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2005.6 No.138  発行 2005年6月20日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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5月のニュースから

■不祥事対策に開示義務/経産省検討、リスク管理へ指針

 経済産業省は企業が絡む不祥事が続発している事態を重くみて、相次いで対策を打ち出します。今夏にも経営陣の意識改革や万一に備えたリスク管理の指針を公表、企業に対応を求め、不祥事を想定してどういう対策を取っているかの情報の開示を義務付ける方向で法務省と調整するとしています。

  経産省は今年2月に産業界の代表や有識者らを集め、企業不祥事を調べるための研究会を設置、西武鉄道で発覚した有価証券報告書の虚偽記載、みずほ銀行で起きたシステム障害、雪印乳業の製品による集団食中毒事件などを取り上げ、要因を分析してきました。経産省は大惨事となったJR西日本の電車脱線事故のように、経営責任が問われる不祥事が絶えないことを憂慮しているといいます。

 経産省は報告書に基づいて不祥事への対応に関する企業向けの総合的な指針をまとめ、、特定の従業員への権限集中や行きすぎた業績評価を避けることや、ヘルプライン(通常の業務報告とは別の経路で問題の発生を経営者に知らせる仕組み)の設置、経営陣による対処方針の明確化などを柱とするようです。

 企業の情報開示の義務付けについては、法務省と協議した上で実現することになりますが、営業報告書の公表を通した情報開示によって、企業の対応が不十分なら、投資家や消費者から激しい視線を向けれられるため、不祥事を防ぐ圧力になると経産省は期待しているといいます。

 今回の指針は一定の効果はあると思いますが、多くの企業の不祥事がいまだ新聞紙上を賑わすということは、罰則を軽んじた考えがあるのではないでしょうか。不正が発覚したときのリスクと、販売利益を天秤にかけている企業もあるかも知れず、企業が「他山の石」として危機感を持つような法的抑止力を持たせなければなりません。
ところで企業が行っている不正や不祥事防止に対する努力は、国家公務員などに対する国の努力と比較してどうなのでしょう。
最近のニュース見出しだけでも、国交省関連の不祥事は次のように相当数あります。
「元国交省職員の覚せい剤使用:小田被告に執行猶予判決/足羽川治水対策:ダム計画、効果に否定的見解−−調査団が中間報告/橋梁談合、K会・A会に国交省197人が天下り/オートバイ標章窃盗未遂で近畿運輸局職員を逮捕/ATS設置基準、国交省JRに甘く旧型放置/利益は年30億、空港の駐車場運営を天下り財団が独占/国交省元職員汚職事件:県警、姫路事務所を家宅捜索/国交省元職員を収賄容疑で逮捕 ビール券150万円受/水資源機構、補償金1150万円を業者に肩代わり、国交省・河川事務所職員/ちかん容疑で逮捕−−懲戒戒告処分、収賄の国交省職員を懲戒免職/ユニホームを「作業服」、国交省出先事務所が偽装購入/国発注の公共工事汚職:国交省職員、追起訴分認める−−地裁公判/酔ってタクシー運転手殴る、国交省係長を傷害で逮捕」などですが、国家公務員の不祥事防止にどのような努力をしているのか全く見えてきません。

  「身内に甘い」などと言われ続けているのですが、これはどういうことでしょう。企業の監督業務では言いぱなしで良いかも知れませんが、自ら規範をただし、企業に負けない“行政品質”というものを確立してもらいたいものです。あまり期待はできないのですが…。


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フィブリノゲン、中部43機関に投与記録/名古屋弁護団「カルテ無し」覆す

 血液製剤「フィブリノゲン」によるC型肝炎の感染問題で、厚生労働省が昨年12月に公表した納入先リストで「カルテは残っていない」とされた中部6県の医療機関のうち、計43機関で手術記録など患者への投与の有無を確認できる可能性のある記録が保存されていることが、薬害肝炎訴訟の名古屋弁護団の調査で分かりました。

