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2001.12 No.96  発行 2001年12月11日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■ジェットバスの安全基準/業界31社、新製品に適応

■箱ブランコなどの事故防止へ/国交省が指針の素案まとめる

■不具合の少ない軽は「スバル・プレオ」/ユーザー聞き取り調査で

■都道府県での医療事故公表基準ほとんどなし/アンケート調査まとまる

■節水に協力65%/内閣府調査

■学校の全面禁煙/和歌山県教委

■分煙装置でも苦情消えずに「半室禁煙」廃止/JR東日本

■サケの衛生管理、魚価も上がる/標津町の地域HACCP

■車いすで快適に移動/地下鉄大江戸線


11月のニュースから

■ジェットバスの安全基準/業界31社、新製品に適応

 入浴中に髪の毛が吸い込まれ、女児が相次いで死亡したジェット噴流バスを製造、販売するTOTOや松下電工、ノーリツなど計31社で作る「ジェットバス噴流バス協議会は19日、安全性向上のための自主統一基準を策定したと発表しました。基準書は吸い込み口に入った髪の毛を比較的弱い力で引き抜けるようにするのが狙いで、各社は今後発売する新製品に適用するとしています。

 具体的には運転中と停止状態から運転をスタートさせる2つのケースを想定し、吸い込まれた長さ40センチ、重さ200グラムの髪の毛を水2リットル入りのペットボトルを持ち上げる程度の力で引き上げるのを条件としています。また、安全確保のため吸い込み口に取り付けられているカバーが外された状態についても、初めて基準を作成し、同じ長さで重さ50グラムの髪の毛を同様の力で引き抜けることを求めています。

 子どもが死亡する事故を起こしてから、ようやく業界の自主基準が策定されました。しかし事故を起こした企業の開発・設計者は、訴訟問題の有無とは別に、自社の製品の安全性に対しどれほどの客観性を持っていたのか疑問に思います。今回のケースは明らかに想定しうる事故ですが、事故が起きても社会的に求められる危険告知などは不十分であり、企業の社会的責任が無視されていました。国の法律では、過去の事例からも多くの被害者が出てから整備されますが、製品を販売して利益を得る企業の安全性は、もっと厳しく責任を問われるべきでしょう。

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■箱ブランコなどの事故防止へ/国交省が指針の素案まとめる

 国土交通省は10日までに、ブランコやジャングルジムを含めた遊具の安全確保に関する指針の素案をまとめました。素案によると、遊具の設置場所について、硬い地面を避けるか、転落した場合の衝撃を吸収する安全マットなどを備え付けるよう求めたほか、管理者の定期点検の強化を図るなども盛り込みました。遊具の構造では@突起や小さな隙間を設けない、Aブランコの坂と地面の間に適切な空間を作る、−−などをまとめています。

 今まで箱ブランコの危険性については多くの指摘があり、指針を作り始めたのは少々遅い気がしますが、とりあえずは良いことでしよう。一部には「子どもには『箱ブランコは危ないから遊んだらいけないよ』と教えるべきだ」とし、安全な製品の必要性を無視するような人がいますが、子どもが頭で理解したものが全て実際の行動に反映されるものでないことは、皆が承知のことだと思います。小さな痛みなどの実体験から、経験的に危険とそのレベルを覚えていく過程が必要で、言葉だけで教える、という裏には楽に責任を果たそう、という大人の省きの論理があるようです。

 同省では「メーカーによって遊具の規格が違い、統一基準を作るのは難しい」として、具体的な数値などは示していませんが、これでは指針というより、今までに指摘され続けてきたことをまとめただけのようです。突起や小さな隙間が子どもにどのような傷害をもたらすか、という目的に添えば指が入らないような隙間や、子どもの衣服や靴などが引っかからないような突起など、想定できるものです。過去の事故の調査から、「どの程度では危ない」という経験的データから、指針の背景となった参考数値と安全確保の目的を付録に掲載すべきでしょう。このような分かり切ったことだけでは、企業・業界は、事故を想定して具体的な数値や形状をガイドラインとして個別に作らなければならず、新規参入者はともかくあまり活用されないものになるかも知れません。

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■不具合の少ない軽は「スバル・プレオ」/ユーザー聞き取り調査で

