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2001.7 No.91  発行 2001年7月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■京福電鉄正面衝突で25人重軽傷/人為ミスの疑い

■国土交通省、自動車に新安全基準

■フォード、ファイアストン問題で車両の安全性調査も/米下院公聴会で

■PCB汚染の魚で学習能力の低下/米大学の共同研究チームまとめる

■未承認の遺伝子組み換え原料菓子相次ぐ/カルビー、ブルボン

■小型電子機器など生産者に回収義務/東京都、石原知事検討表明

■カナダでも「マイルド」表記禁止/たばこ会社各社に指導


6月のニュースから

■京福電鉄正面衝突で25人重軽傷/人為ミスの疑い

 24日午後6時過ぎ、福井県勝山市の京福電鉄越前本線保田ー発坂間で、京福電鉄の福井発下り急行電車と勝山発の上り普通電車が正面衝突し、両電車の乗客ら計25名が重軽傷を負いました。勝山署によると、事故があったのは勝山市鹿谷町にある第一踏切付近で、急行電車の到着を待ってから発坂駅を出発するはずの上り普通電車がポイントを通過し、単線区間に進入したものです。国土交通省中部運輸局との現場検証の結果、信号系統は正常に作動していたことが判明、普通電車の運転手による人為的ミスが疑われています。7月の最新の報道によると、発坂駅で待避しないで発車した原因として、同駅ではラッシュ時に1日に2回しかすれ違いがないことが指摘されています。すれ違いは福井寄り3つ目の越前竹原駅で多く、そこでは1日に27回あるといいます。このため運転手が「発坂駅でのすれ違いはない」と勘違いし、信号が赤であったことも見逃して運転していた疑いが濃厚となっています。現在重傷で入院中の運転士が回復すれば詳しい事情が明らかになると思いますが、人為的ミスは確定的でしょう。

 運転手は、「発坂駅では出発時間になれば通常通り発車するだけ」とし、「信号が赤であるはずがない」という意識が働いていたのでしょう。見えるはずの信号が見えない、つまり視覚には赤信号が目に入っているのですが、それが「進入禁止である」という論理的なつながりがなくなっている、いわゆる“思いこみ”の怖さをあらためて感じます。

 ところで京福電鉄では昨年12月、永平寺線でブレーキ故障の電車が暴走、越前本線に進入して正面衝突、26人の死傷者を出した事故があったばかりです。ブレーキロッドの破断、ということが点検で見つけられない、という保守点検能力が問われたのですが、今回の事故では運転士の点呼などは行われていたのでしょうか。「信号青」と言いかけたところに赤信号が見えれば躊躇すると思うのですが…。

 昔のJRの単線区間でのすれ違いでは、タブレット交換をする安全システムがあり、運転手から渡されたタブレットがないとポイントの切り替え作業が出来ないようになっていました。今回も急行列車からのタブレットがなければポイントが切り替えられず、したがって普通電車も出発することが出来ない仕組みであれば事故はなかったのでしょう。しかし経営の効率化が優先されしかもATSやATCが導入できない中小私鉄では、運転士の判断に安全を全て委ねるような問題のあるシステムとなっているのでしょう。「京福電鉄には恐くて乗れない」という利用者の声も聞こえてきますが、「人間は必ずポカミスをするものである」という前提に立ち、乗客の安全を確保してもらいたいものです。

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■国土交通省、自動車に新安全基準

 国土交通省は22日、新たに6項目の自動車安全基準を設けると発表しました。新安全基準では、死角に入った子供らが事故に巻き込まれるのを防ぐ運転席の「視界確保」、歩行者をはねた際の歩行者頭部を保護する「衝撃吸収ボンネット」、ブレーキをかけていることが分かりやすい「ハイマウントストップランプ」、トラックに追突した乗用車の潜り込み防止のための「後部バンパー装着トラックの拡大」、大型トラックが時速90キロを超えないようにする「速度制御装置の装着義務」、乗員保護のための「オフセット全面衝突試験」の基準を設け、新車に順次適用する方針です。同省では衝撃吸収ボンネットと、運転席の視界確保を乗用車やRV車に義務付けるのは、世界で初めてのことだといっています。

