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2001.10 No.94  発行 2001年10月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■高濃度アルコール含有燃料トラブル/安全性調査委初会合

■日本でも狂牛病騒動/農水省の「安全」発言、根拠なく

■狂牛病、人への感染対策始まる/理化学研究所、九大

■分かりにくい賞味期限表示/元号なのか西暦なのか

■ダイオキシンの次世代影響/微量でも影響、米研究グループ調査結果

■パソコンの部品保証3年/エプソンダイレクト、サービス強化

■ハンディキャップ体験セミナー50回迎える/東武・池袋本店


9月のニュースから

■高濃度アルコール含有燃料トラブル/安全性調査委初会合

 国土交通、経済産業の両省は、高濃度アルコール含有燃料を使用した自動車で、燃料漏れや火災などのトラブルが相次いでいることから28日、合同調査委員会の初会合を開きました。両省では自動車メーカーからの情報を元に1999年から今年8月末までに発生した59件のトラブルを公表しました。最も多かったトラブルは、燃料パイプなどアルミ製部品が化学反応で腐食し燃料漏れを起こしたり、エンジン不調になった事例35件で、そのうち4件では火災が発生していました。次いで空気と燃料の比率異常によるエンジン不調9件、ゴム製部品の膨張によるエンジン停止や不調が8件、などとなっています。日本自動車工業会では高濃度アルコール含有燃料に問題があるとして、社告などを通じて取扱説明書に記載されている指定の燃料を使うよう消費者に呼びかけています。

 8月に明らかになったホンダの調査報告では、今年6月から燃料によるエンジントラブルが9件発生し、そのうち4件で火災に至っている、というもので、今まで発生した車両火災事故4件は、全てホンダの車両だったようです。同社の調査では、不具合が起きた車両はいずれもアルコールを50%前後含んだ燃料を使用、エンジンからアルミとアルコールの化合物を検出、燃料とアルミ部品が化学反応を起こして腐食、燃料漏れや火災が起きたとしています。

 商品名「ガイアックス」を販売する業界最大手のガイアエナジーでは、「2度にわたる高温(98度)・高圧下(12気圧)での実験でも腐食が発生しないことを確認、ユーザー車両50台の分解調査やユーザー200人へのアンケートでも異常は認められなかった」、といっています。また独自に原因を調査した結果「火災を起こした車両が高温・高圧下で損傷しやすいアルミ材を使っていることが問題だ」と強調しています。
自動車メーカーでは燃料の問題として片付けたいようですが、1999年に高濃度アルコール含有燃料でのトラブルがあったにもかかわらず、今年になり火災事故が発生するまで危険を内在する自動車の存在を放置していたことにもなります。実際自動車メーカーでは、社会で流通している高濃度アルコール含有燃料を自社車両に使用したときの安全検証などしていなかったのでしょうか。取扱説明書に記載の燃料を指定しているので、「誤った使い方はユーザー責任でありメーカに非は無い」、ということで放置していたのではないでしょうか。

 アルコール含有燃料にも数社の商品があることから、これらの品質問題もあるでしょう。しかし事実究明のためガイアエナジーが行う公開実験へ、両省とホンダの立ち会いを8月に要請したのですが、どうやら実現しなかったようです。ガイアエナジーではまた「合同調査委員会にはアルコール含有燃料の開発者が含まれていないため正当な議論ができない」として、同委員会に公開質問状も提出しています。自動車の燃料として不適格で危険な商品であれば、自動車メーカーや行政は確かな根拠を示し、ガソリンスタンドで一般消費者が購入できないよう法律の改正などを行うべきです。それが安全な社会環境を構築する産業と行政の義務ですが、燃料業者を悪者にしているだけかもしれません。

 安い燃料に消費者が飛びつくのは当たり前のことで、そのような社会情勢を見て見ぬふりをし、自分に火の粉がかかってきたから騒ぎ出す、というのでは我が国代表産業である自動車メーカーの信頼にも関わるものです。今後、限られた量の化石燃料に頼ることや環境問題から、ガソリンが自動車の燃料として最適なものではなくなりつつあります。アルコール含有燃料が及ぼす車両への問題と、各車両の個体差(危険度)の原因を明らかにすることが大事でしょう。南アフリカ共和国ではアルコールを10%含むガソリン燃料が使われ始め、そこでも部品腐食による燃料漏れが発生していた事実も同委員会で報告されたということから、自動車メーカーも「利用され得る燃料」として、安全対策を真剣に考えるべきでしょう。