 調査会社のJDパワー・アジア・パシフィックが実施した、「2001年日本軽自動車初期品質調査(IQS)」が発表されました。調査は国内軽市場での販売シェアで83%を占める主要9モデルの上位6車を対象にしたものです。各車のユーザーに走行性能、装備品、エンジン、変速機など9つのテーマで、130項目以上の車両不具合について聞き取り調査しました。モデル100台当たりの不具合指摘スコアをポイント化、この数値が少ないほど品質がよいことを表しています。結果、初期の不具合が最も少なかった軽自動車は富士重工業の「スバル・プレオ」が104ポイントでトップ、ついでホンダ「ライフ」(111ポイント)ダイハツ工業「ムーブ」(143ポイント)、スズキ「ワゴンR」(161ポイント)と続き、ダイハツ「ミラ」と三菱自動車工業「トッポBJ」は201ポイントと最下位になってしまいました。

 三菱自工はこれを受けて「調査結果を真剣に受け止める。新型車の『eKワゴン』では『クオリティ・ゲート』を導入して、開発や生産だけでなく、全ての業務分野での損失向上を目指している。その他の既販車種についても、品質をさらに高める努力をしている」とのコメントを発表しました。。

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■都道府県での医療事故公表基準ほとんどなし/アンケート調査まとまる

 医療の質向上を目指す市民団体「医療事故市民オンブスマン・メディオ」は17日、全国の都道府県を対象に医療事故の報告・公表制度について訪ねたアンケート調査結果をまとめました。調査は今年9月に実施、青森県と東京都を除く45道府県が回答したものです。それによると、公表基準がある9件のうち、宮城、新潟、埼玉、千葉、長野などは書面で基準を明確化していました。また重大な医療過誤があった場合や警察へ届けたケースについて、患者側のプライバシーに配慮して公表するという方針が目立ちました。

 しかし、病院に医療事故の報告書提出を義務付けているのは20府県と半数にも満たないもので、全ての病院・診療所に求めているのは福島、徳島の両県だけで、他府県では大半が府県立病院だけが対象であることが判明しました。これでは病院の自主的な判断にまかせているだけで、それが機能せずに現在の医療事故・医療過誤が表に出てこない弊害の根本原因の一つであるのに、及び腰の自治体には改善する気がないのでしょうか。

 メディオは同日、「医療事故の再発防止には事故報告の分析と公表が不可欠」として、厚生労働省や全国の都道府県に対し、全ての医療機関が事故を報告する制度の創設などを提言しました。

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■節水に協力65%/内閣府調査

 内閣府が今年7〜8月、全国の20歳以上の男女3,000人を対象に実施した調査では、回答者の3人に2人が日常生活で「節水している」と答え、4人に3人が水の有効利用のため雨水や1度使った水を処理した雑用水を「使いたい」と希望するなど、節水意識が浸透していることが10日発表した「水に関する世論調査」で分かりました。それによると、水の使い方については「まめに」「ある程度」を合わせて64.9%が「節水している」と答えました。2年前の調査(64.1%)に比べ微増ですが、15年前(51.2%)に比べると大幅に増えています。雨水や雑用水の使用では「積極的に使う」「水洗トイレ程度なら使う」を合わせて75.0%が「使いたい」と答えています。

 雨水の有効利用は市民の水道料金削減に貢献することや、一時的な水量のバッファともなるので水害の予防にもつながることから国民の関心事になっています。特にこれから下水道が整備される地域では、現在の合併処理槽などの施設の有効利用からも関心が高いようです。現在では浄化槽を大きな水タンクとする雨水利用システムも開発され、夏の渇水期の庭の水やりなどに有効に利用できるものとして今後の利用が増えていくでしょう。

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■学校の全面禁煙/和歌山県教委

 和歌山県教委は20日、来年度から公立学校の敷地内を全面禁煙とすることを決め、各学校や市町村教委に通知しました。県教委では児童、生徒への禁煙教育を徹底し、たばこを吸わない教職員の受動喫煙による健康被害から守るのが目的だとしています。禁煙スペースなどを設置する「分煙」も原則的に認めない方針で、教育現場でのここまで徹底した禁煙は、文部科学省も「聞いたことがない」と言っています。