 確かに衝突時の乗員保護の安全装備は充実してきましたが、ぶつけられた歩行者への安全は立ち後れていました。衝撃吸収ボンネットは一部のメーカーでは従来から導入されているもので、我が国でも本田技研工業が1997年の軽自動車の規格拡大に合わせて安全基準を見直した際、車のボンネット部をへこみやすくするなどして、歩行者にぶつかった際の衝撃を吸収する構造を新たに開発、全車種に導入しました。

 また今回の新安全基準には含まれていませんが、「フロントガードバー」などの不要な車の突起物についての危険性も、今後の検討課題として欲しいものです。「フロントガードバー」の危険性については、オーストラリア消費者協会の雑誌「チョイス」が94年6月、カンガルーバーを装着した日本製ワンボックスカーにはねられ死亡した被害者の負った傷について分析結果を紹介していました。これは被害者の傷に疑問を持った検死官とメルボルン工科大学とのコンピューターシミュレーションの共同分析で、「バーは被害者の頭をむちのようにしならせて、フロントガラス下のエッジにぶつけさせている。バーの付いているワンボックスカーは、バーのデザインのいかんに関わらず、歩行者と衝突すれば頭部と骨盤に損傷を与える」というものでした。
このニュースが翌年のJAFの機関誌にも紹介されたことから、我が国でも歩行者の安全確保についての議論が高まってきました。三菱自動車工業が96年7月に発売した「チャレンジャー」ではオプションのフロントグリルガードを、強い衝撃が加わると後方に倒れるものにし、カタログにも「ガードパーツではありません」と記載するなど徐々にではありますが歩行者安全についての対応が進んできました。単なるデザイン的なもののために危険度が増すのは納得しがたいものがあり、より厳格な安全性が求められるべきでしょう。

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■フォード、ファイアストン問題で車両の安全性調査も/米下院公聴会で


 ブリジストン・ファイアストン製タイヤを装着したフォード・エクスポーラーの事故について、フォード社では「タイヤの責任」として1,300万本の追加のタイヤリコールを進めていますが、この問題についての公聴会が19日ありました。この日の公聴会ではジャクソン運輸副長官が「高速道路高通安全局(NHTSA)がタイヤに加えてフォード・エクスプローラーについても安全性の調査対象とすることを検討している」と述べ、横転事故の原因についてあらゆる要因を調査する考えを示しました。

 自動車の部品でもあるタイヤの適正な使用条件は車体メーカーの設計要件ですが、タイヤのパンクが「全てファイヤストンタイヤに問題がある」とする、これまでのフォード社の対応には疑問を感じていたのですが、これからの展開が楽しみです。

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■PCB汚染の魚で学習能力の低下/米大学の共同研究チームまとめる

 米ミシガン湖では化学物質汚染が深刻な状況で、周辺に住む人々はPCBに汚染された魚を日常的に食べていることから、記憶力や学習の余力が低下している可能性があるとの調査結果を、米イリノイ大やミシガン大などの共同研究チームが26日までにまとめました。

 イリノイ大のスーザン・シャンツ教授は「PCBは汚染に敏感な胎児や妊婦らへの影響が報告されてきたが、汚染の激しい地域では、成人への影響も調べる必要がある」と指摘しています。グループでは、ミシガン湖で捕った魚を年間約11キロ以上食べている49歳から86歳までの約100人と、魚を約2.7キロ以下しか食べない約80人について、さまざまなテストで記憶力や学習能力を調べました。それによると短い物語を聞いた30分後に、その内容を思い出すテストや、買物のリストを聞いた後にそれを思い出し分類するテストなどの結果から、汚染魚を多く食べ血中のPCB濃度が高い人ほど成績が悪いことが判明した、としています。物語テストの成績が特に悪かった人のPCB濃度の高さがきわだって目立ったということです。

 ダイオキシンや環境ホルモンの場合、どの程度の汚染が人体に影響があるか、ということは個人差もあり判断が難しいものです。しかし過去の汚染がそのまま残りやすい湾内や湖沼に生息する魚介類を多く食べる人への影響は継続的に調査し、特別な環境指針が必要なのでしょう。今までは海の容量がとても大きいことから、多くの廃棄物・下水などが捨てられてきましたが、下水道からどのような物質が排出されているのかが気になります。このような下水による水質汚染について、国土交通省と海上保安庁では15日、東京都や大阪市など13自治体と共同で、始めての実態調査を行うことにしました。