 弁護団は「厚労省の調査はち密さに欠け不十分だった」と指摘し、「公表リストを見て自分が投与されたか確認できないとあきらめた人も弁護団に問い合わせて欲しい」と呼び掛けています。
記録が保存されていることが判明したのは、愛知23、岐阜2、三重7、福井2、石川4、富山5の各医療機関です。

 弁護団は厚労省のリスト公表後、訴訟で名古屋弁護団が担当している6県内で、現在も所在していることが確認できた計697機関に調査票を送り、200から回答がありました。このうち176機関は厚労省の発表では「カルテ無し」とされていましたが、43機関ではフイブリノゲンが広く流通していた1980−1988年分に関して手術、入院診療録など投与が確認できる可能性がある記録が保管されていることが分かりました。

 厚労省の調査方法が良かったかどうかですが、「複数回確認をした」というだけで、やりっぱなしの行政手法という弊害があるようです。感染者にとっては命に関わることだけに、国の調査は不十分といわざるを得ません。連絡先は名古屋市の柴田・羽賀法律事務所(平日の日中のみ)、電話は052-953-6011です。

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日本脳炎の接種中止/厚労省緊急勧告

 厚生労働省は30日、市町村が公費負担の「定期接種」として実施している日本脳炎ワクチンについて、積極的な接種を中止するよう、市町村に緊急の勧告を行いました。これは事実上の中止勧告で異例の措置だといいます。

 昨年山梨県甲斐市の女子中学生が接種後に神経障害などが起きる急性散在性脳脊髄炎(ADME)になり、寝たきり状態になるなど、これまでになく重い症例だったため、接種シーズンを前に勧告したものです。ただ、流行地への渡航や、蚊に刺されやすい環境にある場合は、副作用などを説明し同意を得た上で、接種を認めるとしています。同省では「安全性の高いワクチンが来年にも供給できる見通しで、その際は接種推奨を再開したい」と話しています。

 これはやむを得ない措置ですが、予防接種のワクチン量を画一的に決めるのではなく、体重などに応じたものにするとか、申告制で事前にワクチンに対する反応検査をするなど、方法はあるのではないでしょうか?
一般に医療機関で処方される薬の量についても、患者の体力などに対する配慮が欠けていることが多く、錠剤やカプセルの場合では最小単位の1錠、1カプセルを処方するだけで、薬が効きすぎることもあります。平均的な処方だけでなく、個人差のある血液量や薬剤吸収率、そして薬剤反応・副作用情報など科学的な検査によるデータが得られれば、医療の質は個人に合ったきめ細かな処方が可能となります。薬に対する影響は、100人がそれぞれ違う、という認識の元で適切な処方技術を確立して欲しいものです。

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母乳からPBDE検出/京大など全国調査

 家電製品などを燃えにくくするために使われている化学物質で、人体への毒性が疑われるPBDE(ポリ臭素化ジフェニルエーテル)が、岐阜県や福井県など全国各地の母親らの母乳から検出されました。これは臭素系難燃材といわれ、可燃性物質であるプラスチック、ゴム、木材、繊維等を燃えにくくするために用いられる物質で、家電製品や家具などに多く使われています。

 京大など14の大学・研究機関のグループが2003−04年度に、13都道府県の主に2、30代の授乳中の母親1015人から母乳を提供してもらい、うち105人分を測定。PBDEは全員から検出され、最多は脂肪1gあたり22.788ナノグラム、最少は同0.110ナノグラム、平均同2.56ナノグラムでした。

 母親の居住地別の平均では、秋田県が脂肪1gあたり4.50ナノグラムと最も多く、岐阜県同2.83ナノグラム、北海道2.70ナノグラムの順、福井県は1.05ナノグラム、最少は高知県の0.50ナノグラムで、「地域や個人差の原因究明には、PBDEが使われている家電製品や家具に、どれだけさらされているかも調べる必要がある」と話しています。