 罰則規定は設けないとしているものの、県教委が従来から進めてきた「健康を害するたばこ」を教える禁煙教育に、より説得力を強めるための方法で、教職員や来校する大人にも禁煙を求める画期的なものだと思います。児童がたばこの煙が充満する職員室を訪れれば、「私達にはダメ、と言いながら何で先生は吸ってもいいの?」という素朴な疑問が生まれるのは当然です。大人や教師の都合が見え隠れする現在の教育を、客観的に評価できるレベルへ導くことにもつながるように思えます。小関洋治教育長は「喫煙は薬物依存症という厳しい見方をしなくては」と述べ、未成年者の置かれている悪い環境を是正する必要性を教育者の観点からとらえているようです。

 ところで社団法人日本たばこ協会などは12日、未成年者の喫煙防止策の一環として年齢を識別する機能が付いた自動販売機の導入を決めたと発表しています。システム作りはいいと思うのですが、自販機の撤去や稼働時間の制限などは検討することなく、カードについても「不正使用などについてはカード所持者が責任を持って管理してもらわなければならないだろう」としています。これではシステムが目的を達成する機能を発揮するかどうかを、消費者に任せているだけのようです。望まれるべき社会環境の構築を考えなければならない、そのための業界・企業であって欲しいのですが、官僚の施策のように「○○の仕組みを作ったから私達は十分仕事をしているのですよ」的なもののようです。社会や青少年に及ぼす健康被害について、販売者責任についてのポリシーがない、さらにいえば「儲ければいい」と言う無責任体質が見え隠れします。

 それに較べて和歌山教委の取り組みは、確固たる信念の元での取り組みのようで大変共感を覚えます。大手企業でも分煙が行き渡り、公共施設の分煙や禁煙は当たり前になっています。次の世代を担っていく児童・若者の健康を配慮することも人間形成の一つのあり方ととらえると、せめて学校くらいは全面禁煙にするのは当然で、他の学校への拡大が望まれます。

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■分煙装置でも苦情消えずに「半室禁煙」廃止/JR東日本

 JR東日本は12月1日から、秋田新幹線こまちのグリーン車だけに残っていた「半室禁煙」を全室禁煙に切り替えることにしました。1両しかないグリーン車の分煙策の切り札として日本たばこ産業と共同開発した新型分煙システムでしたが、苦情は無くならず半室禁煙を断念することにしたものです。

 もともと人の移動が頻繁にある車両内での分煙というのは、人の衣服に付着した臭いなどが拡散することを前提にするため、かなり無理のあるものでしたが、ようやく気付いたようです。禁煙車両でも前に喫煙車両があればトンネルなどの圧力のかかる区間を通過するとたばこの臭いが突然襲ってくるものです。JR職員に言わせれば「このくらいどうしても入ってくる」ということでしたが、今回の半室禁煙の廃止は当然の結果でしょう。

 ところで米国のメリーランド州モントゴメリー郡では、自宅でたばこを吸っていた人がその煙で近隣に迷惑をかけた場合最高で罰金750ドルを科すことを定めた条例が制定される直前、同州のダンカン行政長官が拒否権行使を決めたようです。同長官は郡議会が20日に可決した条例案に署名することにしていたのですが、米国はもとより海外からも条例案の内容が行き過ぎとの批判が相次いだことから一転して拒否権行使を決めたといいます。条例案は同郡の屋内の環境基準を考慮する際に、たばこの煙を農薬などと同じく健康に有害な恐れのある汚染物質と規定、たばこの煙が喫煙者の自宅のドアや窓、通気口を通じて近隣の住宅に入り込んだ場合、被害者が郡環境保護局に苦情を訴えることができる、と定めたものでした。

 かなり極端なものですが、議会がこのような規制を実際に考えている、というたばこ問題の社会的なとらえ方をメーカーは謙虚に考えるべきでしょう。

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■サケの衛生管理、魚価も上がる/標津町の地域HACCP

 北海道標津町は昨年まで7年連続で秋サケ水揚げ日本一を誇っていますが、品質・衛生管理を徹底する地域HACCPへの取り組みを行い、今年で2年目を迎えました。サケの漁獲から加工、流通までの手間のかかる衛生管理を、町内13の水産加工業者や漁業者、市場、運送業者などが一体となって取り組んでいます。

 今年の秋サケ定置網漁初日から、船上では網起こし作業の合間を縫って海水と船倉内の温度や海水温をこまめにチェック、積載量を船倉の五分目に押さえるなど24のチェックポイントを集めたマニュアルを基に、秋サケ漁に出る全船28隻が衛生管理を行っています。市場関係者、水産加工業者も定期点検記録を残し、「事故を未然に防止するだけでなく、万が一起きても原因究明が容易、標津の安全証明でもあり風評被害を最小限に押さえられるとしています。