 現在の下水道は、生活排水などの汚水と雨水をそれぞれ別の管で流す「分流式」が一般的ですが、古くから下水道が整備されてきた大都市部では汚水と雨水を同じ管で流す「合流式」が多いといいます。この合流式の場合、雨天時に下水の一部が未処理のまま流され、河川や海を汚染する問題があり、昨夏東京湾で白色固形物(オイルボール)が大量に漂着しているのが見つかったことがあります。調査ではでは雨天時に、降り始めから数時間おきに、下水処理場から海までの経路のうち数カ所で、生物化学的酸素要求量(BOD)の大腸菌数、植物プランクトンの養分となる窒素やリンの料を測定し、晴天時の測定値と比較することで影響の有無をチェックするとしています。化学物質の調査がメインではないようですが、日本国、という一つの集合体から排出される水質調査が、今まで行われてこなかったことに少々驚きを覚えます。

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■未承認の遺伝子組み換え原料菓子相次ぐ/カルビー、ブルボン

 ハウス食品の「オー・ザック」から米国産ジャガイモに使用されていた遺伝子組み換え食品の「ニューリーフ・プラス」ポテトが発見されたのが5月ですが、カルビーは21日、「ジャガリコ」に同じ「ニューリーフ・プラス」が検出されたとして自主回収を始めました。またブルボンでも22日、「ポテルカ」に同じ遺伝子組み換え原料を使っていたため、自主回収すると発表しました。

 ハウスもそうでしたがカルビー、ブルボンとも安全性を強調するあまり、「日本ではまだ未承認の遺伝子組み換え食品ですが、米国ではすでに安全性が確認されており、今後日本でも認可される見通し」というようなコメントが出されていますが、これらの会社では今後この「ニューリーフ・プラス」が日本でも承認されたら使用するつもりなのでしょうか。そうではないと思います。遺伝子組み換え原料を使用しない、というのであれば原料の混入が阻止できなかった品質マネージメントの不備を深く反省するのが先でしょう。まず消費者に自分たちの非を詫びてそれから「間違って食べても安全性の問題はないものと思われます」とし、その理由として米国などの安全性評価が確立した記述をすべきものでしょう。自社の信頼を守ることが優先され、消費者がどのように感じるかなど配慮していない企業の様が見えます。あるいはそれほど混乱していたのでしょうか、それこそリスクマネージメントの一面である、「顧客のリスクは企業のリスク」という考えが浸透していないのかも知れません。

 ところでカルビーでは6月7日にカナダ産冷凍ジャガイモから、遺伝子組み換え原料の陽性反応を確認したものの同日以前の製品の出荷を続けていた事実が判明しています。同社では「分からなければいい」とする消費者無視の考えがあったとしか思えなく、雪印事件の教訓を生かそうとしない体質を感じます。
このところの組み換え原料のトラブルで食品メーカーは混乱しているようですが、完全に混入を防ぐことが難しいことから、東ハトでは7月中旬をめどにジャガイモ粉末の調達先を全量オランダ産に切り替える方針を示しています。

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■小型電子機器など生産者に回収義務/東京都、石原知事検討表明

 東京都の石原知事は5日の都議会で、携帯電話や小型電子機器、在宅医療機器などを対象にメーカーが使用済みの製品を自主回収するシステムを検討していることを明らかにしました。

 同知事は「生産者が使用後のことを考えず次々と新製品を生産したことが今の環境問題を生んだ」と批判し、生産者が廃棄物の処理やリサイクルで責任を持つべきだという考えを示しました。都の廃棄物審議会では、大量に出回っている機器、有害物質が含まれる機器、貴金属が含まれる機器、などの基準を設け、どのような製品を対象に自主回収を求めるかを現在検討しています。

 この考え方はとても分かりやすい論理です。過去20年程度の間、我が国企業はかなりの収益を上げ規模の拡大を突き進んできました。リストラも、いわゆるリストラクチャリングというシステムの再構築を正面から取り組まず、とりあえずの人員削減、という経営者の手腕とは関係のない方法に頼っている現状では、企業が製品リサイクルに必要とされるコスト(金銭的にはリスク)を製品価格に上乗せしていない保証はないでしょう。そのような立場にある企業のことを考えた場合、消費者に回収コストを負担させる考え方・法律は、声の大きな企業に寄り切られた政治の弱さでもあります。生活者の立場に立った同知事の表明には賛同する消費者も多いのではないでしょうか。