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■日本でも狂牛病騒動/農水省の「安全」発言、根拠なく

 千葉県内で10日、国内で初めて狂牛病に感染した牛が見つかってから騒ぎが拡大し続けていますが、確たる根拠もなく安全と唱えてきた農水省の重大な不手際で、役人に任せている安全の信頼性が揺らいでいます。公費横領事件などの不祥事も後を絶たず、この際役人の数を半分に減らし、行政の無駄と役人の個人利益追求癖を厳しく監視できれば、将来にわたる何兆円もの被害が防げるのではないでしょうか…。

 さて英国では狂牛病が牛から人へ感染するとの指摘があった96年に、肉骨粉の輸出を禁止しましたが、それまでに日本では約300トンを輸入した(日本生物科学研究所理事・東大名誉教授の山内一也氏による)と見られています。しかし農水省は96年に肉骨粉を牛の飼料に混ぜないよう行政指導しただけで、罰則を含めた法的な措置を取りませんでした。我が国では狂牛病の発生が今までなかったことから、「まさか日本で狂牛病が発生するなどあり得ない」という思いこみに加えて、「行政指導したから皆さんきちんとやってくれているはずだ」という、全く根拠のない安全認識の上にあぐらをかき、リスクを正しく把握することを避けていたのです。役人のレベルというのはこんなもので、税金が無駄に使われている良い証拠でしょう。

 しかも今年の春、欧州委員会が「客観的に見て日本でも狂牛病の発生があり得る」と警告する部内用の暫定見解を明らかにしたのですが、農水省は6月、「日本では狂牛病は全く発生しておらず、安全性の程度は相当高いと考えている。国際基準と異なる欧州連合(EU)の評価手法はきわめて疑問」とし、「EUの採用している危険度評価の手法は不適切」と異議を唱えて欧州委による第三国の狂牛病発生の可能性調査への協力継続に難色を示していました。確かな検証能力もないのに、何という驕った言い方でしょう。

 このような「ノー天気」ともいえる農水省ですが、困るのは感染の危険性の高い脳、せき髄や目などの「特定危険部位」を使った製品メーカーでしょう。10月に入り厚生労働省が牛から成分を抽出し、濃縮した健康食品と一部の加工食品について、特定危険部位が混入していないかどうかの点検を食品メーカーなどに要請しました。混入製品と混入の有無が確認できない製品の自主回収を求めるもので、同省では「消費者の不安解消を優先」としています。しかし医薬品などに比べて健康食品などは規制が緩いことから、牛の成分がどのように入っているのか同省でも全く把握してなく、本当に回収できるのか国民の不安は残されたままです。

 外食や小売各社も独自の対応を進め、ソースに使う牛エキスをチキンブイヨンにしたり、牛エキスを使っている加工食品の回収や、客からの返品を受け付けるスーパーも出てきました。航空会社でも全日本空輸や日本航空がコンソメスープの提供をやめる措置をとりました。大手調味料メーカー社長の言う、「狂牛病発生前から特定部位など使ったことはない。行政は現場を見もしないで政策決定し、その混乱のツケは民間に及んでいる」との批判は理解できます。

 さて英国では、現在も狂牛病や口蹄疫の報道が続いているといいますが、消費者は意外と冷静なようです。週末のホームパーティーの主役は彼らの大好きなローストビーフであり、牛エキスを使ったスープ類も普通に飲まれているといいます。それは政府が咋年4月に消費者の視点から食の安全対策を講じ、インターネットなどを通じて徹底した情報開示をする食品基準機構(FSA)が設立されたことが大きいようです。FSAでは、狂牛病や口蹄疫がどんな病気でどのような危険があるのか、また安易に安全を強調するのではなく、狂牛病について現在解明されていることや解明されていないデメリット情報も完全に開示して信頼を得ているといいます。

 都合の悪いことを隠す日本社会では、隠しきれなくなると突然大騒ぎとなり、そのたびに国民が不利益を被ります。もう少しリスクを見極めた検証と客観的事実に基づく行動、そして完全な(役人が考える“十分”なものではない)情報開示など、先進国らしい対応をしてもらいたいものです。

