Web版

2003.4 No.112  発行 2003年4月11日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

[ ASP トップ ] [ ASPニュース2003 ]

ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

定期購読について




東京ACC、航空管制システムダウン/192便欠航で20万人影響

JR運転士の居眠り運転、その後

2,000人に1人が輸血で重い副作用

原因不明の新型肺炎、今も拡大続く

乳児用粉ミルクで嘔吐/中身違いの明治乳業の製品

毛髪中の水銀濃度、千葉は水俣の2倍以上/水銀濃度初の全国調査

クジラの内臓食品で腎臓障害の恐れ/高濃度の水銀蓄積

心肺蘇生法の普及必要/急性心筋梗塞の救命率向上に

医療過誤保険料高騰で医師廃業/訴訟大国、米国の弊害



3月のニュースから

■東京ACC、航空管制システムダウン/192便欠航で20万人影響

 1日午前7時頃、埼玉県所沢市の国土交通省東京航空交通管制部(東京ACC)のコンピューターシステム2系統がダウンし、羽田や成田など全国の空港を出発する航空機が約20分間にわたり離陸できなくなりました。

 約1時間後、システムの一部を立ち上げ、午前11時ごろに全面復旧したものの、全日空はトラブルで約16万人が足止めされ、日航、日本エアシステムなどと合わせると全国で20万人以上が影響を受けたと見られます。

 またプログラムを開発したNECが今年1月、システムダウンの原因となったプログラムの欠陥を発見しながら同省に報告していなかったことも発覚、同省は同社に抗議しています。同省によると欠陥があったプログラムは、各航空会社などから集まったデジタルデータの一部を日本語に変換するデータ処理プログラムで、昨年9月に変更を加えたところ、ある条件が整うとシステム全体がダウンする欠陥が生じたといいます。

 NECによると1月末に別の作業を行った際、技術者がこの欠陥を発見、担当者に警告しましたが、担当者は「致命的な問題を引き起こすミスではない」と判断、管理者への詳細な報告を怠っていたといいます。また同省ではシステム内のプログラムを変更する際、独自に事前チェックを行っていましたが、「事前チェックが不十分だった」と認めています。

 人はミスをするもの、機械は壊れるもの、ソフトはバグがあるもの、というのは常識ですが、ソフトの欠陥を正しく評価・報告しない“人のミス”が招いた事故でした。ソフトの欠陥は100%無くすことは非常に困難なことから、異常に気づいたときの措置に対するNECのマネージメントの問題が一番大きな問題だったようです。担当者が「致命的な問題を引き起こすミスではない」といった根拠は恐らく何もないと思います。つまり自社製品・システムの欠陥が明らかになる不利益を意識したのが原因だと思われます。したがってそのような行動を誘い出した同社の安全・品質マネージメントに欠陥があったということでしょう。

目次へ


■JR運転士の居眠り運転、その後

 JR山陽新幹線で岡山駅付近で居眠り運転をした運転士は、その後睡眠時無呼吸症候群の疑いが持たれて話題となりましたが、この運転士は岡山から新神戸駅間の一部で24分間、約100キロを1人で運転していたことが分かりました。JR西日本は当初「発覚後、運転し資格を持つ車掌が添乗し新大阪駅まで運転させた」と説明していたのですが、ウソであったことが判明したのです。

 JR西日はどうも安全軽視の言い逃れ体質から抜け切れていないようです。信楽高原鉄道の単線上での列車正面衝突事故では、遺族の損害賠償請求控訴審判決で刑が確定するまで自らの過失を認めようとしなかった会社です。トンネル内のコンクリート片落下事故のときには、安全を確認する前に営業運転を再開することもありました。また昨年11月には大阪市淀川区で列車事故の救急作業中の消防職員らが安全確認を怠ったJR西日の特急列車にはねられ死亡しています。

 同社では今回の事故から再発防止策をいくつか上げましたが、個人差の大きい運転士らの健康管理や勤務態勢の問題、管理職が運転士と一緒に1カ月間だけ乗務するという措置の後に何が残るのか、また今回のように車掌が運転室に駆けつけるまで異常が分からなかったことなど、居眠り以外の急病時の列車安全に対する心配はつきません。
 
さて23日には福岡県宗像市のJR鹿児島線・教育大前駅で停車するはずの普通列車が同駅を通過し、車掌が非常ブレーキで停車する事故がありました。JR九州では「急に眠気を催した」「非常ブレーキに気付くまで、わずかな時間だが記憶がない」との運転士の証言から、居眠り運転が原因だったとみています。

 同社では2月と3月の2回、鹿児島線で停車予定の駅を通過するミスが起きたばかりで、JR西日本の事故から何も教訓にしていないことが判明しました。

目次へ


■2,000人に1人が輸血で重い副作用

 輸血を受けた患者のうち、約2,000人に1人の割合で血圧低下などの重い副作用が起きていることが25日、全国国立大学病院の調査で分かりました。輸血用血液に混入した細菌などが原因と見られ、5%程度は副作用が原因で死亡しているといいます。