 家電リサイクル法が施行され、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機のリサイクルが義務付けられましたが、2004年の施行が予定されている自動車リサイクル法では、リサイクル費用の回収方法が新車購入時の毎払い制となる見込みです。1台当たり2万円といわれる費用を前払いで徴収するのですが、リサイクルのコストが本当に2万円であるという検証がなされるのでしょうか。工業会の試算は現在の特定条件でのものであり、今後5年、10年後にどの程度のリサイクル費用の削減が可能かなどはとても分かるものではありません。おそらく現在は赤字でも、そのコストは車両価格で相殺させることが可能であり、努力する企業では新技術や効率の改善などで相殺できることもあるでしょう。少し難しい宿題を次々にこなすことが企業の宿命でもあり、それが競争力、という企業体力の向上でもあったわけですが、初めから企業のいう「出来ないこと」を条件に、将来にわたる消費者の負担を確定することは問題だと思います。

 家電リサイクル法では販売店の努力?で負担金の軽減が営業策として行われていますが、このようなリサイクル法のコスト負担の仕組みそのものが形骸化し、気がついてみたら企業のリサイクルコストは会社全体の環境対策費の中に含まれるような、いわゆる税金みたいに取り扱われていることになるかも知れません。特殊法人によるリサイクル資金のプールを管理する、といういかにも役人の考えそうな制度のようですが、リサイクルNPOなどの入る余地はないのでしょうか。取りやすい所から取る、という考え方が横行する社会は何とかならないものでしょうか?

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■カナダでも「マイルド」表記禁止/たばこ会社各社に指導

 この5月にEUの欧州議会で成立した「たばこ製造・表示・販売規制法」で、たばこによる健康被害を防ぐため、2003年9月末から「マイルド」や「ライト」などの表記が禁止されることになり、これから欧州で「マイルドセブン」や「同ライト」を投入しようとしていた日本たばこ産業(JT)では反発を強めています。カナダでもこのような表記が問題視され、アラン・ロック保健相は31日、たばこの箱に「ライト」や「マイルド」などの表記をしないよう同国のたばこ会社各社に指導する方針を明らかにしました。また、「スペシャル」や「ミディアム」などの表記も問題だとし会社側が自主的にやめるよう勧告しました。

 現在カナダではJTの子会社が「マイルドセブン」ブランドで事業展開していますが、あいまい表記が誤解を招くという当たり前のことを押し通してきた同社の海外展開の再検討を余儀なくされそうです。

 環境にやさしい、健康をサポート、マイルド、ライトなどの非常に主観的なあいまい表記がまかり通っている我が国でも、有機農産物など本来の意味を厳格に周知し消費者の利便性につなげていく、という方向に変わりつつあります。健康被害がこれほど言われているたばこの「マイルド」がどの程度のものなのでしょうか。単にセブンスターよりもマイルド、という単純なことのようであり、健康被害の程度がどの程度“マイルド”なのか、という科学的な立証はできないのだと思います。これでは「マイルドな危険性を持つものですよ」ということであり、消費者が混乱することは明らかです。我が国では「なんとなく」ということに寛大な(賢くない?)国民性のためか、あいまい表記が多かったのですが、化粧品での全成分表示も定着しつつあり、客観的なデータが顧客の信頼を得る、という方向に進みつつあります。今までは「それが商売というものだ」という考えだったかも知れませんが、JTもそろそろ世の中が変わっている、ということを認識すべきでしょう。

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終わりに

 街の中には環境に配慮した製品が増えてきましたが、環境マークにもいろいろあるようです。(財)日本環境協会認定のものは、文具、衣料品や雑貨など約4,000種類。(財)古紙再生促進センターのグリーンマークはトイレットペーパー、ノートやコピー用紙など1万種以上。コンピュータなどのOA機器の省エネ製品には国際エネルギースターマークが1万1,000種類以上、などなど。これらの環境に配慮した製品は若干高くても消費者の支持を得ているものもあるようです。

 さらなるグリーン購入を促進するためには生産量の拡大が不可欠だと思いますが、ベルマークみたいな制度の導入はできないのでしょうか。ベルマークに関心を持つ人は最近少なくなっているようですが、小学生のいる知人が熱心に集めているため、わが家でも協力しています。「こんな企業が」あるいは「この企業はなんでやらないの」などという発見があり、なかなか面白いものです。

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