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■狂牛病、人への感染対策始まる/理化学研究所、九大

 狂牛病の原因は、牛の脳や脊髄に含まれる異常型プリオンが人体に入り、体内で神経成長などに関係する正常型プリオンと結合、立体構造の違う異常型へ次々と変え、中枢神経を侵すためと考えられています。最近国内でも相次ぎ研究成果が報告され、理化学研究所はプリオンの増殖を防ぐ機能を持つ物質を発見しました。同研究所の脳科学総合研究センターのグループでは1,000種類を越える様々な植物やカビ、細菌などの成分を5年間にわたり調べてきましたが、今回発見したこの物質は、体内でいち早く正常型プリオンに結合してこれを保護し、異常型に変化するのを防ぐ作用があるといいます。培養したネズミの神経細胞に異常型プリオンと一緒にこの物質を加える感染実験をしたところ、正常型プリオンはそのまま保たれ、神経細胞は異常型プリオンによって壊されなかったと言います。この物質はまた、植物色素に似た有機物で食用色素としても使われることから毒性は無く、今後の動物実験の進展に期待がかかります。

 一方、九州大学の研究チームは、プリオンによって引き起こされるクロイツフェルト・ヤコブ病の進行を抑える薬剤を突き止めました。同大医学研究院の堂浦克美助教授らは泌尿器科系の病気の治療に使っている薬剤が効果があることを動物実験で確かめました。研究チームはこの薬剤を使った臨床試験を実施するため、九大倫理委員会に承認申請をし、早ければ来年にも試験を開始するとしています。

 今のところ国内に発症者はないものの、日本人の約90%が英国のクロイツフェルト・ヤコブ病患者に共通のプリオン遺伝子の型を持っているといいます。潜伏期間が5〜10年と長いため、将来のリスクを最小限にするための早めの感染対策が必要です。今後、各方面の研究成果が期待されます。

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■分かりにくい賞味期限表示/元号なのか西暦なのか

 食料品の賞味期限表示が6桁の数字だけの場合、元号と西暦表記なのか分かりづらく問題となっているようです。1990年代では990821(1999年8月21日)と110821(平成11年8月21日)の読み方は大体の人が分かるものです。ところが011221を平成11年2月21日と読む人もいるようで、西暦2000年の昨年から食品メーカーへの問い合わせが殺到しています。特にミネラルウォーターなどの備蓄品では、使用できるのに捨ててしまうこともあるようです。

 元々西暦などの年度を製品上に表示することは、ロット番号ではよく行われていました。輸出国による規制から表示することもありますが、メーカーが出荷した商品の不具合を特定ロットとして区分、その製造日や製造工場・ライン・部品メーカーなどを特定するためのものです。その場合、見た目には意味のない数字やアルファベットでも問題になることはありませんが、賞味期限は表示を見る消費者に分かってもらうためのものです。本来は正確に「賞味期限:2001年12月21日」、「賞味期限:平成13年12月21日」のようにきちんと表記するのが当たり前で、なぜ消費者にとって大事な情報が考えなければ分からない暗号的なものなのでしょう。賞味期限はその情報により商品の購買を決定するものなので、取扱説明書の分かりにくさよりもはるかに深刻です。

 一般消費者にしてみれば、カラフルな宣伝めいた表示の多いボトルで、なぜ賞味期限みたいな1行の文字が印字できないのか不思議でしょう。製造上のコストや設備の更新などは消費者が気にする問題ではなく、分かりにくい賞味期限は商品としての価値を著しく下げる品質問題であることを企業が認識し、速やかに改善すべきものだと思います。それが偽りのない「顧客志向」を謳う企業というものでしょう。

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■ダイオキシンの次世代影響/微量でも影響、米研究グループ調査結果

 昨年1月に施行されたダイオキシン対策法後、大気以外に新たに明確になった土壌や水質の環境基準に対する調査結果が多く出てきました。その結果、水路や河川、河口の水質にも高濃度の汚染が確認されるなど、原因の特定が急がれているものもあります。化学工場の中にはダイオキシンが生成されていることに気づかないケースもあり、各地の汚染状況の監視も重要となっています。また農薬中に含まれていたダイオキシンが水田の底の泥などに堆積し土壌の粒子などとともに河川に流出、魚などの体内で濃縮される事実などが明らかになってきました。

 猛禽類やモグラ、ネズミ類の高濃度ダイオキシン蓄積も確認され、人体への影響以上に自然界の汚染は深刻化しているようです。また環境基準そのものの安全レベルが検証されているのではないため、とりあえずの安全レベルということを認識すべきでしょう。