 同町によると、隣町の別海町で98年に起きたイクラ製品によるO157事件が、地域HACCPへの取り組みを加速したといいます。

 最近では食品の衛生管理を徹底する同町の取り組みが評価され、札幌のスーパーなどでは北海道産とする表示を標津産に切り替える小売店も増えてきているようです。また魚価にも効果が表れていて、昨年の「標津産秋サケ価格は1キログラム当たり全道平均よりも16円高く、今年も上回る見通し」と同漁協では話しています。

 安全で安心して食べることのできる食品は多少高くても市民に受け入れられる、という時代の流れを感じることができます。

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■車いすで快適に移動/地下鉄大江戸線

 昨年末に東京で全線開通した都営大江戸線は、昨年成立した交通バリアフリー法の内容を先取りして整備された路線といわれていて、障害者のライフスタイルを変えるきっかけになりそうだ、という評価が出ています。ジャズ評論家、ライターで車いすユーザーの工藤由美さんは、昨秋親元の千葉県四街道市から大江戸線開通予定地の近くの西新宿で一人暮らしを始めたと言います。しかし自家用車を手放して公共交通機関に頼る生活は大変だったようで、あてにしていたバスは車いす対応の車種が1時間に1、2本の路線が多く、鉄道も階段では駅員に抱えてもらう駅がほとんど、また車両とホームの段差や隙間が大きい場所では介助無しでは乗り降りできないため、目的地の駅の設備を問い合わせ、あらかじめ介助を依頼する必要があるなど、外出がおっくうになりがちだったといいます。それが大江戸線の開通で生活が一変し、同氏によると「全駅にエレベーターや使いやすいトイレが設置されるなど安心できるハードが整備されていて、 駅に着いたら地上からエレベーターで改札口階へ、操作ボタンは車いす対応で自動券売機で切符も一人で買えるし、幅の広い駅員側改札を通ってエレベーターでホームへ、車いすスペースのある4号車、5号車の前で電車を待つ、簡易電動車いすなら自力で楽に乗り込め、車いすスペースに移動し目的地まで行ける。駅に着くと今度は逆のコースで地上に、誰の手も煩わすことがない。」というものです。
車いす仲間での評判も良く、行動的になった人が増えたといいます。また街の表情の変化もあるようで、障害者を見慣れてきたためか、大江戸線を利用するとエレベーターの扉を押さえてくれる人、乗り込みをサポートしてくれる人、「お手伝いしましょうか」と声をかけてくれる人が増えているといいます。優れたハードウエアが人を含めたソフト、社会環境に貢献している好例となっているようです。

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終わりに
 天気予報の当たる確率はかなり高いというニュースを以前聞いたことがあり、日常感じているものとのギャップは相当大きいのにと、不思議に思っていました。前の晩10時の予報で朝から10%の確率で晴れ、と言われていたのが当日の朝5時のニュースでは、一日曇りで確率も30%に変わっている、などは良くあるケースです。半日も経たないうちに予報が大きく変わったのに、淡々と話す予報官には反省の色が全く見えません。そんな疑問が晴れたのは最近の新聞記事で、天気予報の的中率は「限定条件のもとでしか行われていない」というものでした。

 気象庁がまとめている的中率とは、毎日午後5時発表の「明日の天気予報」に限っていて、しかも的中したかを判断するのは「1ミリ以上の降水の有無だけ」というもので、まるでだまし討ちにあったようでした。つまり「晴れのち曇り」と予報して最初から曇っていても「的中」で、「雪」と予報して「雨」が降っても「的中」に分類されるというのです。

 スーパーコンピュータや気象レーダー、気象衛星など最新の設備を揃えてきた、と思っていたのですが、この程度の情報品質というのは驚きです。一般の国民生活に限っていえば、現時点の客観的データである気象図だけを提供してくれれば、予報など不要にも感じます。昔の登山をする人などは、観天望気や短波ラジオを聴いて天気図を描き予報したものですが、その方がはるかに信頼性が高いような気がします。午後5時の空を見て、次の日に1ミリ以上雨が降るかどうかなど、観天望気を少しかじっている人なら80%くらい当たりそうですが、気象庁さんどうでしょう。

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