されてしまった後でした。

 直後に実施した病院による血液検査では投与ミスによる拒絶反応など悪影響がなかったことから、同病院では「ミスと死因との関係はない」としています。また堀米副院長は「家族にはミスを説明し了承を得、担当医にも厳重注意し対策会議も開いた」と説明しています。

 死因とミスの因果関係は不明ですが、お粗末な話です。担当の外科医師が患者に投与する血液を誤記入したのですが、どこでも起こり得るミスでしょう。それよりもシステムとしての問題が重大で、患者の氏名と同じく重要な血液型情報が管理されずに、投与伝票を受ける薬剤オーダー部門、血液バック出庫部門、患者への装着者のうち、誰も気付かないで放置していたということになります。検証無き業務というのか、意識レベルの緊張感が異常に低い病院です。

 不幸にしてこのような病院と付き合う場合、付き添い家族は細かなことでも疑問に感じたら臆せず、すぐ看護婦や医師に問い合わせることが大事でしょう。品質を自ら維持する能力のない病院ですから…。





 医療事故が相変わらずニュースをにぎわしていますが、三菱や雪印と同じようにここでも「患者がお客さんである」という認識欠如の、利益優先体質が見えてきます。
顧客の信頼を得るためのCS経営が未熟のことと相まって、医療品質に関わるシステム・人のマネージメントが製造業のそれと比べてレベルが低いことも事態を深刻化させているようです。大病院でも頻繁に起こる医療過誤は、当分続くのではないでしょうか。

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■家庭の待機電力年間9,800円/省エネルギーセンターまとめ

 通産省の委託事業を受けた省エネルギーセンターは2日、家電製品の待機時消費電力調査をまとめました。調査結果によると、家庭での待機電力は年間1世帯平均で398キロワット時で、電気料金に換算すると9,800円に上ることが分かりました。この電力量は家庭での全消費電力の9.4%にあたり、テレビの消費電力量と同程度ということです。

 調査は首都圏51世帯での実測調査(実測機器955台)と、全国933世帯へのアンケートを組み合わせて推計したものです。待機消費電力の最も大きい家電製品はビデオデッキの96.6キロワット時(待機消費電力全体の24.2%)で、ガス給湯器49.4キロワット時、オーディオコンポ49.2キロワット時、ファックス付き電話機23.6キロワット時、テレビ21.1キロワット時と続いています。

 20年ほど前からかタッチ式(電子式)の軽いスイッチが採用され始めましたが、電源スイッチでも製品の電源を元から機械的に遮断しない、製品の機能動作を遮断する電子式スイッチに変わってきています。当初はラジカセなどでコスト削減のために採用されてきたのですが、最近では多くの電気製品でこの仕組みになっています。これら製品の電源プラグをコンセントに差した状態では、ある程度の電力を消費しています。冷蔵庫などのように電源を入れたままにしないと製品機能が発揮されないものはともかく、安全面から製品の電源を完全に切りたい人には困った製品が多すぎます。しかもスイッチ付きのテーブルタップなども売られていることから、消費者は製品メーカーのコスト削減のため、個人でスイッチ付きのコンセントを購入するという、不合理な負担を強いられているようです。またタイマー機能付きの製品はプラグをコンセントにつないだままにしますが、タイマー付きの製品が増えるにしたがい、1つのタイマー情報で全ての製品の時刻が再設定されるものが欲しくなります。

 たとえば電力会社がタイマーシグナルを電源線に重ねて送り、製品側で電源を入れた瞬間に時刻を読みとるようなものも可能だと思うのですが、どうなのでしょうか。最近のビデオデッキではタイマー表示消灯モードも選べるような製品も出てきましたが、電力会社は電力需要を減らすためのアイデアをもっと出して欲しいものです。少し前までは「ムダが美徳」的な風潮があり、“みみっちい”仕草は嫌われたものです。日本は成金タイプの国民性なのか、限られたエネルギーでも「お金を払えばいくらでも使っても良い」、あるいは「法律に違反しなければいい」という考えの人も残念ながらいるようです。それでも省エネは「かっこいいこと」、「当たり前」として市民権を得てきましたので、次のステップとしては無駄なエネルギーを浪費している人が、「恥ずかしい」と思う気持ちを起こさせることでしょう。

 しかしコンピュータのインターネット常時接続という新たな誘惑が用意されるなど、電力消費量はなかなか減りそうにありません…。

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終わりに

 北アルプス・上高地で帰化植物が増えていますが、原因は観光客の衣服にタネが付着して運ばれてきたものと考えられていました。しかし土木工事をした場所で特に種類が多いことから、外から運ばれた土にタネが混じっているのも大きな原因として浮かび上がってきました。

 環境庁が架け替えた田代橋付近でムラサキウマゴヤシやヒメジョオンなど16種、バスターミナル周辺で西洋タンポポ、ハルジョオンなど14種などが確認され、河童橋付近ではシロツメクサが今年初めて生育しているのが確認されました。これらの大半が二年連続で複数見つかっていることから既に繁殖していると思われ、高山地帯の植生への影響が懸念されています。

 多くの企業が環境問題に取り組んでいますが、土木工事を伴う事業の場合、場所によっては工事業者に現地の土を使うよう指示するなど配慮が必要なようです。環境問題では「各因子の何に適して、何の問題がある」ということが分からないまま対策に追われることがあります。特定分野にこだわらず、幅広い分野の知見が必要だということでしょうか。

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