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2000.11 No.83  発行 2000年11月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■太陽光発電不祥事で社長の辞任/三洋電機
■大型冷凍冷蔵庫で扉が倒れる危険性/三洋電機
■開腹手術でガーゼ残し縫合、そして再手術代も請求/仙台の病院
■人工呼吸器の弁の装着ミスで患者死亡/神戸大病院
■輸血ミスで患者死亡/三重大病院
■蛍光灯の安定器破裂で授業中の児童にPCB油/八王子市の小学校
■衝突安全性能にコンパチビリティーの概念/運輸省、法規制化を進める
■昨年度の鉄道不通件数最高/運輸省調査
■100万品目の商品比較/ディールタイム


10月のニュースから

■太陽光発電不祥事で社長の辞任/三洋電機

 三洋電機の米国子会社が生産した太陽電池モジュール2万3,460枚のうち、5,476枚に出力不足があり、子会社の三洋ソーラーインダストリーズ(当時、現・三洋電機クリーンエナジーシステム)が、不良部品の混入を知りながら太陽光発電システムを生産、販売した問題で、同社の近藤定男社長は24日、責任をとり辞任することを明らかにしました。

 近藤社長は、「不良品の出荷は内部告発を受けた通産省・資源エネルギー庁が三洋ソーラーに調査を求めたことから発覚したもの」と説明していたのですが、実際は2年前に近藤社長宛の内部告発文書が出されていたのです。また、利用者団体の「全国太陽光発電所長会」からは、2年前から繰り返し不具合の指摘を受けていたことも22日、判明しました。

 この問題では9月中旬、子会社が「事実無根」と報告したため通産省が再度調査を要求、10月6日になり子会社がようやく事実関係を認めるという虚偽の報告が分かっています。また三洋電機では、責任者である三洋ソーラー会長の萩原稔取締役が5日解任されたときは、「一身上の都合」などと説明、事実を正しく報告するのを避けてきました。このような三洋電機の対応に業を煮やした通産省は23日、近藤社長を呼び厳重注意し、24日の記者会見で平沼通産相は「会社が判断することだが、適切に責任をとることを期待したい」と責任の重さを指摘、これが近藤社長の突然の辞意表明になったようです。

 「全国太陽光発電所長会」では98年10月、近藤社長に直接FAXで出力不足の問題点を指摘、クレーム調査は当時の三洋ソーラー会長だった萩原稔取締役があたりました。同取締役は出力不足を隠して近藤社長に「不良品はなかった」と報告、近藤社長はその報告を信じたまま今年9月の再調査で初めて不良品の出荷を確認したといいます。正しい情報・事実が社長に届かない問題は多くの企業でも抱えていますが、報告の検証を怠った社長の責任は大きいでしょう。

 98年6月に社長に就任した近藤社長は、「社長に就任したとき、部下を信頼するところから始めた。今回のことは考えられないようなこと。こんなことが本当にあるのかという思いだ」と、無念さのにじむ言葉を残していますが、不良部品が不正に販売されたときの顧客の不利益を真剣に考えていればこのようなことにはならなかったと思います。内部告発や外部からの指摘を受けたときのスタンスは、「不良部品の混入があったかもしれない」と考えるのが基本で、自社にはそのような不正をする人間はいないはずだから「不良部品の混入は事実無根に違いない」と、都合良く考えるのは愚かなことです。また、このときに事実を知りながら隠ぺいするようでは話になりません。

 ところで多くの企業では、内部告発を嫌う風潮があるように思いますが、内部告発は不正を見逃せない正義感の強い社員のとる行動でもあります。内部告発が事実かどうかは調査すればすぐに分かるもので、告発する本人も単なる誹謗・中傷などで行うことは少ないと思われます。企業にとっては社内の不正とそれを正す意見をどのように吸い上げるかが問題で、内部告発を上手に生かすことを真剣に考えるべきでしょう。内部告発が事実である場合は、近い将来襲うであろう企業の損失を未然に防いでくれるものであり、内部告発を事実かどうか究明するコストとは比較にならないほど大きいものです。したがってリスクマネージメントの視点からは、内部告発はリスク低減要因であることを認識し、正当に評価する環境を整えることが求められます。とかく不正を指摘する社員は煙たがられ、場合によっては本人に圧力がかかることもあり、このような企業体質は潜在的リスクを増大させるものです。