 調査は全国44の国立大学病院の輸血担当者で構成する、副作用登録委員会が実施したものです。それによると1998年から2000年度で国立大学病院で輸血を受けた患者約12万人のうち、血圧低下や呼吸困難など「重症非溶血性輸血副作用」と報告されたのは66人でうち3人(5%)が死亡したといいます。死亡した3人のうち2人は輸血後1〜6時間以内に急激な肺水腫を起こす「輸血関連急性肺障害(TRALI)」と診断されていました。

目次へ


原因不明の新型肺炎、今も拡大続く

 今月に入りなおも拡大を続ける原因不明の新型ウィルス肺炎ですが、3月のニュースからいくつか拾ってみました。

 世界的に感染者が拡大したのは、ベトナム首都のハノイ・フレンチ病院で15日、原因不明の急性肺炎が発症していた46歳の女性看護師が死亡してからです。この病院に2月下旬に香港から訪れた米国籍男性が肺炎の症状で今月5日までに入院したのが原因とみられ、その後15日に死亡した女性看護師を含む病院職員ら約30人が集団で発症、病院は封鎖されました。しかしこの男性は13日に香港に戻り、そこの病院で死亡しているのです。

 この男性が香港に航空機で移動したことから、狭い空間で感染が広がったと思われます。その結果ドイツやカナダでも患者が見つかり、18日にはフランス、翌19日には豪州にも感染者がいることが判明しました。26日にはシンガポールで初めての死者が出て、中国広東省でも同日、31人の死亡が確認されましたす。
 
今回の騒動は、テロリストの犯行ではなさそうなのが救いですが、交通網の発達によりあっという間に全世界に未知のウイルスがまん延する恐ろしさを目の当たりにしました。

目次へ


乳児用粉ミルクで嘔吐/中身違いの明治乳業の製品

 明治乳業の埼玉工場で昨年5月に製造された8カ月までの乳児向け粉ミルク「ほほえみ」1缶の中身が、9カ月から3歳児向けの「ステップ」の粉ミルクだったことが分かりました。同社によると、「ほほえみ」の調乳表に従い、添えられたスプーンで「ステップ」を生後まもなくの乳児に飲ませた場合、濃度が高く下痢を起こす可能性があるとしています。同社は誤って飲んだ大阪府東大阪市の乳児の母親に謝罪し、昨年11月春日部保健所に届け出たものです。

 この粉ミルクは昨年5月30日、埼玉工場の「ほほえみ」の製造ラインで誤って「ステップ」に充填された1缶だったことが判明、原因は前日の「ほほえみ」の充てん作業の後、ライン上か検査台周辺に残された「ほほえみ」の缶に誤って「ステップ」を充てんしたようだとしています。

 同一ライン上に多品種の製品を流すことはどの製造業でもあるのですが、切り替え後に初めて製品を流すときは特別な注意を払うことは、当たり前のことです。目視でも分かる当日充てん中の「ステップ」とは異なる「ほほえみ」の缶が、なぜ検査をすり抜けたのか理解できず、同社の品質管理体制の問題があるようです。

目次へ


■毛髪中の水銀濃度、千葉は水俣の2倍以上/水銀濃度初の全国調査

 国民の平均的な毛髪中の水銀濃度は2.6ppmで、世界保健機関(WHO)の許容限界50ppmを大きく下回るものの、地域によってばらつきがあり、マグロを多食する千葉は水俣の2倍以上に達することが国立水俣病総合研究センターが実施した初の全国調査で分かりました。

 調査は99年から2000年にかけて、水俣市、熊本市、鳥取県、和歌山県、千葉県の5地区で、理髪店や小学校を通じて計約3,700人の毛髪の提供を受け分析したものです。その結果5地区のうち、もっとも濃度が低かった水俣の平均2.0ppmに対し千葉は2倍以上の4.7ppmで、最大値も千葉の男性で26.8ppmだったといいます。

 同時に実施した食生活に関するアンケートでは、千葉は5地区の中で魚の摂取量が1日平均約70グラムと最多で、中でも水銀値が高いマグロを他のどの魚よりも多く食べていることが判明しました。水俣や鳥取では近海魚が中心でマグロは15位とそれほど多く食べられていないことから、水銀が蓄積しやすい大型魚の摂取と体内の水銀濃度に相関関係があることが分かったとしています。

 マグロのおさしみに偏った嗜好は、資源の枯渇問題を引き起こしたりしますが、最近では養殖マグロによりトロが安くなったりしています。しかし養殖の魚では、餌に抗生物質やビタミン剤などを混ぜていることも多く、養殖マグロを食べ続けるのは少々怖いものを感じます。今回の調査で水銀も多く体内に蓄積しているようなので、近海物をもっと利用したいものです。

目次へ


■クジラの内臓食品で腎臓障害の恐れ/高濃度の水銀蓄積

 東京都内や和歌山県内で市販されているクジラの内臓を原料にした食品をラットに食べさせると、中に含まれる水銀の影響で腎臓障害を起こすことを、北海道医療大と第一薬科大のグループが突き止めました。

