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2001.4 No.88  発行 2001年4月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■電動車いすの安全性は?/国民生活センターが試験

■エコノミークラス症候群/日航、病院の取り組み

■明白な医療ミス、全て公表/国立大病院

■患者に無断で遺伝子解析/横浜市大研究グループ

■燃料電池列車、2010年にも/鉄道総研が計画

■パソコンの電力使用時間のピークシフト/日本IBM

■パチンコ店で環境ISO取得/飯田市の業者

■屋外たばこ自販機撤去、全国初の条例/青森県深浦町


3月のニュースから

■電動車いすの安全性は?/国民生活センターが試験

 国民生活センターでは、最近増加傾向にある電動3 ・4 輪車(電動車いす)のテストを行い、一部商品に手押し時の手動ブレーキや制動機構がないなど、安全性に問題のあることが分かりました。同センターの全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO −NET)に寄せられた苦情相談に、「電動車いすを購入したが、思いどおりに運転できずに転倒した」などの事故も見られたことから昨年7−12月、最高速度が時速6キロ以下の電動車いす8銘柄を対象にテストを行ったものです。また高齢者にとって分かりやすい表示や操作方法となっているかも併せて調査(高齢者モニターテスト)しました。

 報告では、電動車いすを坂道で手押し使用すると自走し危険なため、手動ブレーキあるいは制動機構(一定速度以下にする)のどちらかを装備する必要があるが、テスト対象8銘柄の中には、どちらも装備していないものがありました。一部商品では、アクセルレバーに緊急停止機構などの安全装備がない、装備していても操作に支障がある、下り坂で速度が出過ぎる、停車時・走行時の安定性に問題がある、などの問題があることが分かりました。またアクセルの形態や操作方法は銘柄で異なり、速度の調節が難しいものがありました。

 電動車いすは道路交通法上、身体障害者用の車いすに該当するため歩行者扱いとなり、歩道を走行することができます。また購入時には非課税で、運転免許も不要なため今後も購入者が増加すると思われます。このため、自動車やバイクなどの運転経験のない高齢者が利用することも多く、簡単にしかも安全に操作できなければなりません。ところが電動車いすの一番の機能である、速度調整が使いづらいようなのです。各銘柄のアクセルレバーは、形状や操作方法に違いがあり、親指でアクセルレバーを押すタイプ、ハンドルに手のひらと親指を置き、残った4 指でアクセルレバーを押す、もしくは握るという3 タイプもあるのです。この中で親指で押すタイプはほとんどの人が速度調節がうまくできましたが、他のタイプでは3割以上の人がうまく操作できないという結果に終わっています。歩行障害のある人のためのバリアフリー商品ともいえる電動車いすですが、操作上のバリアがあるのでは困ってしまいます。

 まだまだ完成度の低い商品ですが、車や人の往来のある公道を走る電動車いすが増え続けている現状から、安全性や統一された操作性など、各メーカーは早急に対処すべきでしょう。同センターでは、対象メーカーおよび工業会に対しテスト結果の説明会を実施、問題点などの改善を要望するとしています。また高齢者の安全確保のため、テスト結果を踏まえ道路交通法で定める「身体障害者用の車いす(電動3・4輪車を含む)」の認定基準や電動3・4輪車に関するJIS規格の整備を要望することにしています。

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■エコノミークラス症候群/日航、病院の取り組み

 航空機でのエコノミークラス症候群が話題になりましたが、日本航空では26日から、欧米などへの路線で機内体操のためのビデオ放映を義務付けることにしました。これは今までの体操ビデオを全面改定し、シートベルトを着用したままでできるストレッチ体操やマッサージを紹介しています。またこれら路線では、エコノミークラス症候群に効果のあるペットボトルの飲料水を、4月から旅客全員に配布することにしました。
病院では最近、エコノミークラス症候群と同じ原因でも起きる「肺塞栓」について、予防対策が進んでいます。肺塞栓は患者が動かない麻酔を使った手術中や、術後に起きることがありますが、血栓ができる原因の特定が難しいことから、厚生労働省では手術中や術後の肺塞栓の実態を把握していないようです。しかし医療機関では、「医療側に細心の注意が求められる」と考え、予防策を講じているようです。

