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2001.5 No.89  発行 2001年5月11日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■東海大病院と示談成立/内服薬点滴で女児死亡事件4

■トンネル内事故の補修費高すぎ、当初より150万円減額/日本道路公団

■携帯電磁波で集団訴訟/米、日本企業など相手に

■航空機での携帯電話「オフ」守られず/航空振興財団調査

■口蹄疫の感染源はいまだに不明/政府研究室?軍の残飯?

■家畜焼却でダイオキシン大量発生/口蹄疫の新たな問題

■ダイオキシン基準の570倍/東京・大田区の土壌で検出

■医療ミス防ぐ取り組み/医療IT化の動き

■母親が就労しても子供の発達に影響なし/国立精神・神経センター調査

■「ダメな職員」例示/長野県飯田市


4月のニュースから

■東海大病院と示談成立/内服薬点滴で女児死亡事件

 神奈川県伊勢原市の東海大病院に入院中、内服液を誤って静脈に点滴されて死亡した女児の両親が19日、厚生労働省内で記者会見し、病院側との示談が成立したことを明らかにしました。この事故では看護婦が栄養チューブに入れる薬を点滴チューブに誤って入れたのが原因で、点滴チューブと栄養チューブの太さが全く同じことが事故を誘発したものと指摘されていました。このため厚生労働省と医療機器業界は昨年8月、点滴チューブと間違えないような栄養チューブの統一規格を作成、安全対策を具体化していました。この対応に父親は「ミスを認めない医療機関が多い中、謝罪して再発防止に勤めている病院の対応はある程度評価できる」とし、示談成立に進んだ背景を語っています。

 医療過誤の問題では、病院側が訴えを恐れるあまり事実を公表しないなど、過度の情報コントロールをするため、かえって患者側の気持ちを逆なでするケースもあるようです。患者や家族にとり、当初は怒りがあるものの「済んでしまったことは取り返すことができなく、それはそれ相応の賠償で納得するしかない」と考えるものです。その段階で病院側の真摯な謝罪と事実関係を明らかにした再発防止策の説明、などが有効なのですが、病院側の応対の悪さから訴訟に発展するケースが多いようです。

 このことから東海大病院の対処は満足のいくもので、患者と病院双方にとって良い結果になったようです。また同病院の地域での信頼度にも貢献したと思われ、ミスを福?に転じるリスクマネージメントが機能したとも考えられます。医療現場ではミスを認めることを前提とした「ヒヤリハット」報告が始められていますが、患者への事実の開示を含めた情報提供につながらなければなりません。人のミスはいつか必ず起きるものであり、その後の対処と再発防止など、リカバリーが重要であることをあらためて感じます。

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■トンネル内事故の補修費高すぎ、当初より150万円減額/日本道路公団

 高速道路で事故を起こし、トンネルの内装板などを壊したため約520万円の修理費を請求された福井市の車両運転手が、修理費の見積もりがが実際よりも高いとして、公団に約220万円の不当請求の確認を求める裁判を起こしていました。ところが公団が請求額を当初より約158万円も下げた約362万円としたため、原告側は11日までに訴えを取り下げました。

 事故は昨年9月、福井県内の北陸自動車道で起きたもので、公団から運転手には見積額約520万円の修理費が請求されました。運転手はこの見積額が高すぎるとして独自に事故鑑定人に依頼・調査したところ、約298万円で修理できることが分ったため提訴したのですが、公団は今年3月、「内装板などを確認した結果、再利用できるものが多かったため実際に工事をしたら安くなった」として約362万円を正式に請求してきたといいます。原告代理人は、「提訴後に請求額がこれほど下がるのは不自然で、不当請求を認めたのも同然」と話していますが、その通りだと思います。

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■携帯電磁波で集団訴訟/米、日本企業など相手に


 医携帯電話を利用したため電磁波で健康被害にあったとして、米国の患者らが日本メーカーを含む携帯電話関連企業を相手取り、訴訟を起こしました。この集団訴訟は、巨額の損害賠償や悪影響を防ぐヘッドホンの無料提供などを求め、20日までにニューヨーク州などの裁判所に提訴したものですが、携帯電話の電磁波での大規模な集団訴訟は初めてと見られています。損害賠償額は明らかにされていませんが計数十億ドルに上ると見られています。