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■大型冷凍冷蔵庫で扉が倒れる危険性/三洋電機

 三洋電機は27日、1995年2月から96年にかけて製造した大型冷凍冷蔵庫で、扉が倒れる危険性があるとし、販売した約20万台を対象に無料で部品交換を行うことにしました。同社では冷蔵室の扉を勢いよく開けたり、閉めたりした場合に取り付け部の樹脂が破損する恐れがあるとしています。原因は扉が開き過ぎないように留めるストッパーに予想を上回る力が加わり、扉の上部の固定“ピン”が緩み、重量を支えきれなくなると説明しています。

 この冷蔵庫の扉の落下事故は過去88件あり、事故が最初に報告されたのは96年7月で、いままで7人がけがをしています。98年8月に岡山市内の主婦が軽傷を負ったことから、同社では社内調査をしましたが、「偶発的な事故」として片付けていました。その後、国民生活センターなどからの同様の苦情が入り、99年10月から本格的な調査を開始、今年9月下旬に原因を突き止めたといいます。96年に初めて事故が確認されてから、4年間も放置していたことから、三洋ソーラーの事件と関連してグループの顧客無視の姿勢が問われそうです。

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■開腹手術でガーゼ残し縫合、そして再手術代も請求/仙台の病院

 仙台市医師会が運営する仙台オープン病院で8月、60代の女性の開腹手術をした際、腹部内にガーゼを残したまま縫い合わせるミスがあったことが13日分かりました。女性は9月にガーゼを取り出す再手術を受け経過も良好で何よりですが、同病院は再手術について家族に「うみがあるため」とだけ説明しミスを認めていませんでした。

 ガーゼの存在は、手術後の経過でリンパ液などの排出量が多かったために9月6日にエックス線検査をして分かったものです。手術道具などは手術前と手術後で個数など確認するのが一般的なのですが、どうしたのでしょうか。血液に浸かったガーゼが見にくくなることはあるといいますが、複数の医師やスタッフが気が付かないということは、システムや技術的な問題よりも、病院全体に“間違いを犯さないための注意”が欠如していたとしか考えられません。セクショナリズムやマニュアル信奉からか、与えられた仕事しかできない・しようとしない人間が増え、このため能力低下が助長されて与えられた仕事もできなくなっているのでしょう。

 またこの病院では、再手術代も含めた治療費を請求するという、ミスを隠すための工作まがいの不当な要求をしていたといいますから驚きです。家族はいわれるまま治療費を支払っていましたが、事実を知らされない密室での行いをどのように患者に納得してもらうのか、情報開示のあり方が問われます。都合の悪いことが全て隠されてしまう可能性のある手術現場には、患者の希望する第三者の医師が立ち会うなど品質の向上を促すシステムの導入が求められるのですが、封建的な権力志向の医師会主導ではどうなのでしょう。および腰の厚生省にもあまり期待はできないのですが、消費者や患者の人権擁護のためにも何らかの法的な施策が必要だと思います。

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■人工呼吸器の弁の装着ミスで患者死亡/神戸大病院

 神戸大付属病院で、同市内の女性(64)が手術中、麻酔医が人工呼吸器に「ピープ弁」と呼ばれる弁を装着する際、呼気側と吸気側を誤って取り付け、患者が酸欠で死亡していたことが22日までに分かりました。弁を取り付けた女性麻酔医(39)は、業務上過失致死容疑で捜査している生田署の事情聴取に「慣れからくるうっかりミスです」と話しているといいます。

 患者は21日午前零時ごろ、人工血管を取り除く手術を受けたのですが、肺から出血し、呼吸困難になってしまいました。肺の換気改善と出血軽減が必要なことから、麻酔医が患者の呼気に抵抗を加え肺を膨らませるピープ弁を呼吸器の回路に取り付ける際、呼気側に取り付けるべき弁を誤って吸気側の管に装着してしまい、肺にほとんど酸素が入らない状態になったといいます。

 医療用器具・製品メーカーの製品安全の遅れが招いた事故ですが、「プロのベテランでも人はミスを犯すもの」という視点で、フールプルーフ対策を早急に進めてもらいたいものです。プロ用の製品では往々にして安全レベルを下げたり、注意義務全てを使用者に科すことがありますが、いくつもの間違いが発生し、そのために患者が死亡することは許されるものではありません。法律での規制がないので「対応しない、義務がない」というメーカーもあるかもしれませんが、義務という責任は法的な拘束によるものだけではありません。法律や罰則の有無とは別に、企業が収益を得るところの利便性・利益、あるいは社会的使命・道徳に基づくものの概念でもあります。安全対策としてすでに製品を改良しているのならば、無償とはいわないまでも回収・交換の対応も検討してもらいたいものです。