 長野県内のある病院によると、数年前に患者2人が手術してからそれぞれ1、2日後、肺塞栓で死亡したといいます。これらのケースでは肺塞栓を起こしやすい高齢者や肥満の患者ではなく原因は不明で、手術中に足などを動かさずにいたこととの因果関係も分からない、としています。しかしこの病院では「予防を図るために、手術中の血液の流れを良くしたい」とし、昨年3月足首周辺に巻き付けて定期的に空気を送り、血液の流れを促す予防機器10台を購入しました。手術を受ける患者全員に、この機械と以前購入した血液の流れを促進するストッキングとを併用し、手術に当たっています。

 長野市民病院でも昨年度中に2台、今月に20台予防機器を導入、松本市の信大病院、諏訪市の諏訪赤十字病院などでも予防策に取り組んでいるといいます。予防機器の輸入販売をしている大阪府の製薬会社によると、国内では現在66大学病院が導入したといいます。

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■明白な医療ミス、全て公表/国立大病院

 医療事故の防止対策を検討していた国立大学病院長会議の作業部会は29日、明白なミスで事故が起きた場合は全て公表することや、患者・家族へのカルテ開示システムの整備などを盛り込んだ事故防止のための最終報告を発表しました。報告では事故の公表が最大の再発防止策になるとし、「結果に影響を与えなくても隠さない」ことを前提に、公表の範囲を@軽微なものを除き明白なミスは全てAニアミスでも、広く知られることで再発が回避できそうな事例など、と定めました。また、診療から投薬までを管理する情報機器の導入や、事故防止の中心的役割を担うリスクマネージャーの設置を求め、事故が起きた場合の対処法まで触れています。文部科学省では、42ある国立大病院の共通ガイドラインとして実施を求めていくとし、人材や資金面での支援も考えています。

 最高裁によると1999年の医療過誤訴訟は638件で過去最高となり、10年前の約2倍に増加している、といいます。この背景には、「患者が医師に全面的に任せるのではなく、対等な関係を持つべきだ」という、患者の意識の変化もあると思います。しかし患者にとっては情報量が圧倒的に少ないため、医療事故では泣き寝入りするケースが多いのが現実のようです。一部の病院ではカルテ開示に積極的に動き出していますが、今回の報告を機にカルテなどの情報開示がより進むことが期待されます。

 最近では消費者の契約に関するトラブル軽減や、品質表示の適正化などの法整備が少しずつ進んできましたが、社会のこのような要請が医療現場にも広がりつつある、ということでしょう。各医療機関では、このガイドラインの取り扱いで「できることはやるが、全て行うことはない」という、都合のいい解釈をするのではなく自らの医療従事者としてのプロフェッションを自覚、真の医療行為を目指して欲しいと思います。

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■患者に無断で遺伝子解析/横浜市大研究グループ

 横浜市立大学医学部第二外科の研究グループは、理化学研究所(理研)と共同で大腸がんの遺伝子研究を進めていますが、昨年春手術で切除された大腸の組織を採取し、患者に無断で遺伝子を解析していたことが28日までに分かりました。

 同大によると、理研に派遣した30代の大学院生が水戸市内の病院に昨年春から非常勤医師として勤務、その間大学院生は患者から切除された大腸がん組織やポリープの一部を、「患者にがんの検査に使う」と説明して冷凍保存、その後理研に持ち込み遺伝子を解析した、というものです。大学院生は25日、第二外科の教授に無断採取した試料を使っていたことをうち明け、「大学の試料では、データがうまく取れなかった」と話したことから事件が発覚したものです。

 遺伝子情報は被験者の将来の病気の可能性も含む非常に高度な個人情報で、その取り扱いについては患者への十分な説明と同意が求められるものです。そのため理研と同大が結んだ研究契約書でも、使用する試料(サンプル)について、同大付属病院の手術患者に使用目的を説明した上で、文書で同意を得られた場合にのみ採取する、と定められていました。解析結果の一部は昨年秋の日本癌学会でも発表されていたことから、同大では調査委員会を設置して詳しい経緯を調査中で、文部科学省も調査に乗り出しました。