 グループが調べたのはマグロやイルカの肝臓などを塩ゆで加工した商品で、「くじらのうでもの」などとして知られ、インターネットなどを通じても売られているものです。グループは、体重1キロ当たり2グラムの内臓食品を1回だけラットに食べさせ、3日間経過を観察した後、水銀などの体内分布を調べました。

 内臓食品を食べたラットには、直後から下痢を起こしたり、行動が緩慢になったりするなどの変化が現れ、腎臓中には高濃度の水銀が蓄積されていたといいます。またラットの尿や血液中では、組識が炎症を起こしたときに作られる酵素の濃度が上昇、水銀による腎臓障害が起こったことを示していました。

 食物連鎖で上位の動物に水銀が蓄積しますが、地球上で一番上位にあるヒトへの影響は避けられないものとなっています。もともとは海に垂れ流し続けてきた環境問題ですが、何世代も後に深刻な影響が及ぶ地球環境問題を改めて感じます。今考えることはクジラの内臓を食べることの危険性はもとより、被害者であるクジラの生態を気にかけなければなりません。土壌汚染の浄化システムが開発されている現在、海洋汚染の浄化システムを国際的に取り組む時期に来ているようです。

目次へ


■心肺蘇生法の普及必要/急性心筋梗塞の救命率向上に

 昨秋以降高円宮さまやマラソン中のランナーの死亡報道が相次ぎ、屋外などで起こる急性心筋梗塞の怖さが改めて浮き彫りにされています。国立循環器病センター心臓血管内科野々木宏部長は「救命には早い119番と徐細動器の使用が欠かせない。一般市民への普及が鍵だ」と述べています。

 これまでの救命活動のデータからは、心停止から1分経過するごとに死亡率が10%上がり、3分で脈拍が快復できれば70%助かり、5分では半々、といわれています。

 日本では通報から救急車が現場に到着するまでは平均6分かかることから、これだけで死亡率が50%に落ちてしまいます。したがってそれまでに心肺蘇生述を施すことが有効ですが、一般にはなかなか広まっていないようです。また救急車には徐細動器が積まれていますが、医師法のために医師の指示がないことには救急隊員が徐細動器を扱えないことになっています。そのため急性心筋梗塞はとてもリスクの高い疾病となっているのです。

 しかし現在は素人でも扱える家庭用の手軽な自動徐細動器もできていることから、一般への浸透を進めて欲しいものです。米国ではスポーツ施設や空港など、人々が集まる公共の場所には徐細動器の設置が義務付けられていて、実際に一般の人の協力で多くの人が助かっているといいます。

目次へ


医療過誤保険料高騰で医師廃業/訴訟大国、米国の弊害

 石米国では近年の医療訴訟急増を背景に医療過誤保険の賠償金支払い額が増大、保険会社は医師に課す保険料を値上げせざるを得ない状況が続いています。

 フロリダ州在住のリチャード・ファインゴールドさんは眼鏡医を辞めて5年になりますが、そのきっかけとなったのが医療過誤保険料の高騰だったといいます。ファインゴールドさんは開業医時代、年平均6万ドル、多い年には10万ドルの保険料を払い込んでいたといい、それでも比較的安いようなのです。

 産婦人科や神経外科などの訴訟の対象となりやすい診療科目では地域によっては保険料が20万ドルにもなるようです。このため保険料の高いニューヨークやニュージャージー州などでは、業務をやめたり他の地域に引っ越したりする例が目立っているといいます。ニューヨーク州医師協会によると、2000年から2002年までの3年間に4,200人の医師が同州を離れましたが、そのうち9割は退職年齢に達していなかったといいます。

 医療過誤の訴訟では、大金を受け取る被害者・市民の利益が優先される結果、原告は地域の医師が減っていく社会構造まで気にしないと思われます。被害者救済にあまりにも片寄った高額な賠償金額の問題は、結局は市民生活の新たな問題を生むようであり、昔からの米国特有の悩みは続いています。

目次へ



終わりに

 軽井沢の星野リゾートが経営している2つのホテルが、環境に配慮した商品・サービスについて情報提供しているNPO「グリーン購入ネットワーク」の全国のホテル・旅館の環境対策を数値化したデータベースで1位、2位となったもようです。

 ところで環境に力を入れる企業が増えているのはいいことですが、環境評価の高い企業が顧客満足度の高い製品・サービスを提供しているかどうかは分かりません。単にPRのためだけではないと思いますが、従業員の生活にもその精神と活動を広げるような、社会的にも地球的にもプラスとなり貢献できる企業が増えて欲しいものです。環境優良企業の社員が、私生活とはいえ環境を破壊しているようでは、企業の取り組みに対するリスクを抱えていることになります。

目次へ


Google
  Web ASP   

[ ASP トップ ] [ ASPニュース2003 ]

定期購読について