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■輸血ミスで患者死亡/三重大病院

 津市の三重大医学部付属病院で22日未明、出血の続いた男性患者(79)に対し、誤った型の血液が輸血されました。同病院によると男性は腹部の大動脈瘤で9月13日に胸部外科に入院、20日に手術しましたが、術後に重症の肺炎などにかかり呼吸不全がひどくなり内科に移りました。10月20日に気管切開を行った後、出血が続いたため輸血をすることになったのですが、主治医は男性の血液型がO型であるにも関わらずA型だと思いこみ、カルテのチェックも怠りA型の血液を取り寄せてしまいました。しかも輸血する血液の型が適切かどうかを検査する交叉反応の結果も見誤り、男性に22日午前1時ごろ、A型の赤血球400ミリリットルを輸血してしまいました。
主治医らは輸血が終わった同日午前4時ごろ、男性の尿の色から異変に気付き、止血などの処置を行ったものの腎不全で重体となった男性は、3日後の25日午前9時過ぎに死亡しました。

 執刀したのが主治医であることから血液型の思いこみが強固なものであり、カルテなどの確認作業や注意義務を怠ったものと思われます。また交叉反応の結果の見誤りとありますが、注意力散漫としかいいようがありません。日常的に行われる輸血業務のためか緊張感がなかったようですが、カルテに記載されている患者の血液型と異なる型の血液が取り寄せられるシステムにも欠陥があるようです。

 神戸大病院での事故もそうですが、システムが整備されていそうな大学病院での事故が多いのは、不完全なシステムでもそれに頼る慢心さが生まれているのかもしれません。大病院にありがちな問題ともいえますが、システムを生かすための医療スタッフのメンタルを含めたマネージメントの取り組みが急務でしょう。

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■蛍光灯の安定器破裂で授業中の児童にPCB油/八王子市の小学校

 東京都八王子市の市立陶鎔小学校で4日午前10時ごろ、図工室にある蛍光灯の安定器のコンデンサーが破裂、授業中の児童にPCB油が降り注ぐ事故があったことが、5日分かりました。児童にけがなどはなかったのですが、PCBを使った蛍光灯については業界団体が2年前、「長期使用で破損などの事故が起きる可能性がある」と全国の教育委員会に交換を呼びかけていたことから、同校の対応のまずさが問われます。

 八王子市教育委員会は、予算不足を理由に大半の学校での交換をせず、同市教委は「今年の夏休みに約40の小中学校を調査し、来年度に取り換えるつもりだった。すぐに対応すべきだった。児童に申し訳ない」と話しています。

 教育委員会が“蛍光灯を調査する”ことになっていたとありますが、専門家でない同委が蛍光灯を調査して危険の切迫度が分かるとは思えません。しかも2年前の業界の呼びかけに応えなかったことは、経済性を優先し児童の安全を軽視した事実として重く受け止めるべきものです。少し話は違いますが学校や公園での遊具の破損事故について、鉄製のポールの腐食状況は専門家でないと把握できない、との指摘があります。しかし実際は教師などの素人が簡単なチェックで「安全性OK」を出し、それが通ってしまうことが多いようです。日常生活に遭遇するさまざまな場所でも、同じように専門性のない管理者による安全検証が行われていると思うと、我が国の社会の危うさを見る思いです。

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■衝突安全性能にコンパチビリティーの概念/運輸省、法規制化を進める

 自動車衝突安全性能の保安基準は、固定障壁に正面衝突させるフルラップ衝突試験で評価されますが、車体前面の一部を衝突させるオフセット衝突試験もその有効性から今後規制の導入が見込まれています。しかし実際の事故現場の安全性を検討するときには、大きさの異なる自動車同士や2輪車や歩行者との衝突にも配慮しなければなりません。欧米では最近、車高が高いスポーツユーティリティー・ビークル(SUV)の下に乗用車が潜り込んで被害を大きくする例が問題視され、事故に遭遇する全ての人の安全を確保する「コンパチビリティー」の概念が注目されています。このため運輸省でも現実の事故に近い条件での安全性能について法的な基準を作ることにしました。計画では2001年度から3年間で技術的課題の調査を進め、トラックの下部に乗用車が潜り込むのを防止するフロントアンダーラン・プロテクタ(FUP)などの対策技術の効果と、対策による車両開発に与える影響について検証していくとしています。