 昨年起きた旧石器発掘ねつ造事件には驚いたものですが、分野を問わず利害や売名行為を最優先する研究者が多いように感じてしまいます。官僚の機密費横領事件から明らかになった国会議員の外遊先でのカジノ・酒場での接待に使われた機密費の問題、富山医科歯科大薬学部教授の研究費横領など、金と利権に群がる人のニュースが後を絶ちません。我が国ではこのようなモラルの欠如した“守銭奴”、いわゆるエコノミックアニマルがあふれているのでしょう。このような国でモラルに期待することを前提とした約束事やルールなど、何の意味があるのかと考えてしまいます。「ここにごみを捨てないでください。法律により罰せられます。」という立て札を設けるところほど、その前にあふれるごみの山、が象徴するように「法律で罰せられる人が極端に少ないことを皆が知っているからではないでしょうか。このことは我が国でモラルという言葉の抑止力が無くなっている、ということです。モラルに期待できない、いわゆる罪の意識を感じない人には、罰則の強化が効果的ですが、国や行政といったルールを作る側が自己への批判を恐れるあまり、改善が進みません。増税という国民全体に影響のある法律が簡単にできるのであれば、不正・不法行為を行う企業や個人もどんどん罰して欲しいものです。不正を許すことは、経済のマイナス要因であることを認識すべきです。

 さて理研のケースで問題を考えてみたいと思いますが、倫理審査委員会では研究方法などを審査したといい、その際研究グループは計30点の試料について、全て同大付属病院の患者のものとしてカルテや同意書を添付した報告書を提出したといいます。同大の審査はずいぶん甘いもので、理研も報告書の有無が大事なためかその内容の信頼性については積極的に審査しなかったのかも知れません。嘘で隠し通せる形骸化した審査システムになっているようです。性善説が好まれる、といわれる日本人の場合、「人を信じる」という一見良い姿?をとることで、自分の弱みも擁護しているのでしょう。そして楽にシステムを構築したい、という省エネ思考で努力を渋ることから、まともなシステムにならないのでしょう。

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■燃料電池列車、2010年にも/鉄道総研が計画

 鉄道総合技術研究所は燃料電池を動力源にした列車を開発することにし、2001年度から3年間で調査や試作をする計画です。現在JR北海道やJR九州などで稼働しているディーゼル機関車では、発煙・騒音問題やメンテナンスに電車の2倍以上の人手がかかっているため、2010年頃をめどに実用化を目指すとしています。ビルや家庭用、そして自動車での燃料電池利用の研究・開発は進んできてますが、さらに鉄道利用での研究が進むことで、基本技術の集積・応用に弾みがつきそうです。燃料電池の自動車利用では、燃料を補給するスタンドの基盤整備が欠かせませんが、鉄道では効率的に燃料スタンドが設置できるメリットがあります。

 現在のところ、鉄道で利用するためには長距離運転での耐久性、コストなどの問題があるようですが、鉄道総研では将来、出力500キロワットの個体分子型の燃料電池を2車両に1台搭載するとしています。

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■パソコンの電力使用時間のピークシフト/日本IBM

 日本アイ・ビー・エムは22日、電力会社や電池メーカーと共同で、パソコンの電力使用時間のピークシフトを進める研究を4月から始めると発表しました。夏の13時から16時にはエアコンの使用で電力需要がピークとなることから、パソコンの使用電源をバッテリーに切り替え、電力使用量を抑えると同時に、安い夜間電力などで充電するシステムです。同社ではパソコンの電力需要は2000年で約90万キロワット、2005年で約178万キロワットの増加が見込まれるとしています。発電所では軽負荷時には天然ガスなどのクリーンエネルギーを使い、ピーク時には石油や石炭などを使っています。このため情報機器の電力をピークシフトすることは、環境負荷の低減効果も期待されます。

 今年の夏から、東京電力、関西電力、三洋電機、松下電池工業の4社と協同で実証試験を行い、10月までにその効果を明らかにする計画です。具体的には、ノートパソコンにパワーマネージメントソフトを組み込み、パソコンの操作者が気付かないうちに自動的に電源を切り替えるようにする、というものです。充放電を毎日繰り返すことから、電池メーカーと電池のサイクル寿命を長期化する研究に取り組むとしています。同社では2005年にはあらゆる情報機器がピークシフトを前提に製品化されるとし、ノートパソコンだけでなく、デスクトップパソコンやプリンターなど周辺機器を加えたシステムとして商品化していく計画です。