 環境ホルモンが微量でも人体に影響するという報告がありますが、微量のダイオキシンでも生まれた子供の行動力が低下する、との研究調査が2日、米サザンメーン大とロチェスター大のグループにより報告されました。同グループは妊娠中のラットに量を変えながら1回だけダイオキシンを投与、生まれた子供にレバーを何回か押すと回し車が回せる装置を与えて自発的な行動を調べました。その結果、レバー押して車を回せるようにした回数も1回に車を回した回数も、母親へのダイオキシン投与量に応じて減少したといいます。このときの投与量は、体内のダイオキシン存在量を示す「体内負荷量」が、ラットの体重1キロ当たり7.3から10.1ナノグラムで子供に影響が出ると計算されました。これは日本や米国など先進国の人間の平均体重負荷量、同10ナノグラムと同程度で影響がでるということのようです。オランダの大規模な疫学調査では、母親の血液中のダイオキシン濃度が高いと子供の学習や運動テストの成績が低下することが指摘されていましたが、ダイオキシンの次世代へわたる影響など未解明な部分も多く、今後の調査や企業の対応が待たれます。

 ところで次世代にもわたる影響や地球環境の悪化という事態に対し、ダイオキシンを製造したり使用して利益を得た企業などの責任問題は無いのでしょうか。開発当時は危険性が分からなかった、というのが一般釈明ですが、結果的に生じた過去の負の遺産を、社会的にどのようにリカバーするか、という考えはないでしょうか。企業の過失責任を求めるものではありませんが、今後の安全な社会環境の構築に向けて基金を創設するなど、応分の負担を企業に求めてもいいと思います。その基金を研究、教育・人材育成など、将来のために使いたいものです。

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■パソコンの部品保証3年/エプソンダイレクト、サービス強化

 パソコン製造販売のエプソンダイレクトは、購入から3年以内の同社製パソコンガ故障した際、必要な部品を無量で交換する「3年間部品保証」を10日から始めました。すでに販売済みの製品で購入から3年以内のものも保証対象に含めるとし、1年めは診断料と工賃、送料も無料としています。先月号のASPニュースでも紹介しましたが、同社では今年8月から「1日修理」を始めています。各社のパソコンの性能差がなくなってきたことから、さらに顧客の満足度をアフターサービスの充実で高める方向を打ち出してきました。

 パソコンに限りませんが電気製品などは、なぜか保証期間である1年を過ぎる頃から故障するケースもあり、同社の取り組みは歓迎できます。ところでパソコンを1年以上使用した人の中には、CPUのクロックアップ、内臓ハードディスクの容量アップやCDーROMからDVDーROMドライブへの載せかえなど、より高性能なマシン環境を考え始めます。個人で対処できない人のため、3年間無料修理ができる同社なら部品を持参した人への無料アップグレードサービスもできるかもしれません。今後は新製品を売るだけでなく、古いパソコンを長く使ってもらうことも環境指向企業の常識になるでしょう。

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■ハンディキャップ体験セミナー50回迎える/東武・池袋本店

 東武百貨店池袋本店が、業界では初めて95年から始めたハンディキャップ体験セミナーが、8月に50回、約1,200人の受講生を迎えました。同セミナーは小売り業をはじめ、さまざまな接客業でのサービス向上のために定期的に実施しているものです。小売業を中心に企業からの視察も多く受けているといい、受講者は目や耳にハンディを受けた状況や車いすを使用し、営業時間中に買い物や食事を実体験するものです。

 最近では多くの商業施設に車いすが常備されていますが、フロアーにある電気配線のカバーなどごく小さな段差でもカートや車いすに負荷がかかります。高齢者ではエスカレーターに乗るのが恐くて立ち止まる人もいるなど、もともと健常者のための施設では彼らの“とまどい”が考慮されていません。頭で覚える知識は感覚ではないため、「障害者の身になる」にはかなり無理があり、分かったつもりでいる人も多いのではないでしょうか。相手の立場を理解するのには、実体験こそ大事な学習法でしょう。

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終わりに

 国土交通省でも8月、公共交通機関での移動の不自由さを体験してもらう「交通バリアフリー教室」を設け、9月下旬から来年1月まで全国10施設で開くことにしました。駅などで障害者が困っていても「どのようにサポートしたらいいのか分からない」、という人にもお勧めですが、知っている人だけ知っている、のでは困ります。そのためには、今後の社会基盤の整備を担う役所の職員、建設事業者、設計者団体、学校の教師、そして議員達にも誘いをかけてもらいたいものです。

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