 トラックのFUP装着や乗用車での歩行者頭部障害軽減ボディーなどはコストの面は別として、メーカーもすぐに対応できると思います。しかしオフロードでの走破性を売りにするSUVのFUP装着は最低地上高が低くなり、また車両重量の増加が走行性能の低下につながることから安全性能との兼ね合いが課題のようです。しかし環境にやさしい車が市民権を得てきたように、環境よりももっと考えるべき“人”に優しい安全な車を増やす必要があると思います。

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■昨年度の鉄道不通件数最高/運輸省調査

 運輸省によると昨年度、自然災害や施設の故障・事故などで電車が止まった件数は、統計を取り始めた1987年以来最高となったことが分かりました。統計によると99年度に全国の事業者で電車の運転が休止したり30分以上遅れた「運転阻害」の件数は、3,536件で前年度より227件多くなっています。これは国鉄が民営化した87年度の約2倍の数字ですが、脱線、衝突や踏切などの事故件数は前年度より12件少ない927件で、これは年々減少しているといいます。

 運転阻害の内訳では車両や線路、電気施設の故障、人的ミスなど事業者側に起因するトラブルが1,532件、自殺や沿線の火災などの外的要因で発生するトラブルは905件で、残りは自然災害で1,099件となっています。

 過密ダイヤもここ数年頭打ち傾向で、鉄道各社もトラブル対策を強化していることから、運輸省では「増加傾向の決定的要因は読みとれない」とし、今後原因分析を進める予定です。

 おそらく人的要因の問題が隠れているような気がします。鉄道施設(敷設線路、橋脚、のり面の固定、雪崩よけなど)のハードの設計や施行ミスなどが自然災害を招いているかもしれません。外的要因であっても、JR中央線が自殺者に好まれることはずいぶん前から知られていますし、そのための対策不備や設備の設計欠陥も考えられます。運転阻害が増え続ける要因には人の問題が多いのように思います。

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■100万品目の商品比較/ディールタイム

 インターネットでショッピングする人が増えてきたことから、ホテルの空き室情報や宿泊料金など、多くの商品比較ができるようになってきました。インターネット関連ベンチャーのディールタイムドットコムは24日、パソコンや家電、食品などの商品比較サイト「ディールタイム」(http://www.dealtime.co.jp/)を開設しました。仮想商店約500店とリンクし、約100万品目の価格や決済方法などの購買条件を比較することができます。希望カテゴリーの中から性能や価格帯などを指定して商品を絞り込むこともでき、特定の商品の購入を検討している人には使いやすいものです。

 取扱商品は現在のところ、パソコン・パソコン関連商品、家電、輸入CD 、洋書など9カテゴリーですが、12月上旬には化粧品や香水、玩具などの取り扱いも始める予定です。 

 テレビショッピングやカタログ販売などの通信販売が、インターネットの普及からより消費者のニーズに応えられるようなサービスにシフトしてきたのは歓迎できます。同社は米国 ディールタイム・ドット・コムの日本法人で、99年6月に商品比較サービスを開始、4,000店舗、500万点の商品を取り扱い、利用者は月間678万人(今年9月)まで伸びているといいます。今後日本での利用者も増えそうです。

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終わりに

 米国ではまれにみる接戦となった大統領選ですが、米大統領の報酬は意外と少ないようです。クリントン大統領の年俸は20万ドル(約2,160万円)で、日本の首相の約半分だということです。この年俸はニクソン時代から30年あまりも据え置かれたままで、米議会は昨年、次期大統領から年俸を40万ドルにする法案を可決しました。1789年に2万5,000ドルで始まった報酬額は、1873年に5万ドルへ昇給したもののホワイトハウスの運営から公私全てをやりくりするため結構大変だったようです。1949年に10万ドルになったころには、ホワイトハウスの使用人の給料や交際費などは別会計になりましたが、大統領になったばかりに借金を作った人も少なくないと言われています。

 権力やお金のために政治家を目指す人も多いのですが、政治家の報酬が少ないのも良いことかもしれません。報酬がが少なければ本来の目的である「国のために働きたい」という人が多く出てきてくれるような気がします。もちろん在職中の活動を評価した上で年金額が大きく増減する制度を導入、やる気を持ってもらうことも必要でしょう。

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