 携帯電話は直接耳に当てることから、脳への距離が極端に近いこともあり健康被害を懸念する声が多くありました。現在は健康との因果関係は分からない、つまり影響はない、という企業よりの判断に偏っているようですが、今までもたばこや環境ホルモンの問題など、健康被害に結びつくかどうかの判定には長い時間がかかってきました。「生体への影響が無い」とは断定できない携帯電話の電磁波問題は、環境ホルモンによる生体への作用と似ているようで、放出量の問題だけでは解明できないかも知れません。裁判でどのような判断が出るか興味がありますが、いずれにしても気になる人は疑わしきは使わない、あるいは使用頻度を少なくする、などの自己防衛策が賢明でしょう。

 被告には米国NEC、米国ソニー・エレクトロニクス、北米三洋電機、米国松下電器の日系4社の他、米地域通信最大手のベライゾン・コミュニケーションズ、長距離・国際通信スプリントの携帯電話部門スプリントPCSなどの通信会社も含まれている、と伝えられています。

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■航空機での携帯電話「オフ」守られず/航空振興財団調査

 携帯電話の電磁波が航空機の電子機器を誤動作させる恐れがあるとして、各航空会社は搭乗前に乗客に携帯電話の電源を切るよう自粛を求めていましたが、このルールが守られていないことが航空振興財団調査委員会の調査で分かりました。

 同委員会では96年度から電子機器の航空機への影響調査を始め、羽田−伊丹、羽田−関空の2ルートで測定機器をジャンボ機の客席に設置し、航空機の飛行データの記録器と連動し電磁波を検出した時間と位置、高度が分かるようにしました。99年度から2年間の計22フライトのデータを検証した結果、携帯電話が地上局とつながったときに出る一定の周波数帯の強い電磁波を約30回検出したといいます。このうち1回は、高度約1万メートル付近を飛行中で、その他は高度3,000メートル以下でした。

 同委員会では「航空機の機器に電磁波が及ぼす影響は実証できていない」としていますが、航空機の電気系統の誤動作の際に乗客の携帯電話の電源が入っていたケースなどの報告から、「高度1万メートルで電磁波が検出されたことも問題だが、離着陸態勢の高度3,000メートル以下が航空機の運航上最も危険なとき」として注意を促しています。また日航では「搭乗の前後に携帯電話の電源を切るよう求めているが、直接一人ずつ確かめるわけにもいかず現状ではこれで精一杯」と話しています。

 金属探知器でナイフや銃などの危険物をチェックしている航空会社ですが、携帯電話だけでなく携帯電話風の強力な電磁波発生器を犯罪者が持ち込む危険性についても無防備のようです。客室や荷物室を電磁波キャンセラーなるもので完全にシールドできればいいのですが、難しいのでしょうか。航空機業界では「お願い」で安全確保ができるとは考えていないでしょうが、最近のように単に欲求を満たすためだけの、実験をするかのごとき手段を選ばない犯罪傾向を考えると、このままで良いのか少々不安に感じてしまいます。

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■口蹄疫の感染源はいまだに不明/政府研究室?軍の残飯?

 英国で発症した口蹄疫は2月末から爆発的に広がり、最近ではようやく収束に向かっているようですが、イギリスで約1,400件、ドーバー海峡を渡りオランダで26件、やフランスでも2カ所で見つかっています。感染源は特定されていませんが、15日付の英紙サンデー・エクスプレスによると、英国の感染症の専門家ハラシュ・ナラン博士は「口蹄疫は政府の研究室が感染源」と指摘しています。博士は「世界中で英国だけで大流行していることは、研究室からの流出を示すものだ。現在の状況は1980年代にバーミンガム研究所から天然痘ウイルスが流出した際と酷似している」と警告しています。また同紙は口蹄疫の発生が確認される約2カ月前に南西部ウィルトシャーの政府研究所から口蹄疫ウイルスの入った試験管が紛失、何者かによってばらまかれた可能性を報じています。少々極端な原因説ですが、英国の苦悩が見えるようです。