 企業内LANやインターネット常時接続の普及もあり、パソコンの電源を常に入れておくことが増えています。電力需要のピークシフトは現在の電力事情を考え抜いたもので興味深いものですが、パソコンの消費電力削減やネットワーク上のサーバーの強化と端末の簡素化などで消費電力を抑えることも大事です。また充電バッテリーには寿命があることから、廃棄物としてのバッテリーの問題、リサイクル・リユース技術のさらなる研究が望まれます。

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■パチンコ店で環境ISO取得/飯田市の業者


 長野県飯田市内のパチンコ店8店舗を抱える「ダイエーグループ」は30日、ISO14001の認証を取得しました。同グループでは99年7月に社内で開いた環境問題のセミナーを機に、20代前半の若手社員から店内のごみを分別しようとの声が上がり、各店が競うように取り組み始めたといいます。昨年3月には各店の焼却炉を全廃し、各店1人ずつの環境リーダーを選出して活動を進めてきました。全日本遊技事業協同組合連合会によると、パチンコ業界で環境ISOを取得したのは全国初という快挙のようです。

 製造業からサービス業、自治体へと取得が拡大している環境ISOですが、パチンコ店での環境配慮の取り組みは評価できます。次々に新店舗ができる国道沿いの郊外パチンコ店などをみると、とかく「儲けているだけ」という見方をしがちですが、「結構やるものだ」と感心します。たばこをやめてからはほとんど近寄らなくなったパチンコ店ですが、最近は空気清浄機を導入したり内装などで女性客でも楽しめるスポットとして利用されつつあるようです。若い店員の自発的ともいえる活動が盛り上がったようですが、職制で認証取得を進めるときの反発などはそれほど無かったのかも知れません。自分の仕事量が増えることよりも、顧客のため、地域のため、というサービス業としての必然性を感じさせるものです。

 ところで中小の会社や小売店、農業関連事業者・農家では進んでいないように思われる環境ISOですが、無農薬・無化学肥料などの生産・販売や、安心できる食品を提供する立場なのに環境問題に消極的では困ります。「安全・安心」、「環境にやさしい」という表示が店頭で増えていますが、安全を売るのであれば、生鮮品の廃棄物の処理など環境配慮を実践してもらいたいものです。「パチンコ店でもできるんだ」ということですから…。

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■屋外たばこ自販機撤去、全国初の条例/青森県深浦町

 青森県深浦町議会は12日、未成年の喫煙防止を目的に、屋外のたばこ自動販売機の撤去などを定めた条例を賛成多数で可決しました。条例は4月1日に施行され、たばこ自販機を屋外に設置している業者に180日以内の撤去を求めています。同町福祉課によると、たばこ自販機の撤去を定めた条例は全国でも初めてのことといい、同議会の青少年への思いが伝わるようです。業者や土地所有者の利害があるため及び腰になるのが通例の行政ですが、同議会の決議には拍手を送りたいと思います。田舎に限らず多くの町村では、「議員は名誉職」といった考えが多く、村や村民のために何ができるのかが問われないことが多いようです。議会制度と行政との関わりを初心に返り見直し、自分たちが将来に何を残せるかを考えることで、名誉職と思っている彼ら議員達の意気込みも変わってくるのではないでしょうか。

 昨年9月に平沢町長が条例制定の意向を表明したことから今回の制定となったものですが、町内のたばこ販売店で作る販売協議会は「死活問題だ」として条例制定に反対、全国各地のたばこ販売組合からも条例制定を思いとどまるよう要望書が町に寄せられたといいます。将来にわたる国民、とりわけ青少年への健康被害を省みることのない業界・業者のたばこ利益への執着には嫌悪を感じる人は少なくないでしょう。この条例を機に、関係各者は「利益を得るために許される社会正義」というものを真剣に考えて欲しいものです。

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終わりに

 米軍偵察機と中国空軍機の衝突問題が連日報道されていますが、えひめ丸のその後のニュースが減ってしまいました。事実関係が明らかになっていない中でのマスコミの沈静化には少々不満です。森総理が総理就任直後の大相撲千秋楽で優勝力士に賜杯を手渡したのですが、その“くれてやる”的な態度の映像に驚いたものです。それが中継放送以外では放映されなかったことと同じような“統制”を感じます。自由主義社会といいながら、マスコミ各社の独自ポリシーはないのでしょうか。

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