 ASPニュース2004.4/No.124でも紹介しましたが、国内電気・精密機器メーカー約50社と化学業界の約270社・団体では、2006年7月までに国内外で販売する製品からPBDEを無くすことを 決め、少しずつですが対策が進んできています。
しかし家電製品などは10年以上使うことも多く、家庭内での暴露による蓄積は避けられないため、今後も気になるところです。

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「聞こえない音」見えた/中電、低周波音の表示装置開発

 中部電力は24日、人の耳に聞こえない低周波の音を画像上に表示する「音カメラ」の新型機を熊谷組、信州大工学部の山下恭弘教授と共同開発したと発表しました。どこから、どれくらいの大きさ、高さ(周波数)の音が出ているか一目で分かり、人体に影響を与えることがある低周波の発生源調査などに活用できるもので、人に聞こえない音まで映像化できるタイプは、世界にも例がないといいます。

 中電などは2001年に音カメラを開発しましたが、当時の有効周波数は100−4500ヘルツで、超低周波には対応できていませんでした。新型機は10−550ヘルツ対応で、マイクの配置や測定誤差の補正を工夫し、とらえにくい低周波のキャッチを可能にしたといいます。

 工場や工事、交通の騒音には人に聞こえない20ヘルツ以下の低周波が含まれる場合があり、人によって頭痛やめまい、胸の圧迫感を訴えることもあり、音カメラはこうした症状の原因特定に役立つと見られています。

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著作権契約書、ホームページで簡単作成/文化庁提供

 文化庁は著作物の利用契約書を自動的に作成する新サービスを5月中旬にもホームページ上で始めます。画面上の書式に添って入力すれば、一般の人でも簡単に契約書を作れる仕組みで、デジタル機器の普及による市民同士の著作権トラブルが増える恐れがあることから、文書による契約を促すことで紛争の予防を図るとしています。

 しかし残念なことに、運用開始となった「著作権契約書作成支援システム」と題したこのページに使われたアイコンが、アップルコンピュータのMacOSX標準搭載の「テキストエディット」と酷似したものであることが発覚、NHKのTVニュースでも取り上げられてしまいました。

 そのため文化庁は急きょこのページを削除してしまったのです。著作権のトラブルを防止するための文化庁のページで、まったくお粗末な話ですが、ホームページの目的・内容そのものはとても良いものであり、早急に再開して欲しいものです。

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非喫煙者手当、「吸ったら返金」はダメ/労基署が是正勧告

 社員がタバコをすわないと宣言すれば「非喫煙手当て」を支給している化粧品メーカー、ヒノキ新薬が、宣言を守らずに喫煙した社員に手当てを返還させる社内規定を設けているのは労働基準法違反の疑いがあるとして、東京労働局の中央労働基準監督署は11日までに、社内規程を改めるよう是正勧告をしました。

  同社は化粧品メーカーとして肌の健康に悪影響を与える喫煙を控えるため社員の禁煙運動を展開、1990年から非喫煙宣言すれば「健康維持管理手当」を支給していました。この手当は月1万3000円を個人名義の積み立て金にして、健康増進目的で使う際のみに引き出せるようにしているもので、現在は約200人の全社員が非喫煙宣言をしています。

 ただ、社員が宣言を守らずに喫煙した場合は退職か解雇となり、積み立て金を全額返還するという社内規定があり、年1回の健康診断で非喫煙状況をチェックしています。
今年1月の健康診断で男性社員の喫煙が発覚、同社は退職を迫り積み立て金の返還を要求しました。男性は20万円を給料から天引きされ2月に退職しましたが、この男性が労基署に申し立てたことから調査が入ったものです。労基署は今年4月、積み立て金の返還を求める社内規定について、「経営者が社員に損害賠償を求める契約をあらかじめ結んではいけないことを定めた労働基準法16条に違反する疑いがある」と判断、5月16日までに是正するよう勧告したものです。

 今回の「健康維持管理手当」を積み立てたものが、企業にとっての「損害賠償を求める契約」となるかですが、これはどうなのでしょう。企業にとっての損害ではなく、単なる契約不履行で喫煙した場合のペナルティと考えられますが…

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