 ところで29日のサンデー・タイムズは、口蹄疫の最初の感染源が、英軍が使用した輸入肉の残飯である可能性がある、と報じました。今回の口蹄疫汚染は、残飯を豚の飼料としていたイングランド北部の一農場から始まったとされ、同農場に残飯を供給していた中華料理店などが疑われていたものです。同紙によると、この農場に残飯を供給していたことを国防省担当者がこのほど認め、感染源の根拠として軍で使う肉の半分以上は安価な外国産で、口蹄疫感染があったウルグアイなどからの肉も含まれていたと指摘しています。

 このようにまだ感染源が特定されていませんが、英保健省当局は23日、「口蹄疫に感染した疑いのある男性が見つかった」とショッキングな報告をし、公衆衛生研究所で緊急調査をしていることを明らかにしています。英国では過去、1966年に農機具セールスマンが口蹄疫に感染した例が1件だけあるといい、同研究所のニコル博士は「動物から人間への感染はごくまれで、人間から人間への感染例はない」としています。

 事実関係はまだ分かりませんが、人の抗体能力の差があることから、人によっては鳥やほ乳類の持つ病気に感染することは十分考えられ、気になるところです。

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■家畜焼却でダイオキシン大量発生/口蹄疫の新たな問題

 さて食品問題として関心のある口蹄疫問題ですが、英国では処分した家畜の焼却でダイオキシンが大量に発生していたことが分かり、新たな問題となっています。英国政府では、感染した家畜に加え周囲3キロ以内では健康な家畜も処分するよう指示していますが、家畜は射殺されたあと通常、枕木やタイヤの上で灯油をかけて数日がかりで焼却されるといいます。このため約50万頭を焼却した4月上旬までに、ダイオキシン63グラムが発生したことが政府系機関の調査で明らかになりました。これは英国の主要工場の年間合計排出量の70%にもなる量で、今後も家畜焼却を続けるとこれを上回るのは確実視されています。緊急事態のため、通常要求される焼却炉の使用や埋め立てなどの手段はとられてきませんでしたが、健康被害を懸念する住民らの反対で焼却をやめる地域も出てきているようです。

 英国は島国のため近隣諸国へのダイオキシンの影響はないと思いますが、フランスでは英国人観光客がウィルスを持ち込むのではないかと懸念する酪農家もいることから、EU各国間にできた溝は簡単には埋まらないようです。

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■ダイオキシン基準の570倍/東京・大田区の土壌で検出

 昨年9月、高濃度のダイオキシンが検出された東京都大田区大森西4丁目の下水道工事現場周辺の土壌から、新たに1グラム当たり57万ピコグラムのダイオキシン類が検出されていたことが19日、都環境局の調査で分かりました。都によると1グラム当たり1万9,000ミリグラムのPCBなどが検出されたとしていますが、問題の土壌がコンクリートやアスファルトなどで覆われているため、人体には影響ないとしています。

 現場周辺に以前あった化学工場などが絶縁体などに使っていたPCBを廃棄した可能性が高いとみられていますが、行政がPCBの保管を事業者任せにしていた弊害によるものでしょう。過去にもテレビや新聞などで報じられたPCB管理のずさんさですが、住民に大きな不安を与え続けていることは“行政品質”の悪さとしか言いようがありません。

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■医療ミス防ぐ取り組み/医療IT化の動き

 東京・新宿の国立国際医療センターでPOSシステムを利用した意欲的な試みが始まりました。医療行為発生時点情報管理システム(POAS)といわれるもので、医師や看護に個人識別した携帯情報端末(PDA)を配り、注射や点滴、内視鏡検査などの医療行為ごとにデータが蓄積されるものです。患者の手や薬剤にはバーコードが付いていて、誰がいつの時点で処方したのか、また誰がいつどの薬剤を投与したかがデータ化されるといいます。

 薬剤の誤投与などのケアレスミス防止には効果があると思いますが、電子カルテシステムが導入されている病院が少ないことから、多くの病院に普及するには時間がかかりそうです。食品業界では商品ごとにバーコード表示が標準化されてすでに10年ほど経つといわれていますが、なぜか医薬品業界では薬剤にバーコードをつけていないため、病院側がいちいちバーコードを薬剤に貼り付けなければならないなど、使い勝手が悪そうです。また貼り付ける際のミスも当然考慮すべきで、問題がありそうです。

 さて経済産業省が2000年度の補正予算で行うプロジェクトに医療分野の地域ネットワーク補助事業があります。これは規模の大きな中央病院と周辺にある複数の医院など、地域の医療機関同士をネットワーク化し、その間で電子カルテをやりとりできるようにするものです。事業費を全額補助することから予想外の反響があり、最終的に採択候補に選ばれたのは26件でしたが、全国からの応募件数は169件にも上り担当者を驚かせました。

 病院の効率化と医療ミスを防ぐ目的からも、今後各病院でのIT化が進んでいくのでしょう。患者の識別票(リストバンドなど)やICラベル添付のカルテ、診察券などからの電波を病院内に張りめぐられたアンテナで受信するシステムで患者本人を識別するものなど、技術的な進歩はめざましいものがあります。ただ病院はお客に対する医療行為を行う場所なので、個人の血圧や体温の常時観察ならまだしも、行動パターンを把握することが監視になるやも知れず、ソフトの問題にも注意したいものです。

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■母親が就労しても子供の発達に影響なし/国立精神・神経センター調査

 昨年9月、高濃度のダイオキシンが検出された東京都大田区大森西4丁目の下水道工事現場周辺の土壌から、新たに1グラム当たり57万ピコグラムのダイオキシン類が検出されていたことが19日、都環境局の調査で分かりました。都によると1グラム当たり1万9,000ミリグラムのPCBなどが検出されたとしていますが、問題の土壌がコンクリートやアスファルトなどで覆われているため、人体には影響ないとしています。

 現場周辺に以前あった化学工場などが絶縁体などに使っていたPCBを廃棄した可能性が高いとみられていますが、行政がPCBの保管を事業者任せにしていた弊害によるものでしょう。過去にもテレビや新聞などで報じられたPCB管理のずさんさですが、住民に大きな不安を与え続けていることは“行政品質”の悪さとしか言いようがありません。

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■「ダメな職員」例示/長野県飯田市

 職員の資質向上のためいくつの市で定めている人材育成基本方針ですが、長野県飯田市では各課や支所の代表で委員会を作り検討した結果、職員が興味を持って読んでもらえるよう「ダメな監督者と部下」を具体的に例示することにしました。同方針によると、ダメな監督者は「自分を意味のない忙しさに追い込み、部下とのコミュニケーションギャップを広げる」「上司から指摘を受けると受け売りで部下を注意する」などで、ダメな部下は「仕事に自信が出てくると、世の中のことを全て悟ってしまったかのように勘違いする」「職場の人間関係の問題を上司のせいにし、上司と意志疎通を図る努力をしない」など辛らつな内容となっています。人事課によると「文献からの引用もあるが、ある程度庁内の現状も反映している」と話しています。興味ある取り組みですが、「ダメさ」加減を本人と上司・部下で評価し、その結果を半年ごとに集計、人事考課などに反映するというのはどうでしょう?…。

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終わりに

 家電量販店では最近、「他店より安い、他店のチラシよりさらに安くします」などよく見かけます。しかし格安ではないのに「他店より安い」などと表示しているケースもあるようで、公正取引委員会が大都市に店舗を持つ家電量販店6社に不当表示に当たる恐れがある、と警告を出しました。毎日徹底した価格調査を実施している店もありましたが、実際には他店より高い商品も多くあるなど、表示に惑わされない方がいいようです。最近増えてきたオープン価格では、商品の機能・デザインと価格に対する絶対感覚的なものを身につけれる必要がありますが、難しいものです。確かに「○○店で19,800円で売られていたため、本日から当店では17,800円で販売します」という表示は説得力があります。○○店にいって確かめようなどとは思わないし…。

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